Blue Archive -Document GUYS feat.LXXX-   作:LN58

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EP16 幻じゃない あの日の翼 -Ⅳ.地帝大王母 調伏作戦-

 

 

――――――夢を見ていました。それも、不思議な夢をずっと見ていました。

 

 

それはサーベラス様に砂漠化の原因解明のために“クジラの谷”の死海の帯水層に沈む遺跡に連れて行くことを言われたからなのかもしれません。

 

数十年前に【アビドス高等学校】を襲った砂漠化の原因が不毛の大地:アビドス砂漠の地下深くに秘められた3000万年以上前の超古代文明の遺跡にあると言われ、実際にそこで得られた成果の一つが惑星守護神:ギガデロスでした。

 

その時の記憶も失ってしまっていたので、以前の私自身が超古代文明の遺跡に対してどんな思いを抱いていたのかを思い出すことができず、

 

先日の“枯れた森”と“クジラの谷”の中間地点にある“怪獣釣り堀”にて現代に蘇った“アビドス砂祭り”――――――、移動遊園地(funfair):リトルプラネットの楽しい時間と思い出に私は浸っていて、

 

すでに北条先生率いる【キヴォトス防衛軍】によるアビドス遠征の未調査領域の調査も半分以上は終わっていたこともあって、2年前の絶望的な状況から打って変わって遠足に行くような気分で寝床に就いていたように思います。

 

 

――――――ユメ先輩に見せてあげたかったです。ユメ先輩が言っていたことや信じていたことは本当だったってことを。

 

 

その夢の光景はどこか現実離れしていた不思議な場所で、確実に【アビドス】ではないとわかる 夕闇の鬱蒼とした森の中を当てもなく歩いていると、やがて石造りの奇妙な遺跡へと辿り着きました。

 

見たこともないような化け物の顔がついている柱など不気味さが漂っていたのですが、私は何かに導かれるように遺跡へと入り込んで、更に森の奥へと進んでいました。

 

そして、開けた場所に出ると、そこから見える光景には巨大なピラミッドがいくつも並んでいて、その中で特に大きいピラミッドの上には桑の葉を3つに分けたような巨大な塔が建てられているように見えました。桑の葉は絹づくりの養蚕やからだにいい健康食品として記憶にあったので、そう思いました。

 

私はその一番大きなピラミッドを目指して歩き続け、煌々と燃える灯りで照らされた内部を迷うことなく進んでいき、先程の桑の葉を3つに分けたような塔のミニチュアに見える石碑のようなものを見つけ、これは何だろうと触ってみたのです。

 

すると、眩い光が放たれて、白い闇の中で私は声を聞きました。それはとても温かく包み込む声でとても懐かしくて――――――。

 

 

えへへっ。3年生になったホシノちゃんはどんな風に成長しているだろうね。

 

この手紙は未来のホシノちゃんに送る手紙だよ。

 

私は3年生になったホシノちゃんを見られないけど、きっと、立派な先輩になっているんだろうなぁ。

 

 

―――

――――――

―――――――――

――――――――――――

 

 

――――――ホシノ!

 

 

――――――ホシノ!

 

 

――――――ホシノ!

 

 

神代キヴォトス人「ホシノ!」

 

小鳥遊 ホシノ「ハッ」

 

神代キヴォトス人「目覚めたか。着いたぞ」

 

小鳥遊 ホシノ「え?」

 

 

ロボット職員「全員整列! 横に並んで! 番号!」

 

 

宮藤 セルマ「1」

 

山高 カムロ「2」

 

秤 アツコ「3」

 

錠前 サオリ「4」

 

剣先 ツルギ「5」

 

聖園 ミカ「6」

 

御稜 ナグサ「7」

 

空崎 ヒナ「8」

 

砂狼 シロコ「9」

 

小鳥遊 ホシノ「10」

 

 

ロボット職員「ああ!? やっぱり、先生がいない!? ふざけるなよ!? どういう判定になっているんだ、これぇ!?」

 

神代キヴォトス人「ほう、今回は我が支配する光のピラミッドで試せなかった生徒たちを優先的に連れてきたが、これで【キヴォトス三大学園(BIG3)】の最高戦力はみな入ってこれたことになるか。頼もしいな」

 

神代キヴォトス人「では、この10人で遺跡の主に挨拶と行こう。先触れは出しているから安心せよ」

 

神代キヴォトス人「ここまで来れなかった者は地上の“クジラの谷”で手筈通りに待機しているはずだ」

 

神代キヴォトス人「しかし、聖園 ミカか。桐藤 ナギサよりも素質があったと言うべきか、長らく母校を離れていたことで世俗の垢を落とすことができたか」

 

聖園 ミカ「ねえ、“教父(せんせい)”……」

 

ロボット職員「大丈夫です、ミカさん。サーベラス様が大丈夫だって言っているから……」

 

聖園 ミカ「で、でも……」

 

ロボット職員「わかりました」

 

ロボット職員「すみませんが、ツルギさん。ミカさんと手を繋ぎますので――――――」

 

剣先 ツルギ「はい。しっかりと護衛いたします、“教父(せんせい)”」

 

聖園 ミカ「“教父(せんせい)”……」ギュッ

 

神代キヴォトス人「ふむ。どうだ、セルマよ。また手を繋いでやろうか」

 

宮藤 セルマ「や、やめろ! 文字通りに手を借りないとこの場所には入ってこれないからって……!」

 

山高 カムロ「宮藤のやつ、照れちゃって! 大好きなサーベラス様に手を握ってもらえたことが恥ずかしいんだ!」

 

宮藤 セルマ「だ、黙れ、カムロ!」

 

空崎 ヒナ「大丈夫、ホシノ?」

 

小鳥遊 ホシノ「あ、はい。大丈夫です、ヒナさん。シロコさんもいますし、一安心です」

 

砂狼 シロコ「ノノミたちとはぐれることになったのには焦ったけど、先生がみんなを集めて外で待ってくれていると信じて先に進もう」

 

御稜 ナグサ「ここは本当に“クジラの谷”の地下深くなのでしょうか。信じられないような光景が地下に広がっていますね」

 

錠前 サオリ「ああ。地下深くだと言うのに立派な建造物があって、しっかりと周りが見える明るさに、空気も地上と同じらしいな。環境の変化で身体に異状が起きるかもしれないと身構えていたが、不思議な力が働いているようだ」

 

秤 アツコ「みんな、もう少しで着くよ」

 

ロボット職員「サーベラス様、この死海に沈む遺跡の主とはいったい――――――?」

 

神代キヴォトス人「我もそこまで言葉を交わしたわけではないが、今回は間違いなく当たりだ。砂漠化の原因解明の大きな力になってくれる存在だ」

 

小鳥遊 ホシノ「本当ですか!?」

 

神代キヴォトス人「ああ。だが、それだけに砂漠化という自然現象をどうにかできるかもしれないほどの強大な力を持った存在でもある。対応を間違えて機嫌を損ねるようなことはないようにな」

 

砂狼 シロコ「うん。気をつけよう、みんな」

 

空崎 ヒナ「それはサーベラス様に対してもよ、みんな。忘れているかもしれないけど、サーベラス様もその気になればヒノム火山を噴火させることができるのだから」

 

秤 アツコ「着いた」

 

錠前 サオリ「ここは――――――」

 

 

――――――死海の地下深くの遺跡を突き進んだ先にあったのは巨大な地底湖であった。そこは 貴人が湯浴みのために浸かる泉のような 妄りに侵すべきではない静謐さを湛えていた。

 

 

山高 カムロ「ここが終点? 通路に対してあまりにも巨大な空間だ! 山一つが入るぐらいじゃないか、これ!?」

 

宮藤 セルマ「この高さと広さ! まさか、遺跡の主というのは――――――!?」

 

聖園 ミカ「見て、あれ! 見上げるほどの高さの天井から何か光が差し込んで――――――!」

 

剣先 ツルギ「……ひ、光の中で大きな球のようなものが降りてきてます?」

 

ロボット職員「……相当なデカさだぞ、あれ。直径100m以上はあるぞ」

 

 

神代キヴォトス人「我こそがゲヘナの豊穣の大地を司る者にしてヒノム火山の地獄の釜の門番! サーベラスである!」

 

神代キヴォトス人「我、3000万年の眠りから覚醒(めざ)め、今 再び世を覆わんとする闇の勢力との決戦に挑む者なり!」

 

神代キヴォトス人「死海に沈む遺跡の主よ! 光の勢力の我が同胞よ! 我の呼びかけに応えよ!」

 

 

御稜 ナグサ「……球が泉の上で止まりました」

 

砂狼 シロコ「もしかして、あの球の中に人が……?」

 

小鳥遊 ホシノ「……どうなんでしょうか?」

 

空崎 ヒナ「見て! 球が形を変えて――――――!」

 

ロボット職員「あれが――――――!」

 

 

地帝大王母「よくぞ、ここまで辿り着きましたね、キヴォトスの子らよ」 ――――――鹿の角と天女の羽衣の竜人が姿を見せた。

 

 

聖園 ミカ「き、綺麗……」

 

錠前 サオリ「――――――ヒト族? サーベラス様とはちがう? 角が生えているからゲヘナ系か?」

 

空崎 ヒト「ううん。基本的にゲヘナ系の角はヤギの角のように丸まったものになるけど、シカの角のような縦に長いのは見たことがないわ」

 

ロボット職員「あなたはサーベラス様の同胞となる光の勢力の方なのでしょうか?」

 

地帝大王母「はい。その通りです。名を“地帝大王母”イーリスと言います」

 

ロボット職員「――――――“地帝大王母”イーリス」

 

地帝大王母「ここに“地獄の釜の門番”サーベラスに導かれて来たのならば、光の勢力がこの惑星を去った後もこの地に残り続けている光の眷属には大地の造成を司る役割と能力が与えられていることは存じ上げていることでしょう」

 

ロボット職員「はい。サーベラス様からはゲヘナの豊穣の大地を司っている上で、土地ごとに与えられた文化を育てる役割が持たされていることは聞いています」

 

ロボット職員「では、イーリス様の役割は?」

 

砂狼 シロコ「待って。たしか、私たちの【アビドス】は厳密には豊穣の大地:アビドス居住区と不毛の大地:アビドス砂漠の2つで構成されているから、あなたがどちらに属する存在なのかをまずはっきりさせて」

 

地帝大王母「お答えしましょう。私はあなたたちキヴォトスの子らが不毛の大地:アビドス砂漠と認識している場所を受け持っています」

 

地帝大王母「その役割とは、この地上に高度な文明を生み出す源となる帯水層を生み出し、地上に噴出させて恵みの雨を降らせることで肥沃な大地を生み出すことです。そこから生命が生まれ、育まれ、栄えていくことになります」

 

聖園 ミカ「へえ? じゃあ、最初に帯水層を造って文明が発達したら、もうずっとやることがないって感じ?」

 

小鳥遊 ホシノ「でしたら、砂漠化を止めるために、また肥沃な大地を生み出してはもらえないでしょうか?」

 

砂狼 シロコ「お願いします」

 

山高 カムロ「へえ、よかった。これで【アビドス】の砂漠化は止まるかも」

 

宮藤 セルマ「……果たして、話はそう単純なものなのか?」

 

砂狼 シロコ「え」

 

神代キヴォトス人「わかっているではないか、セルマよ」

 

神代キヴォトス人「先生ならば、イーリスの役割の意味が正しく理解できたはずだがな……」

 

 

神代キヴォトス人「どうも、お前たちは自然というものを随分と人間にとって都合の良いものだと認識しているようだな?」

 

 

小鳥遊 ホシノ「ど、どういうことですか!?」

 

秤 アツコ「もしかして、その前提にあるのは死と生?」

 

小鳥遊 ホシノ「――――――『死と生』?」

 

小鳥遊 ホシノ「え? どうして、そこで()()()が関係してくるんですか?」

 

神代キヴォトス人「ホシノよ、間違えるな! ()()()ではない! 『死と生』だ、正しくは!」

 

小鳥遊 ホシノ「……ええ?」

 

聖園 ミカ「……同じじゃないの?」

 

 

砂狼 シロコ「ん。もしかして、バックキャスティング思考に基づいて大地の造成が行われている?」

 

 

神代キヴォトス人「おお、その通りであるぞ、シロコよ」

 

小鳥遊 ホシノ「えと、それってどういう意味になるんですか、シロコさん?」

 

砂狼 シロコ「ホシノ先輩、バックキャスティング思考というのは何か目標を立てる時に最初に終わりを想定してから過程を充実させていくやり方のことで、」

 

砂狼 シロコ「つまり、この場合は――――――」

 

 

空崎 ヒナ「――――――死を意識することで生の実感が籠もる」

 

 

聖園 ミカ「え、何、急に? それ、どういう意味?」

 

空崎 ヒナ「先生が言っていたの。失われることでありふれたものが“かけがえのないもの”として急に価値を得るのならば、決して失われることのない“永遠であるもの”には等しく価値がないのだと」

 

空崎 ヒナ「たとえば、私たちが当たり前のように息を吸って吐くことができるのは空気があるおかげだけれど、それに対して普段ありがたみを覚えることがないように、今度は逆に“当たり前のもの”になると価値を失ってしまう――――――」

 

空崎 ヒナ「だから、学園都市:キヴォトスが銃社会となって犯罪天国となっているのは『銃で撃たれても死なない』のが当たり前だから、人生で一番大切なものである命を取られることがない安心感がキヴォトスの犯罪や闘争を激化させているのだと」

 

空崎 ヒナ「楽園と呼ばれる場所に必要なのは規律と秩序だけれども、それを維持するためには緊張感と安心感のバランスが不可欠で、緊張感を欠いた安心感は堕落を生み、安心感のない緊張感は人を狂騒に追い込むのだと」

 

聖園 ミカ「へえ? じゃあ、それで?」

 

 

空崎 ヒナ「もしかして、新しい文明が栄える肥沃な大地を生み出すために、旧い文明が栄えた世界を滅ぼして一新することが前提になっているのではないかしら」

 

 

ロボット職員「なっ」

 

空崎 ヒナ「それこそ、サーベラス様がヒノム火山の噴火を司るように、イーリス様は帯水層の地下水を噴出させて雨を降らせることができるから……」

 

聖園 ミカ「ええ? 雨が降るだけで文明って滅びるものなの?」

 

剣先 ツルギ「あの、ミカ様。私たちが今いるのは死海の帯水層ということになっています……」

 

剣先 ツルギ「もし死海の帯水層の水が雨となって大地に降り注いだら、とてつもない塩分濃度の塩害がもたらされることになりますよね……」

 

剣先 ツルギ「そう、【トリニティ】に現れた硫酸怪獣:ホーが起こした硫酸ミストの被害を塩害に置き換えたら、その深刻さを理解できると思います……」

 

聖園 ミカ「そ、それって……」

 

宮藤 セルマ「そうなったら世界は間違いなく終わりだな。海水に微量(0.1%)しか含まれていない塩化カルシウムで満たされた死海の水が雨になって降り注いだら、それに耐えられる動植物なんていないわけだからな」

 

山高 カムロ「ああ、淡水域の生物も海水域の生物も死に絶えるし、木も草も枯れて地上の生物も全滅だ。酸性雨や硫酸ミストの比じゃない被害だ」

 

ロボット職員「え、えええええええええええええええええ!?」

 

ロボット職員「まさか、そのためのリヴィジラ!? 文明をリセットするための手段が塩化カルシウムの雨による塩害!?」 

 

 

地帝大王母「不思議です。生き物は生まれたら死ぬのは当たり前のことじゃありませんか。それは生き物が寄り集まった生活の場となる社会やその先にある文明もまたそうではありませんか」

 

 

御稜 ナグサ「そう言われると納得しかありませんね……」

 

砂狼 シロコ「そ、そんなのって……」

 

聖園 ミカ「ちょっと待ってよ?! それって、まさか、聖書にあった『悪徳にまみれた街から逃げる際に『決して振り返るな』という忠告を無視したら塩の柱にされた』って話――――――?」ガタガタ・・・

 

ロボット職員「!!?!」ゾクッ

 

宮藤 セルマ「そうだな、噴出するとなると相当な圧力がかかっているわけだから、火傷するような熱を帯びているはず。それで聖書に書かれているような塩の柱ができるかもしれないな」

 

聖園 ミカ「ええ!? そんなの、絶対に嫌だよ!?」

 

聖園 ミカ「え、じゃあ、将来的にいつかそうするつもりなの、イーリス様としては?」

 

 

地帝大王母「地上に存在するのが“光”と共にある良い文明ならば、そうすることは決してありません」ニコッ

 

 

聖園 ミカ「!?!!」ゾクッ

 

剣先 ツルギ「ひええ!?」ビクッ

 

ロボット職員「……こ、これじゃあ、まるっきり死の宣告じゃないか!?」

 

御稜 ナグサ「……これは はっきり言われるよりも想像力が働く 恐ろしい回答ですね」

 

空崎 ヒナ「まって、みんな! それなら、ヒノム火山を噴火させられるサーベラス様のことはどうなるの?」

 

錠前 サオリ「たしかに、そうだな? 死海の帯水層が噴出して降り注ぐ塩の雨との兼ね合いはどうなっているのだ?」

 

秤 アツコ「サーベラス様?」

 

神代キヴォトス人「そうだな、我の場合は我の管轄であるゲヘナの豊穣の大地での悪事を我の裁量で裁いているが、」

 

神代キヴォトス人「文明をリセットする場合は悪しき文明を裁く号令が届いてからヒノム火山を噴火させることになっているから、それはイーリスも同じことだとは思う」

 

神代キヴォトス人「そこはどうなのだ、イーリスよ?」

 

 

地帝大王母「同じです。裁きを下す号令の下、死海を噴出させて塩の雨を降らせ、アビドス砂漠から大洪水を起こして地上の都市全てを洗い流します。それ故に“(イーリス)”の名を戴いているのです」

 

 

聖園 ミカ「だ、だだだ、『大洪水』……!?」ガタガタ・・・

 

剣先 ツルギ「あわわわ……」ガタガタ・・・

 

ロボット職員「――――――『大洪水』、――――――『(イーリス)』、――――――『方舟(キヴォトス)』」ゴクリ・・・

 

錠前 サオリ「ど、どういうことだ? さっき、『砂漠から大洪水』と言ったか? 洪水と言うのは海から来るのではないのか? 私は目の前で洪水をウルトラマン80に止めてもらったことがあるが?」

 

秤 アツコ「ああ、懐かしい記憶だねぇ、サッちゃん」

 

ロボット職員「鉄砲水だ! 確認されているだけでもアビドス砂漠の半分の面積はあるとされている超巨大な帯水層の水が一斉に地上に噴出したら――――――!?」

 

宮藤 セルマ「保水力がない砂漠では地面に水が染み込むことなく冠水するわけだからな」

 

山高 カムロ「それだけでも世界は終わりだ! 砂漠から大洪水なんて誰も予想ができない!」

 

山高 カムロ「そうか、そのための死海の帯水層と巨大な帯水層なんだ! いつでも文明を滅ぼすためのプランAとプランBってことか!」

 

ロボット職員「………………!」

 

聖園 ミカ「い、いやぁ……」

 

 

なんと、恐ろしい存在であろうか。ゲヘナ自治区/ヒノム火山の秘境【アビス】に鎮まっていた“地獄の釜の門番”神代キヴォトス人:サーベラスに導かれて、アビドス砂漠の死海に沈む遺跡の最奥部である地底湖で姿を見せた“地帝大王母”イーリスは純粋な人類の味方などではなかった。

 

いや、あくまでも光の眷属として与えられた使命に忠実なだけであり、それが人間の一生などでは務まらないような悠久の時を刻むものであるからこそ、地上への無関心や不干渉を貫く立場にあるだけなのだ。

 

その証拠に、門前払いなどではなく、同じ光の眷属:サーベラスを介しての対話が一応は成り立っているわけであり、対話を開始して渡された情報量が大き過ぎて両者の間にある認識の違いをその場で擦り合わせることが難航しているだけである。

 

それも、光の眷属である“シャーレの研究員”神代キヴォトス人:サーベラスのように価値観の違いは多少はあっても現人類に対して友好的な態度をとるものだと無意識に決めつけていたばかりに全員が呆気に取られたのは言うまでもない。

 

それでも、文明が滅びることをなんとも思っていないような態度が生徒たちの期待を大いに裏切ったように感じられたわけであり、その上で1つの地域のみならず文明全体の興廃を握っている桁違いの存在ゆえに、完全に圧倒されながらも決して一筋縄ではいかない対話に臨むしかなかったのだ。

 

そう、かつてはキヴォトス最大を誇っていたが 今となっては見る影もない【アビドス高等学校】の近隣に存在しているのが【トリニティ総合学園】【ゲヘナ学園】【ワイルドハント芸術学院】【ヴァルキューレ警察学校】などのキヴォトスで有数の有力校であるため、*1

 

頭脳明晰な宮藤 セルマと山高 カムロがその場で検証した通り、アビドス砂漠に存在する死海の帯水層が噴出して塩化カルシウムの塩の雨が周辺地域に降り注ぐだけで、キヴォトスで一二を争うマンモス校である【トリニティ総合学園】【ゲヘナ学園】の河川や土壌が深刻な塩害を受けて、それがキヴォトス全体で致命的な食糧危機を招くことになるのだ。そうなれば水や食料を求めての略奪や戦争が始まる。

 

そして、文明崩壊の総仕上げとして、アビドス砂漠の半分以上の面積はあると推定される帯水層の地下水を噴出させることで超広大なアビドス砂漠からの大洪水が起きるわけであり、真っ先に被害を受けるのが【トリニティ総合学園】【ゲヘナ学園】【ワイルドハント芸術学院】【ヴァルキューレ警察学校】と言った有力校になるので、これだけで地上に存在する学園都市:キヴォトスを消滅させる破壊力があることがわかることであろう。

 

だからこそ、ロボット職員:マウンテンガリバーは以前から【アビドス】のことをエジプトに似ているなどと軽はずみに思っていたことを後悔した。

 

地球のエジプト文明は外来河川オアシスであるナイル川の高頻度の氾濫によってもたらされる豊かな土壌によって支えられていたわけであり、それと同じように超巨大な帯水層から噴出した大洪水によって旧い文明ごと地上の全てを洗い流すことで可能性に満ちた新しい文明が誕生するという残酷な歴史の繰り返し(メカニズム)を理解してしまったからだ。

 

ただ、今すぐに現在の文明を滅ぼす気はないことだけは確かであり、逆にそれだけ気が長いともなれば、こちらの意見を通すには山を動かしたり海を割ったりするほどの途方もない奇跡を起こすことに等しく感じられてしまう。

 

それだけに取り付く島もないように感じられて誰もが意識が遠退くような感じがしていたのだが、そこでやはり頼りになるのが同じ神代キヴォトス人:サーベラスであったのだ。未来を予測するよりも困難な失われた過去を取り戻すことができる“シャーレの研究員”の存在はこの場においては何よりもありがたい精神的支柱であった。

 

 

神代キヴォトス人「なるほどな。我はヒノム火山を司っているのが、イーリスは帯水層を司っているというわけか」

 

神代キヴォトス人「しかし、我らが求めているのはアビドス砂漠で暴走した秘密保管庫の機能を止めることである」

 

神代キヴォトス人「それについては何か知らぬか? あるいは、他の同胞の居場所を教えてくれるだけでもかまわぬ」

 

 

地帝大王母「存じております。が、なぜ滅びの運命(さだめ)へと進んだ老い先短い文明のために手を貸すのですか、サーベラス?」

 

 

神代キヴォトス人「む」

 

ロボット職員「――――――『老い先短い文明』だと?!」

 

錠前 サオリ「ど、どういうことだ、これは?」

 

聖園 ミカ「ねえ、これってどういうこと? 味方じゃないの、イーリス様って?」

 

地帝大王母「不思議なことを言いますね」

 

地帝大王母「そう言うあなたたちは()()()()なのですか?」

 

聖園 ミカ「え」

 

地帝大王母「()()()()ではないのなら、私のことを味方だと思って協力を期待するのはおかしなことです」

 

錠前 サオリ「たしかに」

 

小鳥遊 ホシノ「……それじゃあ、助けてくれない?」

 

神代キヴォトス人「いや、これは役割のちがいからくる見解の相違であるな」

 

秤 アツコ「どういうこと?」

 

神代キヴォトス人「――――――イーリスが管轄しているのは不毛の大地:アビドス砂漠だ」

 

神代キヴォトス人「となれば、古来より人との繋がりが希薄である上に、文明の始まりと終わりを司る存在として文明の興亡を幾度となく目にしてきた存在ということになる」

 

神代キヴォトス人「そうなれば、文明もまた死と生を繰り返すものという認識である以上、またいつものように末期の文明が滅びるだけであるし、そこから新しい文明が生まれるのをまた見守る段階に移り変わっただけと考えているのだろう」

 

神代キヴォトス人「――――――それ故の“地帝大王母”なのだ」

 

地帝大王母「サーベラスはちがうのですか?」

 

神代キヴォトス人「我はちがう。今のところ、号令が下って文明を滅ぼしたことはないし、文明の監視は下級眷属に任せておる」

 

地帝大王母「ああ、わかりました。サーベラス、あなたは中級眷属だから、犬の顔をしているのですね」

 

聖園 ミカ「え? 今の、どういう意味?」

 

神代キヴォトス人「ミカよ、我ら光の眷属は奉仕種族として階級が下がるに連れてヒトの姿から掛け離れた下等生物の姿になっていくわけで、我は中級眷属ゆえにヒトとケモノの間の獣人の姿をとるのだ」

 

秤 アツコ「つまり、ヒトの姿をしている光の眷属はサーベラス様以上の眷属ということになるんだ」

 

神代キヴォトス人「やはり、1つの地域の造成のみならず、文明の始まりと終わりを司るともなれば、上級眷属であったか。それ故に文明の始まりと終わりを見届けられるほどの活動期間となっているか」

 

神代キヴォトス人「しかし、今更 階級で態度を改めるつもりはないぞ、イーリスよ。我こそは“地獄の釜の門番”としてこの惑星の原生生物たちの死と生に寄り添う者であるからには」

 

地帝大王母「そうですか。別にかまいませんよ。それを咎める者は他にいないのですから、珍しい御客人との歓談の時として楽しませてもらっています」

 

ロボット職員「……こっちは生きるか死ぬかなのに暇潰しのつもりか!?」

 

神代キヴォトス人「落ち着くのだ、コーイチ」

 

ロボット職員「…………くっ」

 

秤 アツコ「……コーイチ」

 

神代キヴォトス人「では、言うがな。我が眠りに就いてから3000万年で我らが光の超古代文明は跡形も無く滅び去り、現代に甦る同胞はもう残り僅かしかいないはずだ」

 

神代キヴォトス人「そこに闇の勢力の襲来を感知したがために、我は再び覚醒(めざ)めることになったが、ここにいるキヴォトスの子らの手を借りねば覚醒(めざ)めることができぬほどに経年劣化が著しかったぞ」

 

神代キヴォトス人「いつまでもここに引き籠もってはいられんのだぞ。攻めてくるぞ、やつらが」

 

 

地帝大王母「ならば、あなたたちが闇の勢力を撃退すればいいではありませんか。私には関係ないことです」

 

 

錠前 サオリ「なんだと!?」

 

ロボット職員「――――――『関係ない』?!」

 

地帝大王母「私の使命は文明の始まりと終わりを司ることであり、光と闇の最終戦争に参加することではありません」

 

聖園 ミカ「いや、だから、『そうも言ってられない状況が来ている』って話じゃんね!?」

 

地帝大王母「お静かに願います。同じ光の眷属であっても、上級眷属と中級眷属とでは天と地ほどの差があるのです。それは能力もさることながら、与えられた使命の重さもそうです」

 

地帝大王母「いいのですか? 私に万が一のことがあって帯水層が暴走しても? 次の文明は二度と生まれませんよ?」

 

ロボット職員「くっ」

 

剣先 ツルギ「さ、サーベラス様、これはさすがに無理なのでは……?」

 

御稜 ナグサ「いいえ、目的は砂漠化を止めるために必要な情報を得ることであって、イーリス様の助力を得ることではありません」

 

砂狼 シロコ「なら、砂漠化を止めることができる場所がどこなのかだけでも教えて!」

 

ロボット職員「お願いします、イーリス様! どうか、この通り! キヴォトスで生きる子供たちに未来をッ!」

 

 

地帝大王母「お伝えしてもよろしいですが、()()()()()()があそこには蟠っていますよ?」

 

 

小鳥遊 ホシノ「?」

 

地帝大王母「あなたたちが必死にがんばるのは一向にかまいません。命を輝かせることは素晴らしいことであるし、あなたたちが地上を去った後も現在の文明が存続するかの責任など持たないのでしょうから、それは星の瞬きのごときものとして 私は見守りましょう」

 

小鳥遊 ホシノ「………………!」

 

砂狼 シロコ「――――――ッ!」

 

宮藤 セルマ「……私たちの一生は星の瞬きのように一瞬のものでしかないから無駄だとでも!?」

 

山高 カムロ「……落ち着けよ、宮藤」

 

地帝大王母「ですが、あそこに蟠っているものは危険です。あなたたちの手に負えるようなものではありません」

 

 

地帝大王母「ですから、今、私の意志で辿り着けないようにしました」 ――――――アビドス砂漠の正体である忘却の砂漠の力!

 

 

小鳥遊 ホシノ「え、なんで? どうして!?」

 

地帝大王母「まるで私のことを血も涙もない鬼だと思っていませんか?」

 

地帝大王母「私は悠久の時の中でわざわざ会いに来てくれた現在の文明を生きるキヴォトスの子らが死にに行くのを引き止めようとしているのですよ」

 

小鳥遊 ホシノ「でも、このままだと砂漠化が――――――!?」

 

地帝大王母「それの何が問題なのですか? 少なくとも、あなたたちが生きている間はそこまで悪化しないでしょうし、住みやすい場所に移住すればいいだけの話です。砂漠化以外にもこれから寒冷化も訪れることですしね」

 

ロボット職員「な、なんて言い種だ!?」

 

神代キヴォトス人「やはり、眷属というのは階級ごとに役割をわけることで効率的な運用がされてきたわけで、階級が下がるごとに原生生物に密着した生活能力が与えられているが、上級眷属ともなると物の見方が違いすぎて話が噛み合わんな」

 

神代キヴォトス人「だが、これは良い報せであるな」

 

秤 アツコ「どういう意味?」

 

錠前 サオリ「そうか! 相手は条件を出してきたんだ! ならば――――――!」

 

神代キヴォトス人「そうだ」

 

 

砂狼 シロコ「ん! だったら、イーリス様、あなたに私たちの力を見せて情報を引き出す!」ジャキ!

 

 

ロボット職員「シロコ!?」

 

地帝大王母「いいでしょう。お相手いたします。楽しい時間にしましょう」

 

宮藤 セルマ「なに?! こちらの要求を聞き入れただと!?」

 

地帝大王母「ただし、7対7にしますので、残りの方は特等席で私と一緒に観戦しましょう」スッ

 

山高 カムロ「――――――『7対7』?」

 

地帝大王母「さあ!」フワァ・・・ ――――――特等席送り!

 

山高 カムロ「うわああああああああああ!?」フワァ・・・ ――――――特等席送り!

 

宮藤 セルマ「なあああああああああああああ!?」フワァ・・・ ――――――特等席送り!

 

秤 アツコ「きゃああああ?!」フワァ・・・ ――――――特等席送り!

 

ロボット職員「あ、アツコぉおおお!? サーベラス様あああああああああああ!?」フワァ・・・ ――――――特等席送り!

 

神代キヴォトス人「さあ、戦いの準備をせよ!」フワァ・・・ ――――――特等席送り!

 

 

――――――挑め、神話に! 己が手で未来を掴み取れ、キヴォトスの子らよ!

 

 

――――――

 

錠前 サオリ「姫ええ! コーイチ!」

 

剣先 ツルギ「サーベラス様のお達しだ! いーひひひひひひ! 戦いだぁ!」

 

聖園 ミカ「ええ!? 本当に戦うの!? けど、やるしかないのなら、やるしかないじゃん!」

 

御稜 ナグサ「――――――“地帝大王母”イーリス。相手は神に等しい存在ですか」

 

空崎 ヒナ「だとしても、先生のアビドス遠征を成功させるために私に出来ることをするだけ!」

 

砂狼 シロコ「行くよ、ホシノ先輩! 私たちに今できることを!」

 

小鳥遊 ホシノ「わかりました、シロコさん! この戦い、絶対に負けられないです!」

 

 

地帝大王母1(おとぼけ)「あれれ~? 全員が起きているだなんて珍しいね~?」ポケー

 

地帝大王母2(おこりんぼ)「まったくだ! 気持ち良く寝ていたところを起こしたのは誰だ!?」プクー!

 

地帝大王母3(くしゃみ)「はわわわ……」・・・ブェックシュ!

 

地帝大王母4(てれすけ)「ひやっ! 人に見られているなんて恥ずかしい~!」カアア!

 

地帝大王母5(ごきげん)「わあ、珍しい! こんなにたくさん人が来たのっていつぶりかな?」ニコニコ

 

地帝大王母6(せんせい)「どうやら、イーリス様がこの方たちのお相手をするようにとお達しのようです」メガネクイッ

 

地帝大王母7(ねぼすけ)「どうでもいいから寝かせてよ~? どうせミジンコが相手なんでしょう?」フワーァ・・・

 

――――――

 

宮藤 セルマ「……分身した!?」

 

山高 カムロ「けど、見た感じ、分身にもいろいろと差異があるみたいだ」

 

ロボット職員「そうか、これは【戦術対抗戦】ということか!」

 

地帝大王母(本体)「さあ、楽しませてもらえるでしょうか? 今を生きる地上の子ら:キヴォトスの子らにできるでしょうか?」

 

神代キヴォトス人「さて、どうであろうな。だが、我の目に狂いがなければ、輝きを取り戻せると信じているがな」

 

地帝大王母(本体)「そうですか。これがあなたが見出だした()()()()()()()()()()()()()というわけですか、サーベラス」

 

 

――――――こうして選ばれた生徒たちが神話に挑む7対7の【戦術対抗戦】が開幕となった!

 

 

秤 アツコ「サッちゃん、みんな……」

 

地帝大王母(本体)「あなた、名前は?」

 

秤 アツコ「……秤 アツコ」

 

地帝大王母(本体)「じゃあ、おいで、アツコ」

 

秤 アツコ「え?」

 

地帝大王母(本体)「本当に久しいですね、私の前に“ユザレの末裔”が来るのは。何百年ぶりでしょうか」

 

地帝大王母(本体)「そう、あなたが【トリニティ】の神秘を受け継ぐ者ですね」

 

地帝大王母(本体)「よくぞ、ここまで辿り着きました、アツコ」ギュッ

 

秤 アツコ「あ……」 ――――――地帝大王母(本体)に優しく抱きしめられて温もりを感じた。

 

ロボット職員「どういうことですか?」

 

地帝大王母(本体)「今から3000万年前よりもっと昔の神代に築かれた光の超古代文明――――――、私はその第一陣として地上全土を楽園にするための礎となる始発点となるものを築く;そのために現在の不毛の大地:アビドス砂漠となる海辺に降り立ちました」

 

地帝大王母(本体)「つまり、私たちが築き上げた光の超古代文明の末裔である現人類にとって、この不毛の大地:アビドス砂漠こそが発祥の地であり、ここには私たちの故郷である光の星雲と交信できる天の通い路があったわけなのです」

 

地帝大王母(本体)「そのために光の因子を受け継ぐ地上の子らは不毛の大地であるが故に侵されることのない聖地にみなで遥々と集まって天の祈りを捧げに来たものです。それは 幾星霜 何世代にも渡って語り継いできた大切な伝統でした」

 

地帝大王母(本体)「しかし、何百年か前にその秘儀が失われ、伝統が形骸化したことによって、現在の文明は破滅の一途を辿ることになったのです」

 

ロボット職員「え……」

 

 

地帝大王母(本体)「その結果として、光の星雲からのエネルギーを地上に降ろして全土に供給する働きを持っていた“神池”が涸れることになったのです。涸れたのは最近のことだったはずですよ」

 

 

秤 アツコ「――――――『神池』」

 

ロボット職員「まさか、『神池』と言うのは“アビドス砂祭り”の開催地だった“大オアシス”のことですか?!」

 

神代キヴォトス人「なるほどな。だから、我が光のピラミッドで経年劣化で故障を引き起こすことにもなっていたわけか。ようやく合点がいった。我が覚醒(めざ)められなくなっていたのも、それが大元の原因か」

 

神代キヴォトス人「たしかに、天の真名井である“神池”が機能しなくなるのであれば、我ら光の勢力が築き上げた光の超古代文明の系譜は尽く死に絶える他ないな。光の星雲からのエネルギー供給によって栄えてきたのであれば、それが途絶えてしまえば衰退するのは自明の理よ」

 

神代キヴォトス人「そうか。この地底湖は“神池”の予備であったか。だから、地上の“神池”が涸れてもイーリスは息災であったわけか」

 

地帝大王母(本体)「その通りです、サーベラス。私は“地帝大王母”として地上の繁栄と衰退を見届けるのが役割となりますから、こうした事態も何度も繰り返されているというわけです」

 

ロボット職員「……え、それが本当なら、どうしろって言うんだ? 何だよ、それ?」

 

秤 アツコ「……コーイチ」

 

山高 カムロ「なあ、僕たち、元からサーベラス様の手を繋がないと来れなかった戦力外ということで特等席送りだったけど、それで衝撃の事実を隣で聞かされているんだけど、宮藤ぃ!?」

 

宮藤 セルマ「ああ、そうだな、カムロ……」スッ ――――――作戦開始時からICレコーダーはしっかり機能している。

 

 

地帝大王母(本体)「しかし、現在の文明はおもしろいですね。テクスチャが変われば、“ベヒーモス”も“レヴィアタン”もこんな可愛らしい女学生の姿になるわけですか」フフッ

 

 

ロボット職員「は」

 

山高 カムロ「え」

 

宮藤 セルマ「なに?」

 

神代キヴォトス人「……うん? 知り合いだったのか、カムロとセルマが?」

 

地帝大王母(本体)「ええ、2人とは古くからの友人でしたが、死に変わり生まれ変わりを繰り返して、また会えて嬉しいですよ。相変わらず仲がよろしいようで」

 

山高 カムロ「ええ?」

 

宮藤 セルマ「私に化け物の知り合いなんていないぞ」

 

地帝大王母(本体)「ええ。記憶にないことを憶えているはずはないでしょう。ですが、魂は憶えていますから」

 

秤 アツコ「――――――『魂』?」

 

地帝大王母(本体)「そうですよ、アツコ。私には魂が見えていて、それを記憶できるほどの寿命がありますので、こうやって悠久の時を経た再会を喜ぶことができるのです」

 

秤 アツコ「それはサーベラス様もできるよね」

 

地帝大王母(本体)「しかし、魂が見えたところで大したことではないのです」

 

秤 アツコ「そうなの?」

 

地帝大王母(本体)「もっとも重要なのは『命』が見えることですからね」

 

秤 アツコ「――――――『命』?」

 

地帝大王母(本体)「そう、命です。命とは『意乗血(いのち)』であり、世代を重ねて繋いできた血脈に乗せられた意志が 今世 生まれてきたことの意味;天命を与えているのです。あるいは、『意能血(いのち)』とも」

 

地帝大王母(本体)「ですので、こうして“ユザレの末裔”であるアツコに出会えたことも、今世はカムロとセルマになった旧い友人と再会できたのも、天命なのでしょう」

 

 

地帝大王母(本体)「そして、“ユザレの末裔”以上に地上から姿を消して久しい――――――、ああ、懐かしき“光を継ぐ者”よ! あなたにずっと会いたかったのですよ、コーイチ!」ニッコリ

 

 

秤 アツコ「コーイチに?」

 

ロボット職員「……僕?」

 

地帝大王母(本体)「コーイチ、あなたが異世界である学園都市:キヴォトスに召喚された因果はそれこそ3000万年以上前の超古代文明にあったのですよ。そこであなたは私と何度も会っています」

 

ロボット職員「え」

 

ロボット職員「あの、サーベラス様、今のは――――――」

 

神代キヴォトス人「事実であろうな。我がお主の魂と会ったのは今世で初めてではあるが、イーリスにとってはそうではないのであろう」

 

秤 アツコ「じゃあ、コーイチは 元々 3000万年以上前の超古代文明の出身だった?」

 

ロボット職員「!!!?」

 

神代キヴォトス人「いや、正確にはコーイチの魂を戴く前世が超古代のキヴォトス出身というわけで、コーイチ自身は地球の生まれだ。そこは勘違いしてはならんぞ、アツコよ」

 

神代キヴォトス人「つまり、生物学的には血縁関係の認められない完全な別人ではあるが、歴史という舞台劇の俳優歴においては前世では3000万年以上前のキヴォトス人を演じ、今世ではコーイチという地球人を演じているのがコーイチの魂だ」

 

秤 アツコ「なるほど」

 

ロボット職員「………………」

 

神代キヴォトス人「そうか、コーイチよ。だから、お主は“光”であることに 人一倍 こだわりを持った地球人であったわけなのだな」

 

神代キヴォトス人「光栄である。お主の誉れは今度からは我も語り継ごうぞ」

 

ロボット職員「え」

 

地帝大王母(本体)「思い出しましたか?」

 

地帝大王母(本体)「いいえ、無理に思い出す必要はありません」

 

地帝大王母(本体)「ただ、これだけは覚えておいてください、コーイチ」

 

 

地帝大王母(本体)「コーイチ、あなたの前世こそが“光を継ぐ者”の先駆けであり、何度も何度も生まれ変わり死に変わりを繰り返して、光の巨人が地上を去った後も闇と戦い続けた 不撓不屈の光の戦士だったのですよ」

 

 

ロボット職員「へ」

 

秤 アツコ「コーイチ、すごい!」

 

ロボット職員「は」

 

 

――――――その瞬間、今まで抑え込まれてきたものが一気に込み上げてきた。それは決して歓喜などではない。理解できずとも納得できてしまった感情の渦であったのだ。

 

 

ロボット職員「――――――シロコ、ホシノ、みんなぁ

 

ロボット職員「……ふざけるな! ふざけるなあああああああ!」

 

秤 アツコ「こ、コーイチ?」ビクッ

 

地帝大王母(本体)「コーイチ」

 

ロボット職員「……だったら、どうして助けてくれなかったんですか、『前回(あの時)』!? ずっと昔からキヴォトスのことを見続けていたですよね、サーベラス様とはちがって!」

 

ロボット職員「……僕が闇の勢力との戦いに無様に負けて満足ですか!? キヴォトスが滅びるのを見て楽しめましたか!?」

 

ロボット職員「……あなたはずっと見ているだけで、何もしてくれなかったじゃないか!」

 

 

地帝大王母(本体)「それでは現在の老いた文明はすぐに滅びますよ、“暁のホルス”小鳥遊 ホシノの手によって」

 

 

ロボット職員「え」

 

秤 アツコ「――――――ホシノが?」

 

地帝大王母(本体)「わかりませんか? アツコが悟りの霊地【トリニティ】の神秘の継承者であるように、人類発祥の地【アビドス】の神秘の継承者である小鳥遊 ホシノの存在が文明崩壊を担っているのですよ?」

 

ロボット職員「はあ?」

 

地帝大王母(本体)「【アビドス】の神秘が失われるというのは()()()()()()です。神秘の継承が行われないまま 全てに絶望して滅びることを望めば、地上の王権を与えられていた【アビドス】から地上の文明は全て崩壊することになっているのです」

 

 

地帝大王母(本体)「だから、“連邦生徒会長”は“シャーレの先生”として最初に向かうべき場所が【アビドス高等学校】になるように因果を紡いでいたのです」

 

 

神代キヴォトス人「ほう?」

 

ロボット職員「――――――文明の崩壊は【アビドス】から始まることが決まっていた?」

 

地帝大王母(本体)「その通りです。それが運命の分岐点なのです。キヴォトスを救うためには、まずは【アビドス】から始めなければならないのです」

 

地帝大王母(本体)「でなければ、全てに絶望した小鳥遊 ホシノが【連邦生徒会】を襲撃して世界に対する復讐を完遂する未来もあるのですから」

 

ロボット職員「!!?!」

 

神代キヴォトス人「――――――成功する確率はどれくらいあると思う、セルマよ?」

 

宮藤 セルマ「そうだな。もしも北条先生が来なかった場合のシナリオを考えたことがあるが、その場合は“連邦生徒会長”失踪時の混乱の収拾や【キヴォトス防衛軍】に代表される各学園との信頼関係の構築と結束の強化が丸々ないわけだから、」

 

宮藤 セルマ「“連邦生徒会長”という絶対的指導者を失った【連邦生徒会】の無能ぶりは言うまでもないことだし、エデン条約締結に向けて【ゲヘナ学園】【トリニティ総合学園】の間の緊張感も尋常じゃなく高まっていたはずだ」

 

山高 カムロ「それだけじゃない。“連邦生徒会長”不在を理由に懐刀である【SRT特殊学園】を閉校にしてSRT生からの猛反発を受けていたわけだから、【連邦生徒会】の重要戦力を馬鹿な理由で自分から削ぎ落とすどころか、自分から新たな敵に仕立て上げているんだぞ」

 

山高 カムロ「そうなったら、“アビドスの英雄”小鳥遊 ホシノが仕掛けた【連邦生徒会】襲撃に便乗して様々な理由から加勢する生徒たちの中にSRT生が大勢いることが考えられるし、信頼関係のない【キヴォトス三大学園(BIG3)】が救援を出すことなく静観している可能性が高い」

 

宮藤 セルマ「だろうな。【連邦生徒会】に反感を持っている真っ当なテロリストだけじゃなく、日頃の鬱憤晴らしのために面白半分で騒ぎに便乗するような不良生徒の数も相当なものになっているはずだ」

 

山高 カムロ「結果、“アビドスの英雄”小鳥遊 ホシノによる【連邦生徒会】襲撃が成功して、【メトロポリス(首都:D.U.)】失陥からの群雄割拠の時代に突入して、学園都市:キヴォトスが崩壊する可能性は大いにあるという結論が最新の戦力データから得られる……」

 

宮藤 セルマ「そもそも、【アビドス対策委員会】の支援要請に“シャーレの先生”が応じなければ、【連邦生徒会】が事態を把握していない間に【アビドス高等学校】は【カイザーコーポレーション】に借金漬けの挙げ句に乗っ取られていたわけだからな」

 

 

秤 アツコ「じゃあ、もしかして“シャーレの先生”がキヴォトスに現れる時期まで【アビドス対策委員会】の再三の支援要請がずっと見向きされてこなかった真の原因って“連邦生徒会長”にあるの?」

 

 

ロボット職員「え」

 

神代キヴォトス人「その可能性は大いにあるな」

 

神代キヴォトス人「と言うより、その願いを受け取っていたのではないか、イーリスよ」

 

地帝大王母(本体)「正確には私に宛てたものではありませんが、たしかに“連邦生徒会長”が一人で“神池(大オアシス)”に来て願掛けをしていったのは覚えています」

 

ロボット職員「なんだって!?」

 

 

地帝大王母(本体)「ですので、忘却の砂の作用を教えて“人々の意識から何かを忘れさせる秘儀”を教えています」

 

 

ロボット職員「ちょっと待って。待ってくれ。内容を整理する時間をくれ」

 

秤 アツコ「……コーイチ」

 

神代キヴォトス人「無理もないことだ。コーイチがキヴォトスに来ることになった世界の裏側を見ることになったのだ。これまで見えていたものが完全に裏返った気分のはずだ」

 

神代キヴォトス人「だが、そういうことなら“連邦生徒会長”が敷いたレールの上を走ることにもう異論はないはずだ」

 

神代キヴォトス人「――――――【アビドス】を救うことが【学園都市:キヴォトス】を救う第一歩なのだからな」

 

地帝大王母(本体)「故に、地上の王権を受け継ぐ神秘の継承者として、小鳥遊 ホシノはその宿命に立ち向かい、乗り越えていかねばならないのです」

 

地帝大王母(本体)「これはその予行演習です。いえ、補習と言うべきでしょう」

 

 

地帝大王母(本体)「その小鳥遊 ホシノが自らの記憶を封じて己の宿命に目を逸らし続けているのですから、真実に向き合う強さがなければ、文明崩壊の銃爪を引くことになるのです」

 

 

地帝大王母(本体)「そんな罪を背負わせたくはないでしょう、あんなにも可愛らしい姿の女の子にね?」

 

ロボット職員「う、くぅ……」

 

ロボット職員「ほ、ホシノ……」

 

ロボット職員「じゃあ、『前回(あの時)』、()()()()()()()()退()()()()()()()()()()()()()()()()()()――――――?」

 

 

コーイチ先生「――――――キヴォトスに長く居過ぎたようだな。情報が古いぞ。ホシノの退学届に“顧問”である私がまだサインをしていない」

 

コーイチ先生「だから、ホシノはまだ【対策委員会】の所属だし、まだ【アビドス】の副生徒会長だし、今でも私の生徒だ。手違いを正してもらうぞ」

 

黒服「なるほど。あなたが“先生”である以上、担当生徒の去就にはあなたのサインが必要――――――、そういうことですか」

 

黒服「なるほど なるほど。学校の生徒、そして、“先生”――――――。なかなかに厄介な概念ですね」

 

 

ロボット職員「いや、おかしいだろう!? なんでそんなことに……?!」

 

地帝大王母(本体)「それが今の世界を形作っているテクスチャだからですよ」

 

ロボット職員「――――――『テクスチャ』?」

 

神代キヴォトス人「なるほどな。それが学園都市:キヴォトスの真相の一端というわけか」

 

神代キヴォトス人「コーイチよ、我々が想像していた以上にキヴォトスでは()()()()()()()()()()()()の意味はとてつもなく大きかったようだ」

 

神代キヴォトス人「少なくとも、【アビドス】の失陥はそのまま【学園都市:キヴォトス】の滅亡に繋がるわけだから、人類発祥の地【アビドス】を再び砂漠に埋もれさせるわけにはいかなくなったな」

 

神代キヴォトス人「しかし、我々は最高に運に恵まれているぞ。流れはこちらに来ている。だから、ここまで来れたのだ」

 

ロボット職員「――――――北条先生!」

 

ロボット職員「じゃあ、それを知ってか知らずか、“アビドス砂祭り”の再現をして【アビドス】を盛り上げてきた北条先生がしてきたことは本当にキヴォトスのためになっていたんだ……!」

 

 

――――――北条先生は本当に僕が求めていたキヴォトスを災厄から救う存在だったんだ!

 

 

明かされた衝撃の事実の数々に 学園都市:キヴォトスの見方が大いに変わることになって 自分の今までが大いに揺らぐことになったロボット職員:マウンテンガリバーは息苦しさに大いに打ちのめされていた。

 

自分の前世(正体)が地球にとっては異世界である学園都市:キヴォトスの3000万年以上前の超古代文明で“光を継ぐ者”だったからこそ、

 

生まれ変わり死に変わりの果てに時空を超えて地球人に生まれ変わった自分自身はあれほどまでに純粋に“光”を追い求め続ける性質であったわけなのだ。

 

それこそが魂に刻まれた渇望であり、懐かしく温かい“光”に包まれていた感覚をずっと憶えていたのだから。

 

つまり、ネオフロンティアスペースで生を受けた とある地球人(コーイチ先生)の時空を超えた日々とは 輪廻転生の果てに学園都市:キヴォトスで遥か昔に失われてしまった“光”を地球で得て生まれ故郷に帰ってきた 光輝(高貴)なる魂の人生航路であったわけなのである。

 

それが『前回』“シャーレの先生”として地球人:コーイチ先生が学園都市:キヴォトスに()ってきた因果の真相であり、そのために全ての準備をしていたのが失踪した“連邦生徒会長”だったのだ。

 

 

――――――全ては破滅の未来が確定した学園都市:キヴォトスを救うための3000万年以上前に結ばれた奇跡(軌跡)であった。

 

 

そう、学園都市:キヴォトスを救うためには その手始めとして人類発祥の地【アビドス高等学校】の存続は必須条件であり、それは【アビドス】の神秘の継承者である小鳥遊 ホシノの動向次第であったのである。

 

2年前からその武名をアビドス砂漠に轟かせていた“アビドスの英雄”小鳥遊 ホシノが全てに絶望して自暴自棄になった時点で学園都市:キヴォトスの滅亡は確定になるわけであり、

 

そうなるギリギリのタイミングで“シャーレの先生”として事態に介入しなければ、エデン条約締結以前に【連邦生徒会】襲撃によって【キヴォトス連邦】が完全消滅することになるのだろう。王権を司る小鳥遊 ホシノの号令に運は必ず味方するのだから。

 

その後は群雄割拠の時代を迎えて、おそらくは【カイザーコーポレーション】に代表される学園外勢力の介入を許して地図上から【キヴォトス】の名が消える――――――。

 

それが『前回』“シャーレの先生”であったロボット職員:マウンテンガリバーの予測であり、小鳥遊 ホシノという一人の生徒への理解であった。

 

しかし、それでも『前回』は【アビドス】から始まってしまった破滅の未来を覆すことができずに無惨にも敗北し、タイムマシンとなる機械の身体に意識を押し込められて16年前の過去に送り込まれて、破滅の未来を変えるために孤独に年月を重ねてきたのが“シャーレの職員”ロボット職員:マウンテンガリバーの正体なのである。

 

だからこそ、今更になって そういった裏事情(真相)の数々を聞かされてしまうと、極めて近く 限りなく遠い世界となってしまった 取り返しがつかない過去に対して 憤懣やる方ない想いが爆発するわけであり、

 

その情報に辿り着くためには本来のXデーで超古代怪獣:ゴルザとメルバの襲撃から“地獄の釜の門番”神代キヴォトス人:サーベラスが眠る光のピラミッドを死守して“ユザレの末裔”秤 アツコを連れていかないといけないわけなので、『前回(1周目)』では 到底 無理な達成項目なのである。

 

だからといって、そうとは知らずに“(ティガ)”になった時点で実はもう詰みになってしまっていた世界;生徒たちと一所懸命に走り抜けた『前回(1周目)』の頑張りを否定することは許されないため、矛先を向けるべき相手のいない湧き上がった感情が血涙のように心の中でポタポタと頬を伝い落ちる他なかったのだ。

 

しかし、『前回(1周目)』を踏まえて始められた『今回(2周目)』はキヴォトスを救う“シャーレの先生”が完全上位互換としか言いようがない“GUYSの先生”北条 アキラに置き換わっていたことで、それ相応の準備期間はあったものの、本来のXデーの前には【キヴォトス防衛軍】が結成され、数々の対怪獣兵器が投入され、超古代怪獣を蹴散らす戦果を叩き出していたのだ。

 

そして、『前回(1周目)』では“シャーレの先生”と“ウルトラマン”の二重生活でボロボロになっていた【アビドス】の一件も余裕を持った布陣のアビドス遠征となり、復活した神代キヴォトス人:サーベラスの財力もあって 真正面から解決に導いて あっさりと終わらせてしまったのだ。

 

それによって、()までに余ってしまった時間は怪獣無法地帯と化したアビドス砂漠の調査に当てられ、こうして『前回(1周目)』では辿り着けなかった裏事情(真相)を知ることができたのだ――――――。

 

 

――――――未来を築く希望の光を繋ぐ奇跡(もの)はたしかにここにあったのだ。

 

 

 

 

 

宇宙格闘士の帝王(巨大化)「ぐおああああああああ!」カチカチカチ・・・ ――――――石化光線で石化中!

 

宇宙格闘士の帝王(巨大化)「今だ! やれええええええ!!」

 

 

バララララ・・・!

 

 

月雪 ミヤコ「ああ、グレゴリオ様の身体がッ!?」

 

空井 サキ「――――――みるみる石化していくぞ!?」

 

風倉 モエ「さあ、可能な限りは接近したよ! チャンスは一瞬だよ!」クヒヒ・・・

 

北条先生「RABBIT4、構え!」

 

霞沢 ミユ「――――――!」ジャキ!

 

北条先生「撃てッ!」

 

 

バキューーーーーーーーーーーーーーーーーン!

 

 

一方、死海に沈む遺跡に途中までしか入れず 地上の“クジラの谷”で残った生徒たちを取りまとめて待機していた“GUYSの先生”北条 アキラであったが、死海に沈む遺跡に入れた調査隊の帰りを待つ間に【メトロポリス(首都:D.U.)】に宇宙怪獣が襲来したとの報を受け、“シャーレの指導員”宇宙格闘士の帝王:グレゴリオの宇宙船に乗って現場に駆けつけるのであった。

 

なんと、相手は高度な知能を持つ邪悪な宇宙怪獣である石化魔獣:ガーゴルゴンが闇怪獣化したものであり、【メトロポリス(首都:D.U.)】上空に来た時点で迎撃に向かった対怪獣兵器:機龍丸とGUTSファルコンが石化しているという絶望的な状況であったのだ。

 

邪悪な宇宙怪獣:ガーゴルゴンは絶望的な状況から言葉を失った作戦司令部に対して全面降伏を迫り、避難が遅れた住人を次々と石化光線で石化させ、無人機であるGUTSファルコンに目もくれず、有人機である機龍丸を人質にしてきたのである。もちろん、全身が石化しているために脱出装置が働かず、四次元移動能力による緊急離脱もできない。

 

そのため、作戦司令部は敗色濃厚ながら何とか時間稼ぎをしつつ、希望を託してアビドス遠征に出ていた“GUYSの先生”北条 アキラに裏で連絡を取って対策を仰いだのだ。

 

すると、地球の怪獣退治の歴史の集大成【アーカイブドキュメント】に存在しない この未知の宇宙怪獣についても暗黒宇宙を拳一つで渡り歩いたグレゴール星人:グレゴリオが知っており、その正体が行く先々の星々の文明を石化光線で滅亡に追いやってきた悪名高き石化魔獣:ガーゴルゴンであることが判明するのだった。

 

しかも、石化現象はガーゴルゴンが倒されることで解除されるという情報のおかげで、石化してしまった住人たちの生死もわかったことで冷静な対応が可能となったのだ。

 

これにより、最強種と名高い宇宙恐竜:ゼットンと同様に対策を立てることが容易となり、何をすればいいのかがわかってしまえば、勇気を持って強大な敵に敢然と立ち向かうことが可能となる。

 

石化光線を放つ口の中にある目玉が弱点ということで即断即決で作戦が立てられ、石化した機龍丸を人質に取っている宇宙怪獣:ガーゴルゴンの足元から巨大化した“シャーレの指導員”グレゴール星人:グレゴリオが奇襲を仕掛けることとなった。

 

その事前の仕込みとして 四方八方からドローンで怪獣を囲んでローター音による騒音を浴びせて注意を逸らしており、それで巨大化した“帝王グレイ”の先制攻撃を許すこととなったのだ。

 

しかし、当然ながら攻撃の要であると同時に弱点である口の中の目玉の防御は固く、咄嗟に口を結んだ上に致命傷となる先制攻撃を防いだのは両腕より高い位置から生えている双頭の蛇と言える触手であり、

 

双頭の蛇が身代わりとなって ダークガルネイトボンバーの灼熱の魔手による目潰し攻撃を 間一髪 防いで黒焦げになったのと引き換えに鋭い爪の生えた両腕で“帝王グレイ”の身体を掴んだ瞬間に口の中の目玉から一撃必殺の化石光線を放つ流れは完璧であった。

 

文字通りに手数の差で攻撃が防がれて返り討ちに遭い、あっという間に“帝王グレイ”の身体が石化してしまう、その瞬間であった――――――。

 

 

――――――その瞬間、真正面から四次元発信器が装填された弾丸がUH-60(ブラックホーク)の開け放たれたスライドドアに堂々と構えたRABBIT4の銃口から放たれたのである。

 

 

そして、放たれた弾丸は見事に真正面からガーゴルゴンの口の中の目玉に直撃する。それ自体は巨体を誇る怪獣からすれば豆鉄砲でしかなく、目の前に現れた宇宙人の先制攻撃が失敗した時の二段構えの攻撃だと高度な知能で瞬時に理解する。

 

しかし、その次の瞬間には高度な知能を持つがゆえに『なぜ わざわざ危険を冒してまで真正面から豆鉄砲の攻撃を繰り出してきたのか?』という疑問が湧き上がり、その思考の空白の次に待ち受けていたのは自らの破滅であったことは予想だにしていなかったことである。

 

さあ、考えてみて欲しい。怪獣退治の専門家:北条 アキラがわざわざ危険を冒してまで四次元発信器を装填した弾丸を直撃させたら何をするのか――――――。

 

 

ズシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!

 

 

霞沢 ミユ「や、やりました! やりましたよ、先生!」

 

空井 サキ「見たか! これが【キヴォトス防衛軍】の新兵器:四次元転送(テレポート)弾から繰り出されるチルソナイト(ロボット怪獣:ガラモンの装甲)ランスだ!」

 

北条先生「よくやってくれた、霞沢さん!」

 

月雪 ミヤコ「作戦は成功です、RABBIT3!」

 

風倉 モエ「あいよ! あとはドローンを手当たり次第に体当たりさせて、こっちは急速離脱!」

 

北条先生「聞こえますか、棗さん! 作戦は成功しました! 石化から回復したら即座にガーゴルゴンの目玉に――――――!」

 

北条先生「そう、いかに強力な再生能力を持っていようと、異物が食い込んだ状態ともなれば、逆に重篤な障害を残すことになる!」

 

 

バララララ・・・!

 

 

宇宙格闘士の帝王(巨大化)「さすがに冷や冷やさせられたが、貴様の命運もここまでだ、ガーゴルゴン!」 ――――――石化解除!

 

宇宙格闘士の帝王(巨大化)「再びガードを固めても無駄だ!」 ――――――即座に両手を十字に組む!

 

 

カイザー・グレイの暗黒が炸裂するダークスペシウム光線!

 

 

――――――

棗 イロハ「よし! 至近距離のダークスペシウム光線で盾代わりにした双頭の蛇が消滅した!」

 

棗 イロハ「これで終わりだ、闇怪獣:ガーゴルゴン!」

 

棗 イロハ「Kクラッシャー、発射ああああああああ! その目玉を穿り出すッ!」

 

棗 イロハ「そして、超無敵鉄鋼機龍丸(ハイパーモード) 発動!」

 

棗 イロハ「とどめ! デスドラゴ・サンダー!」

――――――

 

 

バララララ・・・!

 

 

北条先生「――――――完璧な作戦だった」

 

月雪 ミヤコ「やりました! 闇怪獣反応、消失です!」

 

空井 サキ「やったぞ! やったやった!」

 

霞沢 ミユ「良かった……」ホッ

 

風倉 モエ「もう終わり? こんなんじゃ 全然 おもしろくないよ? もっと破滅に繋がるような展開にならないかな?」クヒヒ・・・

 

北条先生「後のことは作戦司令部に任せる。警戒態勢を維持せよ」

 

北条先生「作戦完了。【RABBIT小隊】は帰投せよ」

 

RABBIT小隊「了解!」

 

北条先生「さて、アビドス砂漠に引き返すか」

 

 

 

 

 

北条先生「ただいま、みんな。サーベラス様たちは帰ってきたかな」

 

ロボット職員「先生! おつかれさまです!」

 

聖園 ミカ「さすがは先生! 先生の手にかかれば【メトロポリス(首都:D.U.)】を襲った宇宙怪獣もあっという間だね!」

 

北条先生「おや、気のせいでしょうか? 見ない間に みなさん 随分と肌艶が良くなってませんか?」

 

ロボット職員「さすがは先生、目敏い。実際、その通りです」

 

ロボット職員「実は、死海の遺跡でとんでもない発見と手土産がありまして、報告書にまとめているので詳細は後ほど」

 

北条先生「おお!」

 

聖園 ミカ「ねえ、“教父(せんせい)”? やっぱり、北条先生は一目見ただけですぐにわかったじゃん!」

 

ロボット職員「あ、はい。精進いたします……」

 

北条先生「……何があったんだろう?」

 

錠前 サオリ「おお、先生か。ちょうどよかった。今回の調査で掛かった弾薬費はこれぐらいになったぞ」スッ

 

北条先生「あれ、錠前さん? それって銃弾の経費精算書ですか? というか、銃撃戦があった? しかも、ほぼ全員が参加しているって、何があったんです?」パラッ・・・

 

錠前 サオリ「ああ、それについてはツルギやナグサたちが戦闘詳報をまとめてくれているから、待っていてくれ」

 

錠前 サオリ「とにかく凄かったぞ、死海に沈んでいたものは」

 

錠前 サオリ「だが、それよりも先生にお願いしたいことがあるんだ」

 

錠前 サオリ「アツコ」

 

秤 アツコ「先生、これに曲をつけて欲しいの」

 

北条先生「――――――『曲』? すると、これは歌詞ですか?」ピラッ・・・

 

錠前 サオリ「これを“大オアシス”で奉納演奏して欲しいと言われた」

 

北条先生「!」

 

錠前 サオリ「まるで先生の教えが凝縮されたようなスゴい歌だと思うのだが、どう思う、先生?」

 

北条先生「……なるほどね。編曲は結構してきたけど、作曲は初めてになるかな」

 

北条先生「……で、これにはまだ曲名が付けられていないか」

 

 

――――――じゃあ、曲名(タイトル)『真昼の空の月』と言ったところだね。

 

 

*1
【ブルアカ】2nd PV参照。あくまでも数千の学園が存在している中での代表的な学園の名前が記されているだけなので正確な勢力図は不明。




-Document GUYS feat.LXXX No.16-

石化魔獣:ガーゴルゴン 登場作品『ウルトラマンX』第6話『星の記憶を持つ男』第7話『星を超えた誓い』登場
両腕から肩に掛けて蛇の頭のような触手によって頭が3つあり、更に蛇のような見た目の中央の頭の口の中に巨大な目玉があるという不気味な外見を持ち、その目から放つ石化光線であらゆるものを石化させて星々を滅亡に追いやってきた凶悪な宇宙怪獣。
その戦闘能力は圧倒的であり、対峙したウルトラマンエックスをして『これまでの怪獣とは格が違う』と言わしめたほどの強敵であり、
惑星:ゴールドを滅ぼした後、メカ守護獣:ルディアンに秘められたエネルギーを狙って地球へと亡命したゴールド星人:テルを狙って黄色い光の球体となって飛来する。
これ以前にも 一度 地球を訪れたことがあり、一つの文明を完全に石化させて滅ぼし、海の底に沈めたらしい。これがギリシャ神話の怪物:ゴルゴンの伝説の由来になったのではないかと推測されている。

石化光線の他にも、両腕から肩に掛けて触手状の顔のようなものが生えており、その部分を伸ばして噛みつき、青白い稲妻状の破壊光線を発射することができ、防衛網を敷かれても真正面から打ち崩す強靭さと併せて、単体で複数の敵を相手取ることが可能。まさに圧倒的な強さである。
特に、双頭の蛇となる触手は見た目からは想像できないくらいに勢いよく伸びてくる上にエックスの身体を持ち上げるほどの膂力があり、双頭の蛇で拘束した敵を両腕の鋭い爪で一方的に甚振ることができ、1対1ならば手数の多さで完封できるほどである。
ただし、石化光線には目を傷つけられると目の傷が回復するまで使用を封じられてしまい、石化した対象も元に戻ってしまうという大きな弱点がある。
それでも、治癒能力もかなり高いためにさほど時間を置かずに再使用できるようになっているため、石化の脅威は完全に撃破するまではずっと続くことになる。
ところが、意外にもガーゴルゴン自身は石化に対する耐性を持っていないため、過去に登場した個体はいずれも『最大の武器且つ弱点でもある目を潰される』『石化光線の反射』が敗因となっている。
数多くの星を滅ぼす非常に凶暴な一面を持つ一方、特殊な高周波を用いてXioのコンピューターをジャックして地球人とコンタクトを取ることができるなど、宇宙人に匹敵するほどの高い知性と狡猾さも併せ持っている。


地球に飛来して早々、ウルトラマンエックスとメカ守護獣:ルディアンを相手に戦闘に突入するが、圧倒的な戦闘力で撃破。ルディアンをかばったエックスを光線で石化させてしまう。
しかし、完全に石化する寸前に口内の目にXスラッシュを受け、一旦は宇宙空間へと撤退することになる。
この時、変身者:大空 大地の決死の解析によって、実は口の中の目が最大の武器であると同時に弱点であることが発覚してしまう。
その後、地球側に44分以内にゴールド星人を差し出さなければ地球上の全ての生命体を石化させると脅迫して揺さぶりをかけ、それに対してUNVERは世界中の各支部から大陸間弾道ミサイル:ペルセウスを一斉発射して殲滅を図るも、ガーゴルゴンによって全て破壊されてしまう。
もはや人類に打つ手はないかに思われたが、大地が送信してきた解析データから目が弱点であることを見破られ、戦線に復帰したゴールド星人:テルが自らとルディアンを囮にしたことで隙を作られ、Xioの実戦隊員三名による目を狙ったウルトライザーの一斉射撃:トリプルユナイト作戦によって目を破壊され、エックスが復活。
再びエックス&ルディアンとの戦闘になるが、驚異的な細胞の再生能力によって目を再生し、再び石化光線を放とうとするもエックスのベムスターアーマーによって光線を吸収・反射されて自らが石化してしまう。
最期は石化した状態でルディアンの銃撃を受けて遂に引導を渡されたのだった。

なお、本能で行動していたり他者に操られていたりした怪獣とは異なり、高い知能を持ち明確な悪意で破壊と殺戮を振り撒いていたため、怪獣との共存を強く望む大空 大地も最初から共存の意思は示さず、エックスと戦った怪獣では初めてスパークドールズ化せず完全に死亡することになった。






怪獣退治の専門家:北条 アキラがアビドス遠征の大詰めとなる死海の遺跡の調査で中央から離れている最中に突如として襲来した宇宙怪獣であり、闇怪獣化していたため、光の都があった場所に建てられているサンクトゥムタワーの破壊を目的としていた。
防衛のために出撃した対怪獣兵器:機龍丸とGUTSファルコンと激しくぶつかり合い、防衛網に入り込んだ怪獣を四方八方から集中砲火を浴びせることに成功し、一時は対怪獣兵器だけで優勢となるものの、
見た目からは想像できない長さまで伸びるガーゴルゴンの双頭の蛇の触手に掴まれたGUTSファルコンに石化光線を浴びせたところで形成は逆転し、石化光線の脅威に怯んだことでガーゴルゴンの猛攻にさらされた機龍丸は最終的にサンクトゥムタワーに向けられた石化光線を防ぐ盾となって直撃を受けてしまう。
これにより、キヴォトス防衛軍の最高戦力である対怪獣兵器が石化してしまったことで実質的に壊滅状態となり、絶望的な状況に言葉を失った作戦司令部に対してガーゴルゴンが全面降伏を勧告してくることとなる。

しかし、これまで降伏勧告をしてくる知能が高い宇宙怪獣などいなかったことへの驚愕で逆に冷静になることができ、何とか時間稼ぎをしつつ裏で怪獣退治の専門家:北条先生に連絡を取って対策を仰ぐことになった。

そこから宇宙格闘士の帝王:グレゴリオによって石化魔獣:ガーゴルゴンの能力が判明したことにより反攻作戦が開始され、
四方八方にドローンを展開してローター音で撹乱したところを足元から巨大化した“帝王グレイ”がガーゴルゴンの弱点である口の中の目玉に致命打を与え、
それが失敗したら“帝王グレイ”が石化光線を受け止めている隙にキヴォトス最高の狙撃手:霞沢 ミユが新兵器:四次元転送(テレポート)弾から繰り出されるチルソナイト(ロボット怪獣:ガラモンの装甲)ランスを撃ちこむ二段構えの作戦が決行されたのである。
それにより、もはや何でもありの四次元宇宙人:バム星人の遺産の有効活用によって、バム星人の侵略兵器:メカギラスの装甲を真正面から切り裂いた隕石怪獣:ガラモンの装甲材を成形したチルソナイトランスがガーゴルゴンの目玉に突き刺さることになり、
それによってガーゴルゴンの石化が解除され、至近距離にいた“帝王グレイ”のダークスペシウム光線を防いだ代償に双頭の蛇は吹き飛び、続け様に機龍丸がKクラッシャーを口の中の目玉に突き刺さって引っこ抜こうとしたことで致命傷を負うこととなった。
最後は闇怪獣であることから光怪獣化してとどめを刺すために超無敵鉄鋼機龍丸(ハイパーモード)となって放たれる必殺の電撃光線:デスドラゴ・サンダーで消し炭となった。

この通り、石化魔獣:ガーゴルゴンは吸血怪獣:ギマイラ同様に決して弱い怪獣ではないのだが、数的優位に加えて対策がとられてしまった時点で無敵でなくなっており、
決め手になったのは“帝王グレイ”の情報提供と体を張った囮戦法のおかげではあったが、そういった強豪怪獣を撃退できるほどの戦力と作戦能力をキヴォトス防衛軍が証明した歴史的一戦となった。
もちろん、凶悪な能力を持った未知の宇宙怪獣に手も足も出ないはずだった状況を一変させたのは有識者からの確かな情報であり、これにより情報の価値が今まで以上に見直されることになった。
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