Blue Archive -Document GUYS feat.LXXX- 作:LN58
北条先生の再三の忠告を無視して鉄道工事を強行させて怪獣災害に見舞われてアビドス遠征の足を盛大に引っ張った悪徳企業【セイント・ネフティス】との非公式の会合で、ついに砂漠横断鉄道の秘密が明かされることになり、【“雷帝”の遺産】の一つである<列車砲:シェマタ>を得ようと画策する【プライベートファンド】との対決姿勢が鮮明となる。
いや、2年前に【アビドス】で何が起きていたかについては、実は2年前に【アビドス生徒会】梔子 ユメと小鳥遊 ホシノに保護されてしばらく滞在していた地球人:姫矢 ジュンが真相に辿り着いており、その答え合わせが今日になったぐらいで、すでに予想ができていたことであった。
しかし、“シャーレの職員”ロボット職員:マウンテンガリバーとしては【プライベートファンド】の実態が“シャーレの先生”に対して敵愾心や猜疑心を抱く者たちが自分たちの生き残りを賭けて結託した【反シャーレ連合】であることに少なからぬ衝撃を受けていた。
自分たちの善意が素直に受け取られないこともそうだが、怪獣頻出期という天変地異の時代に突入したのにも関わらず、自分たちの権益や体面を守るために非対称戦力兵器なるものを手に入れようと裏でコソコソと動き回っていることに凄まじい不快感を覚えたのだ。完全に状況が読めていない。
その一方で、協力者を装って近づいてくるネフティス幹部の話はツッコミが追いつかないぐらいに整合性が取れておらず、喋っている本人が耄碌しているのか、状況が切羽詰まっていることで精神的に追い詰められて まともな精神状態ではないのかと心配になるぐらいだ。
――――――そう思うのは“不誠実さ”それに尽きる。
自分たちが愛してやまないはずのネフティスのご令嬢:十六夜 ノノミに対する態度と扱い方に不誠実さしか感じられないからであり、
たしかに親が決めた入学先に反発したことで親子の間で確執があり、それに対して他人がとやかく口出しすることではないとは思う。
けれども、親が敷いたレールである【ハイランダー鉄道学園】の入学と生徒会長就任の件が、実は借金を返済するための手段として用意された<列車砲:シェマタ>による軍事的恫喝と結びつけられた“政略結婚”と“お家乗っ取り”だと聞かされれば――――――、
砂漠横断鉄道に失敗して故郷を捨てたことで【アビドス】の衰退を決定づけたことに贖罪の意識を覚えて【アビドス高等学校】への入学を決意した十六夜 ノノミはますます見下げ果てた親への反抗心が強まる一方である。
それでは【アビドス】を借金漬けにして自治区の土地を次々と差し押さえて自分たちを借金地獄で苦しめてきた怨敵【カイザーコーポレーション】と何ら変わるところがないではないか――――――。
それが【セイント・ネフティス】の息がかかった人間:十六夜 ノノミが【ハイランダー鉄道学園】に入学して生徒会長になることの真意であり、それが学園が国家と同義である学園都市:キヴォトスにおける“政略結婚”と“お家乗っ取り”だったわけである。
企業による学園の侵略のもうひとつの具体例を知ってしまったというわけである。
しかも、親が敷いたレールの上を走らされる当の本人には本当のことは何も教えずにいたわけであり、
口では『故郷である【アビドス】復興のため』と唱えながら、裏では<列車砲:シェマタ>を手に入れるための駒として実の娘を扱って別の学園に傀儡君主に仕立て上げると言う、
目的のためなら手段を選ばない 形振り構わない 偽善ぶりがまさに“不誠実極まる”わけであった。
しかし、そこまでのことをしてまで手に入れようとしている非対称戦力兵器としてご執心の<列車砲:シェマタ>だが、キヴォトス史上最大の軍事力【キヴォトス防衛軍
そのため、砂漠横断鉄道の失敗と同時に肝腎の開発が頓挫していた曰く付きの代物を巡っての抗争が『大山鳴動して鼠一匹』という呆れ返るしかない結果になるのではないかと北条先生も当初から予想していたわけである。
そもそも、その非対称戦力兵器計画というのも投資詐欺だったのではないかと思われてもしかたがないものに縋るしかないぐらいに【セイント・ネフティス】は追い込まれていることを内外に知らしめることになるのだ。
――――――明らかに普通ではない何かに浮かされて 突き動かされて 掻き乱されていることを誰もが感じ取っていた。
奥空 アヤネ「こちらにお座りください」
ネフティス幹部「ありがとうございます。こんな形でまた来ることになるとは思っておりませんでしたが……」
朝霧 スオウ「………………」
ロボット職員「それで、今回は協議の要請ではないようですが、どういったご要件でしょうか?」
黒見 セリカ「先生の忠告を無視して怪獣無法地帯で鉄道工事をやって 案の定 怪獣に襲われて世間から非難轟々ってわけだから、追い詰められた人間がやることなんて決まっているわ」
ネフティス幹部「まずは、お嬢様に電話でお伝えしたように、限度額を増やした新しいカードをお持ちしました」
十六夜 ノノミ「いえ、それは大丈夫です。特に困っていませんから」
ネフティス幹部「お嬢様、今からでも戻ってくるつもりはありませんか?」
十六夜 ノノミ「――――――『戻る』とは?」
ネフティス幹部「もちろん、【ハイランダー鉄道学園】に」
十六夜 ノノミ「執事さん、『戻る』も何も、私が【ハイランダー鉄道学園】の生徒だったことはないですよ」
ネフティス幹部「それは…………」
小鳥遊 ホシノ「そうですよ。ノノミさんが困っています。いきなり言われて決められるはずがないじゃないですか、そんな大切なこと」
砂狼 シロコ「ん、今までずっと放置してきたのに頻りに連れ戻そうとしているのは何か狙いがあるはず」
ロボット職員「執事さん、怪獣無法地帯での鉄道工事を強行させたことで世間からの評判がガタ落ちの【ハイランダー鉄道学園】に引きずり込もうとするのは本当に親心からなのですか?」
黒見 セリカ「そうよ! ノノミ先輩を【ハイランダー鉄道学園】に転校させることでどうにかなることなの!?」
奥空 アヤネ「どういった意図があるのかを話してもらわないと、誰も納得しないですよ」
ネフティス幹部「………………」
朝霧 スオウ「ああ。余計なことを言わずにさっさと本題に入るべきだ」
ネフティス幹部「……スオウ監督官」
小鳥遊 ホシノ「スオウさん」
朝霧 スオウ「だが、一言いいか」
朝霧 スオウ「元々、【ネフティス】は【ハイランダー】と協力関係を結ぶはずだった」
朝霧 スオウ「にも関わらず、そこのご令嬢が【アビドス】に入ったせいで破綻しかけたわけだ」
朝霧 スオウ「自分のワガママを聞いてくれた相手に対して、あまりにも失礼な態度を取っている自覚はないのか?」
十六夜 ノノミ「はい、そうでしたね。それは悪かったと思っていますが、今それが何ですか?」
朝霧 スオウ「……ほう」
ネフティス幹部「……お嬢様」
ロボット職員「――――――まるで“政略結婚”だな」ボソッ
ネフティス幹部「!!!!」
十六夜 ノノミ「……け、『結婚』って言いましたか、今?」
砂狼 シロコ「――――――『政略結婚』?」
黒見 セリカ「――――――って何、ガリバーさん?」
ロボット職員「ああ、そっか。キヴォトスだと男子生徒がいないわけだから、政略結婚は大人の世界でしか見ることができないものなのか……」
ロボット職員「えっとね、政略結婚っていうのは政治的な目的や利害関係から行われる家同士の付き合いを強化するために婚姻同盟を結ぶ手段のことで、基本的に親同士が決めた許婚と結婚することが昔だと一般的だったんですよ」
ロボット職員「個人個人が互いに愛し合って結ばれる恋愛結婚とは正反対の概念と考えてください」
ロボット職員「だから、学園都市:キヴォトスだと、国家に相当する学園の支配層同士が関係を深めるために互いの生徒を交換留学させることが政略結婚っぽいなって思いまして」
小鳥遊 ホシノ「それって、ノノミさんを【ハイランダー鉄道学園】に入学させることで【セイント・ネフティス】は何らかの利益を得ることができていたってことですか」
ロボット職員「そうそう。結納金の代わりに何らかの権利を手土産や見返りにした人質みたいなものですね」
奥空 アヤネ「つまり、【ハイランダー】に入学させる予定だったノノミ先輩本人が知らないような裏事情があったというわけですね」
十六夜 ノノミ「だから、今になって連れ戻そうという気になったわけですか。それも砂漠横断鉄道に大きく関係することで」
ネフティス幹部「……ご安心を。何も、連れ戻すために来たわけではありません」
十六夜 ノノミ「なら、早く本題に移ってもらえないでしょうか、執事さん?」
ネフティス幹部「そうですね……」
朝霧 スオウ「………………」
ネフティス幹部「結論から申しますと――――――、」
――――――砂漠横断鉄道の裏には【アビドス生徒会】と【ネフティス】間で秘密裏に進めていた“非対称戦力兵器計画”がありました。
十六夜 ノノミ「!?!!」
奥空 アヤネ「……はい!?」
小鳥遊 ホシノ「今、何て言ったんですか!? 【アビドス生徒会】が!?」
砂狼 シロコ「――――――『非対称戦力兵器』?」
黒見 セリカ「な、何よ、それ?」
ロボット職員「やっぱり、そういうことだったのか!」
ネフティス幹部「む」
ロボット職員「みんな、いろいろとありすぎて忘れているかもしれないですけど、アビドス遠征に【ゲヘナ学園】が協力した理由を憶えていますか?」
砂狼 シロコ「ん? あ、そうだ! アレだ!」
小鳥遊 ホシノ「……『アレ』って?」
十六夜 ノノミ「――――――【“雷帝”の遺産】の捜索です!」
小鳥遊 ホシノ「!!!!」
朝霧 スオウ「そうだ。2年前にキヴォトスを混乱に陥れた【ゲヘナ学園】の生徒会長が関わっている」
――――――その名は<列車砲:シェマタ>。
ネフティス幹部「<シェマタ>は破壊力も射程距離も従来の規格と比べ物になりません」
ネフティス幹部「列車砲――――――、いえ、要塞兵器と言った方が良いでしょう」
ネフティス幹部「1トン以上の爆弾を500km先まで飛ばす超長距離砲――――――、そんな代物が鉄道路線の上を走り回る計画です」
ロボット職員「……なるほど。だから、非対称戦力兵器計画、か」
ロボット職員「非対称戦力兵器とは通常兵力では対応困難な相手の脆弱性を突くような兵器や戦術のことを言い、言うなれば 敵には反撃を許さずに敵を一方的に殲滅できるような メタ対策のことです。戦車や歩兵に対する爆撃機や攻撃ヘリコプターがわかりやすい例でしょう」
ロボット職員「学園同士の抗争が白兵戦距離での銃撃戦や戦車戦に限定されるものなら、この<列車砲>はまさにキヴォトスにおいては非対称戦力兵器になりうる……」
ロボット職員「けど、これって――――――」
ネフティス幹部「話している私でさえ、本当に実現できるのか信じられません」
ネフティス幹部「ですが、もし完成すれば、周辺自治区に対して圧倒的な抑止力となることでしょう」
ロボット職員「…………『抑止力』だって?」
ロボット職員「まさかとは思いますけど、その非対称戦力兵器による軍事的恫喝のことを『抑止力』と言っているのか?」
朝霧 スオウ「どうした?」
ロボット職員「本気でそんなことが実現できると思っているのか、このキヴォトスで!?」
ロボット職員「地図を見てみろ! 【アビドス高等学校】に隣接しているのは【ゲヘナ学園】や【トリニティ総合学園】なんだぞ! そんな脅しが通用すると思っているのか!?」
ロボット職員「それに 一度 撃ってしまえば、銃爪を引く指は軽くなって抑止力はすぐに失われる! 絶滅戦争が始まってキヴォトスで一二を争うマンモス校【ゲヘナ】やそのライバル校【トリニティ】の圧倒的兵力によって【アビドス】が地上から完全抹殺されるだけだぞ!?」
ロボット職員「いったい何を考えているんだ!?」
朝霧 スオウ「――――――『借金を返済するため』だろう?」
ロボット職員「…………!」
朝霧 スオウ「強力な兵器の使い道なんて、いくらでもあるからな」
十六夜 ノノミ「たしかに、【“雷帝”の遺産】としての箔付けがあるなら、信憑性も十分にありますね」
砂狼 シロコ「実際、ライナー部隊のカノンライナー号には対怪獣兵器の列車砲があることだしね。じゃあ、あの列車砲の出所はそこなのかもしれないね」
奥空 アヤネ「もしかして名前の由来は、あの生徒会長ですか?」
朝霧 スオウ「そうだ、“鉄拳政治のシェマタ”だ。かつて【アビドス】には同時に70人の生徒会長が存在した混乱期があり、それを治めて【アビドス】全盛期を築いた伝説的な生徒会長の名だ」
黒見 セリカ「――――――『70人の生徒会長が存在した』って、いつ聞いても信じられない話よね」
朝霧 スオウ「……【アビドス】出身ではない私も知っているくらいだ。全盛期の【アビドス】は圧倒的な兵力と資金力を誇り、キヴォトスの全地区から恐れられ、同時に羨まれていたとされる」
朝霧 スオウ「そう考えると、この<列車砲>の名付けは興味深い」
小鳥遊 ホシノ「強力な兵器さえあれば 借金を返済できると、本気で信じていたわけですか……」
黒見 セリカ「ホシノ先輩……」
十六夜 ノノミ「つまり、砂漠横断鉄道は<シェマタ>を隠蔽するために造られたわけですね?」
ロボット職員「ならば、【連邦捜査部
朝霧 スオウ「!?」
ネフティス幹部「な、なんですって?! お、落ち着いてください!」
ロボット職員「これが落ち着いていられると思いますか!? 先生のアビドス遠征の日程を遅らせて盛大に足を引っ張っただけじゃなく、この前の変身怪獣:ザラガスによる怪獣災害に見舞われた現場作業員の方たちにどう申し開きするつもりかを言ってみろ!」ゴゴゴゴゴ!
黒見 セリカ「そうね! あんたたちのせいで先生が 救急病院までついていって つきっきりで看病することになったのよ! そのおかげで新しいものがいっぱいキヴォトスで広まることになったとしても、アビドス遠征の邪魔をされたことには変わりないわ!」
砂狼 シロコ「ん、これまで協議をしてきて先生の忠告を無視した軽はずみな行動の結果、工事現場からみんな逃げ出すことになったわけだから、そんな信用も実績もない連中に<列車砲>の適切な運用ができるとは到底思えない」
奥空 アヤネ「そもそも、借金を返済するために<列車砲>を製造した費用っていったいどれくらいだったんですか? 費用の回収は本当にできるのですか?」
小鳥遊 ホシノ「これ以上ふざけたことを言うなら、お望み通りに大砲に詰めて遠くまで飛ばしてもいいんですよ? 私、ゲヘナ最強の風紀委員長とはお友達ですから、頼めばライナーカノン号の列車砲を使わせてくれるはずですから!」
ネフティス幹部「ま、待ってください! お嬢様! みなさん!」
ネフティス幹部「あくまでも非対称戦力兵器計画は鉄道事業が動き出してから話に出たものです!」
ネフティス幹部「おそらく、【アビドス生徒会】に入れ知恵をした者がいたのでしょう」
ロボット職員「それが“雷帝”だったと?」
ネフティス幹部「そこまでは私も……」
ネフティス幹部「なにせ、詳しく説明されぬまま、秘密裏に進められたものでして……」
朝霧 スオウ「待て、落ち着け。話を整理するぞ」
朝霧 スオウ「まず、砂漠横断鉄道からの非対称戦力兵器計画の成立には“雷帝”は関わっていない。“雷帝”は2年前の生徒会長であって、非対称戦力兵器計画の大元となる砂漠横断鉄道の失敗による【ネフティス】の撤退は十数年前の出来事だろう」
朝霧 スオウ「だから、すでに この計画は破綻している」
ロボット職員「そうですね。非対称戦力兵器計画とやらが本当に成功していたら、十数年前に【アビドス高等学校】はキヴォトス中の学園の総意となる報復攻撃を受けて地上から完全に消滅していたことでしょうね」
ロボット職員「非対称戦力兵器計画の本質はこれまでの人類の常識が通じない超常の総称である“
ロボット職員「そもそも、そんな“
ネフティス幹部「仰る通りです。<シェマタ>ほどの常識外れな要塞兵器が、正常に動くはずがありません」
ネフティス幹部「結局、エンジンが動くことはありませんでした。今も未完成のまま、アビドス砂漠のどこかに放置されています」
ネフティス幹部「そして、計画は中止となっていたのです。ほんの少し前までは」
小鳥遊 ホシノ「はああああああああああ!? 何ですか、それって!? ユメ先輩のことをまったく笑えない話じゃないですか!?」
黒見 セリカ「――――――『正常に動くはずがありません』って、何を他人事のように言っているのよ!? そんなものにお金を注ぎ込んでいたわけぇ!?」
奥空 アヤネ「それって投資詐欺というものでは!? 違約金はちゃんと受け取れたんですか!?」
ロボット職員「今すぐに設計図や仕様書を提出するのです! 非対称戦力兵器計画が投資詐欺だったかどうかを確かめないと! あまりにも情けないことじゃないか、そんなのって!?」
十六夜 ノノミ「そうですか、『未完成のまま放置』ですか。話になりませんね」
ネフティス幹部「ま、待ってください! これには話の続きが――――――!」
ネフティス幹部「最近になって再度シミュレーションをしたところ、<シェマタ>の実現性は限りなく高いものとなっていました」
ネフティス幹部「設計者は数年先を見据えて設計していたのか……」
ネフティス幹部「それとも、ただの偶然なのかは当人しか知り得ませんが……」
ロボット職員「いいかげんにしろよ! これ以上そんな与太話なんて聞きたくない! 信用できるか、そんなシミュレーションの結果なんて! 今すぐにその設計者を証人喚問して仕様通りに完成しなかったことの弁明と賠償が先だろう!?」ダンッ!
ネフティス幹部「ひっ」
ロボット職員「わかっているのか!? そんな出来損ないの兵器のために【アビドス】の衰退は決定的になったという話だぞ!? おかしいと思わないのか!? 今頃、まともに動いたって遅いんだよ!」
ロボット職員「――――――時間は戻ってくることは絶対にないんだ! そこで取り零してしまったものはもう二度と触れることができないんだぞ!? 僕にとっての16年間はまさにそうだった!」
小鳥遊 ホシノ「………………」
朝霧 スオウ「………………」
ロボット職員「それなのに、今、ノノミが【
ロボット職員「あんたたちの時間は十数年前で止まっているのかよ!? ちがうんだったら、未完成のまま放置された<シェマタ>じゃなくて、愛娘であるノノミの今を見てやってくれよ!」
ロボット職員「あんたたちの苦労や辛さもわかるけど、“ネフティスの令嬢”として生まれた時から背負わされた肩身の狭さを!」
十六夜 ノノミ「……ガリバーさん」
ロボット職員「それじゃあ、もうあんたたちは人の心を失った
――――――よく見てよ! 僕にとっての16年間の時間の流れで“ひとりの女の子”はこんなにも大きくなった! なら、<シェマタ>の力で救おうと思った“みんな”って今この時いったいどこにいると言うんだ!?
“シャーレの職員”ロボット職員:マウンテンガリバーの正体は『前回』となる未来世界:1周目の世界でキヴォトスを破滅から救うことができなかった“シャーレの先生”コーイチ先生の魂が人型タイムマシンに封じ込まれて16年前の過去にひとり送り出されたものであり、
この16年前の過去という時間設定は完成が間に合わなかった対怪獣兵器の開発を 最大限 早めるために、未来世界での研究を過去の世界の自分自身に引き継がせる目的で決められていた。
すなわち、対怪獣兵器の開発を受け持った高等部3年生の17歳の【ミレニアムサイエンススクール】“ビッグシスター”調月 リオと“全知”明星 ヒマリの出生が確認できる年代であり、同時に高等部2年生の16歳となる生徒たちが産声を上げる誕生年でもあった。それが16年前の過去である。
そのため、『前回』コーイチ先生にとっては最初の大仕事となった【アビドス対策委員会】と過ごした日々は キヴォトスの破滅が【アビドス】から始まったこともあって 特に思い入れがあり、
“シャーレの先生”と“ウルトラマンティガ”の二重生活で完全にヘバッてしまった時に手を差し伸べてくれたのが2年生たち:十六夜 ノノミと砂狼 シロコの2人であったため、コーイチ先生との距離感が特に近かったように思えた。
と言うより、昼行灯を装っていながらも あまり周囲に期待していないことが澄んだ瞳の奥から放たれる冷えた視線でわかってしまう 3年生:小鳥遊 ホシノと、感覚がまともだからこそ 普通の反応が返ってくる 1年生:奥空 アヤネと黒見 セリカから、成り立てで頼り甲斐のない“シャーレの先生”と“ウルトラマンティガ”の二重生活の苦労を察してもらえなかったというのがある。
一方、2年生たち:十六夜 ノノミと砂狼 シロコの2人にしても、人には言えないような秘密や言ったところでどうしようもない苦悩を抱えていたことから、せっかく来てくれたけれども何だか頼りにならない大人であるコーイチ先生の姿に共感するところがあり、それで先輩後輩よりも興味を惹かれることになったのである。
実質的に【アビドス対策委員会】の問題を乗り切れたのはノノミの包容力のある膝枕とシロコの度肝を抜く過激な発想で疲れをふっとばすことができたからであり、
その時にコーイチ先生が童心に帰った反応を見せるため、思わず顔が綻んでワイワイはしゃいでしまうような年頃の男女のふれあいが16歳の女の子たちの情感を揺り動かしていた。
その時の思い出を忘れることができずに今も大切に胸の中にしまっておきながら、『今回』自分ではない別の人が“シャーレの先生”になって自分以上にたくさんの子供たちに慕われている様子に 多少の嫉妬心が湧き上がることに絶えず自己嫌悪を覚える日々を送ってきたのだ――――――。
それだけに『今回』2周目の世界となる過去の世界に飛ばされたことにより、より深く学園都市:キヴォトスが抱えてきた長年の問題について知ることになったものだから、
16年かけてようやく『前回』と変わらぬ姿の生徒たちに再会することができた喜びもあり、『前回』のことが“なかったこと”になって自分のことを誰も憶えていてくれない一抹の寂しさもある一方、
過去改変の結果、『知り合っていた生徒たちが少しでも明るい未来を掴めていたら――――――』と期待したことが何も叶っていなかったことに愕然とすることになったのがこのアビドス遠征でのことであり、
そのことで自分が過ごした16年間がどれだけの意味があったのかで慟哭した。それは涙を流すことができない機械の身体であっても、心の涙がポタポタと頬を伝え落ちることに理屈なんてない。
もちろん、過去改変のおかげで本来ならば“シャーレの先生”には過去の自分がなるはずが、並行世界の地球人:北条先生というキヴォトスの頂点に立つ存在にまで昇り詰める完全上位互換になったことに不満なんかなかったけれども、
できていたはずのことが――――――、やれていたはずのことが――――――、力を失って初めて“シャーレの先生”と“ウルトラマンティガ”を演じ分ける 本当は苦しくてしかたがない 過酷だった二重生活の日々をむしろ取り戻したくなっている自分の心の弱さにグラついていたのだ。
いや、万全の準備と最強の布陣のアビドス遠征なのだ。行き当たりばったりでヘトヘトだった自分の時とは何もかもがちがってて文句のつけようなんてないのに――――――、
それなのに、こうも心が落ち着かなくなってしまうのは、思い出してしまうのだろう、当時の自分の若さを。失われた熱さを。取り戻したかった思い出を。変えたかった未来を。
その心の涙を流した叫びが狭い室内にシンと響き渡り、静寂に包まれた時の流れが動き出す。それはほんの1分程度の空白。
――――――これで何かが変わったのだろうか?
――――――何も変わらないのだろうか?
――――――全ては無意味なのか?
――――――それでも、生まれ変わり死に変わりして“光”を追い求める心は叫びたがっていたのだ!
ロボット職員「………………」
十六夜 ノノミ「……ありがとうございます、ガリバーさん。凄く心に響きましたよ」
ネフティス幹部「…………お嬢様」
朝霧 スオウ「……話を続けるぞ」
ロボット職員「……どうぞ」
朝霧 スオウ「いずれにせよ、砂漠横断鉄道の重要性が一気に増したわけだ」
朝霧 スオウ「保有しているだけで抑止力となり得る存在――――――。時代を先取りした革新的な技術――――――」
朝霧 スオウ「これらの事実が明らかとなった以上、行動しない手はない」
朝霧 スオウ「もちろん、きっかけは【キヴォトス防衛軍】のライナー部隊で列車砲が活躍した話からだ。あれも元々は非対称戦力兵器計画から試作されたものだからな」
ネフティス幹部「そういうわけで、【プライベートファンド】が砂漠横断鉄道の権利に執着しているのは、まさにこれが理由なのです」
ネフティス幹部「鉄道の権利さえ得てしまえば、<列車砲>も手に入れられますから。もちろん、【プライベートファンド】も一枚岩ではないでしょうが」
ネフティス幹部「そして、あの者たちだけで債権の購入資金を集めることは叶わず、【ネフティス】の力を借りに現れ、」
ネフティス幹部「我々としても、砂漠横断鉄道はできれば保存しておきたかったので、非対称戦力兵器計画の再始動を知らずに手を結んでしまいました」
ネフティス幹部「後に計画の全貌を知った頃には、【プライベートファンド】から手を引ける状況になく……」
ネフティス幹部「ですので、このまま あの者たちに<列車砲>の権利を渡してはいけません。是非とも、協力を――――――」
ロボット職員「はあああああああ! この場に先生がいなくて本当によかったです! もうツッコミきれないぐらい指摘事項がいっぱいで、先生の貴重な時間を無駄にしないですみましたから!」
ネフティス幹部「おお!?」
ロボット職員「これじゃあ、いつまで経っても事業計画書の見直しなんてできないわけですよね!」
ネフティス幹部「ええ!?」
朝霧 スオウ「………………」
ロボット職員「ホシノさん、これは決まりですね」
小鳥遊 ホシノ「ハッ」
小鳥遊 ホシノ「そうですね。そんな兵器が悪党の手に渡ったら、必ず争いの種になります」
砂狼 シロコ「ん、これはもう買いだね、ノノミ」
十六夜 ノノミ「はい。買ってしまいましょうか、砂漠横断鉄道の施設使用権。残り99万円でしたか」
小鳥遊 ホシノ「ユメ先輩は本当にどうしようもない生徒会長でしたけど、最後になって本当に素晴らしい仕事をしてくれました……」
ネフティス幹部「ちょっと待ってください、みなさん! <列車砲>をどうするつもりなんですか!?」
十六夜 ノノミ「その前に執事さん、<列車砲>がどこにあるのか、ご存知ですか?」
ネフティス幹部「いえ、申し訳ありません。私たちも皆目検討がつかないのです。この計画自体、極秘事項でしたから、当時の書類は見つからず……」
ロボット職員「――――――同じ機械の身体なのに耄碌しているのか、この執事さんは?」ボソッ
朝霧 スオウ「………………」
ネフティス幹部「……それはどういう意味でしょうか?」
ロボット職員「私が所属している部活動の正式名称を言えますか?」
ネフティス幹部「それはどういう――――――」
朝霧 スオウ「――――――【連邦捜査部
ロボット職員「その通り、私はその“シャーレの職員”であり、これでも正式な【連邦捜査部】の人間なんですよ?」
ロボット職員「嘘を吐くなら、もっと上手に騙してくれませんか? さっきからツッコミどころだらけで、自分で言ってておかしいと思わないんですか?」
ネフティス幹部「そ、そんなことはありません! そもそも、あなたたちに対して嘘を吐く理由なんてないじゃないですか!」
ネフティス幹部「今にして思うと、【プライベートファンド】が我々に接近した理由は<列車砲>の位置を知るためでもあったのでしょう。その企みは叶わなかったわけですが、いずれにせよ、時間の問題です」
ネフティス幹部「【
ネフティス幹部「【プライベートファンド】は正式な契約をもって<列車砲>の権利を手に入れようとしています。権利関係について何度も訊ねてきましたので」
ネフティス幹部「実際、【アビドス生徒会】と【ネフティス】だけでなく、設計者も一部権利を有しているため、複雑になっていますから……」
ロボット職員「ああ、そうですか。風呂敷を広げた割には随分と安い相談ですね。『大山鳴動して鼠一匹』ですよ、この話は」
小鳥遊 ホシノ「そうですね。何の因果か、肩書きを押し付けられただけの【アビドス生徒会】生徒会長:ユメ先輩が<列車砲>を含む砂漠横断鉄道の施設使用権を【ネフティス】から100万円で買収する契約書を残してくれたおかげで、あっさりと問題解決しそうです」
小鳥遊 ホシノ「ガリバーさん、私、【プライベートファンド】の総会に出席して契約続行の意思を伝えます」
小鳥遊 ホシノ「ううん。これって【ネフティス】に支払うものなんだから、もうこの場で残額:99万円を支払っちゃおうと思います」
小鳥遊 ホシノ「それで、この話は終わりです」
朝霧 スオウ「ああ、それが最善の判断だろうな、ホシノ」
ネフティス幹部「……スオウ監督官!?」
朝霧 スオウ「だが、話はそう簡単にはいかないだろう。だから、今は止めておけ、小鳥遊 ホシノ」
小鳥遊 ホシノ「どういう意味ですか、スオウさん?」
朝霧 スオウ「総会への出席の意思を表明したところで、【プライベートファンド】はあんたらの出席を妨害するに決まっている」
朝霧 スオウ「それだけじゃない。契約破棄を迫るためにありとあらゆる妨害を企てているはずだ。それは今この場で残額を【ネフティス】に支払って正式に権利を得たところで同じだ」
小鳥遊 ホシノ「そうするだけの価値が<列車砲>にあると本気で信じているのですか?」
朝霧 スオウ「だから、これだけの騒ぎになっている」
朝霧 スオウ「もっとも、その価値を示したのは間違いなく北条先生が率いる【キヴォトス防衛軍】の活躍によるものだ。ライナー部隊で運用されている列車砲が<シェマタ>の信憑性を高めることになった」
――――――そして、【プライベートファンド】を凶行に駆り立てたのもキヴォトス史上最大の軍事力【キヴォトス防衛軍】のせいでもある。
ロボット職員「え?」
十六夜 ノノミ「どういうことですか、それは?」
朝霧 スオウ「かつての【アビドス】と同じだ。キヴォトス史上最大の軍事力に違わぬ圧倒的な兵力と資金力を“連邦生徒会長”が失踪して混迷を極める情勢の中で彗星のごとく現れた地球人:北条 アキラが一から築き上げ、名実共にキヴォトスの頂点に立つ存在となった――――――」
朝霧 スオウ「そのことに対して偉大な指導者を迎えることができたということで畏れ敬う者たちが大勢いる一方で、我が物顔でキヴォトスのこれまでを変えられていることに不安感や危機感を覚えて反発している層が少なからずいる」
朝霧 スオウ「そうして反発した者たちは北条先生がもたらす変革によって既得権益が脅かされることに敵愾心を抱き、あるいは史上最大の軍事力が自分たちにいつ向けられるかという猜疑心を抱いている」
朝霧 スオウ「だからこそ、やつらは自分たちの生き残りを賭けて【反シャーレ連合】とも言える【プライベートファンド】を結成して<列車砲>獲得に躍起になっているのさ。それが手に入れられる可能性が最も高い唯一の対抗策だから尚更」
ロボット職員「そんなことが……」
ロボット職員「どうして先生のことが信じられないのですか!? 怪獣頻出期という天変地異の時代に突入してしまったキヴォトスの平和のために先生がどれだけ――――――!」
朝霧 スオウ「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ;鉄血宰相:オットー・フォン・ビスマルク」
朝霧 スオウ「――――――先生が言っていた言葉だ」
ロボット職員「な、なに!?」
朝霧 スオウ「結局、先生という一人の賢者がどれだけ人々のために尽くしたところで、賢者でないなら全てが愚者の世の中、自分の経験やそれで培ってきた価値観が全てだと思い込んで、愚者ではない先生のことを自分たちと同じ愚者だと判断するのが普通なだけだ」
朝霧 スオウ「だからこそ、先生は常にキヴォトスから追放されることを想定して行動している。それを
朝霧 スオウ「言うなれば、それだけ『信用がない』というのが先生から見た我々キヴォトス人の評価というわけだ」
朝霧 スオウ「まあ、賢者が賢者足り得るために必要な『歴史』と言うものが、そもそもキヴォトスに存在しているのか、という話だがな」
ロボット職員「――――――『歴史』か」
ロボット職員「そうか。だから、先生は【
ロボット職員「それがいずれは後世の人々を正しい方向に導く『歴史』になると信じて……」
朝霧 スオウ「そういうわけで、今この場で【ネフティス】に残額を支払って契約を成立させることはリスクが高いと言わざるを得ないぞ、小鳥遊 ホシノ」
小鳥遊 ホシノ「そういうことでしたか。ありがとうございます。凄く納得です」
ロボット職員「借金返済のために造られた<シェマタ>のために、契約を成立させることで完全な権利を有する【アビドス生徒会】に標的が絞られるわけか……」
朝霧 スオウ「そうだ。企業の悪辣さは【アビドス】を借金漬けにして自治区の土地を次々と差し押さえていった【カイザーコーポレーション】の容赦のないやり方で身に沁みているだろう」
朝霧 スオウ「言うなれば、同じ企業である【セイント・ネフティス】が間に立つことで【プライベートファンド】も【アビドス生徒会】に対して容易に手出しができないようになっているんだ」
小鳥遊 ホシノ「じゃあ、やっぱり総会に出席しないとダメなんですね」
朝霧 スオウ「だが、忘れたか。やつらは総会の開催をアビドス中央駅旧庁舎と指定してきた。そこは先生が【カイザーコーポレーション】から土地の権利を取り戻してスリム化させた新アビドス自治区の外になる」
朝霧 スオウ「つまり、やつらは最初から総会に参加させる意思はないということだ。入場料は契約破棄の意思のみとして、部隊を展開して旧庁舎を封鎖するはずだ。あそこの土地はもう【プライベートファンド】のものだからな。私有地に部隊を展開することに違法性はない」
朝霧 スオウ「そして、最初の総会を成立させた後は、契約が不成立になる直前に最後の総会を開いて、期限切れで<列車砲>の所有権が自分たちに渡るように立ち回ってくるはずだ」
黒見 セリカ「え!?」
小鳥遊 ホシノ「なるほど。たしかに、アビドス中央駅旧庁舎は砂漠横断鉄道の路線がいくつも交差する中心部。自分が所有している場所を守っているだけになりますね」
砂狼 シロコ「うーん……」
奥空 アヤネ「それだけの規模に対して、私たちは……」
黒見 セリカ「あ、そうよ! ドリル列車! 【温泉開発部】のドリルライナー号よ! あれも四次元移動列車なんだから、あれで目の前までワープして突撃すればいいじゃない!」
朝霧 スオウ「おい、やめろ、絶対に! どんな大義名分を掲げて民間の取引の現場に対怪獣兵器を突っ込ませる気だ!?」
黒見 セリカ「あ、そっか。あの時は【キヴォトス防衛軍】のベースキャンプになっている場所に無差別攻撃を仕掛けた傭兵バイトへの正当防衛だったっけ……」
朝霧 スオウ「いいか。四次元移動列車は【メテオール規約】によって
朝霧 スオウ「つまり、形式的には軍事顧問である北条先生の承認が毎回あるわけで、四次元都市:フォーサイトの運行便なんかは自動化されているが、」
朝霧 スオウ「メテオール:
朝霧 スオウ「今となっては有って当たり前になっているが軽く扱うな、まったく。それじゃあ、あの双子と同レベルだぞ」
黒見 セリカ「うぅ……、反省します……」
奥空 アヤネ「はい。これはあくまでも私たち【アビドス対策委員会】の問題ですから、【キヴォトス防衛軍】の力を借りることはしてはいけませんね」
小鳥遊 ホシノ「そうですね。セリカさんも落ち着きましょう」
砂狼 シロコ「でも、相手の出方がわかっているなら、手の打ちようがある……」
十六夜 ノノミ「はい。必ず状況を打開する方法が見つかるはずです。時間はまだあります」
ロボット職員「では、質問です」
ロボット職員「【ネフティス】さん、スオウ監督官の推測が正しければ、このままだと人っ子一人入れない防衛網が敷かれて、それで期限切れになって【プライベートファンド】に<列車砲>の権利が渡ることになりますよね?」
ロボット職員「それは望まないと言ったのですから、何かしら対策はあるんですよね?」
ネフティス幹部「はい。とても簡単な方法があります」
ロボット職員「では、お聞きましょうか、その『簡単な方法』とやらを」
ネフティス幹部「お嬢様が【ハイランダー】に入学して、生徒会長になってくだされば良いのです」
奥空 アヤネ「ええ!?」
十六夜 ノノミ「……また その話ですか、執事さん」
ネフティス幹部「そうです。【ネフティス】の幹部として権力を行使すれば、この契約を取り消せます」
ロボット職員「それはどういった理屈からですか?」
ネフティス幹部「理屈はこうです。【ネフティス】【ハイランダー】【プライベートファンド】の3勢力のうち、2つの勢力が反対すれば、残る【プライベートファンド】はどうすることもできません」
ロボット職員「つまり、【プライベートファンド】の総会での決定はあくまでも全体の意思決定会議では1票に過ぎないと」
ロボット職員「じゃあ、【プライベートファンド】の意思決定なんて無視して、【ネフティス】【ハイランダー】で反対票を出して否決すれば終わりの話じゃないですか」
ネフティス幹部「たしかに、それはそうなのですが……」
黒見 セリカ「そうよ! ノノミ先輩が犠牲になる必要なんてどこにもないじゃない! ただ単に連れ帰りたいだけでしょう!?」
朝霧 スオウ「残念だが、【ハイランダー鉄道学園】は路線単位で明確な派閥や部署が形成され、各々が独自に路線を運営する体制となっている。異なる部署同士は必要以上に交流を行うことはなく、協力はおろか相互牽制や軋轢も珍しくない」
朝霧 スオウ「そのために生徒会である【
朝霧 スオウ「つまり、歴史的には【ハイランダー鉄道学園】では現場の状況を理解していない【
砂狼 シロコ「じゃあ、【ハイランダー】の生徒会長の動向次第で、どっちに転ぶかまったくわからないわけなんだね」
ロボット職員「なるほど、理屈と理由はわかりました。たしかに、あの双子が生徒会役員であることを考えると、<列車砲>の存在を知ってどんな反応をするか予想がつきませんね」
ロボット職員「だから、状況をコントロールするために意思決定の最高決定者である生徒会長に身内を送り込もうと言うわけですね」
ロボット職員「やっぱり、“政略結婚”というか、それ、『“お家乗っ取り”を画策している』ってことじゃないですか!?」
ネフティス幹部「え、どうしたのですか? 何が問題なのです?」
黒見 セリカ「ど、どういう意味ですか、ガリバーさん?」
砂狼 シロコ「うん、詳しく」
ロボット職員「さっき、『【
ロボット職員「意思決定の最高機関である生徒会【
ロボット職員「それは【カイザーコーポレーション】が【アビドス高等学校】に対して行った企業による学園の侵略とまったく同じことですよね?」
黒見 セリカ「何よ、それ!? 味方のフリをして、裏でとんでもないことをやろうとしていたのね!?」
奥空 アヤネ「さっきの口振りからして、ノノミ先輩が入学さえすれば【ネフティス】の意のままに生徒会長の座を奪い取れる算段がもうついているわけですよね」
小鳥遊 ホシノ「それが【セイント・ネフティス】のやり方ということですね」
十六夜 ノノミ「そうですよね。そうやって運命共同体だった【アビドス生徒会】をかつて裏切ったわけですから、次に業務提携した【
砂狼 シロコ「ブラック企業と名高い【カイザーコーポレーション】と同じぐらいの腹黒さだね」
ネフティス幹部「ち、ちがいます! 私たちは【カイザー】とはちがいます! これは全て【アビドス】のために行っていることなのですよ!?」
ロボット職員「わかっていますよ。【アビドス】復興のために【ハイランダー】をその生贄にするというわけですね。【アビドス】復興の道は文字通り【ハイランダー】を使って舗装されるわけです」
十六夜 ノノミ「どうなんですか? ちがうと言えますか?」
ネフティス幹部「ち、ちが――――――」
ロボット職員「そういう言葉遊びをするんだったら、今すぐに
ネフティス幹部「そ、それは……」
小鳥遊 ホシノ「どういう意味ですか、ガリバーさん?」
ロボット職員「簡単なことですよ、ホシノさん。私が最初に文書偽造を疑ったじゃないですか。それです」
ロボット職員「つまり、この案件が架空契約であったことを認めさせることで、『【アビドス生徒会】と【セイント・ネフティス】の間で取引はなかった』と話を持っていくことで、『<列車砲>を含む砂漠横断鉄道の権利は今も昔も【セイント・ネフティス】のものであることに変わりない』となるんです」
ロボット職員「そのためには、契約書に署名してある【アビドス生徒会】に法的権限がないことを主張して認めさせることになります」
十六夜 ノノミ「それって、契約を結んだ【アビドス生徒会】に『生徒会としての権限がなかった』と言わせるのですか?」
ネフティス幹部「はい。梔子 ユメと小鳥遊 ホシノの2名によって構成された【アビドス生徒会】は『非認可の組織だった』と宣言するのです」
ネフティス幹部「前生徒会長は挙手投票で梔子 ユメに会長職を押し付けたそうですね?」
ネフティス幹部「つまり、その正当性を否定することは不可能ではありません。その事実を総会に出席して明らかにするのです。そうすれば――――――」
十六夜 ノノミ「何を言っているのですか!? そんなことをしたら、2年前にはもう【アビドス高等学校】は存在しないことになるじゃありませんか!」
砂狼 シロコ「それはさすがに許せないかな」
黒見 セリカ「そうよ! 私たちは自分の意思で【アビドス高等学校】の生徒になることを選んだのよ! ここが私たちの居場所なのよ!」
奥空 アヤネ「そうです! そんなやり方、認められるはずがありません!」
ネフティス幹部「い、いえ、これはそういった解決策もあるというだけで、不可能な方法だと思っています……」
ネフティス幹部「とにかく、砂漠横断鉄道の秘密を教えはしましたが、これといった解決手段はなさそうですね」
ネフティス幹部「私の方からも 良い解決策があれば ご連絡いたしますので、今日のところはこれで――――――」
――――――あら、この私を差し置いて【アビドス生徒会】の名を騙って勝手に取引だなんて、随分と思い上がったことをするものね、サテライトのクズ共が。
金獅子 シブキ「ごめんあそばせ」フフッ
ネフティス幹部「なっ」
朝霧 スオウ「む」
十六夜 ノノミ「――――――!」
ロボット職員「あ、あなたは……?」
砂狼 シロコ「え、誰?」
予想を遥かに超えて白熱した【セイント・ネフティス】との非公式の会合の場に、突如として金箔で飾り付けられた見るからに高価な扇子で口元を隠して不敵な笑みを浮かべて現れたのは、白と黒を基調とした【アビドス高等学校】の制服の上に金毛のボア付きのジャケットを羽織った金髪縦ロールのキツい目つきのネコ耳のご令嬢であった。白と黒のシンプルな色彩によって黄金のイヤリングやネックレスがアクセントとなる。
こうした外見的特徴から見る人が見れば“悪役令嬢”と呼ばれるキャラクターの典型例となっていることがわかり、金満な家庭の出身であることを誇示するかのようにキヴォトス人の嗜みとして身につけているデザートイーグルの金メッキモデルがレッグホルスターで輝きを照り返していた。よく見ると両手の指には左手の薬指を除いて金の指輪が嵌められてもいたのだ。
そして、ボア付きのジャケットの金毛や黄金のネックレスで首周りを金一色にすることで、それはライオンの
――――――彼女の名前は【アレクサンドリア財団】総帥:
実は、このライオン耳の金髪縦ロールの悪役令嬢こそが【アビドス高等学校】が抱えることになった原因不明の砂漠化以外の全ての問題に対する答えを持つキーパーソンであり、『前回』コーイチ先生では辿り着けなかった真相に『今回』北条先生が真っ先に辿り着いたことが
そう、文明の始まりと終わりを司る光の上級眷属たる“地帝大王母”イーリスによって明かされた 地上の王権を司る 人類発祥の地【アビドス】の“神秘”の在り方を体現した存在と言うわけであり、“キヴォトス最高の神秘”と評される“暁のホルス”小鳥遊 ホシノにとってコインの裏側の存在なのである。
事実、“繁吹きの
――――――それがどういう意味なのか、これから語られる中で自ずと理解していくこととなるだろう。
金獅子 シブキ「――――――『衣食足りて礼節を知る』という言葉の通り、これだから貧乏人は無知で無礼で無作法で困りますわ」
黒見 セリカ「急に現れて、いったい誰なのよ、あなた!?」
奥空 アヤネ「それに先程の発言はいったい――――――?」
金獅子 シブキ「そうねぇ、私の顔を見忘れただなんてそんなことはないわよね、【ネフティス】の方?」
小鳥遊 ホシノ「ノノミさん、いったい誰なんですか、この人は? それに着ているのは【アビドス高等学校】の制服ですよね?」
十六夜 ノノミ「この方は【トリニティ総合学園】でももっとも裕福な高級住宅街で幅を利かせている【アレクサンドリア財団】総帥:
黒見 セリカ「それって、つまり、お嬢様学校である【トリニティ総合学園】の中でもトップのご令嬢ってこと?」
奥空 アヤネ「もしかして【ティーパーティー】に所属するご令嬢たちと同格の方なのでしょうか?」
金獅子 シブキ「紹介してくれてありがとう、ノノミさん。そういう認識でいてもらっていいですわよ、サテライトの方」
小鳥遊 ホシノ「――――――『サテライト』?」
ネフティス幹部「ど、どうしてシブキ様がこちらに――――――?」
金獅子 シブキ「あら、私が来ると何かお困り? それとも、この私に隠れて楽しいお話でもしていたのかしらね?」
金獅子 シブキ「私、あなたたちがここに居るだなんてこと、まったく知らなかったのだけれど?」
ネフティス幹部「う、うぅ……」
朝霧 スオウ「………………」
ロボット職員「あの、お初にお目にかかりますが、【アレクサンドリア財団】総帥ともなる方が今日はどういったご用件で?」
金獅子 シブキ「そう、あなた様が“シャーレの職員”ですわね。あるいは“
金獅子 シブキ「その偉大なる足跡とご活躍の程はかねがね伺っております。お会いできて光栄ですわ」
ロボット職員「こちらこそ……」
金獅子 シブキ「それで、“シャーレの先生”から話は行っていないのかしら?」
ロボット職員「申し訳ありませんが、今日いらっしゃるお客様の中にはシブキ様の名前はなかったですね」
金獅子 シブキ「冗談よ、冗談」フフッ
ロボット職員「え」
金獅子 シブキ「敬愛する“シャーレの先生”に新生した【アビドス高等学校】の現在を教えられてね、それで時間を見つけてふらりと立ち寄ってみただけですのよ」
金獅子 シブキ「そうしたら、サテライトのクズ共がこの私に黙って【アビドス生徒会】を騙って【ネフティス】と裏取引をしているらしい話が聞こえてきまして。私、仕事柄、耳が大変いい方なんですのよ」ニッコリ
ネフティス幹部「ま、まずい。このままだと……」
朝霧 スオウ「すまないが、これで失礼させてもらう」
金獅子 シブキ「あら、こんなところで会えたことですし、せっかくですから一緒にお茶でもどう?」
ネフティス幹部「い、いえ! 私たちにはお構いなく! 急いでおりますので!」
朝霧 スオウ「そういうことだから、よくよく考えることだな、ホシノ!」
小鳥遊 ホシノ「あ、はい! スオウさんもお元気で!」
金獅子 シブキ「相変わらず、意気地がないこと。これだから【ネフティス】はいつまで経ってもサテライトから抜け出せないのですよ」
ロボット職員「あの、先程から口にしている『サテライト』というのはどういった意味なのでしょうか?」
金獅子 シブキ「あら、わからないのかしら?」
金獅子 シブキ「――――――“
ロボット職員「わかります。大都市の周辺にある中小都市で、大都市の機能の一部を担いながら、それ自体が都市としての主体性も持っている都市のことです。大都市への通勤者が多く住む住宅都市や工業都市など様々な種類がありますね」
金獅子 シブキ「
ロボット職員「は?」
金獅子 シブキ「察しが悪いのね? はっきり言わないとわからないのかしら? それとも、わからないフリをしているのかしら?」
ロボット職員「……それは やはり 侮蔑的な意味を込めて言っているのですね?」
金獅子 シブキ「
黒見 セリカ「何なのよ、急に!? いきなり現れて私たちのことを『
金獅子 シブキ「――――――『何様』? 私は
金獅子 シブキ「あなたたち
砂狼 シロコ「――――――!」イラッ
奥空 アヤネ「抑えてください、シロコ先輩……!」
小鳥遊 ホシノ「そうなんですか。そんな高等存在である
金獅子 シブキ「へえ、あなたが【アビドス生徒会】副会長:小鳥遊 ホシノさん……」
小鳥遊 ホシノ「な、何ですか?」
金獅子 シブキ「あなた、私のものになりなさい。そうすれば遊んで暮らせますわよ。もちろん、私があなたで遊んで暮らすわけですけど」
小鳥遊 ホシノ「……はあ?」
黒見 セリカ「な、何言っているのよ、あなたは!?」
奥空 アヤネ「いきなりホシノ先輩に何を言っているんですか!?」
金獅子 シブキ「まあ、お可愛いこと。ころころ表情が変わって見ていて飽きないですわね。
十六夜 ノノミ「先程からお戯れが過ぎますよ、シブキ様!」
ロボット職員「申し訳ありませんが、この子たちにもやることがありますので、今日のところは出直していただけないでしょうか?」
金獅子 シブキ「そうねぇ。先触れもなくやってきたわけだし、会えないのも時の運ですわね。でも、それがいい」
ロボット職員「あの、誰かと会いたいと言う話でしたら、伝言を承りますよ?」
金獅子 シブキ「そう。では、お願いしましょうか」
金獅子 シブキ「でも、その前にね?」
ロボット職員「はい、何でしょう?」
金獅子 シブキ「みなさん、よくお聞きになって」
――――――<シェマタ>の件でお悩みなら、【アビドス生徒会】の看板を返上すれば、後は私たち【アレクサンドリア財団】が
ロボット職員「なに!?」
十六夜 ノノミ「ええ!?」
黒見 セリカ「ど、どういうことよ? 実は、私たちの味方ってこと?」
奥空 アヤネ「だとしても、簡単には気を許してはいけない相手のような気がします……」
小鳥遊 ホシノ「それって、どういったお考えからなんですか?」
金獅子 シブキ「あら、私に時間を取らせるつもり? なら、それ相応の対価をいただかないと」
黒見 セリカ「な、何なのよ、さっきから! いちいち回りくどいのよ! 言うなら さっさと言いなさいよ!」
金獅子 シブキ「まあまあ、はしたないですわよ。心にゆとりを持ちなさい。『貴族たるもの、常に余裕を持って優雅たれ』よ」
砂狼 シロコ「悪いけど、あなたたちが“サテライト”と蔑んでいる場所で暮らしている人間はそんなことを言ってられるようなゆとりなんてない」
金獅子 シブキ「でしょうね。そこがいいところですわね、サテライトの」
砂狼 シロコ「は?」
金獅子 シブキ「だって、あなたたちの惨めさや醜さを見ていれば、
砂狼 シロコ「――――――ッ!」ジャキ!
黒見 セリカ「あ!」
小鳥遊 ホシノ「シロコさん!?」
バキューーーーーーーーーーーーーーーン!
砂狼 シロコ「グフッ」ドサッ ――――――着弾の衝撃で壁に叩きつけられる!
奥空 アヤネ「なっ!?」
黒見 セリカ「シロコ先輩!? 大丈夫ですか!?」
砂狼 シロコ「ウゥ・・・」ゴホゴホ・・・
金獅子 シブキ「あらあら、スロー過ぎて欠伸が出ますわね」シュー・・・ ――――――金メッキモデルのデザートイーグルの早撃ち!
金獅子 シブキ「まるでダメね。そんなんじゃ、大人の世界を渡り歩くことなんて無理よ。先に手を出した方が負けなのだから」クスッ
ロボット職員「いったい何を――――――!?」
十六夜 ノノミ「どうしてこんなことを――――――!?」
小鳥遊 ホシノ「ふざけるなッ! 今、私の大切な後輩に何をしたぁあああああ!?」ゴゴゴゴゴ!
金獅子 シブキ「だって、あなたたちサテライトのクズ共が【アビドス高等学校】の代表
ロボット職員「はあ!?」
十六夜 ノノミ「それはいったいどういう意味なのですか? それじゃあ、まるで――――――!?」
金獅子 シブキ「あら、『どういう意味』も何も、あなたたちは名前だけの存在よ。かつてキヴォトス最大の勢力を誇ってキヴォトス中から畏敬の念を持たれていた夢があふれる黄金郷【アビドス高等学校】の廃墟に後からやってきて勝手に他所様の看板を使って好き放題やってきた賊徒よ」
金獅子 シブキ「本当だったらアビドス自治区の全てはね、完全に【カイザーコーポレーション】の支配下に置かれる予定だったのよ。その予定を邪魔したのがあなたたち【アビドス高等学校廃校対策委員会】を自称する賊徒というわけ」
金獅子 シブキ「だから、あなたたちは【アビドス高等学校】の名を騙った罪でとっくの昔に殺されていてもおかしくなかったのよ、実際のところね?」
金獅子 シブキ「でも、馬鹿みたいに頑張っている様子が楽しそうだったから、私が賭けの対象にしてお目溢しをもらえるように取り計らったの」
金獅子 シブキ「そういうわけだから、この私はあなたたちにとって日頃の感謝を捧げるべき存在なのよ? あなたたち賊徒に生きてていい価値を認めてあげたのだから」
金獅子 シブキ「けど、状況が変わってしまったの。あのまま借金返済に追われるだけの青春で幕を閉じるのなら、この私がわざわざこうして引導を渡しに来る必要もなかった」
金獅子 シブキ「なぜなら、あなたたちは欲をかいてしまった;【アビドス高等学校廃校対策委員会】を自称する賊徒が勝手に【アビドス生徒会】の看板を使って【キヴォトス
金獅子 シブキ「これでもう賭けが成立しませんわね。あなたたちサテライトのクズ共が生かされている理由は私たち
小鳥遊 ホシノ「え?!」
十六夜 ノノミ「……な、何を言っているのですか、シブキ様?」
ロボット職員「ちょっと待ってください。それでは、まるで――――――」
金獅子 シブキ「そう、あなたたちはまさに地べたを這い蹲るだけの下層民。高みにいる人間の崇高な考えになど思い至ることなど決してない生まれついての愚者」
金獅子 シブキ「だから、自分で自分の首を絞める愚かな生き方しかできないのですわ。まあ、それが見ていて滑稽だから、愛玩動物として愛でている一面はありますわね」
――――――あなたたち【アビドス高等学校廃校対策委員会】は私たち“
小鳥遊 ホシノ「うぅうあああああああああ!」ビキビキ!
十六夜 ノノミ「ダメです、ホシノ先輩!」ガバッ
小鳥遊 ホシノ「は、放してください、ノノミさん! こいつは言ってはならないことを言った! みんなのことをこれ以上なく侮辱した――――――!」ジタバタ!
砂狼 シロコ「――――――!」ガタッ
黒見 セリカ「ダメです、シロコ先輩!」ガシッ
奥空 アヤネ「そうですよ! 無謀です!」ギュッ
砂狼 シロコ「で、でもぉ――――――!」ギリギリッ
金獅子 シブキ「さあ、どうしますか? 今回は<シェマタ>の件もあることですし、【アビドス生徒会】の看板を返すのであれば 見逃してあげますよ?」
小鳥遊 ホシノ「ふざけるなぁ! 誰がそんな――――――!」ジタバタ!
十六夜 ノノミ「ホシノ先輩ッ!」ググッ・・・
金獅子 シブキ「時は金なり;無駄な時間を取らせないで」ジャキ!
黒見 セリカ「や、やめてえええええええええ!」
砂狼 シロコ「ほ、ホシノ先輩……!」
奥空 アヤネ「あ、ああ……!?」
小鳥遊 ホシノ「くっ」
ロボット職員「聞いてくれッ! みんな、ここは僕に話をつけさせてくれ!」ドッゴーン! ――――――床が抉れるほどの拳をその場で叩きつけた!
金獅子 シブキ「…………!」
砂狼 シロコ「……ガリバーさん?」
ロボット職員「ごめん、修理費は後で出すから」パラパラ・・・ ――――――手についた土煙を払い除ける。
ロボット職員「でも、僕がみんなの代わりに妥協点を探るから、ここは僕に任せて退出してくれ!」
ロボット職員「立て続けの来客対応で疲れただろう? 休んでいいよ」
小鳥遊 ホシノ「で、でも、ガリバーさん――――――!」
ロボット職員「大丈夫だ、僕を信じろ。それに、ホシノにはみんなを守る責任があるだろう」
小鳥遊 ホシノ「それは……、わかりました、ガリバーさん」
小鳥遊 ホシノ「行きましょう、みなさん……」
十六夜 ノノミ「悔しいですが、ここはガリバーさんにお任せするしかありません……」
砂狼 シロコ「次は絶対に負けない……!」
黒見 セリカ「ガリバーさん、気を付けてね……」
奥空 アヤネ「無事をお祈りします、ガリバーさん……」
ロボット職員「――――――というわけだ」
ロボット職員「さあ、金獅子 シブキ」
ロボット職員「本当は殺す価値もないのがサテライトなんだろう?」
ロボット職員「だったら、銃を下ろして話し合おう」
金獅子 シブキ「賢明な判断ですわ。話し合いとはこのように落ち着いて行うものです。さすがは北条先生が自らの半身と呼ぶ御方ですわね」スッ ――――――レッグホルスターに黄金銃が収められる。
ロボット職員「北条先生はどこまでのことを知っているのですか?」ホッ
金獅子 シブキ「全てとは言いませんが、アビドス遠征が始まる前にこの私の許を訪れて【カイザーコーポレーション】から土地の権利を取り戻すのを手伝わされましたわ」
金獅子 シブキ「そして、アビドス遠征が始まって変形怪獣:ガゾートによる【アビドス】初の怪獣災害が発生したのを
金獅子 シブキ「まあ、【カイザーコーポレーション】に
ロボット職員「なんだって!? 【カイザーコーポレーション】に借金漬けにされていたんじゃないのか、あの状況は!?」
――――――
金獅子 シブキ「まあ。あなた様は“シャーレの先生”とはちがってお金の流れには鈍感なんですわね」
金獅子 シブキ「では、一から説明しましょう。北条先生がこの私の許に辿り着けたのは、圧倒的な兵力と資金力を誇り、全地区から恐れられ、同時に羨まれていたとされる 誰もが夢をつかむことができる【アビドス】の黄金郷伝説にありますのよ」
ロボット職員「……昔話をする気?」
金獅子 シブキ「あのですね、お金というのは貨幣経済が始まった頃と比べて全体的には常に右肩上がりに増え続けていて、景気の変動と金融政策による流通量の調整はあっても、市場経済が成長し続ける以上は増えることはあっても減ることは稀なんですのよ」
金獅子 シブキ「ですから、先生は原因不明の砂漠化が進む以前の金満だった【アビドス高等学校】の経済状況と砂漠化が進んだ後の人口流出の経路から、【アビドス高等学校】の中枢や財産が早い段階で遷されていたことを見抜いていたのですわ」
ロボット職員「それが【トリニティ総合学園】でもっとも裕福な高級住宅街で幅を利かせている【アレクサンドリア財団】の本拠地であり、そこが【真なるアビドス高等学校】の所在地というわけですか」
金獅子 シブキ「そういうことですわ。砂漠化が進行した理由が解明できない以上、いつまでも留まり続けて損を出し続けるのは愚者のすることです。そういう者たちが残り続けて現在のサテライトになっただけです」
ロボット職員「そういうことなら、経済的合理性に基づいた最適解だったと理解できますが、それはまるで企業の論理です。国家と同義の学園の立ち回りじゃない。簡単に土地を切り捨てる判断ができるのは異常です」
金獅子 シブキ「あら、誰が
金獅子 シブキ「私たちが 今 住んでいるのは、元々【アビドス高等学校】の一等地だった場所ですわよ。それを一昔前に【トリニティ総合学園】に盗らせて“中身は【アビドス】、看板は【トリニティ】”の中継貿易の拠点にする財テクで栄えた場所なんですから」
金獅子 シブキ「――――――【トリニティ総合学園 アレクサンドリア分校】。かつて【アビドス】を起源とする最古の神学校が建てられ、そこを中心に世界中から価値あるものを貪欲に病的なまでに蓄え続けた結果、自治区そのものが博物館となった知識の宝庫」
金獅子 シブキ「でも、実態は今も昔も【アビドス高等学校 アレクサンドリア分校】として存在し続けた場所なのよ。言うなれば、私たちの数ある別荘地の一つよ」
ロボット職員「――――――『中継貿易』!? あ、そういうこと!?」
金獅子 シブキ「同じことは【ゲヘナ学園】でもやっていますわ。【ゲヘナ学園 シーワ分校】というキヴォトス有数の繁華街を有するカジノの都がね」
金獅子 シブキ「だから、【旧キヴォトス
金獅子 シブキ「見なさい。私たち【真なるアビドス高等学校】の選ばれた民は【アレクサンドリア財団】を通じて地図上で“アビドス・トライアングル”と呼ばれる地域の【ゲヘナ】側と【トリニティ】側の都市に移住したのです」
金獅子 シブキ「つまり、古来から【ゲヘナ学園】ー【アビドス高等学校】ー【トリニティ総合学園】の三角貿易による巨大な経済圏が出来上がっていたわけで、野蛮なゲヘナ生には文化的な暮らしを提供し、清貧を尊ぶトリニティ生には贅沢の味を覚えさせて肥え太らせることで、私たち【アビドス】の意のままに経済を成長させていくことができたのです」
金獅子 シブキ「ですから、現在の【ゲヘナ】や【トリニティ】の人間がどれだけ羽振り良くして身形を飾り立てようと、私たち【アビドス】からすれば かつて私たちの手によって文明開化した 生まれも育ちも卑しい土人の末裔ってことになりますわね」
ロボット職員「でも、それが永遠には続かなかったのが現在という時代です」
金獅子 シブキ「ええ。だから、私たちは名を捨てて実を取った」
金獅子 シブキ「故郷を捨てたわけじゃないわ。生産性を失った土地の管理が面倒だったから、業者に貸し出して私たちのお金を使わずに管理させているだけに過ぎないわ。それは砂漠化の解決策が見つかるまでの一時のこと」
金獅子 シブキ「たしか、先生は“
ロボット職員「な、なるほど。そういう戦略だったのか……」
ロボット職員「一見すると、やっていることが砂漠横断鉄道の失敗で故郷を捨てた【ネフティス】と同じにしか思えなかったけど、どこまでも経済的合理性を追求する黄金郷の住人らしさとキヴォトス最大の版図を誇った歴史に基づいて一時的な首都機能移転を果たしていたというのが真相か……」
ロボット職員「それがキヴォトスで最も長い歴史を誇り 他を圧倒する数の生徒たちが次々と集まった キヴォトス最大の学園【アビドス高等学校】としての学園の論理なのか。決して企業の論理で動いてはいない……」
ロボット職員「じゃあ、
金獅子 シブキ「単にアビドス遠征での役割分担の話ではありませんか?」
ロボット職員「――――――『役割分担』?」
金獅子 シブキ「北条先生は【キヴォトス防衛軍】のアビドス遠征の指揮を執る“GUYSの先生”として学園間のトラブルに不介入の立場をとる一方、半身と評した“シャーレの職員”であるガリバーさんに現地の様々なトラブルに対応してもらうために」
金獅子 シブキ「もしくは、『想いを遂げてもらうため』とも言っておりましたが、粋な計らいだと思いません?」
ロボット職員「あ」
――――――シロコ、ホシノ、みんな! 戻ってきたぞ、アビドスのみんな!
ロボット職員「やっぱり、敵わないな、先生には……」ハハ・・・
金獅子 シブキ「まったくですわ。“連邦生徒会長”は最後にとんでもない方を外よりお招きになられましたわね」
ロボット職員「じゃあ、【アビドス】を救う切り札になった 砂漠の砂を建材にする技術を先生が発表された時は――――――?」
金獅子 シブキ「言わなくてもわかるでしょう! この私の代で原因不明の砂漠化を克服する手段が見つかっただけでも大きな進展ですわ! 悲願でしたもの! 感極まって嬉し泣きしてしまいましたわ!」
金獅子 シブキ「ですから、私たち【アレクサンドリア財団】は“シャーレの先生”のお味方ですわ。資金提供はもちろんのこと、
――――――当然、アビドス遠征の成功を【真なるアビドス高等学校】の代表として何よりも願っておりますわ。
ロボット職員「そうでしたか。よくわかりました」
金獅子 シブキ「そう? なら、私がどれだけ此度の【セイント・ネフティス】のサテライトがサテライトたる所以の蛮行の数々に腹を立てているか、あなた様にはわかりますわね?」
ロボット職員「え」
金獅子 シブキ「私たちの救い主となる北条先生のアビドス遠征の足を引っ張っただけじゃなく、<列車砲:シェマタ>なる無用の長物を私たちに無断で造り出しておいて、完成させるわけでもなく未完成のまま放置するだなんて――――――、それが夢があふれる黄金郷の住人のすることですか! 途中で投げ出すなど、恥を知りなさい!」
金獅子 シブキ「やはり、黄金郷の輝きの精神を持たぬ者は何をやっても中途半端で手垢塗れの見苦しさしかないものですわね。
金獅子 シブキ「何より、私たちの帰るべき故郷である【アビドス】の雄大で美しい大砂原を砂漠横断鉄道と称した粗大ゴミ置き場にした罪は万死に値する!」
ロボット職員「――――――『黄金郷の輝きの精神』?」
ロボット職員「……何だ、それは? これが【真なるアビドス高等学校】の生徒たちの校風なのか?」
ロボット職員「でも、そうか。『前回』【アレクサンドリア財団】総帥:金獅子 シブキが僕の前に現れることがなかったのは砂漠化の解決手段が見つからなかったから。ずっと“アビドス・トライアングル”の【ゲヘナ】側と【トリニティ】側で事態を静観し続けていたからなのか……」
ロボット職員「なるほど。長年の謎が解けてスッキリしました。ありがとうございました、シブキさん」
金獅子 シブキ「あら、そうですか。それはよかったですわね。私も嬉しいですわ」
ロボット職員「では、シブキさん、ここからは“シャーレの職員”としての責務を全うするべく、妥協点を探らせてください」
――――――どうか、今日まで懸命に【アビドス】の名を守り通そうとしてきた生徒たちに寛大な措置をお与えください!
2つ、陰謀の夜を超えること。
3つ、王権を自ら掴み取ること。
神代キヴォトス人「ほう、金無垢ならぬ金の垢を撒き散らす闇怪獣と化した爆弾怪獣:ゴーストロンの相手を我らがしていた裏で、夢があふれる黄金郷の支配者の地位を受け継ぐ者が訪れたというわけか」
神代キヴォトス人「――――――なるほど、神名を“繁吹きの
神代キヴォトス人「道理で先生が地球のロータリークラブを真似たところ、【
神代キヴォトス人「そうだったのか。そういうことか。そういうわけで『先生がわざわざイーリスに会う必要がない』というわけか……」
神代キヴォトス「イーリスの生まれ変わりである もうひとりの【アビドス】の神秘の継承者と会ったことで アビドス遠征が始まった――――――。これはそういう話だ、コーイチよ」
神代キヴォトス人「そして、コーイチがキヴォトスの子らと共にイーリスに“光”を見せたことで、虚構のベールに包まれた現実の本当の姿が“
神代キヴォトス人「それを告げるために肉体を持ったイーリスの生まれ変わりがアビドスの子らを訪ねてきたのだな」
――――――これらのことは全てその証だ。光の屈折によって7つに分かたれた光が創り出す幻を“
錠前 サオリ「……着いたぞ、先生」
秤 アツコ「……やっぱり、ホシノは家に帰っていたね。家の中に居るよ」
北条先生「ありがとうございます。ここで待っていてください」
錠前 サオリ「本当に大丈夫なのか、先生? 闇怪獣と化していた爆弾怪獣:ゴーストロンが黄金怪獣:ゴルドンを地上へと追い立てて私たちの目の前に現れたわけだが、それで今――――――」
秤 アツコ「サッちゃん。そのことは後にしようよ。他にもゴルドンが棲息している痕跡があったわけだし、先に片付けられるものから終わらせよう」
北条先生「では、行きますか」スッ
いつかのように地球人:北条 アキラは小鳥遊 ホシノの家を訪れることになり、まずはチャイムを鳴らすのではなく、あらかじめ決めておいた秘密の合図を送った後、迷いのない動きで合鍵を取り出して玄関の扉を開けた。
明かりの点いていない家の中を進み、一度は足を踏み入れたことのある女の子の部屋の扉の前で一呼吸置いてから北条 アキラは扉を開けた。
すると、そこにはカーテンが閉められていない窓から夜の光に差し込むベッドの上で膝を抱えてジッとしている少女の姿があった。
――――――その瞬間、ウルトラマンの心を教育現場で実践しようと
込み上げてきた吐き気と目眩と共に思わず駆け寄りたくなった衝動を抑えて、本職が小学校の先生である地球人:北条 アキラは小学生の背丈しかない小柄なキヴォトス人の生徒の名前を呼びかけた。
しかし、心ここに在らず、返事がない;何が一人の少女をここまで追い詰めてしまったのか――――――。
いや、わかっている。その責任の一端を担っているのが自分だからこそ、北条 アキラは逃げずに真正面から立ち向かうのである。たとえ、誰かのせいだと信じていた現実の正体が誰のせいでもなかった虚構に過ぎなかったとしても。
なぜなら言葉が意味を変え、昨日の真実が今日の嘘になり、今まで信じていたものが偽物であったと突きつけられたとしても、本物であろうとする心こそが真実の姿なのだ。
目指そうとしなければ永遠に辿り着くことがないのが宇宙の真理ならば、目指そうとした瞬間から夢が叶う未来の可能性がごくわずかであっても必ず生まれているのだ。
――――――ウルトラマンは神ではない。どんなに頑張ろうと、救えない命もあれば、届かない想いもある。
――――――大切なのは最後まであきらめないこと。
――――――そう、今の僕は
あの時、
そうすることで少女を覆う黒い靄のようなものが浮き上がり、ブライトスティックを剣に見立ててランバルト・レイランスの流れで腰から振り抜いて切り払い、切り離された黒い塊を掴み取ると、たちまちのうちに北条 アキラの心身を蝕む猛毒となった。
目が天を向き、口が跳ね上げられ、胸が張り裂けそうになり、全身から脂汗がどっと噴き出るほどの苦しみやのたうち回りたくなる辛さにより、思わず膝から崩れ落ちて意識が飛びそうになったものの、そんな時にいつも心には“光”があった――――――。
荒れていた呼吸が静けさを取り戻し、明かりも点けずにベッドの上でずっと膝を抱えている少女とちょうど同じ目線の高さになっていたのに気づき、このままの姿勢でいることにした。
自分の中に吸収された黒い塊の正体こそが怪獣頻出期を乗り越えた後の平和な時代に怪獣を生み出すことになるマイナスエネルギーの源である人間の負の感情であり、
マイナスエネルギー怪獣:ゾンビソリチュラが目の前で少女の中の昏い感情から現れた瞬間を目撃したことによってマイナスエネルギーに対する感度が研ぎ澄まされていたことで、
アビドス砂漠の未調査領域で遭遇した 爆弾怪獣から別名を変えるべきだと思った 地底怪獣:ゴーストロンの討伐が完了した後、そこから遠く離れた場所で膝を抱えてジッとしている少女の異変に真っ先に気づくことができていたのだ。
それこそ、2,3日しないうちに怪獣を生み出すほどのマイナスエネルギーにまた成長することになる昏い感情が爆発寸前であったが、それを解体する苦労と苦痛を今さっき嫌と言うほど味わったばかりだと、“
それは 止まることを知らない砂漠化に呑み込まれてしまった 廃墟も同然の街並みで費やされてきた まさに砂まみれの青春の記憶の断片であり、数十年前のとうの昔にかつての栄光が失われてしまった学園の自治区のために一所懸命に生きてきたことへの報われなさであった。
しかし、あの時はゾンビソリチュラになったので対策は十分ということで速攻で倒すことができたが、もし仮に次に具現化したマイナスエネルギー怪獣が月の輪怪獣:クレッセントや硫酸怪獣:ホーなどになってしまった時の被害を考えると、昏い感情が爆発してマイナスエネルギーを生み出してしまう前に誰かが体を張って何とかするしかなかったのだ。
そう、その苦しさや辛さを肩代わりするためには急性アルコール中毒で即死する恐れのある火酒*1を勢いよく呑み干すような覚悟が必要であり、怪獣退治の現場は常に死と隣り合わせなのに対し、この日 “GUYSの先生”は自分の寿命が何日か縮まった感覚さえしていた。
しかし、無から有を生み出す無限に思われたマイナスエネルギーにもエネルギー保存の法則が働いているわけであり、ますます自責の念に駆られて立ち直れなくなって干からびっていた精神の行く末とは、最終的には目の前でそうなっているようにマイナスエネルギーが生まれなくなるぐらいに心が空っぽになることである。マイナスエネルギーの放出は世界の理を塗り替えるほどの悪い奇跡であっても、奇跡は奇跡、奇跡の代償は決して安いものなんかじゃないのだ。
そのため、キヴォトスで自他共に認める唯一の怪獣退治の専門家であり、密かにマイナスエネルギー対策の第一人者を自負している“GUYSの先生”としては、一度あることは二度あるということで、故意ではないにしてもマイナスエネルギー怪獣を生み出してしまった前科があるということで【ドキュメント・フォビドゥン】にリスト入りしている少女への
朝霧 スオウ「やはり、ここにいるのだな、先生は」
錠前 サオリ「こんな夜更けに何の用だ、スオウ監督官?」ジロッ
秤 アツコ「今日は帰って。先生は 今 ホシノに会っているの」
朝霧 スオウ「そうだろうな」
朝霧 スオウ「だからこそ、ここで“シャーレの先生”に我々の要求を呑ませる必要がある!」ジャキ!
錠前 サオリ「――――――正気か!?」ジャキ!
秤 アツコ「………………!」ジャキ!
錠前 サオリ「いったい何があった? お前も日頃から先生に良くしてもらっているだろうに」
朝霧 スオウ「ああ。たしかに、私には先生への恩義がある」
朝霧 スオウ「だが、私は【ハイランダー監理室】の管理監督官だ。【ハイランダー鉄道学園】の存続のために存在する」
朝霧 スオウ「――――――先生にはまんまと一杯食わされたよ」
錠前 サオリ「?」
秤 アツコ「もしかして今日やってきた【アレクサンドリア財団】の総帥の件と何か関係が――――――?」
朝霧 スオウ「そうだ! 私を使って【ハイランダー鉄道学園】に対して【真なるアビドス高等学校】からの最後通告を意味する“王冠の貸し出し”が仕掛けられていたのだ!」
錠前 サオリ「待て! 何だ、それは!?」
朝霧 スオウ「まあ、知らないことだろう。私も知らなかった。理事会の連中も知らなかった。もしかしたら、先生自身も知らなかったことだと思うが」
秤 アツコ「もしかしてサーベラス様が創っていた金銀ダイヤモンドを敷き詰めた宝冠のこと? たしか、大事に運んでいったよね?」
朝霧 スオウ「ああ、それだ」
錠前 サオリ「ああ、思い出したぞ。あれは“怪獣釣り堀”で
朝霧 スオウ「私は先生に王冠を理事会に運ぶ契約を交わした後、慎重に慎重を重ねて【ハイランダー】まで持ち帰り、無事 何事もなく理事会で王冠を披露することができた」
朝霧 スオウ「あげたわけじゃないから盗難届や保険金が準備されていることを言い含めて、わざわざ王冠という大層な代物を渡してきて期日までに返却するように言ってきた意味は理事会でも理解されることなかったが、」
朝霧 スオウ「後日、砂漠化によって衰退する以前の黄金郷【アビドス高等学校】を識っていた理事会の長老が現れ、私たちはかつて【アビドス】がキヴォトスに最強校として君臨していた歴史の真実を目の当たりにすることになったのだ」
――――――かつて【アビドス高等学校】では
錠前 サオリ「????」
秤 アツコ「――――――
錠前 サオリ「なに?」
朝霧 スオウ「そうだ。『
朝霧 スオウ「かつての【アビドス】では他を圧倒する兵力と資金力を最大限に利用して、豪華絢爛に誂えた王冠を他校に送りつけては、王冠を送り返せば 王冠に相応しくないことを自ら認めて服従したものと喧伝し、王冠が送り返されなければ 戦争を仕掛ける大義名分を得たとして大挙して押し寄せ、破壊と略奪の限りを尽くしたのだ」
朝霧 スオウ「そうして平和的・暴力的を問わず屈服させた他の自治区にアビドス系の団体や企業を進出させて、その後の自治区の開発計画や復興計画を思うがままに操り、自分たちの更なる権益の拡大を続けてきた結果がキヴォトス最大の学園というわけだ」
朝霧 スオウ「そうすることで長年に渡ってキヴォトス各地でその影響力を維持し続け、各地との接点を得てキヴォトス中から夢があふれる黄金郷【アビドス高等学校】へ入学を志望する生徒たちを集めて、それが更なる兵力と資金力の強化に繋がっていたのだ」
朝霧 スオウ「――――――それが現代に蘇ろうとしている!」
錠前 サオリ「それが何だと言うのだ? 今の【アビドス】にそんな力はない! 砂漠化に呑まれた結果が今の現状だ!」
朝霧 スオウ「いや、今もある! やつらは北条先生のアビドス遠征で【アビドス】復興が完全に果たされると踏んで、砂漠横断鉄道の廃止をその“伝統的なやり方”で最終通告してきたのだ!」
秤 アツコ「そうだったんだ」
朝霧 スオウ「そうだ。だから、【ネフティス】と組んで砂漠横断鉄道の再開発を推進した【
朝霧 スオウ「そのことが“
朝霧 スオウ「そうなれば、砂漠横断鉄道は電気鉄道からやつらの要求で最先端の
朝霧 スオウ「ただでさえ、怪獣無法地帯で鉄道工事を強行したことへの世間の風当たりが強いというのに、ここに来て“王冠の貸し出し”が重くのしかかってくるとはな……」
秤 アツコ「……大変なんだね」
錠前 サオリ「……ああ、【ハイランダー】が苦しい状況に追いやられていることはわかった」
錠前 サオリ「だが、お前も知っているように“シャーレの先生”であり“GUYSの先生”である
朝霧 スオウ「いや、失踪した“連邦生徒会長”に代わって エデン条約を締結する【ゲヘナ学園】と【トリニティ総合学園】の和平を進めているだろう!」
秤 アツコ「それとこれとでは話がまったくちがうと思うけど」
朝霧 スオウ「む」
錠前 サオリ「姫」
秤 アツコ「怪獣退治の専門家として喚ばれた北条先生の徹底した安全第一主義に逆らって怪獣無法地帯で鉄道工事を強行した【ハイランダー】に、砂漠化問題の最終的な解決方法を提示することもなく無策で砂漠横断鉄道の再開発を決定した無能な【セイント・ネフティス】に掛けられる慈悲なんてないと思うのが普通だよ」
朝霧 スオウ「……それでも、【ハイランダー鉄道学園】としては一部署の失敗を全体で責任をとらされることに不服に申し立てる部署や派閥が存在している。独立を求める派閥の勢いが増すことになる」
秤 アツコ「じゃあ、【ハイランダー鉄道学園】の名前を捨てて本当に独立すれば? これまでどれだけその名前に助けられて利用してきたかも省みずに、都合が悪くなったら他人のフリをするのはどうなの?」
秤 アツコ「――――――【アビドス対策委員会】のみんなを見習ったらどう? あの子たちは過去の栄光も悪名も全部背負った【アビドス】の名前を誇りに思って今日まで頑張ってきたよ!」
秤 アツコ「私たち【アリウス】には歴史なんてない。その名を誇りに思ったこともない。だから、【アリウス】の名はいつでも捨てられるものでしかない」
秤 アツコ「それと比べたら、あなたたちには大切にしたいと思えるものがたくさんあるのに、大切にしたいと思える何かのせいでかえって不幸になろうとしているよね」
朝霧 スオウ「それは……」
秤 アツコ「じゃあ、聞くけど【ハイランダー鉄道学園】としては『
朝霧 スオウ「……私たちの自治区や財産は鉄道路線に集中している。攻撃する側としては路線のどこか;架線なり軌道なりを爆破して鉄道を運行不能状態に陥れるだけで私たちの息の根を止めることがいつでもできる」
錠前 サオリ「つまり、最初から負け戦ということか」
朝霧 スオウ「そうだ。【ハイランダー】の自治区として施設が鉄道沿線に並んでいるのは、防衛面で脆弱極まりない 生命線である 鉄道を守る外壁としての役割が期待されているからだ」
朝霧 スオウ「だが、伸び切った鉄道全域を守りきれるだけの兵員や兵器など存在するはずがない。同時多発テロを起こされたら一巻の終わりだし、攻撃ヘリコプターを撃ち落とす対空砲の配置にも限界がある」
秤 アツコ「じゃあ、弱点だらけの長大な架線や軌道が必要不可欠の電気鉄道なんてやめて
錠前 サオリ「そうだな。そもそもとして、他の学園の自治区という扱いになる【ハイランダー】の鉄道路線がアビドス砂漠にできることが一番の問題点のように思えるから、私なりに考えたが【ハイランダー】はアビドス砂漠から撤退するしかないだろう」
秤 アツコ「だから、誰かが責任を取るしかないよね。残念だけど」
朝霧 スオウ「……さすがは先生の一番弟子だな。理路整然としているな」スッ ――――――銃を仕舞う。
錠前 サオリ「わかってくれたか」
朝霧 スオウ「なら、もしも私が【ハイランダー】を――――――」
朝霧 スオウ「………………」
錠前 サオリ「どうした? 何を言おうとした?」
朝霧 スオウ「いや、気にするな。何でもない」
秤 アツコ「――――――いいと思うよ、朝霧 スオウ」
朝霧 スオウ「なに?」
錠前 サオリ「姫」
秤 アツコ「だって、朝霧 スオウは先生のことが大好きで、ホシノのことも気になっているんでしょう?」
秤 アツコ「だったら、近くで見守ることができる場所に居続ければいいと私は思うな」
錠前 サオリ「なに! そうだったのか?」
朝霧 スオウ「なっ」カアアア!
秤 アツコ「当然の話だけど、アビドス遠征が終わったら 先生も私たちも【アビドス】を去ることになるんだけど、広大なアビドス砂漠で怪獣がまた現れた時にすぐに対応できるように【キヴォトス防衛軍】の前線基地は新アビドス自治区に残していくことが決まっているんだよ」
秤 アツコ「だから、あなたはそこで働いて これから生まれ変わる【アビドス】の平和を見守り続ければいいと思うよ」
朝霧 スオウ「……そうか」
小鳥遊 ホシノ「あれぇ? 先生ぇ、このお姉ちゃんたちは誰ですかぁ?」
北条先生「ああ、このお姉ちゃんたちはね――――――」
朝霧 スオウ「!?」
秤 アツコ「あ……」
錠前 サオリ「もう大丈夫なのか、先生?」
北条先生「――――――
錠前 サオリ「え」
小鳥遊 ホシノ「あ、あの、はじめまして。小鳥遊 ホシノです。今日はお見舞いに来てくれて、ありがとうございました」
朝霧 スオウ「は、『はじめまして』だと、ホシノ!?」
小鳥遊 ホシノ「え?」ビクッ
朝霧 スオウ「あ、いや、すまない。怖がらせるつもりはなかったんだ、ホシノ」スッ ――――――自然とホシノと同じ目の高さになった。
朝霧 スオウ「ただ、ほんの短い間だったが、
朝霧 スオウ「ほら、ゲヘナの風紀委員長と一緒に映画を見た後で釣り大会で優勝を飾っただろう? その時の楽しい思い出もなくなってしまったのか?」 ――――――普段から想像もできない優しい声で語り掛ける。
小鳥遊 ホシノ「そうだったんですか? じゃあ、スオウお姉ちゃんと呼ばせてください!」
朝霧 スオウ「あ、ああ……」ドクン!
朝霧 スオウ「こ、これはいったいどういうことなんだ、先生?」
錠前 サオリ「ああ、【アビドス高等学校廃校対策委員会】委員長としてシロコたちを力強く導いてきた2年間の記憶が失われたばかりじゃないか……」
秤 アツコ「やっぱり、きっかけは金獅子 シブキ?」
北条先生「その通りではあるんだけれど、小鳥遊さんは根が真面目過ぎたんだ」
北条先生「因果応報・善因善果・悪因悪果はたしかに天地の法則ではあるのだけれど、人は往々にして それを自分個人にだけ適応されているものと勘違いし、組織や団体、地域や国家にも適応されていることを知らないから、こうなる」
秤 アツコ「つまり、ホシノは自分の頑張りが報われなかったから、『過去の全てを否定した』ということ?」
北条先生「そうなります。『自分が良いことをしたら良い結果が絶対に返ってくる』と思い込んで、思い通りにならなかったからこそのワガママと言えばそうでしょうけど……」
朝霧 スオウ「……それは『ホシノが馬鹿だった』とでも言いたいのか!?」
北条先生「ええ、馬鹿は馬鹿でも、それは『馬鹿正直』というものです」
朝霧 スオウ「…………ッ!」
北条先生「精神年齢が小学生になったのも、僕が小学校の先生だからなのも大きいのでしょう。ゲヘナの風紀委員長:空崎 ヒナさんとも交友関係を持ったことで、僕が小学生に対して一番真摯であることも伝わっていたようですし」
北条先生「正直に言って、本職が小学校の先生である僕にとっては一番キツい展開です」
北条先生「僕はね、子供たちの最初の義務教育の場である小学校の先生だからこそ、自分の人生を自分で決めることができるように真っ当な人間の生き方を最初の場所で身に着けて、次の人生の
北条先生「つまり、戻ってきて欲しくないんです、卒業生には。自分だけの人生を掴み取って別天地で成功することをただ願っているのです」
北条先生「だから、
小鳥遊 ホシノ「先生? お姉ちゃんたちと何を話しているの? 私も混ぜてよぉ?」ネエネエ・・・
北条先生「ああ、ごめんね。これからお姉ちゃんたちと帰るわけだけど、一人で大丈夫かな?」
小鳥遊 ホシノ「うん、大丈夫!」
北条先生「今日の朝は迎えに行くから、それまでに学校に行く準備を済ませておいてね」
小鳥遊 ホシノ「はーい!」タッタッタッタ・・・ ――――――元気よく玄関へと向かう!
北条先生「…………くっ」
錠前 サオリ「…………先生」
秤 アツコ「…………生きるって難しいね、先生」
朝霧 スオウ「…………なんてことだ、ホシノ」
北条先生「じゃあ、鍵はちゃんと締めて、朝ご飯はちゃんと食べること」
――――――おやすみなさい、小鳥遊 ホシノさん。またね。
-Document GUYS feat.LXXX No.17-
爆弾怪獣:ゴーストロン 登場作品『帰ってきたウルトラマン』第8話『怪獣時限爆弾』登場
一説には凶暴怪獣:アーストロンの弟とも言われている地底怪獣であり、リーゼントのようなトサカが特徴で厳つい見た目をしているが、
実際のところは見た目の割に鳴き声は愛嬌があり、アーストロンの弟とは思えないぐらいに愚鈍な性質の地底怪獣であった。
地底怪獣らしく通常は地中で生活しており、視力も手が届く範囲ですでにピントが合わず20メートル程度しか見えないぐらいに退化している反面、鋭い聴覚が発達しており、音に反応すると通常より動きが速くなる。
地底を1日に半径約20キロメートルを掘りながら移動し、主食は黄金で 一度の食事で金鉱一つ分の金を食べ尽くすため、体中に金が混じっており、鱗一枚でも5億円の値打ちがあると言われた。
また、地底怪獣らしくウルトラマンを圧倒する怪力に備え、皮膚も鉄より硬い強度を誇り、口から火炎放射をすることができるが、視力の弱さゆえにかなり命中率は低い。
地上に出ていたところをMATのパトロール機に発見され、郷隊員操縦のマットアロー2号が発射した岸田隊員発明の新型ウルトラロケット弾:X弾が尻尾の表皮から30センチメートル内側に突き刺さるが、ゴーストロンの火炎放射をかわして発射の際に誤って10時間後にタイムリミットを迎える時限装置を設定してしまい、尻尾に突き刺さったまま地中へ逃亡させてしまう。
そのため、10時間後に怪獣を木端微塵にする威力の爆弾が爆発してしまうため、何としてでも爆発前にゴーストロンを仕留めなくてはならなくなってしまった。
その後、東京都心へ向かう動きを一時みせるが、方向を変えて日々化学のダイナマイト工場が存在する青木高原へ向かった際に偵察中のマットジャイロの飛行音と工場のサイレンに反応し、そのまま工場のそばに居座って眠り込む。
やがて、音には敏感に反応することを見破った郷隊員が、改造したマットジープに装備したサイレンを使って誘導して工場から引き離すことに一時成功するが、またしても工場のサイレンに反応してジープが破壊され、元の位置へ戻ってしまう。
いよいよ郷隊員が変身したウルトラマンジャックだったが、ゴーストロンは持ち前の怪力で制止を振り払い、再び工場のすぐそばに座り込んでしまう。
明らかに隙だらけのゴーストロンだったが、埋め込まれたX弾と近くのダイナマイト工場のために光線技を使用できず、爆発まであと1分といったところまで差し迫った。
しかし、土壇場でウルトラマンはドリルのように回転して地中へ潜行し、ゴーストロンの真下から突き上げることで、そのまま遥か上空へと運び去られ、宇宙空間でタイムリミットを迎えたことでゴーストロンは爆死した。
そのため、ゴーストロンの別名である“爆弾怪獣”は郷 秀樹ことウルトラマンジャックのMAT隊員時代のミスによってX弾が炸裂することなくゴーストロンの体内に埋め込まれ、ゴーストロンがサブタイトル通りの『怪獣時限爆弾』になってしまった事件に由来することから、実態に即していない別名ということになる。
残り半分を切った広大なアビドス砂漠の未調査領域の調査も大詰めとなるが、その裏で因果を操作して人々を意のままに操っている何者か“
そんな中、“シャーレの研究員”神代キヴォトス人:サーベラスの調査隊の目の前に傷ついた黄金怪獣:ゴルドンが地底より現れ、純金で構成された皮膚の欠片を撒き散らしながらアビドス砂漠を駆けていったのだった。
地底を時速150kmの猛スピードで掘り進むことができるゴルドンの追跡は別方面に展開していた“シャーレの先生”地球人:北条 アキラの調査隊に任せて、
金を主食とする生態からゴルドンを追いかけて捕食しようとする別の地底怪獣:ゴーストロンが闇怪獣と化して現れたのを迎え撃つこととなり、光の眷属:サーベラスは光怪獣:パワードゼットンを召喚して闇怪獣:ゴーストロンと対決となった。
結果は言うまでもなく、宇宙に名だたる最強種の力で辺境の惑星に出現した地底怪獣を完膚無きまでにボコボコにすることになり、鋭い手刀で容赦なく抉り取ったゴーストロンの皮膚がいくらでも採取されることとなった。
最後は地底怪獣にとってお馴染みの口からの火炎放射で抵抗するものの、ゼットンの代名詞である1兆度の火球に呑み込まれて消滅した。
一方、ゴーストロンに喰い殺されそうになって地上を逃げ回るゴルドンの方は北条 アキラの指揮で形成された包囲網の中で追い立てられた末に力尽きることになり、ゴーストロンの攻撃によって欠損状態が激しいものの、黄金怪獣の見事な怪獣標本を手に入れることとなった。
また、怪獣退治をした後始末として、今回は金を主食とする怪獣の破片が砂漠に散らばったため、人は欲望に正直なものであり、回収班の人間じゃなくても 誰もが目を輝かせながら自分から回収作業へ参加の意思を表明して 熱心に回収作業に従事することになった。
しかし、怪獣の体組織に含まれていた金を市場に放出させるわけにはいかないため、今回ばかりは回収した金と同じだけの金塊と引き換えられるようにする宣言をすることになり、信頼できる貴金属取引の企業を通じてゴーストロンやゴルドンの皮膚の産出された金の流通を阻止する枠組み作りに追われることになったのである。
ところが、怪獣退治の結果を包み隠すことなく報告する義務があるため、かなり言葉を選んで定例会見を行ったものの、人の口には戸は立てられぬというわけで、
これ以後、一攫千金を狙って非常事態宣言が発動している怪獣無法地帯:アビドス砂漠に出入りする侵入者が現れるようになり、このことが無秩序なゴールドラッシュを招いて大惨事を引き起こすきっかけになってしまうのだった――――――。