いま明かされる、国立エリート高校入試面接のすべて・・・

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いま明かされる、国立エリート高校入試面接のすべて・・・


ようこそ実力至上主義の入試面接へ

今年もまた、この季節が巡ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ・・・これでよし、と」

 

 

ため息混じりに、姿見で服装のチェックを終える。正直、気が重い。なぜなら今日はこれから、面接官として受験生たちに愛想笑いを振り撒かなくてはならないからだ。入学試験2日目。昨日の学科試験に引き続き、本日は面接試験が行われる。そして私は教師生活7年目にして、初めて主任面接官という大役を任されていた。無事にこなせば昇給、賞与は間違いないが、もし何らかの失敗をすれば、ペナルティとして例の無人島で1週間、特別研修を受けることになるらしい。(恐怖)

 

 

本音では、たとえプライベートポイントを支払ってでも、誰かに代わって貰いたい気分である。もちろん、あのふざけた電子マネーを使えるのは生徒だけだから、そもそも出来ない相談ではあるのだが。

 

 

東京都高度育成高等学校。国が設立した、未来の日本を担う人材を育てる超エリート校だ。そして、私の母校にして現在の勤務先でもある。進学・就職率100%を謳い、60万㎡の広大な敷地に充実した教育環境を誇るものの、その内情たるや・・・いや、これ以上はやめよう。私は何も悪くない。単なる組織の歯車に過ぎないのだから。給料分の仕事をこなすだけでいい。悪いのは、こんな謳い文句を鵜呑みにして、毎年全国から押し寄せる愚かな受験生たちなのだ・・・

 

 

「ひっく!あ~やばい、昨夜飲み過ぎひゃ~誰か、迎え酒ちょうらい・・・」

 

 

現実から目を背け、教職員用の化粧室を出ようとしたら、入れ違いに同年代の女性教師が現れた・・・朝っぱらから何をしているんだ?こいつは。(白目)

 

 

「あれぇ?サエちゃんが、ばっちり()()()()してる??まさか年上は諦めて、新入生狙いに切り替えたのかな?」

 

 

なぜかこの手の話題になると、急に生き生きとするな・・・心なしか、滑舌まで良くなっているようだ。て言うかそのセリフ、全部そのままお前に返すぞ。

 

 

「冗談は顔だけにしろ、チエ。それより大丈夫なんだろうな?理事長も同席するんだぞ」

 

 

「らいじょうぶ、らいじょうぶ~お酒はもう抜けたきゃら~♪」

 

 

全然大丈夫じゃないこの酔っぱらいは、星之宮知恵。小学校からの腐れ縁であり、酒と恋バナが趣味と宣う残念美人だ。は?私か?私の趣味はメイドのコスプレだが何か問題でも?で、話を戻すが、今日は彼女も補助面接官として受験生の前に出ることになっている。頼むから、余計な問題を起こさないでくれよ・・・心の中で叶わぬ願いを呟きながら、歩き出す。早めに会場入りしておこうと思ったのだ。

 

 

「あ!待ってよサエちゃん!いまおしっこしてくるから!」

 

 

とても嫁入り前の乙女とは思えないセリフを残し、スカートをたくし上げながらトイレに駆け込んでゆくチエ。嘘だろ・・・(目が点)あれでも男子生徒の間では絶大な人気を誇っているのだから、やはり男なんてバカばっかりだ。(負け惜しみ)だが、いまのシーンを見たら100年の恋も一瞬で冷めるだろう。え?一部の客層には刺さる、だと?!ほぅ・・・念のため覚えておこうか。(ダメ!絶対!)

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

「先生方、本日は宜しくお願いしますね」

 

 

穏やかに微笑むのは、坂柳理事長。本校のトップに立つ人物である。ただでさえ緊張を強いられる状況だというのに、上司まで同席するとは・・・なんでも、今年は直接受験生たちを見てみたいんだとか。ならば、自分で面接官をやればよいものを・・・

 

 

決して口には出せない不満を抱えつつ、資料を手に準備を進める。面接官は私を含めて4人。同期の星之宮と真嶋に、坂上先生も補助要員として加わっていた。聞くところによると、このメンバーで4月から新1年生を担当することになるらしい。要するに私は今日、未来の教え子たちを直接見極めなくてはならないのである。

 

 

もちろん、この人数だけでは大量の受験生を捌き切れないから、同様の教師チームがいくつも組まれ、他の部屋でも同時並行で面接を行うことになっている。入学試験とは文字通り、学校の総力を挙げた一大イベントなのだ。

 

 

「受験生たちの様子はいかがですか?茶柱先生」

 

 

「・・・特に問題はないようです」

 

 

理事長の問いに、一瞬躊躇ってから答えを返す。手元のタブレットには、受験生の控え室に設置された監視カメラの映像が映し出されていた。当然、彼ら彼女らは緊張した面持ちで椅子に座り・・・いや、前の座席の背もたれに足を乗せて、爪の手入れをしているやつが居るな。さらには爆睡している生徒も・・・まさか、見間違いだよな?それともカメラが壊れたのだろうか?

 

 

「さて、面接中における皆さんの言動が、来年度の人事査定に影響することはありません。ですのでどうか思う存分、その辣腕を振るって下さい。特に茶柱先生、貴女にはリーダーとしての活躍を期待していますよ」

 

 

つまり、何をやってもお咎めなし、ということか。調子に乗ったチエがやらかして、一緒に始末書を書く未来しか見えない。思えばここに在学中も、こいつのせいで・・・(委細省略)

 

 

さて、毎年全国から志望者が殺到している我が校だが、最近は目に見えて新入生の質が落ちてきている。結果として我々教職員は日々、様々な問題行動への対処に忙殺されているのが実情だ。私も過去2回、Dクラス担任として3年間のクラス闘争を経験したが、結局不良品は不良品のままだった。一向に増えないクラスポイントに、増え続ける退学者・・・退学処分にした生徒の保護者が怒鳴り込んで来たことも、1度や2度ではない。また、入学直後から賭博行為に手を染める者や、無断でブログを立ち上げて外部との接触を図る者、或いは部活動での対外遠征時に手紙や宅配便を発送しようとする者などなど、数え上げたらきりがない。さらには毎年必ず現れる、最初から本校の特殊なルールに精通している転生オリ主新入生への対応・・・(ため息)

 

 

もし生活費無料という教職員特典がなかったら、私はとっくにビズリーチしていたに違いない。ゆえに、ここらで優秀な生徒を確保し、学校の評判を上げる必要があるのだ。だからこそ、坂柳理事長が直々に登場したのだろう・・・さて、今年はどんな哀れな子羊たちがやって来るのやら・・・

 

 

そして午前9時。運命の面接試験が始まった。

 

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

「失礼します」

 

 

最初に入室してきたのは、眼鏡をかけた秀才タイプの少年。手元の資料によれば、中学時代の成績も申し分ない。ほぅ・・・今年は豊作かもしれんな。これなら下剋上も夢じゃない・・・って待て待て待て!!なぜ私がDクラス担任という前提なんだ?(震え)

 

 

「それではまず、あなたの氏名を教えて下さい」

 

 

「はい、幸村啓誠です」

 

 

む?早速資料の記載ミスか?

 

 

「おや?願書と名前が違うようですが・・・あなたは幸村輝彦君ではn・・・」

 

 

「やめろ!!俺を輝彦と呼ぶな!あんな女が付けた名前なんて俺は認めない!!俺の名は啓誠だっ!」

 

 

前言撤回。初っ端からこれか・・・

 

 

「ほぅ・・・入学試験で偽名とはいい度胸だ・・・そう言えばチエも中学の時、仲間内では確か朝比奈みくると名乗っていたよな?」

 

 

「なっ?!や、やめてよサエちゃん!」

 

 

「「「ぷっ!!」」」

 

 

堪らず吹き出す理事長ほか2名。なぜか全員、涼宮ハルヒを知っているようである。はて?真嶋と坂上先生は良いとして、坂柳理事長は明らかに世代が違うはず・・・はっ?!ま、まさか?

 

 

いつも温厚な笑みを絶やさない彼を、頭の中で若返らせると・・・眼鏡をかけ、リュックを背負ったヲタク青年が、アニメイトやまんだらけに出入りする姿が浮かんできた。(偏見)

 

 

「ぷっ!!」

 

 

思わず吹き出してから、慌てて平静を装う。こんな醜態をSNSにでも投稿されたりしたら、私の教師人生が終わってしまう。

 

 

「し、失礼しました星之宮先生・・・しかし、あなたが()()()とは・・・ぷっ!」

 

 

「まさか星之宮が・・・?まあ俺も、中2の頃は黒のロングコートに長剣を佩いて、ネット上では真嶋キリトと名乗ってはいたが」ボソッ

 

 

「ちょっと、みんな止めてよ!いい加減、わたし怒っちゃうぞ?!ぷんぷん!!」o(*`ω´*)o

 

 

私以上に動揺を隠せない理事長と真嶋。坂上先生も、俯いて震えている。一方で、両手をわちゃわちゃと振り回し、あざとく怒りを表現するチエ。なぜだろう?見ていて猛烈に腹が立つ。いまどき、ぷんぷんなどと擬音付きで怒るアラサー女など居るものか!!(激怒)

 

 

こうして、見るも無残な大混乱に陥った我らがチーム茶柱。受験者の幸村は、もはや完全に蚊帳の外である。

 

 

「あ、あの・・・俺の面接は・・・?」

 

 

「ん?ああ、済まない。ご苦労様でした。気を付けて帰って下さい」

 

 

「そ、そんな!志望理由や自己PRは?!」

 

 

おそらく散々、想定問答集などで対策を練ってきたのだろう。だが残念だったな、()()()。いかに理不尽に思えても、これが社会というものなのだ。この経験を生かして、今後も頑張ってくれたまえ・・・狼狽える偽名少年を退室させ、彼の資料にバツ印を付ける。

 

 

「ははは・・・ありゃ、拗らせたマザコンだね。ホントはママのこと大好きなのに、素直になれなくて・・・若いなぁ。学力には自信があるみたいだったけど、自分より勉強が出来るライバルが現れたら、一瞬でダメになっちゃうタイプだね」

 

 

あっさり()に戻ったチエが宣う。言葉の選び方は最悪だが、案外本質を突いているのかも知れない。

 

 

「ふぅ・・・茶柱先生、いまの彼ですが・・・」

 

 

やっと回復したらしい理事長が、こちらを向いた。

 

 

「はい、承知しております。たったいま、不合格者に分類しました」

 

 

私は、自らの仕事の速さをアピールするように答えた。こういったところで上司におもねてしまうのは、部下の悲しい(さが)である。

 

 

「いえ、彼はDクラスに配属していただけますか?」

 

 

「わかりまs・・・え??」

 

 

いまのが合格?私は思わず理事長を二度見してしまった。しかしこれはまだ、ほんの序の口に過ぎなかったのである。

 

 

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 

「ではまず、あなたの氏名と出身中学校名を教えて下さい」

 

 

「あん?名前?俺らはガキかよ?んなもん、願書に書いてあんだろ?」

 

 

次の受験生は、見るからに不良っぽい赤髪の男子生徒だった。どうやら、さっき控え室で爆睡していたのはこいつらしい。中学校側は、いったい何を考えて()()()()を出願させたんだ?合格できるわけないだろう?

 

 

「これは面接だから、本人確認が必要なんですよ」

 

 

強張った作り笑いを浮かべ、極力丁寧な言葉遣いを心がけつつ対応する。こんな出来損ないは、さっさと終わらせるに限るな。

 

 

「ちっ!早くしてくれよ。このあと練習してえんだ」

 

 

安心しろ。貴様なんぞお呼びじゃないから、直ぐに終わるさ。

 

 

「まあ、待ちたまえ。では、あなたの将来の夢は何ですか?」

 

 

「あ?バスケのプロになることだよ。決まってんじゃねーか」

 

 

「なるほど。次に、本校を志望した理由を述べて下さい」

 

 

「んなの、希望する進路を100パー叶えてくれるっつーから選んだ。3年間我慢すりゃ、卒業と同時にNBA行けんだろ?」

 

 

どうやら本物の愚か者らしい。やはりこれ以上は時間のムダだ。現実を分からせてやるとしよう。

 

 

「調査書によると君は先月、バスケットの名門、神奈川県立湘北高校への推薦を取り消されていますね?何があったのですか?」

 

 

「なっ?!んなこと、てめえには関係ねえだろうがっ?!」

 

 

椅子を蹴って立ち上がると、私の胸ぐらを掴む赤髪。ふっ・・・未婚の清らかな乙女(主観)に無断で触れるとは、貴様終わったな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ・・・」

 

 

乱れたブラウスを直してから、小さく息を吐く。いまの暴力行為には、さすがに理事長たちも色めき立ったが、結局警備員が来て事なきを得た。それよりも真嶋、ボタンが飛んだ私の胸元をガン見するのはやめろ。貴様なんぞに興味はない。(きっぱり)

 

 

哀れなバスケ少年が引き摺り出されて行ったあと、私は彼の調査書にもバツ印を付けた。さあ、気を取り直して次に・・・

 

 

「あ、茶柱先生、彼もDクラスに」

 

 

正気か?!

 

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

「よろしく頼むよ、面接官ティーチャー諸君。まあ、楽にしてくれたまえ。今日も私は絶好調さ」

 

 

お次は、偉そうに足を組んだ金髪の受験生。さっきの爪研ぎ少年か・・・あまりに堂々としたその態度に、まるでこちらが面接を受けているかような錯覚に陥る。これはまた、面倒なのが来たな・・・

 

 

「ではまず、あなたの受験番号と氏名、出身中学校名を述べて下さい」

 

 

「ふっ・・・よかろう。1度しか言わないからよく聞きたまえ。私は高円寺六助。かの高円寺コンツェルンの後継者にして、未来の日本を背負って立つ運命にある男さ」

 

 

大した自信だが、受験番号と中学校名が抜けているぞ。ひとの話が聞けないタイプだな。

 

 

「調査書によると、あなたの総合所見欄には『著しく協調性に欠ける』とありますが、これからどのように改善していくつもりですか?」

 

 

「ふはははは!なぜ完璧超人の私が改善しなければならないのかね?そもそも、他人がこの私の実力を見極めることなど、不可能だろうねぇ・・・」

 

 

もはや会話になっていないぞ、これ。

 

 

 

 

(中略)

 

 

 

 

「では、本日の面接は以上です。お疲れ様でした」

 

 

「私にとっても、なかなかに楽しい時間だったよ。それじゃ、引き続き頑張ってくれたまえ。アデュー」

 

 

片手を挙げながら出て行く金髪。彼の姿が扉の向こうへ消えると、待ち構えていたようにチエが叫んだ。

 

 

「優良物件、キタぁ~~~~~~!!お金持ちの御曹司とか最高じゃん!しかもあの体格なら、()()()の方も強そうだし♥️」

 

 

「チエ、貴様・・・」

 

 

建前が崩壊し暴走する同期に、もはや言葉が出ない。頼むから、さっさと寿退社してくれないか?(切実)

 

 

「ははは。なかなかに個性的な生徒でしたね。彼もDクラスに配属しましょう」

 

 

一方、嬉しそうに微笑む坂柳理事長。もう、このひとの思考が理解出来ない。彼は動物園でも作りたいのだろうか?

 

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

次なる生徒は・・・ほぅ、半グレのロン毛か。夜道で出会ったら、即通報だな。て言うか、お前のような中3が居るか!!

 

 

「では、そちらの席に座ってk・・・」

 

 

「へっ!国が作っただけあって、なかなかに金のかかった学校じゃねえか」

 

 

私の言葉を聞くまでもなく、彼は勝手に腰を下ろし、獰猛な笑みを浮かべた。そしてひとしきり、室内を見回すと・・・

 

 

「オイオイ、国立エリート高校ってのは面接官が年増のキャバ嬢n・・・たわばっ?!」グシャ!

 

 

「次に行きましょう」

 

 

「昭和だねぇ・・・」

 

 

無作法なロン毛に制裁を加えてから、意味不明なツッコミを入れるチエは無視して理事長に確認をとる。さすがにあれは、都立クロマティ高校あたりにでも放り込んでおくべきだろう。

 

 

「いまの生徒は不合格で宜しいですね?」

 

 

「いえ、彼はCクラスに」

 

 

「あれで合格なんですか?!」(白目~!!)

 

 

そして面接は続く・・・

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

「あなたがいちばん好きな言葉は何ですか?」

 

 

「はい、社会貢献です!今朝もここに来るバスの中で、お婆さんに席を譲りました!」

 

 

明るく答える女子生徒。なかなかに好印象だ。天使か?!だが、こんな娘に限って、ピンチになったら平気で自分の胸を揉ませたりするんだよな・・・ソースはチエ。(慧眼)

 

 

「それは善いことをしましたね。では次の質問です。本校に入学したら、あなたは何をしたいですか?」

 

 

「はい!同級生、上級生を問わず、全てのひととお友達になりたいです!」

 

 

曇りのない笑顔を見せる少女。人当たりが良く、容姿も整っている。誰からも好かれるタイプだろう。私はいちばん嫌いなタイプだがな。

 

 

「全てのひとと、ですか?」

 

 

「はい!私はコミュニケーション能力に自信があるので、この目標を達成するために精一杯、頑張ってゆきたいと考えています」

 

 

彼女は笑みを絶やすことなく、善人オーラ全開で抱負を述べる。全く、その歳でその女優っぷり。見るに堪えんな・・・よかろう。その猿芝居、どこまで()つか見せて貰うぞ。

 

 

「ところで・・・調査書によると、先日あなたは所属クラスを学級崩壊させたそうですね?どのような手段を取ったのですか?」

 

 

「なっ?!あのクソ女(担任)、余計なことを書きやがって・・・はっ?!し、失礼しました。きゃぴ 」

 

 

もう手遅れだ。いまのうちに、さっさと滑り止めの私立にでも入学手続きをしておくんだな。(本音)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ~~~~ムカつくし、うざかったぁ~~~!!女子グループの中じゃ、ああいうのがいちばん目障りなんだよね。かわい子ぶりっ子であざといとか、そんな女の子、3次元に居るわけないじゃん。みんな、夢見すぎだよ」

 

 

顔を引き攣らせながら仮面少女が出て行ったあと、早速本音トークを炸裂させる、あざとい同期。その意見には全面的に賛同するが・・・お前が言うか?あと、いくら査定に反映されないからとは言え、壁に蹴りを入れるのは止めておけ。

 

 

「人間誰しも、裏表があるものです。彼女もDクラスに入れてみましょう」

 

 

もう、好きにしてくれ。次行こ、次。(適当)

 

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

「では、あなたの趣味・特技を教えて下さい」

 

 

一見真面目そうな女子生徒は、躊躇いなく答えた。

 

 

「はい、万引きでs・・・ケッホケホォ!!」

 

 

こいつ・・・常習犯だな。(確信)

 

 

さすがにこれは、理事長に確認を取るまでもあるまい。下手に入学させたりしたら、初日にコンビニあたりでやらかして、湾岸署のお世話になるのがオチだろう。早々に面接を打ち切ると、私は彼女の願書を不合格者フォルダに放り込んだ。さて、お次は・・・

 

 

「あ、いまの女子生徒はAクラスに」(理事長)

 

 

「「「「はい???」」」」(その他全員)

 

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

「あなたが最も尊敬する人物は誰ですか?」

 

 

対するは、小柄でおとなしそうな少女。男の庇護欲をかき立てるタイプだ。なぜかまたまた腹が立つ。(八つ当たり)

 

 

「はい!さっき控え室で出会ったストロベリーブロンドでおっぱいが大きい女の子です!もし一緒に入学出来たら、誰かに盗られる前に告白します!」

 

 

「・・・多様性・・・ジェンダー・・・同性婚・・・」ブツブツ(お目目ぐるぐる)

 

 

「茶柱先生?どうかなさいましたか?」

 

 

「・・・はっ?!も、申し訳ありません!直ちに不合格・・・」

 

 

「いえ、彼女はBクラスへ」

 

 

・・・誰だか知らんが気を付けたまえ。どうやら君は貞操の危機らしいぞ、ストロベリーブロンドの巨乳さん。(他人事)

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

「失礼します」

 

 

次に入って来たのは、凛とした雰囲気を纏った黒髪の美少女だった。ふぅ・・・やっと、まともなのが来たな。

 

 

「堀北鈴音と申します。本日は、どうぞ宜しくお願い致します」

 

 

そして予想通り、彼女は優秀な受け答えに終始した。容姿端麗、頭脳明晰。調査書によれば運動能力も高い。しかも、あの生徒会長の妹だ。これは間違いなく、Aクラス入りの逸材だろう。

 

 

「では最後の質問です。あなたが最も尊敬する人物はd・・・」

 

 

「兄さんですっ!!」

 

 

間髪入れず、彼女は長い髪を振り乱して叫んだ。な、なんだ?やけに返答が早いぞ・・・?

 

 

「私は兄さんに追い付くためにこの学校を志望しました!兄さんは私の憧れであり目標です!この髪形も兄さんが好きだって言うから・・・はぁ、はぁ、はぁ・・・」

 

 

頬を染め、ほぼ息継ぎなしでまくし立てる黒髪ロング。最後は苦しげに肩を上下させていた。少し怖い・・・

 

 

「・・・とんでもない見かけ倒しだったな。まさか、筋金入りのブラコンだったとは・・・」

 

 

堀北(妹)の面接を終え、ため息をつく。なんだか私も兄貴が欲しくなってきた。(錯乱)ちなみに私は一人っ子だ。

 

 

「ありゃもう手遅れだね。ガチで『お兄ちゃんだけど愛さえあれば全部OKだよね?』とか言い出しそう」

 

 

なんでも深夜アニメのタイトルに例えるのはやめろ、チエ。

 

 

「それにあの様子じゃたぶん、お兄ちゃん(生徒会長)の方も・・・こりゃ入学したら早速、学生寮の裏手あたりで禁じられた遊びかなぁ・・・」

 

 

「お前はいったい何を言っているんだ?そもそも、あの堅物で有名な堀北学が、そんなはずは・・・」

 

 

私の言葉は途中で悲鳴に遮られた。いまのは・・・廊下か?慌てて飛び出してみれば・・・まさに話題のふたりが、禁じられた遊びの真っ最中であった。(またも白目)

 

 

「まさかここまで追ってくるとはな、鈴音」

 

 

「わ、私は兄さんに追い付くために・・・」

 

 

妹の両手首を掴み、廊下の壁に押し付ける兄。午前中から何をしているのだ?あのバカ兄妹は?!面接の順番待ちで並んでいた受験生たちは、突然始まったイチャコラを唖然として眺めるばかりである。同じく飛び出して来た他の部屋の面接官たちも、開いた口が塞がらない様子。まぁ、そうなるな・・・

 

 

「だから無理だと言ったはずだ。恥をかくのは俺なのだから、いますぐ帰れ。尤も、いまのお前が合格出来るとは思えんがな」

 

 

「いいえ!私は必ず・・・」

 

 

「聞き分けのない妹だ。どうやら、恥をかかせる必要があるようだな」

 

 

冷たく言い放つと、空いた右手を妹のスカートに伸ばす兄。ま、まさかスカートめくり?小学生かっ?!

 

 

だが、私のツッコミも空しく、彼の暴挙は未遂に終わった。(残念)

 

 

「なっ?!」

 

 

驚いて振り向くシスコン(生徒会長)。受験生らしい茶髪の男子生徒が、彼の右手を掴んでいたのだ。ほぅ、さすが素晴らしい反応速度だな・・・

 

 

「その手を離せ」(兄)

 

 

「兄さん・・・♥️」(妹)

 

 

「ちぇ!つまんないの」(チエ)

 

 

「チエ、貴様・・・」(茶柱)

 

 

 

 

 

 

 

(自主規制中・・・)

 

 

 

 

 

 

 

放って置くと、行くところまで行ってしまいそうなふたり(兄妹)を無理やり引き剥がし、目撃者となった受験生たちには厳重に口止めをしてから試験を再開する。しかし、まさかあの生徒会長が・・・今後、彼の称号は『歴代最高のシスコン』に変わるだろう。これでは、例の部活動説明会における無言パフォーマンスも、効果半減だろうな。

 

 

「さて、いまの女子生徒ですが・・・」

 

 

「はい、わかっております理事長。Dクラスですね?」

 

 

「ええ、さすがです、茶柱先生」

 

 

半ば自棄になって答えたら、まさかのビンゴ・・・しかし、歴代最高の妹が不良品のブラコン、か。新たな火種となること、間違いなし・・・

 

 

 

 

 

 

(CM放映中・・・)

 

 

 

 

 

 

はぁ・・・疲れた。あれからいったい、何人面接しただろうか。段々、受験生たちが()()()()()()()()()に見えてきた・・・いい加減、面倒臭くなってきたから、あとはもうペーパーシャッフル(願書をかき混ぜて)合格者を決めてしまおうか。(ダメ!絶対!)ああ・・・誰か、いますぐ酒とタバコとイケメンを持って来てくれ。このままじゃ、私のメンタルが()たん。この学校では、ポイントで買えないものはないはずだ。

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

「ふぅ・・・」

 

 

誰も居ない特別棟の階段で、私はゆっくりと煙草を燻らせていた。疲れた心身に、紫煙が染み渡ってゆく・・・面接試験はいま、小休止に入っている。残念ながら、酒とイケメンは手に入らなかったが、煙草の1本くらいなら許されるだろう。本来なら、こんなところで人目を避ける必要など、ないのだが・・・なぜなら、入学試験が行われる昨日と今日の2日間は臨時休校となっており、在校生は全員、学生寮での自室待機が義務付けられているからだ。

 

 

もちろんこの措置は、予期せぬ情報漏洩を防ぐためである。秘密主義を貫くこの学校にとって、大量の部外者(受験生)が訪れる入学試験は1年で最も警戒すべきイベントのひとつなのだ。ちなみに校門から面接会場に至るルート上では、一時的に監視カメラが撤去されていたりもする。理由は言うまでもないだろう・・・

 

 

少し話が逸れたな。要するに今日は私がどこで煙草を吸おうが、生徒に見られる恐れは皆無ということだ。(極論)まあ、厳密には先ほどのシスコン(会長)以下、生徒会に所属する生徒だけは雑務に動員されているのだが。

 

 

とりとめのない思考を中断して、ちらりと腕時計を確かめる。試験再開まであと15分。このままエスケープして、例の無人島でお一人様バカンスと洒落込むのも悪くないな。(だからダメ!!)今年は例年にも増して、とびきりの不良品が目白押しだ。そんな彼ら彼女らが、未来の日本を担う人材のタマゴ・・・ふははははっ!圧倒的じゃないか、我が国は。(錯乱)

 

 

ひとり空しくガンダムネタを披露してから、ふと階下に目を遣ると・・・カラフルな蝶々が飛んでいるのが見えた。何やら女性ボーカルのテーマソングも聞こえる。私はもう、ダメかも知れない。いっそこのまま、階段に寝そべってみようか・・・

 

 

え?校内禁煙?ここは監視カメラが無いから構わんさ。(停職案件)

 

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

休憩が明け、面接が再開された。そして結局、私はここに居る。ふっ・・・すっかり社畜に成り果ててしまったらしい・・・さあ、お仕事の時間だ。(やる気なし)

 

 

「失礼致します」

 

 

ノックのあとに入室してきたのは、杖を手にした小柄な美少女。いかにも良家のお嬢様、といった感じの佇まいである。来たな・・・次の瞬間、室内の空気が緊張で凍り付く。さすがのチエも、その場で居ずまいを正した。そう、この子は・・・

 

 

「私立常盤台中学校から参りました、坂柳有栖と申します。ふふふ」

 

 

「はじめまして、坂柳さん。そちらにかけて下さいね」(よそ行きの声)

 

 

冷や汗が背中を伝う。私はいま、上手く笑えているだろうか?それより誰だ?この人当たりの良い女教師は?あ、私か。いや、そんな冗談を言っている場合ではない。目の前に居る美少女は、まさに取り扱い注意、メガトン級の時限爆弾なのだ。後ろに座る理事長からの視線が痛い。彼の親バカぶりは有名である。ここでミスれば、私の首が飛ぶだろう。突然だが、これから私の出す問いについて考えてみてほしい。上司の目の前でその愛娘を不合格にできる部下など、どこに居る?(忖度)ゆえに、この少女とのやり取りには、細心の注意を払う必要があるのだ。まずは、無難なところから行くか・・・

 

 

「では最初の質問です。あなたがいちばん尊敬する人物は誰ですか?」

 

 

「はい、お父様です」ニコッ

 

 

「合格~~~!!!」(男の絶叫)

 

 

「り、理事長?!」

 

 

突然錯乱したバカ親に、思わず飛び上がる。対する少女は微笑を浮かべるばかり。あ、この子、見かけと違ってヤバい子だ。(確信)て言うか、ほとんど裏口入学だろ、これ。

 

 

「・・・はっ?!も、申し訳ありません。続けて下さい、茶柱先生」(汗)

 

 

貴様も手遅れだ、理事長。(心の声)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「有り難うございました」

 

 

完璧な受け答えを終えると、優雅に一礼して坂柳家の一人娘は出て行った。

 

 

「茶番だな」ボソッ

 

 

「何か仰いましたか?茶柱先生」

 

 

「いえ、なにも」

 

 

理事長はそれ以上何も言わず、穏やかな笑みを向けてくるばかり。無言のプレッシャーに負けた私は、坂柳有栖の願書をAクラスのフォルダに入れた。ああそうさ、これが忖度というものだ。さっきも言ったが、大事なことだから2回繰り返したぞ。(開き直り)

 

 

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 

永遠に続くかと思われた面接も、いよいよ終盤に差し掛かっていた。次の受験者は、特徴的なアホ毛の生えた男子生徒。なるほど、今年は転生オリ主じゃなくてクロスオーバー主人公か・・・

 

 

まぁ、どちらにしろ目障りな異物であることに変わりはない。初日のSHRで余計な質問をしたり、わざわざ職員室まで押し掛けてきて構ってちゃんアピールをしたりと、原作を引っ掻き回すだけの邪魔者である。(どストレート)当然、目の前の捻デレ少年も・・・ゲフンゲフン!いかん、こいつとは初対面という設定だったな。あちこちの作品で絡んでくるから、思わず間違えてしまった・・・(汗)

 

 

さて、仕切り直すとしようか・・・いかにも緊張した様子で着席した少年。イケメンと言って差し支えない顔立ちだが、独特な三白眼が全てを台無しにしている。きっと、眼鏡をかけたら激変するクチだろう。

 

 

「それでは、あなたの受験番号と氏名、出身中学校名を述べて下さい」

 

 

「ひ、ひゃい!受験番号888番、千葉市立総武中学校から来ました、比企谷八幡でしゅ」

 

 

ぷっ!噛んだ?!ここ絶対笑うなよ!チエ!

 

 

表面上は何食わぬ顔で、やり取りを続ける。これくらい、教師ならば朝飯前だ。

 

 

「では質問です。あなたが嫌いなものは何ですか?」

 

 

「はい、青春を謳歌するリア充共です。常々、あんなやつらは早く爆発すればいいと思っています」(なぜか突然、滑らかな口調)

 

 

これは逸材だ・・・(失神)

 

 

「彼はAクラスへ」

 

 

「Aですか?!」

 

 

「えぇ、有栖と絡ませてみたら面白そうですし」

 

 

どうやら、彼は理事長から気に入られたらしい。かわいそうだが終わったな、あの腐り目・・・そんな感想を抱きながら、次なる受験生の資料を取り出す。ふぅ・・・こいつで最後か。

 

 

「えー、綾小路清隆です。えー、宜しくお願いします」

 

 

無気力な表情で名乗る茶髪の男子生徒。ほぅ・・・やっとお出ましか。主役は遅れてやって来る、とでも言いたげなタイミングだ。昨日の学科試験は全教科50点。なぜか本人は凡庸を装っているが、恐らくその実力たるや・・・取り扱い方によって、自爆装置にも最強の切り札にもなり得る最終兵器。先ほどシスコン会長を止めた動きも見事だったしな・・・さあ、見せて貰おうか!今年度最大の不良品の実力とやらを!!

 

 

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 

「皆さん、お疲れ様でした」

 

 

坂柳理事長の言葉に、ようやく肩の力が抜けた。同時にどっと疲れが押し寄せてくる。主に精神的な。正直、こんな仕事は二度と御免だ。早く帰って深酒をしたい。だが、戦いはまだ終わらない。このあと、場所を理事長室に移していちばん大事なイベントが行われるのだ。

 

 

「では先生方、担当クラスの割り振りに移りましょうか」

 

 

そう、これからの3年間を決める運命の抽選会である。ここでAクラス担任の椅子を引き当て、3年後に勝者として卒業式を迎える。そして婚活にも勝利して寿退社するのだ。最近作り始めた夢ノート(マンダラチャート)にも、そう書いたばかりだしな。え?相手は居るのか、だと?お前は実に愚かだな。そんなの、いまから探すにきまっているだろう?!(逆ギレ)

 

 

「今年度の抽選方法は、以下の中から選んで頂きます」

 

 

そう言って坂柳理事長は、楽しげに1枚の紙を取り出した。そこには・・・

 

 

◎フラッシュ暗算

 

◎チェス

 

◎ピアノ

 

◎茶道

 

◎騎馬戦

 

◎中間テスト

 

◎満場一致

 

◎無人島

 

◎じゃんけん

 

 

勘弁してくれ・・・私の古傷を抉る単語の数々に、一層身体が重くなる。あと、そもそも実施不可能なものが混じってないか?

 

 

「おひとりに付き、ひとつだけ質問を許可します」

 

 

「では私から」

 

 

真っ先に真嶋が挙手した。よし、頼んだぞ、同期。

 

 

「この『中間テスト』ですが、具体的にはどのようなものでしょうか?」

 

 

そこじゃないだろ!

 

 

「新入生が1学期に受けるものと同じ出題レベルです。ただし、過去問はありませんが」

 

 

当たり前だ。

 

 

「次、宜しいでしょうか?」

 

 

続いて坂上先生が口を開く。彼は常識人だから、きっと大丈夫だろう。

 

 

「この『ピアノ』についてですが、選曲は自由ですか?」

 

 

「はい、もちろんです。お好きな曲をどうぞ」

 

 

勝手にしてくれ。どうせ私は『ねこふんじゃった(素人メタルアレンジ版)』しか弾けん。

 

 

「じゃあ、私からも」

 

 

分かっているよな?チエ。

 

 

「この『騎馬戦』ですけど、ベッドの上でやるやつですか?」

 

 

「「「ごふっ?!?」」」

 

 

チエを除く全員が、激しく噎せた。やはり、お前に期待した私が愚かだったな。しかし、まさかあの生真面目そうな理事長が・・・(以下、自主規制)

 

 

「ふぅ・・・では、茶柱先生はいかがですか?」

 

 

問われて私は口を開く。やはり、聞かねばなるまい・・・

 

 

「この『満場一致』の内容についてなのですが・・・」

 

 

脳裏をよぎる苦い記憶。最近ようやく、自分の中で折り合いをつけたばかりだと言うのに・・・

 

 

「ああ、それは先生方4人の中から誰かひとりを懲戒免職にする、というものです。満場一致とクラス内投票のハイブリッドだと思って下さい。やり方は・・・ご存知ですよね?」

 

 

「「「「なっ?!」」」」

 

 

私たちの声がきれいに重なった。見事な混声四部合唱だ。(爆)しかし、この学校がろくでもないことは理解していたが、まさかここまでとは・・・

 

 

「で、ですが理事長、それだとひとり、担任が足りなくなるのでは・・・?」

 

 

声が上ずるのを自覚しつつ尋ねる。こんな馬鹿げたイベント(特別試験)で、積み重ねてきたキャリアを失うわけにはいかない。1学年はAからDまでの4クラスである。私たちの中からひとりをクビにすれば当然、頭数が合わなくなるはず・・・

 

 

「ご心配には及びません。この学校には、他にも優秀な先生方が何人もいらっしゃいますから」

 

 

さらりと答える坂柳。(呼び捨て)つまり代わりはいくらでも居る、ということか。いかにも教育者然とした微笑に隠された裏の顔に、思わず身震いする。今日の受験生たち然り、ひとは見かけによらないとは、まさにこのことだな・・・やはり、さっきの儚げな一人娘も本性は・・・

 

 

「いまなにか、有栖について失礼なことを考えていませんか?」

 

 

・・・その勘の良さ。ヒロインか?!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして厳正な審査の末に選ばれたのは・・・じゃんけんだった。なぜだ??

 

 

「よーし!私、本気出しちゃうから!みんな、用意はいい?」

 

 

案の定、場を仕切り出すチエ。あいつ、昔から合コンでも常にこうだったよな。そのせいで、私はいつも・・・(黒歴史)

 

 

抽選方法は至ってシンプル。じゃんけんで勝った順に、理事長が持つおみくじを引く。それだけだ。まさに弱肉強食。ようこそ実力至上主義の理事長室へ。

 

 

部屋の中央に集まる4人。真嶋と坂上先生は、両手を組んで例のおまじないをしているが、あれはいったいどんな意味があるのだろうか?てか、分かっているよな?いきなり私が負けるとかいう展開、誰も喜ばないぞ?

 

 

「それじゃ、みんな恨みっこなしでね?最初はグー、じゃんけんポン!」

 

 

 

 

 

 

 

 

チョキ(わたし)パー(チエ)パー(真嶋)パー(坂上)パー(理事長)(敬称略)

 

 

 

 

 

 

 

 

ふはははははっ!貴様らは実に愚かだな?見ろ!ここから私の下剋上が始まるのだ!悪いが先に()()()()()貰うぞ?ただ、当たり前のように理事長が参加している理由はよく分からんが。

 

 

坂柳理事長が手にした4本のおみくじ。それぞれ根元にクラス名が記されているらしいが、むろん肝心の部分は彼が握っているので見えない。さて、究極の運試しと行こうじゃないか、茶柱佐枝。彼氏を退学処分で失ったのも、合コンでいつも売れ残ったのも過去の話。いまの私が負ける姿は想像できない。

 

 

求められているのは、とにかく『D』を引かないこと。それだけだ。余計なことは考えず、直感に従えば良い。Don’t think!Feel.

 

 

慎重に吟味し、いちばん右の1本へ手を伸ばす。これが私の運命(さだめ)・・・その瞬間、理事長が微かに口元を歪めた。なにっ?!生じる僅かな迷い。いや・・・惑わされるな!こんなもの、ただのブラフだ。

 

 

再度じっくりと見極めて、今度は右から2番目を掴む。すると、にわかに目を見開く理事長。くっ・・・!わざとやってないか?この男。私の行く手を遮るならば、誰であろうと叩き潰すまで!(口だけ)

 

 

ええい、ままよ!迷いを振り払い、右から3番目のおみくじを掴んで一気に引き抜・・・けない??よく見れば、理事長がきつく握り締めているではないか?!何をやっているのだ?こいつは。くそっ!完全に遊ばれている・・・

 

 

いや、焦るな!この程度の心理戦、特別試験で何度も経験したじゃないか。結果的には卒業前最後の試験で、あんなことになってしまったが・・・過程は関係ない。この世は勝つことがすべてだ。最後に私が勝っていれば、それでいい。Dクラスの呪縛、ここで解いてみせる!

 

 

新たな決意を胸に、いちばん左のおみくじを握る。坂柳(父)が満足そうに口角を上げたが、もうその手には乗らない。私はそのまま、一気にそれを引い抜いた・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんっ??!」

 

 

「あはははははっ!!いきなり1等賞(残念賞)とか、やっぱりサエちゃん最高だよっ!」

 

 

驚愕のあまり、おみくじを手にしたまま固まる私の背後では、チエが腹を抱えて笑い転げていた・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おわり


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