Blue Archive -Document GUYS feat.LXXX- 作:LN58
アビドス遠征と称した【キヴォトス防衛軍】による広大なアビドス砂漠の未調査領域の大規模な調査もいよいよ半分以上が終わり、世間一般ではすでに怪獣無法地帯に対する危機意識が薄れつつあった。
そうなると、【キヴォトス防衛軍】による空前絶後の資金投下によって引き起こされた【アビドス】でのゴールドラッシュも収束の兆しを見せる一方、
アビドス遠征で次々とお披露目になった数々の新技術や新発明の有用性から不毛の大地:アビドス砂漠の開発計画が企業家や投資家の間で話題沸騰中であり、
突如として怪獣無法地帯と化して買い手のつかない呪われた土地になって今すぐにでも手放したいのに手放せなくなっていた不毛の大地の所有権を【カイザーコーポレーション】が損切りのためにさっさと売り渡そうと躍起になっていたのである。
そうした商売人たちの間では地球人:北条 アキラが率いる【キヴォトス防衛軍】によるアビドス遠征がそう遠くないうちに完遂され、安全が保証された広大な大地で対怪獣用兵器の開発で培われた数々のオーバーテクノロジーで事業を興そうという動きが顕在化したのである。
しかし、それは表向きの話であり、実際にはかつてアビドス自治区発祥の大企業【セイント・ネフティス】が乾坤一擲の策として立ち上げて無惨な結果に終わった砂漠横断鉄道の裏で極秘裏に開発が進められていた【“雷帝”の遺産】である<列車砲>をめぐって様々な勢力の思惑が錯綜していたのであった。
一方で、かつてキヴォトス最大の勢力を誇った【アビドス高等学校】の版図が学園外勢力の大人たちによってバラバラに切り刻まれていくさまに、明日は我が身だと危機感を募らせていた学園の生徒たちは行動を始めていたのである。
――――――それこそが【アビドス対策委員会】が最後に辿り着いた救済策になったのである。
北条先生「よし、今日こそは“幻のオアシス”と“悪魔の穴”に引導を渡してやる!」
ロボット職員「ええ。未調査領域の調査が進み、これだけ監視所が設置されれば、アビドス砂漠を動き回る“幻のオアシス”と“悪魔の穴”を見失うことはもうありません」
小鳥遊 ホシノ「こんな恐ろしいものがアビドス砂漠を這い回って人喰いをしていただなんて聞いたことがないです」
北条先生「小鳥遊さんに記憶があってもなくても知らないのは不思議ではないです。アビドス居住区に残り続けていた住民から聞いた不思議な話ですから。そういう情報を拾い上げて丁寧に調査するのも怪獣退治の鉄則です」
ロボット職員「あらためてアビドス砂漠に屯していた不良生徒たちからの目撃情報と調査が進んだハザードマップに監視所からの発見報告を重ね合わせることで、ついにアビドス砂漠に潜む怪異の全貌を掴むことができるわけです」
北条先生「“悪魔の穴”に関しては一度は接触することに成功したのですが、情報を持ち帰ることができずにそれっきりでしたが、ようやくです」
錠前 サオリ「大変だ、先生! わけのわからない主張をしてくる環境保護団体【マウンテンピーナッツ】とかいうやつらが【アビドス高等学校】や【キヴォトス防衛軍】の基地に押し掛けてきている!」ガチャ!
小鳥遊 ホシノ「はあ? これから怪獣退治が始まる時にですか!?」
ロボット職員「どうしますか、先生?」
北条先生「これは軍事顧問である僕が行かないと場が収まらないでしょう。顔を出さないわけにはいかないです」
北条先生「ガリバーさん、ここはグレゴリオ様と一緒に作戦の指揮を頼みます」
ロボット職員「わかりました……」
ロボット職員「でも、【マウンテンピーナッツ】と言ったら悪名高いブラックマーケット系環境テロ組織じゃないですか。メトロポリス系環境保護NGO【イエローピーナッツ】とトリニティ系環境保護団体【マウンテンコリー】の過激派が合流してできたという」
ロボット職員「彼女たちの主張はXデーを迎えてから更に支離滅裂で『人間よりも怪獣の命の方が尊い』という無茶苦茶なものです」
ロボット職員「最近は鳴りを潜めていましたが、どうして今になって――――――?」
小鳥遊 ホシノ「先生、『人間よりも怪獣の命の方が尊い』だなんて主張しておきながら、今まで何もしてこなかった連中に私たちの【アビドス】で好き勝手させるつもりはありませんよ?」ジャキ!
北条先生「……たしかにそうする権利が自治区を総括している【アビドス対策委員会】にはあり、勧善懲悪が遂行されるのであれば、これほど楽なことはないです」
北条先生「ですが、ここは我慢ですよ、小鳥遊さん」
小鳥遊 ホシノ「で、でも――――――!」
北条先生「本当の悪が何であるのかを白日の下に晒すとしましょうか」
北条先生「まあ、僕が駆けつけるまでに終わっているとは思いますが、こういった手合が現れるのも予測済みです」
北条先生「手筈通りにお願いしますよ、サーベラス様」
――――――では、ここまで来た皆さんには金一封を差し上げますので、アンケートにご協力ください! はい、解散! 解散!
デモ隊「わあああああああああああああああ!」ドドドド・・・!
デモ隊「え、何これ、本当!?」ワーワー!
デモ隊「ちょうだい! ちょうだい!」ワーワー!
デモ隊「私も! 私も!」ワーワー!
原動 キリエ「な、なにッ!?」
神代キヴォトス人「遠いところからよく来た。あ、ここに受取のサインを書くのだぞ。記入欄で残りがどれくらいかを把握しているのでな」
神代キヴォトス人「そして、このアンケートに正直に思ったことをたくさん書いて送るのだ。そうしたら、入れてあるデジタルギフト券が使えるからな。ドシドシ応募してくれたまえ」
神代キヴォトス人「これは我との取引の契約だ。必ずアンケートを送ってくれたまえよ」
ワイワイ、ガヤガヤ、ワーワー!
原動 キリエ「あ、あなたたち! そんなものを受け取っちゃダメ! 【マウンテンピーナッツ】の崇高な使命はどうしたのッ?!」
神代キヴォトス人「――――――所詮は金であったな、小娘? 御高説垂れた崇高な使命とやらよりも自分たちの生活の方が大事のようであったな?」ハハハ!
原動 キリエ「ふ、ふざけるなああああああああああああああ!」ジャキ!
神代キヴォトス人「――――――」シュッ
原動 キリエ「あ」ドンッ
神代キヴォトス人「おっと、先に手を出した方が負けであるぞ?」バキッ! ――――――奪い取った拳銃をその場で分解!
原動 キリエ「き、汚いぞ! 金の力で何でも解決できると思わないで! 私たちの崇高な使命はこんなものじゃ――――――!」
神代キヴォトス人「その崇高な使命とやらで自然は守れるのか? お腹は膨れるのか? みんなが幸せになれるのか?」
原動 キリエ「だ、黙れ! みんな、騙されているのよ! 自然の産物である怪獣を一方的に虐殺している北条 アキラはキヴォトスを破滅に導く悪魔の化身だ!」
神代キヴォトス人「ほう? “
原動 キリエ「ちがう! それは 全部 地球人:北条 アキラの自作自演なの! 宇宙人なんていないし、侵略ロボットだって北条 アキラが用意したマッチポンプなのよ! みんな、北条 アキラに洗脳されているんだ!」
原動 キリエ「よく考えてみてよ! “連邦生徒会長”が失踪する前の学園都市:キヴォトスは平和だったのに、北条 アキラが来てから何から何まで全部がやつにとって都合が良い展開になっている!」
原動 キリエ「それに、知っているのよ! 北条 アキラは“連邦生徒会長”の実質的な後継者だなんて嘯いているけど『実際には会ったことがない』んだって!」
神代キヴォトス人「では、“シャーレの研究員”である我のことは何と聞いている?」
原動 キリエ「そんなことを訊いて何になるの!? それよりも、バラバラにした私の銃を元に戻せ! 今すぐに弁償してよ、怪獣殺し!」
神代キヴォトス人「ほう? 自治区を総括している【アビドス対策委員会】に許可なくデモ行進をした挙げ句、大量の傭兵バイトや戦車部隊も連れてきておいて、それでタダで済むと思っているのは
原動 キリエ「…………ぎ、『ギジェラ』?」ゾクッ
神代キヴォトス人「今から3000万年前の超古代文明を破滅に追いやった終末装置の1つだ。世界の終わりにありとあらゆる場所に生い茂り、幻覚作用のある麻薬のような黄色い花粉で世界を覆い、これを吸い込んだ人間は快楽の夢に落ちて、その魅力から抜け出せなくなってギジェラの誘惑の虜になったまま終末を迎えてしまうのだ」
原動 キリエ「な、何それ? 何なの、急にファンタジーを聞かせてくるだなんて?」
神代キヴォトス人「――――――たしか、『人間よりも怪獣の命の方が尊い』のだったな?」
原動 キリエ「そ、そうよ!」
神代キヴォトス人「では、怪獣災害は天の恵みとして、もたらされる大破壊や無辜の民の虐殺を享受する覚悟があるのだな?」
神代キヴォトス人「3000万年以上前に光の星雲からこの惑星に降臨した光の眷属たる我はキヴォトス人ではないからには広義の“
原動 キリエ「へ」
原動 キリエ「え、急に、何を――――――」ゾクッ
神代キヴォトス人「では、見せてもらおうか、崇高な使命に殉じる覚悟を」
――――――出でよ、超銀河に厄災をもたらした最強種! 宇宙恐竜:パワードゼットン!
ドッゴーーーーーーーーーーーーン!
キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!
ドタバタ ドタバタ ドタバタ・・・!
ヒュウウウウ・・・
北条先生「サーベラス様」
神代キヴォトス人「おお、北条先生。無粋な輩は追い払ったぞ。もちろん、誰一人傷つけることなく、な」
北条先生「ありがとうございます、サーベラス様。完璧なお働きです」
小鳥遊 ホシノ「ええ? 【マウンテンピーナッツ】とか言う連中、もういなくなったんですか?」
神代キヴォトス人「ああ、金で解決した」
小鳥遊 ホシノ「うへ~、せっかく急いで戻ってきたのに……」
黒見 セリカ「いやいや、最後は空からゼットンを呼び出して手刀を振り下ろす実力行使だったじゃない!?」
神代キヴォトス人「人の命よりも怪獣が大好きでしかたがないのであろう?」
神代キヴォトス人「だから、実物の怪獣をわざわざ喚んでやったのだ。着地しようとして片手を着いただけではないか。その隣に【マウンテンピーナッツ】の代表が居たというだけだ。攻撃の意思は微塵もない」
砂狼 シロコ「おかげで、デモ隊を【アビドス】から追い出すことができた」
十六夜 ノノミ「皆さん、金一封でデジタルギフト券をもらえて明るい表情でお帰りになりましたから、名采配でしたよ」
北条先生「実は、それだけじゃないんです。ああいった手合にも【キヴォトス防衛軍】の活動を正しく理解してもらうためにビラも入れてあるので、デモ隊に参加してデジタルギフト券を受け取った人たちへの宣伝活動にもなったわけですよ」
北条先生「つまり、【マウンテンピーナッツ】の方々はわざわざ反対派の人間をキヴォトス中から大勢集めてきた協力者になるので、これぐらいの報酬は宣伝費として支払っても惜しくないです」
北条先生「とにかく、怪獣退治は同じ大地で生きる一人一人の協力あってのものですから、反対派であってもいいですから、【キヴォトス防衛軍】からの正式発表や緊急速報を受け取れる状態にはなっていて欲しいですね」
奥空 アヤネ「はい。これで過激派も反対派も先生をはじめとした【キヴォトス防衛軍】の皆さんが立ち向かっている“
黒見 セリカ「ホントよね! 今日なんて先生が怪獣退治を直接指揮する日だったのに、その留守を狙って抗議活動に来るだなんて、許せない! しかも、私たちの自治区で勝手に! ゴミもこんなに散らかして!」
神代キヴォトス人「さあ、『人間よりも怪獣の命の方が尊い』と宣って環境保護を標榜していた団体様の落とし物を片付けようではないか」
小鳥遊 ホシノ「はい。そうしましょうか、サーベラス様」
小鳥遊 ホシノ「ホント、プラカードだとか、横断幕だとか、オンボロ戦車だとか、いろんなゴミを撒き散らしておいて、何が環境保護ですか……」
小鳥遊 ホシノ「こんな連中が現れるようになるだなんて、【アビドス】に平和が訪れるのはまだまだ先というわけですね……」
砂狼 シロコ「ホシノ先輩……」
小鳥遊 ホシノ「あ、シロコさん。大丈夫です。私が卒業するまで出来る限りのことはしておきますから」
砂狼 シロコ「でも、ホシノ先輩は【アビドス対策委員会】委員長で、私たち【アビドス高等学校】のリーダーで――――――!」
小鳥遊 ホシノ「何度も言ったじゃないですか。今の私はユメ先輩が卒業してから【アビドス対策委員会】のみんなとの記憶が抜け落ちているって……」
小鳥遊 ホシノ「そんな状態の私だから、今の【アビドス】の現状を正しく認識できていませんし、私に出来ることは本当に銃を手にして戦うことだけ――――――」
小鳥遊 ホシノ「だから、純粋に【アビドス】のために何とかしようと思って集まってくれた【アビドス対策委員会】の可愛い後輩であるみんなに『今後のことは 全部 任せた』ってことになったじゃないですか?」
十六夜 ノノミ「で、でも、ホシノ先輩――――――」
小鳥遊 ホシノ「聞けば、【アビドス対策委員会】委員長としてやっていたことは昼寝と夜回りばかりで、まともな提案なんてほとんどしていないって話でしたし、私には【アビドス】のまだ見ぬ未来を作り上げる力はなかったってことなんです」
小鳥遊 ホシノ「そんな私が【アビドス生徒会】副会長の地位にいつまでもしがみついているのは皆さんにとっては大きな損失でしかないです」
奥空 アヤネ「そ、そんなことは――――――!」
黒見 セリカ「そうですよ、ホシノ先輩! 私たちは そんなこと 気にしてなんかいないから!」
砂狼 シロコ「だから、ホシノ先輩、遅刻してきてもいいから定例会議に顔を出して欲しい」
小鳥遊 ホシノ「いいんですよ、気を遣わなくて。無理に先輩に顔を立てる必要なんてないです」
小鳥遊 ホシノ「どうやら、私はユメ先輩から【アビドス】を託されたところで何も変えることができずにいた役立たずだったわけですから」
十六夜 ノノミ「…………ホシノ先輩」
小鳥遊 ホシノ「さあ、無駄話もお終いにしてゴミ拾いをしましょう」
小鳥遊 ホシノ「先生だって“幻のオアシス”と“悪魔の穴”を今日中にどうにかするつもりでいたわけです。先生の仕事の邪魔をするわけにはいきません。それが【アビドス】のためですから」
奥空 アヤネ「あ、はい……」
黒見 セリカ「ホシノ先輩……」
十六夜 ノノミ「先生、どうすればホシノ先輩に戻ってきてもらえるのでしょうか?」
砂狼 シロコ「サーベラス様、本当にどうすることもできないの?」
神代キヴォトス人「慌てることはない。まだ運命は決したわけではないのだから」
北条先生「考える時間が互いに必要だということです」
砂狼 シロコ「――――――『何を考える時間が必要』なの、先生?」
北条先生「終わりが見えてきたアビドス遠征の後の身の振り方と、これまでの日々で果たせなかったことへの内省ですね」
北条先生「つまり、過去を振り返って、未来に思いを馳せて、現在の自分を許して まだ見ぬ明日へ一歩を踏み出せる答えを導き出す時間が……」
涸れ川を見て自らの内からマイナスエネルギーを解放した【アビドス生徒会】副会長:小鳥遊 ホシノは 生徒会長:梔子 ユメと別れてから【アビドス対策委員会】委員長として活動してきた2年間の記憶が抜け落ちたことで 自分を慕う【アビドス対策委員会】の可愛い後輩たちと距離を置くようになっていた。
今まで“おじさん”の演技をしてきていたことも忘れ、元々の責任感の強い生真面目な性格に戻り、その2年間で自分がやってきていたことを客観的に聞かされたことで、2年間あって【アビドス】復興のために何の力にもなれなかった自分に大いに失望していたからであった。
結局、記憶がなくなろうとも過去の足跡は変えようがなく、何も果たせずにキヴォトスから去ることになったユメ先輩のことを笑うことができない 自分の無能ぶりに憤りを覚えて自己嫌悪に陥るところまでが既定路線であったのだ。
しかし、自分が無能であることまでは許容できていたが故の
それは“おじさん”の仮面を被って昼行灯でやり過ごしてきた2年間の記憶が潜在意識でそう働きかけており、小鳥遊 ホシノの深層心理に巣食うのは一言で言えば『信じることが信じられない』状態であり、その上で自分がはっきり物を言ってしまう性格なのも自覚しているため、自分が後輩たちの輪に入り込んだら未来への希望を摘み取るような否定的な発言ばかりになってしまうと無意識に思い込んでいたのだ。
だからこそ、態度が曖昧で一見すると頼りないけれども鷹揚で懐が深い年長者を演じられる“おじさん”の仮面が少女には必要だったわけであり、内心では【アビドス】復興など実現するはずもない夢物語であると信じていながらも、そんな自分の許に集まってくれた可愛い後輩たちのやる気を削ぐような発言や態度を絶対に表に出さない鉄の意志こそが“おじさん”の悲しき正体であった。
――――――それでも、2年間の記憶を失ったはずの少女は孤独にはならなかった。
なぜなら、失われた2年間よりも前に出会ってユメ先輩と一緒の時間を過ごしてくれた青年がいて、ずっと待ち望んでいた【アビドス】の救い主となってくれた大人が目醒めた時から側に寄り添っていてくれたからだ。
この人たちのことだけは何があっても絶対に忘れてはならないと言う切ない思いが小さな身体に宿り続けていたのだ。
それこそが 奇跡を信じ抜くことができずに 取り返しがつかない過去の過ちから 未来を夢見る心が涸れ果てた少女に残された寄す処であり、【アビドス生徒会】生徒会長:梔子 ユメから“神秘”を受け継いだ者の宿命であった。
けれども、2年間の記憶と共に本当に全てが失われたというのであろうか。正しく生きられなかった人生に価値がないと言われても、瞬間瞬間を懸命に生きてきた人々の歩みにこそ、人々を感動させ、時代や世界をも変える、尊い意味が生まれるのではないか――――――。
――――――だからこそ、遠くの星から愛と勇気を教えに来た男は涙の味も知っていたんだ。
黒舘 ハルナ「あら、そこにいらっしゃるのはホシノさんじゃありませんか」
小鳥遊 ホシノ「あなたは黒舘 ハルナさん……」
小鳥遊 ホシノ「あの、その節は大変お世話になりました……」
黒舘 ハルナ「何のことですか?」
小鳥遊 ホシノ「その、私、涸れ川でヒヨリさんのことをユメ先輩と見間違えてひどいことを……」
黒舘 ハルナ「ああ、あの時のことですか。大丈夫ですよ、ホシノさん。別に気にしてません」
黒舘 ハルナ「怒鳴られるのは【給食部】のフウカさんや【風紀委員会】の皆さんからしょっちゅうですし、ゲヘナ最強の風紀委員長に捕まった時と比べたらヘッチャラですわ」
小鳥遊 ホシノ「そ、そうですか……」
黒舘 ハルナ「ホシノさんはこんなところでどうなさったのですか?」
小鳥遊 ホシノ「………………」
小鳥遊 ホシノ「ここはユメ先輩と初めて会った場所なんです。今はもう誰もいない……」
黒舘 ハルナ「そうでしたか。きっと、素晴らしい先輩だったのですね、その方は」
小鳥遊 ホシノ「いや、そんなことないですよ。自分が弱いことをわかっているくせに、何度も人に騙されては怖い目に遭わされてきて、その度に私が助けに行ってあげていたんですよ……」
小鳥遊 ホシノ「本当に肩書だけのどうしようもない生徒会長で、【アビドス生徒会】の他の役員たちが夜逃げするための囮として何も聞かされずに置いていかれて、バカ正直にひとりだけで【アビドス】を何とかしようと必死で……」
黒舘 ハルナ「でも、よく憶えていらっしゃるのでしょう、先輩のことを。先輩との思い出を」
小鳥遊 ホシノ「――――――ッ!」
黒舘 ハルナ「これも一つの縁です。ここで思い出話に花を咲かせながら、先生が作ってくれたおにぎりを一緒に食べていただけませんか」
小鳥遊 ホシノ「え、先生のおにぎり?」
黒舘 ハルナ「はい。お腹も空いた頃だと思いますし、いろいろたくさんあるんですよ」
小鳥遊 ホシノ「どうして――――――?」
黒舘 ハルナ「これも美食の道を極めるためですわ」
小鳥遊 ホシノ「????」
黒舘 ハルナ「先生に教えられました。美味しいお店や料理人が育つためには美味しい食材が育つように愛情を持って接する必要があるのだと」
小鳥遊 ホシノ「は、はあ……」
黒舘 ハルナ「ですので、こうして 遠くの星である地球の美味しい料理を伝えに来た先生の味を多くの人たちに知ってもらい、感動を共有し合うための啓蒙活動に勤しんでいますの」
――――――いつか先生との別れの時が来る。その時を迎えた後にみんなで先生との思い出を語り合うために。
黒舘 ハルナ「それで、お腹を空かせた子がいないかの見回りを先生にお願いされて、毎回 手作りの携帯食を渡されて、今日はこの辺りを回ってみたところ、ホシノさんがいました」
黒舘 ハルナ「さあ、どうぞ、召し上がれ。きっと、過去最高に素晴らしい美食体験になるはずですよ」
小鳥遊 ホシノ「あ、ありがとうございます。で、では、お一つ――――――」ヒョイ
小鳥遊 ホシノ「あ、海苔が巻かれてないから、これは塩むすびですかね」ハムッ
黒舘 ハルナ「どうですか!?」
小鳥遊 ホシノ「あ」
戦場カメラマン『うぅ…………』
梔子 ユメ『ど、どうしよう、ホシノちゃん! おかゆ、こぼしちゃった!』
小鳥遊 ホシノ『もういいですから、先輩! おかゆは私が作りますから、先輩は布巾を絞ってきてください!』
戦場カメラマン『すまない。世話をかけたな……』
小鳥遊 ホシノ『お粗末様でした』
梔子 ユメ『あ、あの、すみません……。おにぎり、食べませんか……』
梔子 ユメ『いってらっしゃ~い! ホシノちゃん! 姫矢さん!』
小鳥遊 ホシノ『また、おにぎりですか? もう気を遣わなくてもいいんですよ? いつ見ても不格好でまったく上達してないじゃないですか?』
戦場カメラマン『いいんだ。その気持ちが嬉しかったから』
小鳥遊 ホシノ「………………」
小鳥遊 ホシノ「………………」ポタポタ・・・
小鳥遊 ホシノ「………………」ヒッグヒッグ・・・
黒舘 ハルナ「ほ、ホシノさん!?」
小鳥遊 ホシノ「美味しい、美味しいです。具がないシンプルな塩むすびなのに涙が止まらないぐらいに……」グスン・・・
黒舘 ハルナ「そうでしたか。良かったです。今のホシノさんの表情、思わず見惚れるぐらいに綺麗でしたよ」
黒舘 ハルナ「あ、そうでした。先生は『おむすびコロリン♪』『おむすびコロリン♪』と歌いながら おむすびを握っていましたよ」
小鳥遊 ホシノ「ええ? それ、本当ですか?」
黒舘 ハルナ「本当ですよ。それで『縁結びー♪』『縁結びー♪』って食べた人に良縁が結ばれるように愛情を込めながらニコニコの笑顔で作ってましたから」
黒舘 ハルナ「だから、これは“お結び”なんだと、そう思っておにぎりを配るように念押しされたぐらいですから」
小鳥遊 ホシノ「意外と先生って験担ぎをする人なんですね……」
黒舘 ハルナ「そんなに不思議なことでしょうか。どんな調味料にも食材にも勝るものと言えば、料理を作る人の愛情ですよ。その思いを込めやすい名前なんですよ」
黒舘 ハルナ「それこそ、先生は巷では“遠くの星から
小鳥遊 ホシノ「へえ……」
小鳥遊 ホシノ「どうして先生はそこまでのことができるのですか?」
黒舘 ハルナ「ホシノさん」
小鳥遊 ホシノ「だって、先生は“連邦生徒会長”の実質的な後継者でキヴォトスの頂点に立つ存在。廃校寸前の【アビドス】やキヴォトスでもっとも治安が悪い【ゲヘナ】に関わるのはメリットよりもデメリットの方がずっと大きかったはずです」
小鳥遊 ホシノ「なのに、どうしてそこまで【アビドス】や【ゲヘナ】のために親身になれるのか、不思議でしかたがないんです」
小鳥遊 ホシノ「わからないんです。先生が人類同士の戦争がなくなった平和の惑星:地球の出身っていうのが大きいにしても、どうして先生はユメ先輩が思い描いていた理想の――――――」グズッ・・・
黒舘 ハルナ「ホシノさん」
小鳥遊 ホシノ「ユメ先輩こそ先生に会うべきだった。先生の在り方はユメ先輩がずっと夢見ていた理想だったから……」ヒッグ
小鳥遊 ホシノ「なのに、どうしてユメ先輩は先生に会えないんですか? こんなの! こんなのって……!」ポタポタ・・・
黒舘 ハルナ「そうですわね。それは美食の道においても永遠の課題。一期一会というやつですわね」
小鳥遊 ホシノ「――――――『一期一会』?」
黒舘 ハルナ「はい。先生が私たち生徒に尽くすのはそれが仕事である以上に茶道の一期一会に基づいた“おもてなしの心”だと聞いていますわ」
――――――人との出会いを一生に一度のものと思い、相手に対して最善を尽くす。
黒舘 ハルナ「互いに悔いが残らない人生を送るための人生の秘訣。それが“おもてなしの心”なのだと」
黒舘 ハルナ「それは怪獣退治にしても同じ。全ては茶道の一期一会の“おもてなしの心”が根底にあるからこそ、先生は 一事が万事 誰かのために“一所懸命”になることができるのですわ」
黒舘 ハルナ「そして、それは時間の経過や季節の移り変わりを楽しむことにも繋がり、人々の成長を願って見守る寛容さや忍耐力も養われていくのだとか」
黒舘 ハルナ「だから、先生は最初からできないことを求めることは決してなさらない代わりに、今はできなくても望む未来に手を伸ばす子供たちの健やかな成長と夢への挑戦こそを教育者として一番の楽しみにしていると言っておりましたわ」
黒舘 ハルナ「ですから、きっと、先生はホシノさんにはできなかったことや果たせなかったことを悔やみ続けるよりも、今もこうして流れ続ける時間の中での一期一会を大切にして欲しいと思っているんじゃないかと」
小鳥遊 ホシノ「……ハルナさん」
黒舘 ハルナ「さあ、まだまだたくさんありますから、先生に感謝しながら、いっぱい食べて感動を分かち合いましょう」
小鳥遊 ホシノ「はい!」
錠前 サオリ「――――――ようやくデモ隊が捨てていった戦車の撤去が完了したな」
秤 アツコ「おつかれさま、サッちゃん」
槌永 ヒヨリ「おつかれさまです、サオリ姉さん。これ、先生が作ってくれたおにぎりです」
錠前 サオリ「いいのか、ヒヨリ? 食べなくて?」
槌永 ヒヨリ「あ、これは皆さんに配るように用意してもらったものですから、私が食べる分はもう取ってあります」
錠前 サオリ「そうか。では、ありがたくいただくとしよう」
秤 アツコ「うん」
槌永 ヒヨリ「先生の料理は本当に美味しいですから、ただのおにぎりでもご馳走です」
錠前 サオリ「ああ、そうだな。先生が作るものは何でも美味しい」
秤 アツコ「うん、美味しいね」
秤 アツコ「……ん? あれ?」
錠前 サオリ「どうした、アツコ?」
秤 アツコ「この感じ、先生の味じゃないよね? これって姫矢さんが作ったのかな?」
槌永 ヒヨリ「ど、どういうことなんですか?」
秤 アツコ「だって、先生の感じは太陽の光のようにポカポカして、コーイチの場合は身体の芯からジーンと温まる感じがするんだけど、姫矢さんは長閑けき春の陽気みたいな感じ」
槌永 ヒヨリ「そうなんですか?」
錠前 サオリ「私にはそこまでの違いがわからないが……」
秤 アツコ「まあ、美味しいには美味しいんだけど、いつもとちがう感じがして ちょっとびっくりしちゃった」
秤 アツコ「そう言えばサッちゃん。みんなで一杯のカップラーメンを分け合って食べた時があったよね」
錠前 サオリ「ああ。そう言えばそうだったな。あれはヒヨリが見つけてくれたものだったな……」
槌永 ヒヨリ「懐かしいですね。賞味期限が切れてましたけど、今まで【アリウス】で味わったことがない刺激的な味でした……」
秤 アツコ「ねえ、サッちゃん。あの時の味を再現したカップラーメンを作ってみない?」
錠前 サオリ「え」
槌永 ヒヨリ「それ、いいですねぇ……」
ロボット職員「――――――以上が本日の怪獣退治の成果です」
北条先生「なに!? こいつらはツインテールとグドンじゃないですか?! 予想していた怪獣と全然ちがうのが出てきた!?」
宇宙格闘士の帝王「あと、最後に出てきたのが殺し屋怪獣:ネロギラスだな」
北条先生「――――――ね、『ネロギラス』?」
北条先生「いや、知らない。アーストロンのような怪獣の王道である尾長二足歩行怪獣のようだけれど、こいつは 全然 知らない」
戦場カメラマン「そうなのか。先生も知らないのか」
北条先生「えと、こいつらが出てきたのは“枯れた森”と“クジラの谷”の間にある地点の帯水層からですか」
北条先生「地球で発見されたツインテールとグドンはどちらもジュラ紀*1に生息していた恐竜の時代の生き残りである古代怪獣ですけど、エビみたいな外見のツインテールは両手が鞭になっているグドンの捕食対象になっていることで有名です」
宇宙格闘士の帝王「なるほどな。では、ネロギラスはそのグドンをも捕食する食物連鎖の頂点に立つ存在で、こいつは海底を住処にしている水棲怪獣だ」
北条先生「ええ!? ツインテールを捕食するグドンを捕食するネロギラスぅ!?」
ロボット職員「食物連鎖と言うと、最近でも首都:D.U.の沖合に現れたシーゴリアンとゲートスの例がありましたね」
戦場カメラマン「まるで怪獣より強い超獣より強い大怪獣みたいな話だな……」
ロボット職員「つまり、“クジラの谷”と同じように今回の怪獣の出現ポイントは古代では海だった場所になるわけなんですね」
宇宙格闘士の帝王「そうなるだろうな。ネロギラスは通常は5~6匹の群れで活動するが、餌が足りなくなると仲間同士で殺し合い、その死体を食べるほどの凶暴性を持つわけで、その残忍さでもって深海の頂点に君臨する怪獣と言えるだろう」
宇宙格闘士の帝王「あと、飛び道具は消化を助けるための毒液を吐き出すぐらいだが、真に恐ろしいのは 深海という過酷な環境で鍛え上げられた身体能力によって 怪力だけで海辺に来た並み居る怪獣たちを次々と嬲り殺しにして貪り食らう点にある。それを通常では群れで行うわけだ」
戦場カメラマン「まさに“海の悪魔”だな」
宇宙格闘士の帝王「久々に歯応えのある強豪怪獣だったな。他の古代怪獣と同じく仮死状態で帯水層に眠っていた生き残りだったことで、群れで現れることがなかったのは幸いだったな」
ロボット職員「本当に大丈夫ですか? ネロギラスの強烈な一撃を受けてましたけど……?」
宇宙格闘士の帝王「大丈夫だ。そのためのメディカルマシーンだ。いいのをもらって内臓破裂していたが、すでに完治している」
戦場カメラマン「あの“帝王グレイ”にそこまでの深手を負わせるとは、まだまだ油断ならない強豪怪獣が眠っていそうだな……」
北条先生「ですが、これは想定していた“幻のオアシス”コスモリキッドと“悪魔の穴”ライブキングとはちがう怪獣です」
ロボット職員「申し訳ないです。他の怪獣に気を取られて本来の目的を忘れていました……」
北条先生「いえ、他の怪獣が現れてしまったのなら 緊急時の対応としては それが正しいです。これはまだ緊急性が低い案件でしたので、日を改めることにしましょう」
北条先生「まだ生き残りがいると思いますか? 今回の古代怪獣たちがウルトラゾーン由来の怪獣なのか、元々 キヴォトスに棲息していた怪獣なのかを見極めないといけませんよね?」
宇宙格闘士の帝王「地下深くの帯水層に居るのだとしたら、どうしようもないだろうな。オレでもそこまで深く潜った経験はない」
戦場カメラマン「いっそのこと、またゼットン式灌漑を試すのは?」
北条先生「それはアビドス遠征が次の段階に進んだ時に限ります。まだ居るか居ないか程度の話にゼットンを持ち出すぐらいなら、今は未調査領域の調査が最優先です」
北条先生「それに帯水層の詳細な調査をするためのライドメカは開発中ですし、積極的に敵を誘い出して叩く作戦はハザードマップ完成後に万全の準備をしてからです」
戦場カメラマン「それもそうか」
北条先生「……いや、待てよ?」
北条先生「ネロギラスはダークガルネイトバスターで消し炭になったわけですが、グドンとツインテールの遺骸は爆散せずに綺麗な状態で残されているのですよね?」
ロボット職員「はい。すでに四次元都市:フォーサイトに送って解剖に回しています」
北条先生「では、解剖が終わりましたら、肝臓や脂肪の部分を捨てずに取り寄せてください」
ロボット職員「――――――『肝臓や脂肪』? 何をするのですか?」
宇宙格闘士の帝王「……まさか、食べるのか?」
戦場カメラマン「いや、これはそういうことじゃないはずだ」
北条先生「そうです。何をするのかと言えば、こういうことです」
――――――怪獣の食物連鎖を利用して釣りをしましょう。この地を“怪獣釣り堀”とする。
こうして本日の目標であった“幻のオアシス”と“悪魔の穴”の制圧作戦は延期を余儀なくされ、“枯れた森”と“クジラの谷”の中間地点にある 古代怪獣が次々と現れた場所を“怪獣釣り堀”を命名して、他にも古代怪獣が眠っている可能性があるとして厳重に封鎖することとなった。
そして、厳重に封鎖された“怪獣釣り堀”を作戦区域に指定して、消し炭になった殺し屋怪獣:ネロギラスに息の根を止められた地底怪獣:グドンの脂肪や、グドンに息の根を止められた古代怪獣:ツインテールの肉片を釣り餌にし、これらの古代怪獣が地上へ這い出た穴をボーリングして重機を釣り竿に見立てた超巨大な穴釣りを開始したのであった。
この手法は“クジラの谷”の死海の帯水層に沈む超古代文明の遺跡を守護している巨鯨水獣:リヴィジラの水中調査の手法が応用されており、餌となるグドンやツインテールの肉を加工したペレットに四次元発信器を含ませることで帯水層に潜む水棲怪獣の生態の把握に利用されることとなっていた。
封鎖した作戦区域で 何日かに一度は繰り返し実施して 何もなければそれでよしとして安全確認を何度も行い、もし本当に釣り餌に怪獣が喰い付いたら重機で釣り上げることができるかの挑戦となる。
怪獣退治の後始末は基本的にはウルトラマンの光線技で爆散した怪獣の肉片を掻き集めることが大半だが、そうでない場合に完全に近い怪獣標本を得るためにおよそ数万
それで釣り上げることに成功したら できる限り生け捕りして帯水層の水中調査のための光怪獣化を狙い、失敗したら 古代怪獣がまだ一帯に存在していることの証明になるため、現場の封鎖と警戒を強化。以降は餌に含ませた四次元発信器から発する四次元座標を目印にして地下深くの怪獣をも丸裸にする超高性能探知器の開発に利用する作戦を予定していた。
怪獣退治には失敗がつきもの。討伐ばかりが怪獣退治ではないのだ。真正面から立ち向かうことが難しければ、幾重にも張り巡らされた搦め手や先のことを見据えた戦略を志向するのだ。
そして、アビドス砂漠の真っ只中、“怪獣釣り堀”が見える場所に蜃気楼のごとく現れたものもまた 本職が小学校の先生である地球人:北条 アキラがとった一手であった。
――――――いざ、
ワイワイ、ガヤガヤ、ワーワー!
小鳥遊 ホシノ「凄いです! アビドス砂漠にこんなにも人が集まるだなんて……!」
小鳥遊 ホシノ「まるで“アビドス砂祭り”の再現みたいです!」
小鳥遊 ホシノ「それに、お魚もいっぱい!」
戦場カメラマン「……そうだな」
戦場カメラマン「今回は【Ⅱ.
戦場カメラマン「だが、“怪獣釣り堀”と銘打って客寄せまでするのはどうかとは思うがな。まあ、先生がやることだ。間違いはないのだろう」
小鳥遊 ホシノ「私、こんな可愛い水着を買って着ていたんですね……」
小鳥遊 ホシノ「正直に言って、着るのが恥ずかしいんですけど、スクール水着をどこにしまったんでしょうか、私」
北条先生「さあさあ、釣った釣った! 砂漠のど真ん中に広げられた生け簀にはマダイやハマチなどの高級魚が放たれていますよ! 早い者勝ちです! 捕まえたら【Ⅰ.
黒舘 ハルナ「さあ、みなさん! 美食の道を極めるべく、マダイやハマチなどの高級魚は全て【美食研究会】でいただきましょう!」
鰐淵 アカリ「見てください。魚以外にも何かのタグが浮いていますよ」
赤司 ジュンコ「見て見て! ケーキの引換券が釣れたよ! これ、【Ⅰ.
獅子堂 イズミ「ご飯、ご飯、ご飯、ご飯がいっぱい……」ジュルリ・・・
伊草 ハルカ「み、見ましたか、アル様!」
陸八魔 アル「ええ。見たわ。さすがは先生ね。今回の釣り大会も凡人にはついていけない次元にあるわね。私たちも負けてられないわよ、ハルカ(ここで何としてでもたくさん魚を釣って食費を浮かすのよ!)」
浅黄 ムツキ「おお、はりきっているね~、みんな。魚が苦手な子もスイーツの引換券が釣れるとわかったら、途端に目の色を変えちゃってさ」アハッ
鬼方 カヨコ「そうだね、ムツキ。先生は優しい人だよね。こうやって恵まれない子たちにも行き渡るようにしているわけだから」
槌永 ヒヨリ「あ、釣れました! 釣れましたよ、サオリ姉さん!」
錠前 サオリ「おお! やったな、ヒヨリ! こいつは何という魚なんだろうな、姫?」
秤 アツコ「ちょっと待っててね。たしか、今回の釣り大会の公式サイトに一覧があったはずだから」
戒野 ミサキ「リーダー、ランチボックスを持ってきたよ」
砂狼 シロコ「行くよ、ヒフミ、ユカリ。一番の大物を釣って優勝賞金を獲りにいこう」
阿慈谷 ヒフミ「はい。これもペロロ様のためです」
勘解由小路 ユカリ「ふふふっ! ユカリ伝説の始まりですのよ! 百花繚乱のえりーとたる身共、ユカリが参りますわ!」
ワイワイ、ガヤガヤ、ワーワー!
聖園 ミカ「…………ハア」
聖園 ミカ「……いったいいつまで【アビドス】に居なくちゃならないのかな?」
聖園 ミカ「……先生の許可を得て、やっと【トリニティ】に戻ることができたと思ったら、アビドス遠征が再始動しちゃったせいで、すぐにこんな辺鄙な砂漠に逆戻り」
聖園 ミカ「……久しぶりに会えたナギちゃんもセイアちゃんも何だか随分と変わっちゃったみたいだしさ」
ロボット職員「それは申し訳ないです」
聖園 ミカ「まあ、でも、おかげで“
宇宙格闘士の帝王「釣れているか、コーイチ、ミカ」
聖園 ミカ「うっ」
ロボット職員「まあ、それなりにです。釣り大会の優勝を狙っているわけでも、スイーツの引換券を狙っているわけでもないので、本命の“怪獣釣り堀”が見えるポイントで平和の祈りを捧げています」
宇宙格闘士の帝王「そうか。ここは関係者にしか知らされていない穴場だからな、他にはないようなレアなものが釣れるそうだ」
聖園 ミカ「ああ、それ?」
聖園 ミカ「はい、大当たりのダイヤモンド・ルースの引換券」
宇宙格闘士の帝王「要らんな、そんな小粒のダイヤモンドなど」フン!
聖園 ミカ「うん。私も要らない。たった1.00
ロボット職員「たしかに、【トリニティ】のお嬢様方なら、ダイヤモンドを普通に買えるだけの財力がある……」
ロボット職員「でも、これはサーベラス様からの贈り物でして、3000万年分の地下資源で在庫が圧迫しているので、少しでも空きを作るために資源を売却して仕入れているものなんですよ」
聖園 ミカ「つまり、サーベラス様からしてみれば ほとんどタダ同然のものじゃんね」
聖園 ミカ「私、サーベラス様のこと、あんまり好きじゃないかも」
聖園 ミカ「サーベラス様がいなかったら、ずっと“
――――――たしか、聖書の教えとは『魚を与えるのではなく釣り方を教える』のであろう。ぜひとも、その教えを受けた“人間をとる漁師”として いざ実践してもらいたいものよな。
宇宙格闘士の帝王「いかにもやつらしい物言いだな」
宇宙格闘士の帝王「だが、それもまた宇宙の真理ではある。生きるための術、知恵、力を教え込むことは親から子へと命のバトンを渡すためには欠かせないことだ」
聖園 ミカ「……打ち明けたことを言うと、私、サーベラス様よりもグレゴリオ様の方が合う気がしている」
ロボット職員「たしかに!」
聖園 ミカ「ねえ、どうして“
ロボット職員「あ、いや、それは、その……」アセアセ・・・
宇宙格闘士の帝王「まあ、そうイジメてやるな、ミカ。オレもそこまで学がある方じゃないが、拳一つで暗黒宇宙を渡り歩く中で得た経験や発見を経て礼儀を覚えたが、ミカも立場さえなければ奔放に振る舞いたいお年頃であろう」
聖園 ミカ「……異星人に心の内が知られているのってすっごく複雑な気分」
ロボット職員「でも、見た目はこんなにもちがうけれど、僕ともグレゴリオ様とも気持ちが通じているでしょう?」
聖園 ミカ「うん、私たちと何も変わらないよね。それこそ、【ゲヘナ】の角付たちだって。わかってるよ、そんなことはもう」
聖園 ミカ「でも、なのに、それなら どうして私たちは同じ人間同士で壁を作って 一緒に幸せになることができなくなるんだろう……」
ロボット職員「……ミカさん」
聖園 ミカ「ねえ、私たちは生まれたきた時に祝福を受けて生を受けるんだよね?」
聖園 ミカ「だから、この世界は祝福に満ちていて、悲しくなくするために生きてるはずなのに、なんでなんだろうね?」
――――――神様の教えって本当はどこにあるのかな、“
北条先生「よしよし、釣り大会は大盛況。これで学園都市:キヴォトスでの文化格差や体験格差を少しでも減らすことができたかな」
北条先生「あとは、“怪獣釣り堀”でグドンやツインテールの餌に食いつく怪獣がいなければ、縁日の賑わいとして楽しい思い出として子供たちの記憶に刻まると」
北条先生「さて――――――」
朝霧 スオウ「先生。あなたは怪獣退治の専門家とは言うが、さすがは“連邦生徒会長”の実質的な後継者なだけあって、“連邦生徒会長”に通じる屈託ない笑顔の裏で実際はかなり強かですね」
北条先生「……何のことですか?」
朝霧 スオウ「こうやって安全が確認された区域にキヴォトス中の生徒を呼び集めることで新アビドス自治区からの動線が引かれることになりましたが、“枯れた森”ー“怪獣釣り堀”ー“クジラの谷”に繋がる路線を既成事実化しようとしているのではありませんか?」
北条先生「危険地域の監視をするために必要なことですから、動線を引くのは当然のことです。あそこに見える“怪獣釣り堀”で怪獣が釣れた時の対応力にも直結します」
朝霧 スオウ「はっきり言いましょう。それは【アビドス高等学校】への利益誘導になっていませんか」
北条先生「はて、それの何がいけないのかが、キヴォトスに来て日が浅い僕にはよくわかりませんね」
朝霧 スオウ「………………」
北条先生「数十年前に始まった砂漠化の対策に失敗して【アビドス生徒会】が【カイザーコーポレーション】に借金漬けにされて土地の投げ売りをしていたわけですが、そうやって土地の所有権を得た【カイザーコーポレーション】が管理義務を実質的に放棄した以上、元々の領土を【アビドス高等学校】で管理できるようにするのは【連邦生徒会】からの要請でもあるのですから」
朝霧 スオウ「だとしても、【セイント・ネフティス】が 元々 計画していた砂漠横断鉄道に干渉するような形でこうやって路線を引かれるのは【ハイランダー鉄道学園】としては看過できないことです」
北条先生「でしたら、速やかに予定通りのものを完成させて欲しいものですね。管理している路線そのものが自治区となっている【ハイランダー鉄道学園】としましては、【セイント・ネフティス】と提携した砂漠横断鉄道によって自治区が拡大するからこそ、突っかかってきているのはわかりますが」
朝霧 スオウ「だからこそ、【セイント・ネフティス】は砂漠横断鉄道の再始動に向けて 先生がアビドス遠征で世に送り出した
朝霧 スオウ「これは【ハイランダー鉄道学園】の総意でもあり、
北条先生「呆れました! 本気で砂漠横断鉄道なるものが成立すると思っているのですか?」
朝霧 スオウ「………………」
北条先生「それで採算が取れる事業になるのなら、砂漠化の以前から【旧キヴォトス
北条先生「十数年前に砂漠横断鉄道の失敗で故郷を捨てた【セイント・ネフティス】も、今更になって事業提携に乗り出す【ハイランダー鉄道学園】も大した技術革新もなく、今までいったい何をやっていたのですか?」
朝霧 スオウ「……なるほど、それはごもっともな意見です、先生」
朝霧 スオウ「しかし、今の発言は【アビドス高等学校】は救って【ハイランダー鉄道学園】は見殺しにするものだと受け取られかねない発言です」ジロッ
一見すると華麗なる采配と戦果で学園都市:キヴォトスを完璧に導いている地球人:北条 アキラであったが、キヴォトスに生きる人たちを洗脳しているわけではないので、当然ながら様々な理由で反対派の人間からの抗議や批判の声を受け続けていた。
地球人:北条 アキラは怪獣退治には失敗はつきものと考えて万全の対策や事前の想定訓練を構築してから怪獣退治に臨むため、そのスピード感とスケール感が独特であり、人生経験や学の浅い年頃の女子生徒たちが主権者の大半を構成する学園都市:キヴォトスで満点の回答を得ることは極めて稀であった。
今でも“連邦生徒会長”の実質的な後継者と謳われていても、世論調査で100%の支持率に到達したことはないのである。最高記録で97%に迫ったぐらいであり、失踪した“連邦生徒会長”の支持率を軽く超えた程度でしかないが、怪獣退治の専門家にとって本当に欲しい数字は【キヴォトス防衛軍】の情報網に参加した人数の伸びである。
それでも、本職が小学校の先生であることやマイナスエネルギーの専門家であることで移ろいやすい女心と秋の空との付き合い方を心得ており、『学校は社会の縮図』という言葉を『学校は社会そのもの』と履き違えた学園都市:キヴォトスの教育制度や教育環境に辟易しながらも、地球では発達しなかった“
今回の【アビドス高等学校】への空前絶後の手厚い支援についても、生徒数が5人しかいない場所である;誰もが見捨てているどころか、すでに存在すら大多数から忘れ去られている場所で、誰がどう見ても将来性がなかったわけであり、ここまで資金や物資を投下する意味があるのか、今でも根強く疑問の声が上がっているのである。
一方で、このアビドス遠征は様々な要因で長期化しても前人未踏の成果を定例会見で報告し続けているおかげで、それが人々の日常となって【キヴォトス防衛軍】の支持と勢力を大幅に伸ばすことになり、キヴォトス史上最大の軍事力の二つ名に恥じない絶対性と影響力を得るに至った。
そして、これほどまでの急拡大やもたらされる変化に恐れや戸惑いを覚える人間が現れるのはおかしなことではなく、昨日までの日常が地球人:北条 アキラによって塗り替えられていくことに不平不満を唱える人たちが徐々に出てくるわけなのだ。
しかし、地球人:北条 アキラは大胆不敵であった。そういった反対派の生徒たちからの罵詈雑言や見当外れな批判の意見が出てきたところで動じることはない。むしろ、圧倒的多数派の北条 アキラの支持者たちの反対派への蛮行に対して激昂するぐらいである。
地球人:北条 アキラの善悪の天秤は常に正義と称する多数派が悪と断罪された少数派を一方的に甚振る“ウルトラマンごっこ”に対する戒めが根底にあり、平和な時代において そうした強者の驕りから生まれる 人間の過ちをなくすために“ウルトラマンの心”を教育現場で実践しようと志した在り方に揺らぎはない。
むしろ、自分の悪名が生徒たちの団結を促すものになるのならば、『悪名は無名に勝る』として歓迎しているぐらいであり、団結することによって社会性や秩序の大切さを学ぶきっかけになることをいつも願っている。人はひとりでは生けてはいけないからこそ、誰かを頼り、誰かに必要とされて、感謝を捧げて、ありふれた日常に彩りをもたらしていくのだ。
しかし、将来性や人間性において“ウルトラマンの心”に反する行いに対しては地球人:北条 アキラは酷く冷淡であった。それは本当に誰かのためになっているのかをとことん追及する姿勢であるため、悪意をもって事実とは異なることを伝える
簡単に言えば、人を騙す人間が大嫌いであった。自分を守るためだけに誰かを貶める嘘を吐く人間以上に、本当のことを隠して称賛を浴びようとする人間が何よりも嫌いであった。
今回のアビドス遠征で地球人:北条 アキラを一番許せないと思ったのが、実は【カイザーコーポレーション】ではなく、【セイント・ネフティス】と【ハイランダー鉄道学園】であることを理解している人間はあまりにも少ない――――――。
北条先生「まったく、何を言っているのですか。分社化すればいいんじゃないんですかね」
朝霧 スオウ「なに、『分社化』だと?」
北条先生「ご覧の通り、四次元移動列車や
北条先生「既存の鉄道網の価値が減少することで 路線を自治区とする【ハイランダー鉄道学園】が将来的な存続の危機に立たされることが確定した以上、【ハイランダー鉄道学園】は規模を縮小せざるを得ないでしょう」
北条先生「となれば、これまでのように鉄道網に依存した自治区の運営が将来的に破綻することを見据えて、本業である電気鉄道はそのままに、事業の一部を切り離して独立した鉄道会社を各学園の自治区に設立;分社化して、破綻が来た時に機能を移転できるように準備しておくんです」
北条先生「証券用語のクラウンジュエル・ディフェンス戦略*2を基にした
北条先生「でなければ、侵略用の強襲揚陸艇になる軍用列車を開発していたような【ハイランダー鉄道学園】に
北条先生「そもそも、僕はそちらの生徒会【
北条先生「有力な学園ならば交通インフラの整備は当然として自前の私鉄ぐらいあるわけですから、まるで民営化した国鉄みたいな【ハイランダー鉄道学園】は採算性を度外視した路線の開拓が許されないほどに実際の経済基盤は脆弱なはずです」
北条先生「ましてや、それ以上に利潤追求に余念がない大企業【セイント・ネフティス】が今までやろうともしなかったことに手を出して 案の定 失敗した砂漠横断鉄道の再開発を今になって許すだけの判断材料があるわけなんですよね?」
北条先生「僕はね、偽善者は嫌いなんだ。力任せの邪悪な願いを持つ強欲な正直者も嫌いけど、正義の心を振りかざして牙を剥く人面獣心の輩が特に嫌いなんだ」
朝霧 スオウ「………………」
北条先生「おっと、【
北条先生「じゃあ、今回の事業提携は理事会直属の【ハイランダー監理室】の取り決めですよね」
北条先生「
北条先生「隠そうとすればするほど、そこに矛盾点が生まれる」
朝霧 スオウ「……先生が話したことは全て理事会に伝えておきます」
北条先生「そうしてください。それと理事会にこちらをお渡しください」
朝霧 スオウ「これは?」
北条先生「金銀ダイヤモンドを敷き詰めた宝冠です。着払いの送り状もつけてありますので、堪能したら期日までにご返却ください。保険もかけられています」
朝霧 スオウ「何のつもりですか? 理事会に賄賂を贈るつもりですか、先生ともあろう方が?」
北条先生「ただ単に美術品をお見せするだけで、あげるわけじゃないですよ。その場合は盗難届を出しますから」
朝霧 スオウ「????」
北条先生「ああ、きみでは無理ですか。では、【
朝霧 スオウ「…………ッ!」
朝霧 スオウ「……そういうことですか」
北条先生「どういうことですか? 何かあるんですか? この
朝霧 スオウ「……え? 『試し行動』?」
北条先生「はい。それじゃあ、理事会宛の荷物は【ハイランダー監理室】のきみじゃなくて【
朝霧 スオウ「ま、待てッ!」
北条先生「何ですか?」
朝霧 スオウ「あの双子に渡すようにお願いするのは正気の沙汰じゃない! 確実に中身の宝冠を取り出して見せびらかすに決まっている!」
北条先生「では、管理監督官、きみが保護者の責任として理事会に貴重な美術品を送り届けてくれますね?」
朝霧 スオウ「……責任を持ってお渡しすると約束する」
北条先生「それでは、運送契約を交わしましょうか。僕が渡してから美術品を理事会に渡すまでの責任区間を整理しておきますよ」
朝霧 スオウ「………………」
――――――こうして【ハイランダー監理室】管理監督官:朝霧 スオウは【ハイランダー鉄道学園】理事会に対してクラウンジュエル・ディフェンスの暗示である金銀ダイヤモンドを敷き詰めた宝冠を運ぶ契約に迂闊にもサインをしてしまうのであった。
北条先生「さあ、これで運送契約は成立しました。こちらから受け渡しをするまで時間があることですし、是非とも
朝霧 スオウ「北条先生、私はあなたのことを完全に見誤っていました……」
北条先生「そう思うのなら、しっかりと美術品を渡してきてください。そういうお願いです。約束しましたからね」
朝霧 スオウ「あなたに私の何がわかると言うのですか……」
北条先生「わからないからこその
朝霧 スオウ「わかりました……」
北条先生「じゃあ、堅苦しい仕事の話は置いておいて、これから僕と一緒に遊びませんか? 存分にもてなしてあげますよ?」
朝霧 スオウ「お、お願いします、先生……」
北条先生「よし」
――――――わかりやす過ぎる。
北条先生「傷つけられ 打ちのめされ 乾いた心は鏡合わせのように顔を形作る」
北条先生「小鳥遊 ホシノならば、全てにあきらめを抱いた澄んだ眼差し――――――」
北条先生「朝霧 スオウならば、憎しみと怒りを内に秘めた鋭い眼光――――――」
北条先生「両極端なんだ。普通の人間は喜怒哀楽を日常でバランス良く発散することで精神の均衡が保たれるわけで、溜め込むばかりの人間はその歪さがやがては顔に現れるようになる――――――」
北条先生「とは言え、あの宝冠はジュエリーデザイナーとして密かにデビューしたサーベラス様の作品だから、その価値は未知数だったんだ」
北条先生「まあ、決して安くはないことが見た目でわかればいいのであって、宝飾品の価値や相場がわかっていない一般生徒だからこそ、ただのお使いにも緊張感が走ったことだろう」
北条先生「でもね、闇組織を撲滅するために四次元発信器を埋め込んでもあるから、こっちとしては奪われても一向にかまわない代物なんだ」
北条先生「直にマイナスエネルギーが放出されて怪獣が現れた瞬間に居合わせたからこそ、マイナスエネルギーの感度が高まったのがわかる」
北条先生「次は朝霧 スオウ。きみだ」
――――――そのための
-Document GUYS feat.LXXX No.16-
古代怪獣:ツインテール 登場作品『帰ってきたウルトラマン』第5話『二大怪獣 東京を襲撃』第6話『決戦!怪獣対MAT』登場、登場作品『ウルトラマンメビウス』第6話『深海の二人』第9話『復讐の鎧』登場
『帰マン』に初登場した個体がジュラ紀の恐竜時代に棲息していたとされる水陸両用の古代怪獣。
長靴とも、シャチホコとも、エビフライとも例えられる奇妙な姿の怪獣で、常に頭を下にして尾を高く上げている。
尾の先には小さなトゲが並んだ2本の鞭がついており、これが名前の由来と思われる。それどころか、ツインテールの髪型はこの怪獣が語源との説もあるとか。
他にも、怪獣を食らう存在はアストロモンスやボガール系、バードンなど珍しいことでもないが、卵の形や生態、自身を捕食する天敵の存在など、ウルトラシリーズでも 一際 詳しい生態が判明している点も特徴的で、『生まれたてのツインテールは海老の味がする』という設定は殊に有名。
その奇天烈な外見を併せてウルトラ怪獣の中でも比較的知名度が高く、天敵である地底怪獣:グドンとセットで 度々 再登場している。
シャチホコのように地面スレスレについた人間の顔によく似た顔の牙は自身より小柄な生物を捕食するのに適しており、クビを傾けて細長いにも齧り付くことができる。
尻尾が進化した2本の鞭についている棘はカミソリの100倍鋭く、その硬度は鋼鉄の10倍とされ、尻尾の先端が毒針になっている上、地面を掘り進む際に使われる棘には強力な麻酔液が詰まっているという。
また、2本の鞭がついている頭に見える尻の二つの発光器は三半規管で、その下の円形の部分と合わせると叫ぶ顔にも見える。
実際、この三半規管は第二の目とも呼ばれ、チョウチンアンコウのように獲物をおびき寄せる働きもあるらしい。
後年の『メビウス』では水陸両用の怪獣であることが判明し、『帰マン』でのネタっぷりが嘘のような俊敏なツインテールを拝むことができる。
心臓部:ディープハートは深海でも呼吸できるような頑強さを誇り、弾力性のある骨格:カーティレヂ:によって柔軟な動きとあらゆる衝撃から内臓を守る防御力を実現、捕食したものは細長い胃袋でゆっくりと溶かすとされており、深海の環境にこれでもかと適応した体の作りになっている。
天敵が存在する設定により“グドンの餌”という印象が強いが、『帰マン』本編では生まれたばかりながらグドンとも比較的そこそこ戦えていたことや、『メビウス』本編でもメビウスを追い詰めるなどかなりの戦闘力を発揮していたことなどから『実は割と強い怪獣なのでは?』という意見もある。
ビルの工事現場で発見されたアンモン貝が付着しているジュラ紀の生物と思われる卵が、光線銃:マットシュートの熱線で息を吹き返し、それに気付かれぬまま地中に埋め戻されて急成長を遂げ、新宿の地下街を押し潰しながら地表に現れて孵化した。
ウルトラマンジャックとの戦闘でもその奇妙な体型を活かして善戦するが、そうこうしている内に地中から天敵であるグドンが参戦。
天敵の出現を前にツインテールはウルトラマンを盾にし、挟撃される形となったウルトラマンを敗退させるという頭脳戦を展開。
その後はグドンと殴り合うもしばらくすると逃走し、グドンはそれを追っていった。この時は海へ逃げてグドンを振り切ることに成功したようである。実際に水中に入るシーンこそないものの、水陸両用という設定自体はこの頃からあったのかもしれない。
その後、再び出現しMATと交戦、グドンも現れ、ウルトラマンも交えた大乱闘になる。
しかし、MATの作戦で目を潰されたことで誤ってグドンを攻撃、逆上したグドンに噛みつかれ、そのまま地面に叩きつけられて絶命した。
なお、『帰マン』にてグドンに捕食されることはなかったが、後年の『メビウス』第2話ではテッペイ隊員が「グドンは34年前に現れてツインテールを食べた」「水中ならグドンに勝てたかもしれない」と説明しているため、他にもツインテールとグドンが現れて戦った記録が残っているようである。
地底怪獣:グドン 登場作品『帰ってきたウルトラマン』第5話『二大怪獣 東京を襲撃』第6話『決戦!怪獣対MAT』登場、登場作品『ウルトラマンメビウス』第2話『俺達の翼』第9話『復讐の鎧』登場
獲物である古代怪獣:ツインテールと同じジュラ紀に棲息していたとされる地底怪獣。
両腕が鞭となっているのが特徴であり、これで敵を叩いたり締め付けたりすることができ、手が無いなりにかなり器用に立ち回っており、カマキリに近い腕の使い方をしている。
後年の『メビウス』では両手の鞭は振動触腕:エクスカベーターという名称が与えられ、「鞭を高速で振動させることで岩を砕き、粉砕した砂の中を泳いで移動する」という生態が解明されており、目からはX線を放って地底での視野を確保している。
見た目通りに両手の鞭:エクスカベーターが最大の武器であり、鞭の先端には猛毒の針が内蔵されており、これでツインテールを刺して麻痺させることができ、そのままツインテールを捕食できる強力な牙を有している。
また、屈強揃いで有名な地底怪獣らしく2万t級のタンカーを吹き飛ばすほどのキックを放てるらしく、高速振動する鞭で地中を掘り進むための推進力を与えている。
全身はダイヤモンドの20倍の硬さを誇る棘の生えた黄土色の甲殻で覆われており、水素爆弾でも破壊出来ないほどの防御力を持つと言われており、実際にMATのMN爆弾を直撃してもびくともしなかった。
東京にある工事現場から光線銃:マットシュートの熱線で息を吹き返したツインテールの卵を求めて現代に復活する。
出撃したMATのマットアローの攻撃を受け、MATはMN爆弾を使おうとするが、近くに子供が居たために断念し、グドンはこの隙に退却した。
その後、ツインテールが孵化して怪獣の姿を現し、迎撃に現れたウルトラマンジャックと戦っている最中に地底から出現し、結果的に2対1の挟み打ちに遭ったウルトラマンジャックは活動時間切れで消滅。
そのままグドンは好物であるツインテールを捕食するべく戦闘を続行し、最終的に水棲怪獣であるツインテールに逃げ切られ、海の方へ消えていった。
その夜、夢の島に出現し、MATのMN爆弾を受けるが全く通用せず、地底へ逃げた。
翌日、MATと戦っているツインテールを襲いに出現。
再び現れたジャックと対決するが、MATによって両目を潰されたツインテールに邪魔をされ、苛立ったグドンはツインテールを噛み殺して息の根を止めたが、
乱戦で消耗したところでウルトラマンジャックに投げ飛ばされ、最期はスペシウム光線で倒された。
このように『帰ってきたウルトラマン』序盤に登場した怪獣であるが、前回の古代怪獣:キングザウルス三世に引き続き、ウルトラマンが怪獣に倒される展開が続くことになり、
人間ドラマを重視した結果、『番組の主役:帰ってきたウルトラマンが弱い』ことへの不評に繋がり、テコ入れのために万能武器:ウルトラブレスレットが登場する流れを決定づけた怪獣とも言える。
殺し屋怪獣:ネロギラス 登場作品『ファイヤーマン』第9話『深海からの挑戦』登場
まさかの『ファイヤーマン』からの登場となる、ジュラ紀の恐竜時代に棲息していたツインテールを捕食するグドンを捕食する生態系の頂点存在。
作中で別の怪獣を捕食していたグドンを襲って食い殺すという、更なる怪獣食物連鎖を引き起こした怪獣として有名である。
凶暴怪獣:アーストロンに似た大きな角を持つオーソドックスな尾長二足歩行怪獣であり、赤く爛々と輝く目が特徴的な人相の悪い“殺し屋怪獣”の二つ名に相応しい凶悪怪獣である。
海底を住処にしている水陸両棲の怪獣であり、水中ではイルカのように超音波を放ち、餌を探す。
通常は5~6匹の群れで活動するとされ、餌が足りなくなると仲間同士で殺し合い、その死体を食べるほど貪欲な習性を持つ。
深海という過酷な環境で共食いも辞さない凶暴性が最大の武器であり、通常兵器では刃が立たない上にウルトラマンジャックすら撃退した地底怪獣:グドンを嬲り殺しにして捕食した小細工無用の純粋な戦闘力の高さが脅威である。
アーストロンに似た外見ながら火炎放射も光線も吐くことがなく、精々が目潰し程度の粘着質な赤い液体を吐く程度である。
また、深海にも耐えうる皮膚も頑丈であり、SAFの潜水艇:シーマリンの攻撃も一切効かず、単独で防衛線を敷いた防衛軍の総攻撃を跳ね除けるほどである。
『ファイヤーマン』に登場する怪獣はジュラ紀に棲息していた恐竜の生き残りが怪獣化したものが大半だが、1話の内に3体の怪獣を抹殺して回った戦績は鮮烈である。
元々はジュラ紀に生息していたが、海底火山の噴火で現在の深海に蘇り、再び行動を開始。
深海ケーブルを食いちぎりつつ、食欲を満たすためか次々に他の怪獣を殺し続けながら日本に向けて侵攻を始めた。
そして、ファイヤーマンこと岬 大介の育ての親である田所博士が乗った深海研究船:SR号をも撃沈させ、乗組員ごと殺してしまった。
その後、SAFは田所博士が遺した「腹が減れば共食いも辞さない」と言うネロギラスの情報を利用し、録音したネロギラスの鳴き声を巨大スピーカーで流して、地雷が設置されている海岸におびき寄せ、砲塔や大型双胴機:マリンゴンで撃破する作戦を決行。
作戦通りにネロギラスは上陸したが、地雷や砲撃はほとんど効果が無く、赤い液体によってマリンゴンの視界を遮り 海上に不時着させてしまった。
このままでは ネロギラスは本格的に地上へ侵攻を始めてしまう その時、岬はファイヤースティックを掲げてファイヤーマンに変身。育ての親を殺した仇への復讐戦が始まった。
奮戦するファイヤーマン相手に一歩も引かないネロギラスは赤い液体を噴射してファイヤーマンから視界を奪った後、凄まじい怪力で圧倒し一時は倒してしまう。
だが、恩師である田所博士が脳裏に浮かび、何とか立ち上がったファイヤーマンは、彼が伝えたネロギラスの弱点である尻尾を額からの光線で切断し、必殺技:ファイヤースパークを放った。
様々な怪獣をバラバラに惨殺し、田所博士の命をも奪ったネロギラスは、まさに因果応報の如く、バラバラに粉砕されたのであった。
このようにウルトラシリーズ出身の怪獣ではないが、ツインテールを捕食するグドンを食べたことからウルトラシリーズの再編集ビデオ作品で取り上げられたことがある。
2010年代にも『ウルトラマンギンガS』Blu-ray BOXの特典にて、名前は挙がっていないもののグドンの天敵としてネロギラスの存在が示唆されている。
巻きが入ってナレ死を遂げた3体の古代怪獣であったが、シナリオの進行上では極めて重要な立ち位置にあり、
アビドス遠征の未調査領域の調査が後半にまで入ったことで【アビドス高等学校】を取り巻く環境が大人たちの思惑や都合で再び揺れ動く中、
“枯れた森”と“クジラの谷”の中間地点にある“怪獣釣り堀”と名付けられた出現ポイントで起きた怪獣の食物連鎖は様々な意味で衝撃を与えることとなった。
迎撃に向かったのは“シャーレの職員”ロボット職員:マウンテンガリバーと“シャーレの指導員”グレゴール星人:グレゴリオであったが、
地球の記録【アーカイブドキュメント】には存在しない食物連鎖の頂点存在:ネロギラスに“帝王グレイ”が深手を負わされるほどの激戦となり、
本来の討伐対象であった“幻のオアシス”と“悪魔の穴”の捜索は日を改める事態に繋がったのである。
その後、【アビドス高等学校】が実効支配する領域の確保のために、怪獣の監視を名目に“怪獣釣り堀”という名の封鎖区域が誕生し、これが砂漠横断鉄道を再開しようとしていた【セイント・ネフティス】と事業提携していた【ハイランダー鉄道学園】と利害の衝突を生み出すことになるのであった。
なお、ダークガルネイトバスターで消し炭になったネロギラスに喰い殺されたグドンとグドンに喰い殺されたツインテールの遺骸は解剖に回された後に“怪獣釣り堀”の帯水層に怪獣がこれ以上潜んでいないかを調査するための釣り餌に利用されている。