藤原佐為Inよう実   作:まるまつ

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後から加筆あるかも、誤字あったらすみません


ボードゲーム部

入学式の翌日。

早々に授業が始まり、ようやく春休み気分が抜け始めたものも多いだろう。

未だ中学生気分が抜けず、親元を離れたという意識を皆があまり持っていないんだろうと真は思っていたが、中々どうしてAクラスの面々は優秀らしかった。

遅刻をせず、授業が始まる前にちゃんと準備をして真面目に授業を受ける。言ってしまえばこれだけのことだが、それを誰にも言われず実行できることは褒められるべきことだ。

高度育成という名に恥じないクラスの面々に、真は過ごしやすそうだと素直に思った。

 

そしてそんな真面目に授業を受ける生徒達に混ざり、佐為も真の横でへーとかなるほど等の相槌を挟みながら真剣に授業を受けていた。

これは真にとっては特に驚くことでもなく、現代という佐為が生きていた世界から1000年以上先の知識を知りたいと思うのは当然の欲求で、それは佐為が3ヶ月前に現れた時から変わっていない。

 

休み時間になると、放課後は何をするだの、ポイントであれを買いたいなど高校生らしい話題が溢れる。

そしてその中に混じって、授業が分かりやすそうだとか、どこまで予習が進んでいるかなどの話題があるのは真にとっては話しやすかった。

中学の終わりまでは勉強漬けの人生だったと自覚がある真にしてみれば、勉強が一つ話のネタになることはありがたいことだった。

 

新しいことをすると時間は長く感じると良く言うが、新生活2日目は思いのほか早くすぎていき、気づけばお昼休みになっていた。

真は橋本経由や、席が近く話があった数人で学食に行くことになった。

ポイント的に考えて本来ならば自らお弁当を作ろうかと真は思っていたが、新生活の疲れからか余裕をもって朝起きることができなかった。

 

しかし、それによってクラスメイトとの交流のチャンスが生まれたのならば悪くはないと真は思った。

 

国が大規模な予算を掛けていると言うだけあって食堂は広くて綺麗で、かなりの生徒が既に食事をとっていたがまだまだ席には空きがあった。

 

食堂は食券制のようで券売機には列が出来ている。

真は早速並ぶかと移動するクラスの面々に続いて着いて行こうとするが、佐為の言葉によって足を止める。

 

『おや、あれは綾小路ではないですか』

 

そう言いながら扇子で位置を教えてくれる佐為。

真がそちらに目を向けるとそこにいるのは確かに綾小路で、1人で食事をとっているようだった。

昨日買い物に付き合ってくれたお礼は一応携帯上ではしたとはいえ、このまま無視してクラスメイトに合流するのも違うなと思った真は、後から合流するとクラスメイトに伝言を残して綾小路の方へと向かう。

 

「綾小路君こんにちは。昨日は買い物付き合ってくれてありがとうね」

 

「ん、…ああ藤原か。俺も買いたい物を買えたしそれは気にしないでくれ」

 

「そう言ってくれると助かるよ。恥ずかしながら友達と買い物に行く経験が乏しくて、何か粗相をしてたらごめんね」

 

「……いや、それに関しては俺もそういう経験はなかったからお互い様だ。……しかし意外だな、藤原は別に人付き合いが苦手なようには見えないが……もしかして友達と買い物に行くというのは普通はしないことなのか?」

 

「……いやいやいや、別にそれ自体は普通のことだと思うよ?俺は家が厳しくてすぐ帰って勉強するように言われてただけ。……もしかして綾小路君も家が厳しかったりしたの?」

 

綾小路の常識というものが何処か常人とはかけ離れているような気がして、真はもしや自分以上に厳しい家庭にいたのかもしれないと思いつく。

もしくは外の世界とは隔絶したお坊っちゃんなのか、前者ならばと思うと本人には悪いと思いつつも親近感を覚えた。

 

「……まぁそうだな、家が厳しくて普通の常識をあまり知らないんだ。これからも何か変なことを言ってたら教えてくれると助かる」

 

「俺が出来る範囲で良ければ全然良いけど、俺も対して変わらないと思うしクラスメイトの人とかにお願いした方が良いかも」

 

「……クラスメイトか」

 

目を逸らしながら言う綾小路に、無神経なことを言ったと真は察する。

 

「…あ、ま、まぁその話はいいや!綾小路君は授業とかはどう?ついていけてる?」

 

「まだ本格的に授業も始まってないしとりあえずはな。そっちはどうだ?」

 

「俺もまだ大丈夫かな。思ったより真面目にみんな授業受けてるし、やっぱ進学校だけあって環境は良い感じだよね」

 

「……藤原のクラスはそうなのか。うちのクラスはそうでもないぞ、携帯弄ったり寝てる奴がそこそこいる」

 

「え、それで先生とか怒らないの?」

 

綾小路から出た思わぬ情報に、真は目を見開いた。

 

「特に注意する様子はなかったな。みんなそれが分かってからどんどんエスカレートしていった感じだ」

 

「…綾小路君のクラスはDだっけ?教室に監視カメラはある?」

 

「あるぞ」

 

「まぁそれはこっちのクラスと変わらないのか、……となるとやっぱりなんで監視カメラがそんなに多いのか気になるな。授業態度を監視するためもあるのかと思ったけど、結局注意しないなら意味がないような気がするし」

 

「……防犯用なんじゃないか?」

 

「防犯用だけなら教室だけ多い理由がないと思うんだよね…」

 

真は腕を組んで情報を整理する。

綾小路から得た情報は初日に感じた疑問を大きくするには十分なもので、やはりこの学校には何かあるのかもしれないと思う。

 

「藤原、何か気になるのは分かるがあまり考えすぎると昼食の時間がなくなるぞ」

 

「……そうだね、一旦失礼して昼食買ってくる。何か分かったら綾小路君にも共有するよ」

 

「おう、そうしてくれると助かる」

 

「それじゃあまたね。綾小路君のおかげで何か大事なことに気づけそうだよ」

 

真はそう言い綾小路へ手を振る。

遅くなったとクラスメイトにお詫びをして昼食を取る。

疑問への答えを得るには、何か一つ情報が足りない気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後、昨日に引き続き真は1人で校舎の中を歩いていた。

まばらに通る人を横目に見ながら、どうしたものかと窓から外を覗く。

夕焼けに照らされたグラウンドではサッカー部が既に練習を始めようとしていて、クラスで見覚えのある顔も確認できた。

それを見た真も早く行動を起こさねばなと思うが、どうにも足取りが重かった。

 

「まさか囲碁部がないとはなぁ……」

 

真は窓枠に肘をつき外の空気を吸いながら、独り言のようにそう呟いた。

部活動説明会で囲碁部の出番をワクワクしながら待っていた真と佐為だったが、その名前を聞くことなくあっさりと終わってしまった。

別にその可能性を考えていなかった訳ではないが、進学校ならばまぁあるだろうという謎の固定観念があったことは否めない。

 

『……はい』

 

佐為も最早そんなことがあるはずがないと思っていたのか、いつもの元気さは影もなく、ただ小さく返事をするのみだった。

そんな佐為の様子を見て自らもこのテンションに釣られてはまずいと思った真は、コホンとわざとらしく咳払いをしてトーンを上げて話し始める。

 

(まぁでもボードゲーム部ってのがあるらしいし、囲碁が打てないことはないと思うよ)

 

『……そのボードゲーム部の人々にとって囲碁は将棋やチェスやらの中にある一つに過ぎないのでしょう?どれほど囲碁を真剣に打つものがいるでしょうか…』

 

(それは行ってみないと分からないでしょ?とりあえず様子を見るためにも一回体験させて貰えばいいよ。そのために今部室に向かってるんだから)

 

『確かにそれはそうですが…』

 

言葉では納得しつつも佐為はやはり不満そうだった。

別に将棋やチェスが嫌いな訳ではないのだろうが、同じ部活として一纏めにされてしまうとどうにも抵抗があるらしい。

 

他の学校でもボードゲーム部とまではいかなくても、囲碁将棋は一緒の部活として纏められることも多いと聞くが、よくよく考えれば囲碁将棋部はあるのに野球サッカー部とか柔道空手部はないのは何故だろうと、くだらない疑問が真の頭に浮かんでくる。

脱線したので纏めると、1000年という期間を経ても未だに囲碁を打ち続けている佐為からしてみれば、そういう扱いの差に囲碁の衰退を感じてしまって気分が良くないのだろうと真は推測した。

 

(ほら、着いたし早速入るよ)

 

真はボードゲーム部の扉をノックをして、失礼しますと言いながら開ける。

当然ながら扉を開けるとそこにはボードゲームに勤しむ学生がいて、既に部活は始まっているようだった。

真がざっと部室を見渡すが知った顔はおらず、同級生はいなそうだと予想する。

部活に勤しむ彼らの態度は雑談をしながら和やかにプレイするものが6割、真剣3割、そして何故か焦った様子のものが1割ほどいるのが印象的だった。

 

「こんにちは。見ない顔だし新入生だよね?」

 

1番手前に座っていた生徒が立ち上がり真に話しかけてくる。

長い黒髪を後ろで纏めた綺麗な女性で、真に話しかけるまでは暇そうに1人本を読んでいた。

 

「はい、1-Aの藤原真と言います」

 

「……1-Aの藤原君ね、今日は入部希望で来てくれた感じ?入部届があるなら受け取るけど」

 

1-A。その言葉が出た瞬間、真は僅かだが部室の雰囲気が変わったような気がした。

名乗る前と比べて興味のある視線が増えたような、本当に僅かだがそんな感じがした。

 

「いえ、今日は体験のつもりできたんですが…今から1局打てたりしますか?」

 

「全然大丈夫だよ〜。色々ゲームの種類あるけどどれにする?日本で有名なゲームで言えば将棋、囲碁、チェス、オセロ、あと一応双六とか。あとはえーと、日本だとあんまり有名じゃないかもしれないけどバックギャモン、シャンチー、マンカラとか、とりあえずボードゲームと言われる類のものはある程度揃ってるよ」

 

「そんなに種類があるんですか…てっきり囲碁将棋チェスくらいだと思ってたんですが…」

 

真が部室の棚を見ると確かに多種多様なボードゲームが置いてあって、最早名前すら聞いたことがないレベルのものがいくつもあった。

 

「まぁでも実際にみんなよく打つのはそこら辺の有名どこかな。部活動だし大会も出るって考えると結局そうなるんだよね〜。で、結局藤原君は何で対局したいの?」

 

「囲碁でお願いします」

 

「はいはいオッケー。とりあえず暇してたし私で良い?」

 

「……失礼は承知しているのですが、この部で1番強い方と打たせてもらっても良いですか?決して先輩が嫌な訳ではないです」

 

生意気な一年がやってきたと思われただろうなと真は自らを客観視して思う。

実際に周りの先輩方の空気は若干ピリついたものに変わって、真の方を見るものが更に増えた。

 

真は別に先輩達を怒らせるためにやった訳ではなく、ボードゲーム部に入るかどうかを決めかねていた故の行動だった。

ダラダラと体験で何局か打つよりか1番強いものと1局しっかり打った方が自らの行動を決めやすいと思ったのだ。

それが自己中心的な考えだと言われてしまえば否定はできなかったが、あまり時間をかけることはできなかったというのが本音だ。

 

昼間の疑問も解消するために何か動かないといけないと思っていたし、部活も遅くなればそれだけ面倒なことになりそうだと思っていた。

 

目の前の先輩の気分を害してしまうのは申し訳ないと真は思ったが、言われた本人はそうでもないらしく、逆に1段階テンションが上がったように笑いながら手を合わせる。

 

「じゃあやっぱり問題ないね。私この部で1番強いし」

 

自慢するように自らを指差し、部長だからと追加情報を出してくる。

まさか1番手前で暇そうにしていた人物が部長だとは思わず、真の瞳孔が少し開く。

 

部長はそんな反応を予想していたのかニヤリと笑い、先ほど自らが座っていた席の前の席を引いて、座るように促してくる。

 

促されるまま真が席に着くと、流れるように机の上に碁盤と碁石が準備される。

 

「藤原君は今何ポイントくらい残ってる?」

 

部長は真の対面に座るや否やそう聞いてくる。

 

「7万と少しくらいですかね」

 

脈絡がない上に、初対面の相手に聞くにしては少し失礼と取られてもおかしくはない質問だが、最初に失礼をしたのはこちらだという自覚はあるので真は素直に答えた。

 

「ありゃ、まだ2日目でしょ?そんなに使って大丈夫?」

 

「碁盤と碁石が欲しかったので、あと食材とか調味料も、他に使う予定はないので十分余ってますよ」

 

「それなら良かった。……なるほど、初日で碁盤と碁石を買うくらいの熱意はある訳だ。1番強い相手をっていうのも頷けるね」

 

「…気分を害したのなら謝ります」

 

「いーや、『私』は特に気にしてないよ。『私』はね…周りはちょっとピリついちゃったみたいだけど」

 

部長はわざとらしく部室を見回す。それに釣られるように真も周りを見ると、先ほどよりも更に厳しい視線が増えたように感じた。

それによって真は部長が何を言いたいのかを察する。

 

「私の発言が原因ですし責任は受け止めます。確かに1番強い人を無料で指名するのは失礼な話でした。……それでなんですが対局料として幾らか先輩にお支払いする形でおさめるのはどうでしょうか?そこまで多くは出せませんが……1局の相場感として4000ポイント辺りでどうでしょうか」

 

囲碁のインストラクターと打つのに大体1局2000円からが多いので、謝罪の意味も込めてその倍額。

落とし所としてはそんなものだろうと真は思った。

 

「うーん、気持ちは嬉しいけど一年生からただポイント貰うっていうのは出来ないかな。……そうだ!賭けにしようよ!」

 

逡巡するように人差し指を顎に当てた部長は、少し間を開けて名案が思いついたとばかりに手を叩く。

 

「藤原君の手持ちが7万でしょ?大きな買い物しないなら5万ポイントもあれば十分だと思うし差額の2万ポイントでどうかな?勿論私が負けたら同じ額払うし、最初の君の発言もみんなに聞かなかったことにするようにお願いする。君にとっても損がないと思うんだけどどうかな?」

 

(……話がスムーズすぎるね。こういう手合いに相当慣れてるように見えるんだけど…佐為はどう思う?)

 

『……そうですね。今思えば彼女が対局をせずに待っていたのは、こういう流れを想定してのことだったのかもしれません。……真、別に断ってしまっても良いのですよ。勿論私に打たせてもらえば負けるつもりはありませんが、それで彼女からお金を奪っても私も真も良い気分にはなりません。この部活には入れなくなるでしょうが、私は真やネットで碁を打たせてもらうだけで十分ですから』

 

佐為の言葉を聞いて真は考える。

確かに佐為が打てば100に近い確率で勝つだろう。しかしそれで賭けに勝ってポイントを貰ってもというのは佐為に同意だった。

新入生を賭けへと誘導する部長のやり方に思う所がない訳ではないが、身から出た錆ということも考えると、真はこの賭けに参加する気にはなれなかった。

 

(ただ一局も打たずに帰るのは嫌だな。……うん『良い案』が思いついた。これなら佐為も文句ないはずだよ)

 

『真?』

 

心配そうにこちらへ問いかける佐為を横目に、真は真剣な表情で部長へと目を合わせる。

それに部長は満足そうに微笑みながら見つめ返してくる。

 

「先輩、この賭けを受けることはできません」

 

真の言葉に部室の空気が凍る。

 

「……なんだ、断るんだ。折角名案が思いついたと思ったのに、……最初の自信はもう無くなっちゃったのかな?流石にこれを断られると私もすこーしだけ怒っちゃうかもしれないよ?こっちは藤原君にとっても良い提案をしてあげたのに」

 

断られるとは微塵も思っていなかったのか、部長の声のトーンが下がる。

学校の規則として無理にポイントを奪うような行為は許されていない。

だからこそ部長は真を無理にこの勝負につかせることはできないが、学校側に聞かれても問題ない程度の範囲で脅しをかけてくる。

その表情からは、既に先ほどまでの笑顔は消えていた。

 

“これくらいの脅しが限界なのかな”と、真はこの学校のラインというものが少し分かった気がした。

 

「いえ、その条件だと私が有利だと思ったまでです。だから先輩にとってもっと良い提案をしたいと思いまして」

 

「……もー!それを早く言ってよー。勘違いしちゃったじゃん」

 

それでどういう条件にしたいのかと、笑顔の戻った部長は真の発言を促す。

 

「まず私の賭けるポイントは手持ち全部の7万…正確には7万1115ポイントを賭けます。そして部長さんの賭けるポイントは0で大丈夫です」

 

「……はへ?……冗談にしては笑えないよ?」

 

これまで発言上で優位を許さなかった部長から、初めて素の驚いた声が出た。

目を大きく開いて、口も少し開いている、絵に描いたような驚き顔だ。

 

「冗談じゃないです。その代わり部長さんには別のことをお願いしようかと思いまして」

 

「もしかして1個なんでもお願い聞いてーとかじゃないよね?そういう抽象的なのはちょっと受けられないよ」

 

「いえ、お願いするのは3つですかね。具体的な3つなので聞くだけ聞いてみませんか?」

 

「……まぁ聞くだけなら無料だし良いけど」

 

表情が崩れたことにそこで気がついたのか、部長は咳払いを1つして腕組みをする。

 

「1つ目は先程の失礼な発言を許して頂くこと、そして2つ目はボードゲーム部とは別に囲碁部を作る許可をください」

 

1つ目のお願いは先程部長が出した条件の1つであったので特に何も言われなかった。

しかし、2つ目の条件を聞いて部長は首を傾げた。

単純にその条件の意味を測りかねているようだった。

 

「……もうボードゲーム部には入る気はないってこと?別にそれは君の自由だし好きにすれば良い。囲碁部を作るのだって私の許可はいらないと思うけど」

 

「いえ、別にボードゲーム部に入らないと決めたわけではないです。ただ自分で囲碁部を作ることも視野に入れて動こうかなと思っているだけです。許可をお願いしたのは囲碁部を作って大会に出ようとした時に面倒になりそうだからですかね。ボードゲーム部でも同じ大会に出るかもしれませんし、そもそも囲碁部を作る時にボードゲーム部があるからダメだと言われる可能性もあるので、そこら辺の擦り合わせが出来てた方が楽だと思いまして」

 

「ふーん、まぁ別にそこまで手間でもなさそうだしそれくらいなら全然オッケーかな。2つ目まではこっちとしてはなんの問題はないけど、それで最後の条件は?」

 

「3つ目の条件は……『部長さんに全力で打ってもらうこと』です」

 

「……その心は?」

 

「……心も何もそのままの意味ですよ。この学校に来て初めての対面での対人戦なので、お互い全力の良い碁を打たせてあげたい……間違えました。打ちたいので」

 

「…面白い、っていうのは対局が終わるまでとっておこうかな。…話が面倒くさくなってもあれだから書面で今の条件残させてもらうよ?分かってるとは思うけど後から覆すことはできないからね。それでも今の条件で良いの?」

 

(許可を取るのが遅れたけど良いよね佐為?)

 

真は佐為へと問いかける。

一応佐為へと投げかける形であったが、それを断られると真は微塵も思っていなかった。

 

『ええ、真はこれ以上ない舞台を用意してくれました。私はそれに恥じない碁を打つことを誓いましょう』

 

過不足ない、それだけで熱量が伝わってくる言葉だった。

そんな熱に当てられて、真の言葉にも力が籠る。

 

「はい、問題ありません」

 

特等席でこれから囲碁を見させてもらうのだ、問題などあるはずがなかった。

 




次回は佐為目線もちょっと書ければと思ってます。
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