Blue Archive -Document GUYS feat.LXXX-   作:LN58

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app17 怪異の鎧と退魔の剣(復讐の先の勇気の力)の最強ヒーロー 作者:朽木 修羅

 

 

――――――時刻は正午と呼ぶにはまだ早すぎる頃!

 

 

この日、地球人:北条 アキラが【真なるアビドス生徒会】の仲介によって【カイザーコーポレーション】から校舎周辺の限られた地域を取り戻して成立した新アビドス自治区で大規模な抗議集会が行われていた。

 

実情は複雑怪奇なものだったものの、かつてキヴォトス最大の勢力を誇っていた【アビドス高等学校】が企業の侵略を受けていた事実に危機感を覚えていた生徒たちがキヴォトス各地から集まっていたのである。

 

特に、この日は学園外勢力でかつ一度は故郷を捨てている前科持ちの大企業【セイント・ネフティス】を名義人にした【プライベートファンド】の総会がアビドス中央駅旧庁舎で開催されることになり、数日前から総会の防衛のために大多数の部隊が展開されて防衛網が形成されるという非常事態となっていた。

 

そのため、それだけ集まった大兵力を持ってすれば、今回の総会の議題となる【セイント・ネフティス】と【アビドス生徒会】が結んでいたとされる契約を新アビドス自治区への侵攻で覆すことも可能であるという危惧もあり、

 

総会に参加することになる【アビドス高等学校】の面々に代わって、学園都市:キヴォトスの学園による独立自治の理念を堅守する立場から多くの生徒たちが結集して新アビドス自治区の防衛の任を買って出たのである。

 

というのも、砂漠化で衰退したとは言え かつてはキヴォトス最大の勢力であった【アビドス高等学校】が学園外勢力によって支配されたことが公然の事実となれば、学園都市:キヴォトスに数千は存在するという学園が弱小校から次々と併呑される負の連鎖が予想され、たとえば利潤追求のためならなんだってするブラック企業の代名詞である悪名高き【カイザーコーポレーション】による学園の支配など到底受け入れられるはずもないのだ。

 

それと同じことを砂漠横断鉄道という本当に砂漠化対策になっているか怪しいものに全力投球の【セイント・ネフティス】やその背後にいる【プライベートファンド】が目論んでいるともなれば、キヴォトス中が今こそ団結して学園外勢力に対してNOを叩きつけて勢いを削がなければ『【アビドス】の次は明日は我が身』という危機感が共有されていったのである。

 

そもそもとして、失踪した“連邦生徒会長”の実質的な後継者として今日も今日とてアビドス遠征の陣頭指揮に立っている“シャーレの先生”にして“GUYSの先生”である地球人:北条 アキラが砂漠横断鉄道の再開発は時期尚早で迷惑千万と公言しているため、その忠告を無視して怪獣無法地帯で工事を強行して 案の定 怪獣に襲われた無様さをキヴォトス中が見ているのだ。

 

半世紀に渡る怪獣頻出期の歴史とウルトラの記憶を背負って愛と勇気と人命第一主義を貫く怪獣退治の専門家:北条 アキラの忠告すら平然と無視して痛い目を見る大人のやり方がキヴォトスの歴史に刻まれた瞬間であった。

 

このため、今回のデモ集会の主催は【アビドス高等学校】と事実的な同盟関係を結んだメトロポリス系環境保護NGO【イエローピーナッツ】やそれに連なる連邦主義者(Federalist)の働きかけが非常に大きかったのだが、

 

連邦主義者(Federalist)たちとは別に純粋に企業の侵略を学園の存続の危機と認識し、率先して動いていたのが【百鬼夜行連合学院】とりわけ【百花繚乱紛争調停委員会】であり、それぞれ独自のルールを定めている部活や委員会が連合を組むことで学院として成り立っていることから組織としては非常に緩い寄り合い所帯であったことから、学園外勢力の資本の流入による経済的な支配や分断に強い警戒心を抱いていた。

 

デモ集会は問題となる総会の終了時刻となる正午まで開催される予定ではあるが、それと同時に【連邦生徒会】からの通達で、これまで歴史の影に潜んでいた【真なるアビドス生徒会】からの怒りの鉄槌でサーモバリック爆弾が会場に発射されることも告知されていたため、

 

その緊急避難のために新アビドス自治区に【プライベートファンド】が集めた戦力が怒涛のように押し寄せてドサクサに紛れて実効支配に乗り出す可能性も無きにしも非ずということで、デモ集会の警備はアビドス中央駅の方面に力を入れることになっていた。

 

とは言え、現在の【アビドス高等学校】が存在する新アビドス自治区は砂防壁で囲まれ、更には怪獣無法地帯と化した旧アビドス自治区の廃ビル群に対怪獣兵器が仕込まれた防衛線が構築されているため、【キヴォトス防衛軍】の実力を正しく理解しているのならば無謀な突撃は起こるはずはなかった――――――。

 

 

――――――しかし、変化とは常に常識の外から突如として訪れるものだ。

 

 

ワイワイ、ガヤガヤ、ワーワー!

 

 

神代キヴォトス人「みな、精を出しているようだな」

 

七稜 アヤメ「あ、サーベラス様! サーベラス様だ!」

 

神代キヴォトス人「おお、よしよし。アヤメもよく来てくれた」ナデナデ

 

七稜 アヤメ「うん。盟友の【アビドス】の危機でもあるし、巡り巡って【百鬼夜行】の存続にも関わってくる問題だから、今回は【百花繚乱】総出で来たよ」

 

神代キヴォトス人「そうかそうか。苦労をかけるな」

 

神代キヴォトス人「だが、アヤメが頑張っていることはよくわかっているからな。先生も高く評価しているぞ。ナグサもな」

 

御稜 ナグサ「うん。私、頑張ってアヤメの代わりに【百花繚乱】の代表に相応しいように振る舞ってきたよ」

 

神代キヴォトス人「どれ、少し小腹も空いたであろう。精を出したのなら、精のつく料理を出してやろう」

 

神代キヴォトス人「とは言っても、【百鬼夜行】でも見たことがあるだろうがな」

 

御稜 ナグサ「やったあ! しぞーかおでん(静岡おでん)だぁ! これ、大好き!」ホクホク!

 

七稜 アヤメ「ナグサ、はしゃがないの」

 

御稜 ナグサ「だって、だって! 本当に美味しいんだよ、しぞーかおでん(静岡おでん)!」

 

七稜 アヤメ「まあ、私も先生が作ったしぞーかおでん(静岡おでん)が大好物だけれど」

 

御稜 ナグサ「う~ん! 焼き鳥みたいに串に刺さったおでんがこんなにも美味しいだなんて知らなかったよ!」

 

神代キヴォトス人「我も知らなかったぞ。三千万年以上前の超古代文明にはこんな料理はなかった」

 

神代キヴォトス人「さすがは地球人代表として宇宙に誇れる文化を発信しようと【地球文化館】を主宰しているだけのことはある」

 

御稜 ナグサ「見て見て、アヤメ! このナルト! 普通は薄切り(スライス)にしてラーメンに乗っているものだけど、薄切り(スライス)にしないで串に刺さっているのを初めて見た時、私の中の常識が音を立てて崩れていったよ!」

 

七稜 アヤメ「このちくわもなかなかのものだよ。黒はんぺんもいいね」

 

神代キヴォトス人「お、キキョウが好きだったのはこの“いわしくん”だったかな」

 

七稜 アヤメ「そうそう。たしか、先生が言うにはしぞーかおでん(静岡おでん)はいわしの削り節を粉末にした出汁粉やいわしの擂り身の黒はんぺんが欠かせないんだったよね」

 

神代キヴォトス人「で、レンゲが好きだったのは“フワ”だったな。“()()”だけに」

 

御稜 ナグサ「これ、新食感だった。焼き鳥にはない具材で新鮮だった」

 

神代キヴォトス人「そうだろうそうだろう。フワとは牛の肺のことでな、青海苔に出汁粉だけでも美味いが、練り辛子をつけて食べるのもまた乙なのだ。まあ、元々つゆが美味いからそのままでも十分ではあるがな」

 

 

初めての怪獣:クレッセントの襲撃が遭ったXデー以前;“シャーレの先生”が“GUYSの先生”として認知されるようになる以前の 雌伏の時である いわゆるPre-Xデーの日々において、キヴォトス各地にクレッセントが引き起こした異常現象による被害が報告されていたため、【連邦生徒会】からの正式な調査で赴いた先には当然ながら【百鬼夜行連合学院】も存在していた。

 

しかし、【百鬼夜行連合学院】はキヴォトスの学園組織としては特殊で、名目上の公認生徒会活動としては【陰陽部】が顔役として外交の場に赴き、日々の行政処理を行っているものの、自治区の統治を行っているわけではないらしい。

 

そのため、【陰陽部】は【百鬼夜行連合学院】を構成している公認部活動ごとに提出された情報をとりまとめて【連邦生徒会】に報告しているに過ぎず、伝統的に【陰陽部】は自治区の揉め事に関しては極めて腰が重く、中立や不干渉の立場を取ることが多いとのこと。

 

つまり、綱紀粛正や治安維持に加え、自治区での揉め事や問題の解決は生徒会組織【陰陽部】の実質的な実働部隊【百花繚乱紛争調停委員会】が担当しており、

 

【連邦生徒会】からの正式な調査のために逸早く情報を集めたいのなら【百花繚乱】で行うよう、この頃はまだ怪獣退治の専門家を名乗る胡散臭い大人という扱いの“シャーレの先生”北条 アキラは同じくのらりくらりとした態度で胡散臭さが漂う 実質的な生徒会長である【陰陽部】部長:天地 ニヤに言われていた。

 

そんな経緯で【陰陽部】部長:天地 ニヤの紹介で【百花繚乱紛争調停委員会】の面々と顔合わせをすることになった地球人:北条 アキラは、後に本腰を入れて調査をするために長く留まることになった【ゲヘナ学園】と比べれば微々たる期間であったものの、学園都市:キヴォトスの中で極めて和風な雰囲気の【百鬼夜行連合学院】での調査を精力的に進めていた。

 

学園都市:キヴォトスにおいて特異的な学園組織である【百鬼夜行連合学院】において怪獣退治の専門家を自称する異邦人:北条 アキラはその卓越した知見と指揮で【百花繚乱紛争調停委員会】の活動に協力して多大な貢献を果たし、同地でたくさんの生徒たちからの尊敬と信頼を勝ち取ることができたのは言うまでもない。

 

一方で、そうなったのも防衛チームの現地調査の鉄則であるFace to Faceで聞き込み調査や文献調査を熱心にしていたのも非常に大きいが、それ以上に“連邦生徒会長”の実質的な後継者に相応しい偉大なる人望を発揮していた。

 

この時点ではまだ怪獣の仕業とは断定できていなかったが、怪獣が出現しそうな予測地点を書き込んだハザードマップの作成と提出のため、決して長くはない調査期間で百鬼夜行自治区を生徒たちと練り歩き、現地の人たちとの交流を楽しんできたわけであり、

 

このハザードマップ作成事業はキヴォトスでも一定のブランド力を持つイベント企画部活動【お祭り運営委員会】や地元では顔の広いために学内における部活間のハブを担う【修行部】なども巻き込んで、まさに自治区全体でお祭り騒ぎとなっていたのだ。

 

 

こうして【陰陽部】や【百花繚乱】が驚愕するほどの情報収集能力で短期間に一挙に集めた情報をハザードマップに反映させていった中で“シャーレの先生”北条 アキラの目に不審な点が浮かび上がったのが百鬼夜行自治区の北部に存在する雪国地帯【エビス分校】であり、

 

野菜や魚などと言った食料がたくさん採れる 自然の恵み豊かな“百鬼夜行の食糧庫”で、他にもガラスの工芸品が盛んという産業の要地である割には生徒の数が異様に少ない過疎地域であり、自治区全体でお祭り騒ぎになっていたのに反応が明らかに鈍い【エビス分校】の様子に違和感を覚えたのが始まりだった。

 

どのみち、ハザードマップの完成のためには情報の集まりが悪い【エビス分校】を訪れる必要があり、【百花繚乱】委員長:七稜 アヤメもまた現地視察がてら労いのために、現在たった一人で切り盛りしているというエビス分校自治委員長:土生 アザミに会うことにしたのである。

 

その時の会見で土生 アザミ以外に本当に生徒がいないことから【エビス分校】は学園組織としては消滅していたも同然であることが確認され、自治能力が消失している以上『エビス自治区を生徒会【陰陽部】の管理下に置くべし』と北条 アキラは実質的な生徒会長である【陰陽部】部長:天地 ニヤに報告していた。

 

そのため、現地の【エビス分校】には生徒が一人しかいないということで調査には大多数の動員が必要とわかり、次回からの本格的な調査に向けた受け入れ体制の構築のため、今回は現地の打ち合わせに留めることになったのだが、

 

その帰り、怪獣退治の専門家:北条 アキラと同行していた七稜 アヤメをはじめとする生徒たちは“怪異”と呼ばれる“怪獣(KAIJU)”とは毛色のちがう謎の存在に襲われ、キヴォトス人にとっては絶対とも言える愛銃の攻撃が通用しないために窮地に陥った。

 

すると、【百鬼夜行】がまだ連合になる数百年前に【百花繚乱紛争調停委員会】の創設者にして初代委員長と語り継がれる“大預言者”クズノハが造り、以降【百花繚乱】で代々受け継がれ、この銃を扱えることが【百花繚乱紛争調停委員会】の正統な継承者の証となるという<百蓮>――――――、

 

現在の【百花繚乱】委員長:七稜 アヤメの愛銃となっていた<百蓮>を拾い上げた北条 アキラが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()退()()()()()という奇跡を起こした。

 

怪異を退散させて難を逃れた後、急いで【エビス分校】に戻って自治委員長:土生 アザミの無事を確認しに戻ると、()()()()()()()()()()() ()()()()()()()()()()()()()()()()、治療のために【百鬼夜行 本校】への搬送を余儀なくされることになった。

 

そのため、翌朝には管理者が不在になる非常事態を地元住民たちに説明して避難を促すのだが、遥か以前に自治委員会が消滅していたらしい驚愕の証言を得ることになり、それで地元住民たちは避難の必要性を一切感じていないこともあり、次からは大規模な調査を始める予定であることを告げて【エビス分校】から帰還する他なかったのだった。

 

こうして【エビス分校】の調査は入念な準備が必要となり、現地で襲ってきた謎の敵の正体についても調べ上げることになったのだが、【百鬼夜行 本校】に帰還すると同時に病院に搬送されたエビス自治委員長:土生 アザミが忽然と姿を消していた――――――。

 

以上のことから、この件を重く見た【陰陽部】部長:天地 ニヤは【エビス分校】の件は預かったとして これ以上の調査は中止にすることを異邦人:北条 アキラに言い渡したのだった。

 

そのため、“シャーレの先生”北条 アキラとしては【百鬼夜行】における調査は一区切りついたとして、次なる学園の自治区に向かうことになったのだが、ハザードマップ完成のためにも【エビス分校】の調査をあきらめたわけではなかった。

 

ただ、調査のための人員の手配や現地の管理運営のための方策を用意するのに時間を要するということで次の機会を待つという話であり、その次の機会が訪れた時は【百鬼夜行連合学院】は北条先生の再訪を歓迎するという流れとなっており、またみんなと会うことを約束して【百鬼夜行】における最初の調査は幕を閉じたのであった。

 

 

その一方、委員長の証である退魔の銃<百蓮>を以てして怪異を退治できなかったことから『自分は委員長に相応しくないのでは?』と疑念を抱くことになった【百花繚乱】委員長:七稜 アヤメは<百蓮>の資格者と思しき北条先生に『自分の代わりに【百花繚乱】を率いて欲しい』と懇願して引き留めようと必死だった。

 

このため、本来は【連邦生徒会】に報告するために【メトロポリス(首都:D.U.)】に戻るのを延期し、必死に自分を引き留めようと懇願してくる一人の少女の苦しみと悩みに“GUYSの先生”北条 アキラは喜んで何時間も向き合うことになった。

 

誰もが認める【百花繚乱紛争調停委員会】委員長:七稜 アヤメ――――――、彼女が『人助け好きな好人物である』という事実に何一つとして嘘偽りは無かった。

 

しかし、その類稀なる能力と意欲により、やがては部下からも街中からも頼りにされ過ぎたことで、いつしか“何でも出来て頼れる委員長”という仮面を外せなくなってしまっていたのだ。

 

そうして些細な事柄まで頼まれ、それを断れずに日々を忙殺されるという悪循環が【百花繚乱】の一員となって丸二年間続いた結果、明るかった彼女の内面は徐々に疲弊して摩耗し、次第に自身を取り巻く全てやいつまで経っても自分に依存し続ける幼馴染:御稜 ナグサまでも内心では嫌悪するようになってしまっていたのだ。

 

 

――――――疲れているんだよね。だから、この場合の解決策はマイナスエネルギー対策の第一人者を自負する教育者:北条先生にとっては非常に簡単なものだった。

 

 

人間の負の感情から怪獣すら生み出すマイナスエネルギーの発生を抑止するために平和な時代にウルトラマンの心を教育の場で実践することを志した北条先生の出した答えというのは、疲れ切った心を癒やすために普通に休みを与えることであった。だから、休め。休めないなら、無理矢理 休ませるだけだ。それが怪獣退治の専門家の判断だ。

 

そのため、元々が“シャーレの先生”である北条先生は【連邦捜査部 S.C.H.A.L.E(シャーレ)】が持つ強大な人事権を行使して【百花繚乱紛争調停委員会】委員長:七稜 アヤメを“シャーレの当番”にその場で任命して連れ回すことにし、そのまま【シャーレ・オフィス】に連れ帰ったのである。

 

引き留めようとして逆にお持ち帰りされるという驚きの展開に対して、リフレッシュ休暇を兼ねた【メトロポリス(首都:D.U.)】への修学旅行が必要であると根回しを済ませていたこともあり、【百花繚乱】の面々だけじゃなく、今までずっと助けられてきた【百鬼夜行】のみんなから快く送り出されることになったのだ。

 

これについては、このままだと過労で“何でも出来て頼れる委員長”が倒れる寸前なので抜けた穴をちゃんと埋められるようにと北条先生が【百花繚乱】を指導した結果であり、そのためには【百花繚乱】のみならず、自治区のみんなが“何でも出来て頼れる委員長”がしてくれたことを思い出して治安改善に一人一人が取り組むように促していたのである。

 

そのため、同じ生徒や地元住民たちから信頼を得ている【お祭り運営委員会】や【修行部】の生徒たちのことも地域の柱として目をかけていたわけであり、その上で【百花繚乱】でみんなのために誰よりも頑張ってきた七稜 アヤメに報いる必要性があったのだ。

 

そう、【百鬼夜行】での聞き込み調査をしてわかったことはこの2年間ずっと自治区のために頑張ってきた【百花繚乱】委員長:七稜 アヤメの存在の大きさであり、精神的支柱として【百鬼夜行】には欠かせない存在となっているため、会った時点ですでに過労の兆候が見え隠れしていた七稜 アヤメのことをマイナスエネルギー対策の第一人者である北条先生は決して放っておけなかったのだ。

 

なので、“学校は社会の縮図”を曲解して“学校は社会そのもの”と大いに誤解した 狂った学校社会の奴隷として酷使されてきた者の一人である少女を温かく包みこんだ。

 

その甲斐あって、【百花繚乱】委員長:七稜 アヤメは“シャーレの先生”北条 アキラの下で思い切り都会の風を浴びて羽根を伸ばすことになり、その幼馴染である副委員長:御稜 ナグサもまた“何でも出来て頼れる委員長”に代わって必死になって【百花繚乱】をまとめ上げることになったのだ。

 

その際、実力は確かだが小心者の副委員長:御稜 ナグサの悪戦苦闘を見越して人前ではキャラを演じるように指導しており、その演技指導に【お祭り運営委員会】や【修行部】が協力するように取り計らっていたため、周りの人たちの温かさに包まれて副委員長:御稜 ナグサも徐々に“何でも出来て頼れる委員長”への依存を断ち切って副委員長らしい立居振舞を身に着けるようになっていったのである。

 

もちろん、それほど長い期間ではなかったものの、“シャーレの職員”ロボット職員:マウンテンガリバーもよくは知らなかった【百花繚乱紛争調停委員会】委員長:七稜 アヤメを迎えた【シャーレ・オフィス】の日々はずっと“何でも出来て頼れる委員長”で休みなどろくになかった少女にとっては驚きと発見と安らぎに満ちたものとなっていた。

 

これが最初の怪獣:クレッセントが首都:D.U.を直撃するXデー以前の出来事であり、クレッセント出現を受けて【キヴォトス防衛軍 CREW GUYS KIVOTOS(クルー・ガイズ・キヴォトス)】が設立される いわゆるPost-Xデーからは“シャーレの先生”から“GUYSの先生”へと地球人:北条 アキラを見る周囲の目が一変したように人間関係もまた大きく変わっていったわけなのだが、

 

【百鬼夜行連合学院】に関しては【エビス分校】の調査の再開が約束されていたため、【SRT特殊学園】を再編した【キヴォトス防衛学園】の開講を待つ準備期間中に再訪した際は、先生を迎えた委員長:七稜 アヤメと副委員長:御稜 ナグサの表情は最初に会った時と比べてずっと晴れやかなものになっていた――――――。

 

 

御稜 ナグサ「美味しかったね、アヤメ」

 

七稜 アヤメ「そうだね。また食べられて本当に良かった」

 

七稜 アヤメ「サーベラス様、ごちそうさま。美味しかった」

 

 

神代キヴォトス人「――――――()()からは遠ざかったが、良くない縁はまだ切れてない、か」ボソッ

 

 

神代キヴォトス人「どのみち、これは()()()()()()()()()というわけか。先生が最初に手を打ったところでな。それだけ期待もされているのだろう」

 

御稜 ナグサ「え?」

 

神代キヴォトス人「さて、腹拵えも十分であろう」

 

神代キヴォトス人「武器を構えよ。()が来るぞ」ジャキ! ――――――万能武器:サークルアームズを手に取る!

 

七稜 アヤメ「!」

 

御稜 ナグサ「――――――敵が来る!?」

 

神代キヴォトス人「さて、望み通りにバラバラになったぞ」

 

 

――――――それでいかにして我らが玉将を詰ますのか、見せてもらおうか、光差さぬ指し手よ。

 

 

スケバン「あとは合図を待つだけだな」

 

スケバン「おい! 現場はどうなっている?」

 

スケバン「……教授の予想通りだ」'

 

スケバン「……“災厄の狐”に従う【ヘルメット団】が【ハイランダー】の装甲列車を強奪して突っ込んでくるぞ!」'

 

スケバン「まさか、本当にこうなるとはな」ハハッ

 

――――――

ニヤニヤ教授「みなさん、私です」

 

ニヤニヤ教授「準備はよろしいですか?」

――――――

 

スケバン「ああ、バッチリだ!」

 

スケバン「ところで、“災厄の狐”が【ハイランダー】の装甲列車を強奪するって情報は、どうやって手に入れたんだ?」’

 

スケバン「というか、正気の沙汰じゃねえ。企業の侵略に対するデモ集会を襲撃するだなんて、自分から“キヴォトスの敵”であることを宣言しているようなものじゃないか」’

 

――――――

ニヤニヤ教授「知っての通り、“災厄の狐”は脱獄した時に【シャーレ・オフィス】を襲撃していました。【矯正局】送りになった恨みで目についた【連邦生徒会機関(GSC Organization)】に攻撃したのでしょう」

 

ニヤニヤ教授「その後の動向を独自に調査していたところ、【ヘルメット団】経由で【ハイランダー】の襲撃計画の情報が流れてきました」

 

ニヤニヤ教授「どうやら、砂漠横断鉄道の再開発を強行したことで 案の定 怪獣の襲撃に遭って現場から人がひとり残らず逃げ出したことで、責任をなすりつけられるのを恐れて【アビドス】近隣の自治区(路線)からも人が逃げ出して警戒が薄まっていたようですね」

 

ニヤニヤ教授「ですので、“災厄の狐”は【矯正局】送りになった報復に【連邦生徒会機関(GSC Organization)】である【キヴォトス防衛軍 CREW GUYS KIVOTOS(クルー・ガイズ・キヴォトス)】のアビドス遠征の邪魔をするために新アビドス自治区を襲撃するという予想がついたわけです」

 

ニヤニヤ教授「何の造作もありませんよ。これはゲームのオープニングのようなもの」

 

ニヤニヤ教授「あとは、みなさん次第です」

 

ニヤニヤ教授「新アビドス自治区を襲撃する“災厄の狐”を待ち構えて迎撃――――――」

 

ニヤニヤ教授「そうしていけば、【ヘルメット団】への復讐も叶うことでしょう」

 

ニヤニヤ教授「少々話が長くなりましたね」

 

ニヤニヤ教授「では、みなさん、健闘を祈っていますよ」

――――――

 

スケバン「よし。絶対に勝とう。ようやく復讐の機会が巡ってきたんだ」

 

スケバン「ああ、これでようやく姐様の仇が討てる!」’

 

スケバン「早くシャバの空気を吸わせてやりてえな……!」ウルッ・・・

 

スケバン「バカ、何 泣いてんだよ。もうすぐ作戦開始だぞ」’

 

 

ワイワイ、ガヤガヤ、ワーワー!

 

 

足坂 エル「た、大変です!」

 

服巻 クロモ「どうしたのよ? まさか、【プライベートファンド】の連中がこっちに軍勢を寄越してきたの?」

 

山高 カムロ「やっぱり、一筋縄じゃいかないか。よし、自動防衛システムを展開――――――」スッ

 

足坂 エル「ちがいます! ちがうんです! 今、【キヴォトス防衛軍】防衛基地(HQ)から暴走列車が新アビドス自治区に迫っていると報告が――――――!」

 

山高 カムロ「は」

 

服巻 クロモ「――――――『暴走列車』ですって?!」

 

服巻 クロモ「何よ、それ!? まさか、【プライベートファンド】が雇った傭兵じゃなく、【ハイランダー】が――――――!?」

 

足坂 エル「わかりません! 基地からの呼びかけにも応じず、それで暴走列車としか――――――!」

 

山高 カムロ「まずい! 駅に向かうぞ! やつらの狙いは【アビドス高等学校】か、【キヴォトス防衛軍】防衛基地(HQ)のどちらか、その両方だ!」

 

服巻 クロモ「でも、ここを離れたら【プライベートファンド】が雇った傭兵たちへの対応が――――――!」

 

山高 カムロ「くぅうううううう!」

 

――――――

神代キヴォトス人「そういうことなら、我に任せよ!」

――――――

 

山高 カムロ「サーベラス様!」

 

――――――

神代キヴォトス人「ひとまず、【百花繚乱】の子らと急行して駅周辺の安全確保(クリアリング)を行うから、手筈通りに警戒態勢に移れ。防衛目標の防備を強化せよ」

――――――

 

山高 カムロ「わかりました!」

 

足坂 エル「聞こえましたね、みなさん! デモ集会は終わりです!」

 

服巻 クロモ「敵が現れました! 手筈通りに配置に着いてください!」

 

 

ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!

 

 

山高 カムロ「どうだ、エル? 暴走列車は【ハイランダー】のものなのか? これは【ハイランダー】の仕業なのか?」

 

足坂 エル「……どうやら、【ハイランダー】から車両の盗難が報告されているようです」

 

服巻 クロモ「しかも、【ヘルメット団】の犯行みたい」

 

山高 カムロ「……【ヘルメット団】だって? なぜ?」

 

足坂 エル「この時期、この日に新アビドス自治区への襲撃を決行するとしたら、それはもう【プライベートファンド】の手先になっているとしか考えられないですが……」

 

山高 カムロ「そんなはずはないだろう。【ヘルメット団】の多くは金払いのいい【キヴォトス防衛軍】のハザードマップ作成に協力しているのが現状だ。アビドス遠征で【アビドス】に掛り切りのところでそんなことをしたら――――――」

 

服巻 クロモ「そうよ。それこそ“キヴォトスの敵”になることを覚悟しないとよ」

 

山高 カムロ「何が起こっているんだ?」

 

山高 カムロ「状況がわからない。迂闊に動くわけにはいかないか」

 

足坂 エル「……待ってください。暴走列車の他にも何か来ています」

 

足坂 エル「これは上空からです」

 

 

ブロロロロロロロ・・・・・・

 

 

山高 カムロ「聞こえてきたぞ、ローダー音。このローダー音から察するに――――――」

 

服巻 クロモ「ちょっと待ってよ! ティルトローター機であの速さって、あれってV-22(オスプレイ)じゃない!?」

 

足坂 エル「何かを吊り下げて上空を飛行していますね」

 

山高 カムロ「防衛基地(HQ)の観測では何だと?」

 

足坂 エル「待ってください! 吊り下げられているのは車両ではないです! あれは船です!」

 

服巻 クロモ「え、どういうこと? 画像解析をしてみたら、これって底面が真っ黒(スカート)――――――?」

 

山高 カムロ「まさか、V-22(オスプレイ)にホバークラフトを吊るしているのか!? 無茶苦茶な!?」*1

 

山高 カムロ「――――――何か落ちてくるぞ!?」

 

 

チュドンチュドンチュドーーーーーーーーーーン!

 

 

服巻 クロモ「きゃあああああああああ!?」

 

山高 カムロ「やってくれたな! 艦載砲からの空爆か! なんという力技!」

 

足坂 エル「それだけじゃないです! 防衛基地(HQ)、対空迎撃を急いでください! ミサイル攻撃です、防衛基地(HQ)!」

 

山高 カムロ「や、やめろおおおおおおお!」

 

 

チュドンチュドンチュドーーーーーーーーーーン!

 

 

山高 カムロ「くぅ! だ、大丈夫か、みんな!?」

 

足坂 エル「だ、大丈夫です。どうやら、目標は防衛基地(HQ)のようでしたが、対空迎撃が間に合ったようです」

 

服巻 クロモ「ど、どこの誰だかは知らないけど、本気で新アビドス自治区を火の海に変えようって魂胆ね!」

 

山高 カムロ「何がやつらをそうまで駆り立てているんだ。こんなことにいったい何の意味が……」

 

山高 カムロ「でも、そっちがその気なら、もう容赦しないぞ!」ジャキ!

 

山高 カムロ「スティンガー(FIM-92)・ミサイル 発射!」 LOCK ON!

 

服巻 クロモ「V-22(オスプレイ)であっても、これで撃墜よ!」

 

足坂 エル「――――――人影!?」

 

 

バキューーーーーーーン! ボゴーーーン!

 

 

山高 カムロ「ああ!?」

 

服巻 クロモ「撃ち落とされた……!」

 

足坂 エル「そうでしたか、今回の襲撃犯の正体はあなたでしたか」

 

 

――――――“連邦生徒会長”が失踪した混乱の中で【矯正局】を脱走した“七囚人”が一人、“災厄の狐”狐坂 ワカモ!

 

 

新アビドス自治区は【アビドス高等学校】のたった5人しかいない生徒たちでも自治できるように大部分の土地を放棄してスリム化されており、【キヴォトス防衛軍】の前線基地がある要衝として砂防壁に囲まれ、外部との出入り口となる砂防壁には他の自治区へと繋がる幹線道路が接続されていた。

 

そのため、新アビドス自治区への進入路は砂防壁を乗り越える以外には限られており、元から電離層から現れる人喰い怪獣:ガゾートの対策のために対空砲の備えは十分だったため、今回の襲撃はアビドス中央駅方面に気を配っているだけで良かったはずだったのだ。

 

それが【ハイランダー鉄道学園】から強奪した装甲列車が別方面から侵入してきたことで意表を突かれたものの、“シャーレの研究員”神代キヴォトス人:サーベラスが対処に向かい、その間に警戒態勢に入って防御を強化するように指示されたため、すぐに混乱から立ち直って所定の配置に着くことができた。

 

しかし、想定外の方面から襲撃を受けて敵に裏をかかれたと思いきや、またもや敵に裏をかかれて砂防壁の上空から攻められる事態となり、

 

なんと敵はV-22(オスプレイ)にホバークラフトを吊るして、そのホバークラフトに搭載された武器で新アビドス自治区を火の海に変えようとしてきたのだ。

 

そのため、対空防御は万全のために今のところは【キヴォトス防衛軍】防衛基地(HQ)に向けて発射されたミサイル攻撃を防ぐことはできてはいたものの、それ以外の場所に着弾したミサイルの爆発や上空から放たれる榴弾砲の空爆を完全に防ぐ手立てはなく、ここまで先制攻撃を許し続けていた。

 

だからこそ、怒りの反撃で放たれたスティンガー(FIM-92)・ミサイルだったが、さすがにホバークラフトの船底に対地兵装はないため、そのままスティンガー(FIM-92)の餌食になるところをホバークラフトの甲板に姿を現した仮面の少女がライフル片手に難なく撃ち落としたのである。

 

それで判明したのが今回の襲撃犯が“連邦生徒会長”が失踪した混乱の中で【矯正局】を脱走した“七囚人”が一人、“災厄の狐”狐坂 ワカモであったということ。

 

しかし、今回の襲撃はそれだけではなかったのだ――――――。

 

 

チュドンチュドンチュドーーーーーーーーーーン!

 

 

ヘルメット団「うわああああああああああああああああ!?」

 

ヘルメット団「た、助けてくれええええええええええええ!?」

 

ヘルメット団「な、何だ、これは!? は、話がちがうじゃないかあああああ!?」

 

勘解由小路 ユカリ「ああっ!? 【ヘルメット団】も攻撃に巻き込まれていますわ!?」

 

不破 レンゲ「お、おい! ミサイル攻撃ってアビドス中央駅の方面に落とされるんじゃなかったのか!? なんで空から攻撃が――――――!?」

 

桐生 キキョウ「こうなる可能性もなかったわけじゃない! 今は空爆に巻き込まれないように退避して!」

 

神代キヴォトス人「さすがに我一人では全てのミサイルは撃ち落とせんな。精々が飛来物を払い除けるぐらいか」

 

七稜 アヤメ「くっ! みんな、大丈夫!?」

 

御稜 ナグサ「アヤメ、さっきのミサイル攻撃は“災厄の狐”狐坂 ワカモの仕業だって……」

 

七稜 アヤメ「――――――“災厄の狐”、か」

 

神代キヴォトス人「……ほう、“災厄の狐”。たしか、【百鬼夜行】から【矯正局】送りになっていた停学処分者だったか」

 

七稜 アヤメ「うん。“連邦生徒会長”が失踪した混乱の中で【矯正局】から脱獄した“七囚人”の一人にして、脱獄してすぐに【シャーレ・オフィス】を襲撃していたという意味でも、【百鬼夜行】にとっては最大の汚点で、大恩ある先生に許されざることをした!」

 

御稜 ナグサ「それこそ、今回の襲撃は現在進行形で先生の留守を狙っての犯行になる!」

 

神代キヴォトス人「なるほど、ティルトローター機に揚陸艦を吊るして空爆してきているのか」

 

神代キヴォトス人「無差別テロならば、もう容赦はしない。我が光怪獣で叩き落としてこよう」

 

神代キヴォトス人「さすがに凶悪犯と言えども踏み潰すのは人道的には許されんだろうから、逮捕は任せたぞ」

 

御稜 ナグサ「わかりました、サーベラス様!」

 

七稜 アヤメ「なら、ナグサ! ここは任せたよ! キキョウ、レンゲ! 私たちは“災厄の狐”の逮捕に向かうよ!」

 

御稜 ナグサ「任せて、アヤメ! ここは私が制圧する!」

 

 

神代キヴォトス人(インナースペース)「さて、300万年前のアンバランス期の文明を守り抜いた惑星守護神:ギガデロスを突破することができるかな、小娘?」

 

 

御稜 ナグサ「――――――惑星守護神:ギガデロス! これで狐坂 ワカモも終わり!」

 

御稜 ナグサ「さあ! 敵はミサイル攻撃に怯んで縮こまっている! けど、私たちにはギガデロスがいる! 一気呵成に攻め立てるよ!」

 

勘解由小路 ユカリ「おお!」

 

SRT特殊部隊「今だ、お前たち! 【百花繚乱】に続け! 敵は浮き足立っているぞ!」

 

スケバン「おおおおおおおおおおお!」

 

スケバン「今こそ姐様の仇討ちだ、【ヘルメット団】!」’

 

ヘルメット団「う、うわああああああああああああああああ!」

 

ヘルメット団「た、助けてええええええええええええええ!」

 

ヘルメット団「いやあああああああああああああああああ!」

 

河駒風 ラブ「や、やめてえええええ、ワカモおおおおおおお! うちらの家(ホバークラフト)を返してよおおお! ギガデロスに勝てるわけがないぃいいいいい!」

 

 

栗浜 アケミ「うふふふふふっ、お久しぶりですわね、【ヘルメット団】のみなさん」

 

 

御稜 ナグサ「ん!」

 

勘解由小路 ユカリ「あ、あの方は――――――?」

 

SRT特殊部隊「ば、バカな!? あれは“七囚人”の一人――――――!?」

 

勘解由小路 ユカリ「ええ?」

 

スケバン「ね、姐様ああああああああああああああああ!」

 

SRT特殊部隊「そうか。お前たち、“伝説のスケバン”栗浜 アケミの仲間か! 【矯正局】を脱獄した“七囚人”と合流するつもりだったな!?」ジャキ!

 

スケバン「ああ!?」’

 

勘解由小路 ユカリ「な、ナグサ先輩!?」オロオロ・・・

 

御稜 ナグサ「ど、どうしよう? こういう時、いったいどうすればいい、アヤメ?」

 

 

こうして戦いの結果、襲撃犯である“七囚人”を取り逃がすという重大な失態が報じられた。

 

新アビドス自治区を空爆で攻撃し続けたV-22(オスプレイ)に吊るされた“災厄の狐”狐坂 ワカモのホバークラフトは“シャーレの研究員”神代キヴォトス人:サーベラスが召喚した惑星守護神:ギガデロスによって容赦なく叩き落されていた。

 

それで“災厄の狐”狐坂 ワカモの逮捕は時間の問題だと思われていたのだが、そのまま完膚なきまでに叩きのめす前に度重なる攻撃の影響で倒壊した施設に立ち往生している避難者の救助に向かわざるを得なくなっていたのだ。

 

そのため、撃墜されたV-22(オスプレイ)から切り離されたホバークラフトを包囲したものの、ギガデロスを背景にして降伏を迫ることができなくなったため、歩兵戦力だけでは魔改造されたホバークラフトを制圧することができず、姿を現した“七囚人”の一人をみすみす取り逃がしてしまうのであった。

 

そして、【ハイランダー鉄道学園】の装甲列車を強奪して侵入してきた【ヘルメット団】を制圧している最中、もうひとりの“七囚人”が突如として登場し、それによって秩序の回復は取り戻されることはなかった。

 

 

――――――自身を陥れた【ヘルメット団】への復讐に血を滾らせる“伝説のスケバン”栗浜 アケミとその舎弟たちが介入してきたのである。

 

 

その上で、図ったように突入してきた後続の装甲列車に乗り込み、“七囚人”栗浜 アケミの一党を取り逃がすことになったため、『【ヘルメット団】への報復』という目的を果たし、完全に『してやられた』といったところであった。

 

そのため、救助活動をすぐさま終えて状況の確認をし終えた時、“災厄の狐”以外の“七囚人”が現れていたことを後から聞かされることになった“シャーレの研究員”神代キヴォトス人:サーベラスは涙ぐむ生徒たちを慰めるのに時間を費やすことになったのである。

 

ともかく、現場の引き継ぎは厄介事の一つを片付けてきた“シャーレの職員”ロボット職員:マウンテンガリバーにして、“シャーレの研究員”神代キヴォトス人:サーベラスはもはや裏庭のような場所となったアビドス砂漠へ赴くのであった。

 

神代から続く超古代文明の生き証人である光の眷属には決して焦りの表情はなかった。失ったのはたかだか鼻っ面や慢心であり、何も人の命が奪られたわけでもあるまい。

 

そう、焦ることなんて何もないのだ。今のところ、失ったものは何一つとしてない。むしろ、こうやって一つ一つ難題の解決に向けて着実に前進していっているのだから。

 

ふと見やると、最強の怪談家(すとおりいてらあ)に憧れる可愛らしい稚児とキヴォトスでは極めて異例の年嵩で()()を嗜む京美人が不安そうな表情で見つめていたのに気づき、

 

光の眷属は『最強の怪談家(すとおりいてらあ)()()の創作で生み出した“怪異の鎧と退魔の剣の最強ヒーロー”が負けるはずがないじゃないか』と穏やかな表情であやすように励ますのであった。

 

()()を嗜む京美人に対しても、【百鬼夜行連合学院】が成立する遥か以前;推定3000万年(3000年ではない!)以上前の超古代文明の光を感じさせて先生の無事を信じ込ませるのであった。

 

 

――――――心から怪異なぞ“怪獣(KAIJU)”に対して何するものぞ。

 

 

 

 

 

――――――GUYS Sally Go !(GUYS、出撃せよ!)

 

 

その頃、電子機器を麻痺させて通信障害を引き起こす人喰い怪獣:サドラが起こした魔の霧の中、地球人:北条 アキラはアビドス砂漠で噂になっていた怪現象“悪魔の穴”についに遭遇することとなった。

 

指向性マイクを向ければ脈動が検出され、臭気測定器からは生臭さが検出され、まさかの千載一遇の好機ということで北条 アキラは腔の中へと飛び込み、ジェットパックを噴射しながら慎重に降下していた。

 

岩石怪獣:サドラをウルトラマンに変身して倒した直後ということもあり、怪獣退治の専門家としてはあまりにも衝動的で不用心にも程がある行動であったが、“悪魔の穴”に生徒が転落したため、それが自業自得の盗掘者であったとしても助けに行かないわけにはいかなかったのだ。

 

もちろん、“悪魔の穴”の正体が『不気味な鳴き声を響かせる』という証言もあって【ドキュメントZAT】に記録されていた再生怪獣:ライブキングなんじゃないかと当たりをつけており、1トンのコショウを用意(コショウ作戦)することは無理であっても、腔の中に乗り込んで被害者を救助するための対策と準備を整えてきたのだ。

 

なので、再びウルトラマンに変身できるまでの時間を腔の中で耐久することは十分に可能であり、ジェットパックも装着して自力での脱出も可能であることだし、四次元発信機を体内に打ち込んで後から追跡できるようになれば、今回は要救助者の確保に成功すれば無理に退治する必要はなかったのだ。

 

なにしろ、再生怪獣:ライブキングは 怪獣頻出期の頂点に出現した 怪獣を超える超獣をも超える大怪獣であり、ウルトラマンタロウが相手にすることになった初期の大怪獣でありながら、後にも先にもウルトラ兄弟の最強の肉体を持つタロウの腕を圧し折って追い込んだのが取り沙汰される程の強大な戦闘能力を有しているのだ。この時点でアストロモンスよりも格段に強い。ウルトラの母の助勢がなければ対処不能だった。

 

極めつけは一度はストリウム光線で粉砕されてもバラバラの破片から復活を果たす再生能力に、バラバラになろうが人喰い怪獣として周辺の生物を捕食し続ける獰猛さを兼ね備えているため、完全に息の根を止めるためには【キヴォトス防衛軍】では完全に手に余ることが予想されていた。闇怪獣以上に質が悪い。

 

そのため、【アーカイブドキュメント(怪獣図鑑)】を一通り目を通して地球で確認された怪獣たちとの戦闘記録を網羅している“GUYSの先生”北条 アキラが導き出したウルトラCの解答のためにも、“悪魔の穴”の討伐に関しては早急の対処を必要としていても、慎重に慎重を重ねた対応にならざるを得なかったのだ。1回で殺し切ることは不可能だとしても、段階的にジワジワと嬲り殺すようにして、いずれは必ず倒すことを誓って。

 

とにかく、“悪魔の穴”に呑み込まれてしまった生徒の救助と他の生存者の探索を最優先に、四次元発信機の設置を目指しながら、地球人:北条 アキラは怪獣の腔の中を降下していったのであった。その裏には怒りや恐怖に勝る冒険心というものが必ずあった。

 

 

北条先生「うぅ……、幻覚でなければ何でも溶かす胃液の対策を施した四次元発信機を“悪魔の穴”に突き刺して今回は終わりだったんだけど……」

 

北条先生「人知を超えた超常の総称である“怪獣(KAIJU)”に生物学の常識が当てはまらないのが常識ではあるが、人喰い怪獣に関しては間違いなく生物の範疇とみなせるからには、」

 

北条先生「なぜあれだけの巨体で居ながら生命活動を維持できるのかと言えば――――――、ゾウやクジラのような大型動物は小さい動物に比べて同じ距離を移動するのに必要なエネルギーが相対的に少なくて済む。移動効率が良く、燃費が良いと言えるからだ」

 

北条先生「要は、大口発注すると仕入れ単価が安くなる量産効果と同じで『生物が移動する際に消費するエネルギーは体重のマイナス0.3乗に比例する』と理論付けられている以上、」

 

北条先生「人喰い怪獣は腹を満たすための絶対的な食事量は多いが、腹を満たした後はお腹の減りが非常に遅く、これで食事の回数を絞ることで人間を捕食するだけで十分なエネルギー補給を可能とする」

 

北条先生「そして、更に燃費を良くするために生活サイクルを単純化して移動コストを抑える生存戦略がとられる」

 

北条先生「つまり、できるだけ長距離移動をしないように縄張りの中だけでの活動に限定するのに加えて、捕食活動のための運動量も減らしたい――――――」

 

北条先生「というわけで、人喰い怪獣というのは獲物がかかるのをジッと待ち続ける待ち伏せ型と、捕食器官に特化して移動コストを抑える省エネ型に大別されるわけで、」

 

北条先生「待ち伏せ型の典型である再生怪獣:ライブキングに対し、省エネ型の典型というのがライブキングと同時期に出現した液体大怪獣:コスモリキッド――――――」

 

北条先生「まさか、それが【ドキュメントZAT】と同じようにライブキングの中に居たとはなぁ……」

 

 

今、怪獣退治の専門家である地球人:北条 アキラは自ら怪獣の腔の中に飛び込むという自殺行為に等しい危険行為の真っ最中であったが、その怪獣の腔の中に更に人喰い怪獣が潜んでいたのは完全に予想外であった。

 

再生怪獣:ライブキングの身体構造が直立二足歩行型雑食動物と同じならば、おそらく鼻腔から体内に侵入した今回の場合、必ず行き着くのは呼吸器系(気管から肺)消化系(食道から胃)のどちらかなのだが、

 

サドラの霧が吸い込まれていく流れを感じ取り、臭気測定器で消化液の匂いが濃い方へと降下していく途中、突如として食道と思われるサドラの霧が晴れた赤々とした体内の闇の向こうから真っ赤な舌が飛び出してきたのである。

 

危機察知能力に関してはキヴォトス人以上であり、ジェットパックを装備していたことで緊急回避に成功しつつ、きっちりとトライガーショットで反撃して舌を引っ込ませたわけだったが、

 

“悪魔の穴”再生怪獣:ライブキングと同時に相手にすることになった“幻のオアシス”液体大怪獣:コスモリキッドの存在に逸早く思い至ることになり、これまたライブキング同様に人類の科学力で対処が困難な難敵の登場に平静を装うのが苦しくなった。

 

しかし、怪獣退治の専門家としては“悪魔の穴”に落ちた生徒の生存は絶望的と判断して これ以上の捜索は即刻打ち切るべき状況であったのだが、食道の奥に隠れ潜む“幻のオアシス”の存在を知った以上、この場で取り逃がすことはますます許されなくなったと心を踊らせ、不敵な笑みを浮かべるのだ。

 

 

――――――朽木 修羅(箭吹 シュロ)先生 作の()()の小さな写本(巻物)が勢い良く拡げられる!

 

 

――――――写本(巻物)から()()と化した呪文が身体に纏わりつく怪異と化す!

 

 

――――――それが“怪異の鎧と退魔の剣の最強ヒーロー”を形作るのである!

 

 

芹沢隊長(セリザワ・カズヤ)

 

 

相原隊長(アイハラ・リュウ)

 

 

復讐の先の勇気の力、お借りします!

 

 

 

 

 

神代キヴォトス人「さて、我はこれより取り逃がした“災厄の狐”狐坂 ワカモの追跡と先生の救出に向かう」

 

勘解由小路 コクリコ「サーベラス様」

 

神代キヴォトス人「どうした、コクリコよ?」

 

勘解由小路 コクリコ「どうやら、早速【ウルトラ忍法帖】が使われたみたいやねえ」

 

神代キヴォトス人「そうか。なら、写本をまた用意してくれ」

 

勘解由小路 コクリコ「……写本をすぐに使わざるを得なくなる状況に先生が追い込まれたということやねえ」

 

神代キヴォトス人「だが、死んではおるまい」

 

神代キヴォトス人「コクリコも聞いたであろう、ギャンブルの都【ゲヘナ学園 シーワ分校】で起こした先生の奇跡を?」

 

神代キヴォトス人「天文学的な確率を確信を持って引き寄せた――――――、それだけの奇跡を起こせる先生が死ぬわけがなかろう」

 

勘解由小路 コクリコ「そうやねえ。我にとってサーベラス様こそが生きたクズノハなら、先生こそが怪獣頻出期という天変地異の時代をキヴォトスに呼び寄せた()()()()――――――、キヴォトスでは想像もつかない恐るべき怪異を超えた超常の記録【アーカイブドキュメント(怪獣図鑑)】の顕現であり、世界の理を書き換える偉大なる書き手――――――」

 

 

――――――我はそれに魅せられた故、世界を燃やす我らの物語を、我らだけの『百物語』を、先生の『百物語』として託したのだから。

 

 

 

 

 

ハンターナイトツルギ!

 

 

北条先生(怪異化)「――――――これが三度目の怪異化(変身)!」

 

北条先生(怪異化)「行くぞ! これまでウルトラ・ライト・ソード(ウルトラメタモーフォーズ)を使ってきたのはナイトビームブレードの特訓のため!」

 

北条先生(怪異化)「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 

 

()()から発せられた怪異を身に纏った異形――――――、それこそが復讐の鎧を身に纏ったM78星雲のブルー族の光の巨人:ハンターナイトツルギであり、右腕のナイトブレスから展開されたナイトビームブレードで食道の向こうから伸びてきた怪獣の舌を斬り裂いて降り立つ。

 

降り立った先の広大な空間には剥製の首のようにコスモリキッドの顔面が生えており、ナイトビームブレードからの光刃で一撃を与えると、怯んだコスモリキッドの顔面はたちまちのうちに液体化して消え失せたのであった。

 

倒せたわけではない。しばらくすれば肉体を再構成して再び襲ってくるだろうが、液体大怪獣:コスモリキッドは人喰いに特化した伸縮自在の長い舌以外には頭部に生えた角以外に武器らしい武器が存在しないため、怪獣頻出期の頂点に現れた大怪獣の中ではまだ御し易い部類に入っていた。

 

そして、およそ3分間の変身時間(ボーナスタイム)も終わり、変身が解除されて元の姿に戻った怪獣退治の専門家:北条 アキラは胃液で消化された発酵臭が染み付いた肉々しい異空間:怪獣の胃袋の中に居た。

 

 

 

 

 

――――――心から怪異など“怪獣(KAIJU)”と比べたら取るに足りない存在だと信じて征服するのはこれまで数々の侵略者を討ち滅ぼしてきた地球人の傲慢さからだろうか。

 

 

 

 

 

初めての怪獣:クレッセントを赤と銀の光の巨人が倒してから明確に天変地異の時代:怪獣頻出期に突入したPost-Xデーの日々の中、【百鬼夜行連合学院】を再訪することになったのはキヴォトス一斉避難訓練の時期であった。

 

基本的な怪獣災害対策の普及のために避難シェルターの整備や安否確認サービスへの登録を推進しなければならないわけなので、Pre-Xデーの時点で自治能力を喪失したことが判明していた産業の要地【エビス分校】の管理運営の決定を逸早くしなければならなかった。

 

そして、【エビス分校】で襲撃した謎の敵の正体が百鬼夜行自治区が現在の【連合】となる遥か昔に猛威を振るったという魑魅魍魎の集団【花鳥風月部】の仕業ではないかと【陰陽部】部長:天地 ニヤが【百花繚乱】委員長:七稜 アヤメの証言を元に調査結果を報告した。

 

その活動については『連合の今の形態を認めない極悪非道の部活』『怪書を操って人々を惑わす魑魅魍魎』等の胡乱な噂が残る程度であり、その対抗策として“大預言者”クズノハから伝えられし【百花繚乱】の委員長の証たる霊銃<百蓮>と期待されるが、その力を引き出すことが【百花繚乱】委員長:七稜 アヤメにはできていなかったのだ。

 

そのため、大恩ある北条先生が“GUYSの先生”として【連邦生徒会】を通じて布告した基本的な怪獣災害対策の実施を張り切って監督する一方で、【花鳥風月部】がけしかけてくる魑魅魍魎への対抗策を求めて“大預言者”探しにも繰り出していたのだった。

 

そうして、いよいよ【キヴォトス防衛軍】軍事顧問という肩書を得て戻ってきた北条先生の再訪を受けて 期待と不安が入り混じりながらも弾むような声と足取りで“大預言者”クズノハと所縁のある古跡を巡っていく 同行者を入れ替えながらも先生とずっと一緒の旅の中で、

 

真冬には大雪原となる場所にある北部自治区の『黄昏の寺院』の跡地には副委員長:御稜 ナグサを同行者に選び、その道中“コクリコ”と名乗るキヴォトスでは異例の年嵩の女性とも同行することになった。

 

しかし、それはまさに歴史の影で暗躍してきた【花鳥風月部】が仕掛けた罠であり、激しい憎悪と敵意を顕にしたコクリコの正体不明の攻撃から七稜 アヤメを庇って北条先生の存在が虚空の彼方へと消え去った。消滅してしまったのである。

 

 

い、嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。先生がいなくなっただなんて嘘だ。先生だけが本当の私を見てくれた。私のことを大切にしてくれた。だから、私が先生のことを守るから一緒に旅をしようって――――――。

 

私が守られたの? 私は守れなかった? 私が殺した? 私が先生のことを――――――?

 

あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!

 

 

あまりの出来事に絶望した七稜 アヤメが戦意喪失となり、それを一人で守り抜こうとする御稜 ナグサが何とか励ましの言葉をかけようとするが、それが尽く“何でも出来て頼れる委員長”である一面だけしか見ていなかった幼馴染への失望を招くことになり、完全に自暴自棄になった“何でも出来て頼れる委員長”のために何がしてあげられるのかがわからなくて頭が真っ白になってしまったのだ。

 

次の瞬間、人々の怨嗟の声を糧とする魑魅魍魎の集団【花鳥風月部】のひとでなし共が逆に恐怖で悲鳴を上げてしまうような衝撃が走ったのだ。

 

突如として背後から肩を掴まれてコクリコが振り向いてみたら、『黄昏』送りにされたはずの北条先生が普通に戻ってきていたのである。

 

信じられないものを見て その場に凍りついたコクリコに向けて、七稜 アヤメに駆け寄って頭が真っ白になって咄嗟に<百蓮>を間違って手にしていた御稜 ナグサが放った銃弾が直撃することになり、【花鳥風月部】の首魁をいきなり捕らえることに成功したのである。

 

こうして大手柄だったものの、その帰路、完全に取り乱して自分の内面を幼馴染にぶちまけてしまった上に自分では<百蓮>の真の力を引き出すことができなかったことで七稜 アヤメは完全に塞ぎ込むことになり、御稜 ナグサも何をどうしたらいいのかがわからなくて北条先生に助けを求めようと声を掛けるタイミングを何度も計っていた。

 

すると、捕らえられた【花鳥風月部】の首魁を取り戻さんとする幼稚な印象の部員:箭吹 シュロが迫ってきたものの、通常の攻撃が効かないカラクリが怪談を操る奇書の力であることをペラペラと喋りまくり、それで優位を確保しようとしていた。

 

次の瞬間、通常では触れることさえできないはずのシュロの矮躯が北条先生に軽々と掴み上げられて容赦なく振り回されて地面に叩きつけられる直前にまた持ち上げられることになり、このあまりにも恐ろしい恐怖体験を何度も味わわされて恐怖で大声で泣き叫ぶことになったのである。

 

これには【花鳥風月部】首魁:コクリコも声を張り上げて降参を宣言しており、無事に郷里に降りてからは先生からの尋問をおとなしく受ける他なくなってしまったのである。

 

 

――――――こうして【花鳥風月部】の存在は世間に明るみになった()()()()()

 

 

つまり、()()()()()()()()()()()()()。残念ながら、それが司法というものである。

 

なぜなら、犯罪を実行していない犯罪者を逮捕することは原則としてできないわけであり、結果犯の実行行為を基本的に裁くものだからだ。

 

更に、学園都市:キヴォトスでは日常的に銃犯罪が起きており、銃弾を受けても気絶で済むぐらいに頑強なキヴォトス人にとって命のやり取りでも何でもないため、この状況で襲撃犯として現行犯逮捕したとしてもキヴォトスの法では重い罪にはならないのである。

 

つまり、これまで噂に過ぎなかったはずの【花鳥風月部】を反乱分子として裁くための確たる証拠が必要なのだが、怪異を操る能力の危険性を立証することができないため、別件で前科持ちにしてから文字通りの“札付き”として要注意人物リストに記録していく他なかったのだ。*2

 

だからこそ、コクリコは法の力が【花鳥風月部】に対して無力であることが知り尽くしていたからこそ、この場はおとなしくお縄についたわけであり、虜囚でありながら余裕綽々とした態度はただでさえ精神が不安定になっていた【百花繚乱】委員長:七稜 アヤメの心を大いに掻き乱すことになった。

 

それどころか、ここまで自分たちをあるべき道へと導いてきた誰よりも信頼できる大人の男性である北条先生と花魁のような大人の色香を漂わす京美人の魑魅魍魎の頭領が密室でふたりきりになって何をしているのかを創作して吹聴しまくるのだ。

 

大恩ある北条先生に対する侮辱に我慢できず、思わず手が出て その口を塞ごうとするが、この脅しもまた黙秘権の堂々たる行使に繋がったため、のらりくらりで取り調べが一向に進まないのである。

 

そのため、子供たちでは取り調べが進められないとなれば、大人である北条先生が取り調べをしていくしかないわけなので、本当は先生とふたりきりにさせたくない七稜 アヤメにとって歯軋りがする思いの悪循環に陥っていた。

 

 

その一方で、まさに口が減らないクソガキである自称:怪談家の箭吹 シュロの懐柔はあっという間であった。

 

 

取り調べの結果、小説投稿サイト『小説、書こうよ!』で、最新話が投稿される度にコメント欄が炎上していても『異世界に行ったら怪談家になって超レベルアップした件』シリーズを毎週連載していることがわかり、

 

本職が小学校の先生である地球人:北条 アキラは子供の夢を応援するために『ノートパソコンを貸し出す』という座敷牢の囚人に対して破格の待遇をしたのである。

 

この対応にはコクリコを含めて誰もが驚くことになり、ミレニアム製の超快適な高性能ノートパソコンを使わせて大画面のサブディスプレイも用意して、座敷牢に閉じ込められて連載が途切れることを心配していた子供の悩みに真摯に応えたのである。

 

もちろん、無条件に甘やかしているわけがなかった。青少年の健全育成のためにフィルタリングがかけられている以外に、歴史の影に潜んでいた【花鳥風月部】がどういった内容の情報収集をしているかを逐次追跡しているため、それを裏でAI分析にかけることでプロファイル分析が着々と進められていたのである。

 

また、インターネット中毒とも言えるデジタルネイティブ世代に極めて有効な餌であった。普段使っているものよりも圧倒的に高性能な機器や快適な環境に触らせて、それを取り上げた後の不快感を植え付けてもいたのだから。

 

それはミーティングになった時に普段はシュロに貸し出しているサブディスプレイを取り上げることが一番多いが、わざとインターネット回線の通信速度を落とすようなこともしており、デジタルネイティブ世代の子供は疑う余地なく術中に嵌まっていったのだった。

 

そのため、何をしようとしているのかの意図は理解できていても技術的にはどういうことなのかの知識がなく、着々と進められている調略に対して全くの無力なのが デジタルネイティブ世代に非ずの 推定30代の【花鳥風月部】首魁:コクリコであり、

 

今はこうしてシュロに対しては甘々の対応をしているわけなのだが、『黄昏』送りにしたのに普通に戻ってきた異常性と言い、直接的な危害を加えさえしなければシュロの顔面を地面にぶつけるスレスレの行為も辞さない攻撃性と言い、“シャーレの先生”であり“GUYSの先生”である地球人:北条 アキラこそが自分たち【花鳥風月部】以上に得体の知れない存在であると京都仕草の裏で毒づいていた。

 

とは言え、箭吹 シュロがネット小説を毎週連載で投稿し続けていることは素直に称賛に値することであり、小説の出来栄えに関しては実質的な保護者であるコクリコも直接の評価は避けてはいるものの、物事に真剣に取り組んでいる関心・意欲・態度に評価点をつけるのが本職が小学校の先生であった。

 

敵対関係である上に明らかに自分たちの理解を超越した存在である地球人:北条 アキラに対して警戒心を解くことはないものの、本職が小学校の先生である北条 アキラとの奇妙な日々は徐々に三者面談の様相を呈することになり、そこで語られる小学校の先生としての苦労話や体験談がコクリコに新鮮なものを提供し続けたのだ。

 

それは魑魅魍魎の頭領と我らが北条先生の大人の会話に聞き耳を立てている七稜 アヤメにとっても、大人の世界を実際に生きてきた人間の肉声から伝わるものは本当に別世界(遠くの星)のものに思えた。

 

その中でキヴォトスの外から来た人間として 学園都市:キヴォトスに対する 本職が小学校の先生である一個人の奇譚のない見解が述べられることになり、失踪した“連邦生徒会長”によって赴任させられた学園都市:キヴォトスの問題点を事細かく説明して、どれだけ不満タラタラなのかを語ったのである。

 

というのも、学校教育だけが教育ではない。家庭教育と社会教育を加えた3つの柱で教育は成り立っているわけであり、学校教育だけでは少なくとも青少年教育は完成しないのだ。

 

そのため、学園都市:キヴォトスはそれこそ寄宿学校と都市国家の性質を併せ持った失敗国家であると断じ、家庭教育が無視された歪な学習環境をこれでもかと批判するのだ。ウルトラマンの心を教育現場で実践しようとする教育学者は人を愛するあまり口うるさい。

 

だからこそ、地元に就職することなくどこか遠くへと卒業していくしかないキヴォトス人では極めて異例の年嵩のコクリコの存在;すなわち初めて遭遇した“ヘイローのある大人”という存在に地球人:北条 アキラは非常に強い興味を抱いたわけであり、実際に血縁関係があるのかは不明ではあるが、コクリコとシュロの親子関係に純粋な学術的興味が湧いていたのだ。

 

 

――――――何かがきっかけで盛大な取り違え(アンジャッシュ)が起こるのは時間の問題であった。

 

 

それは北部自治区の郷里で座敷牢から囚人を連れ出して健康維持のために朝の走り込みに出た際、箭吹 シュロにネグレクトされている放置児童のような健気さと危うさを感じるため、どうしても側でそれを見守る担任の先生と保護者の姿を何度も目にすれば顔馴染となった地域住民はその関係性を冷やかしたくもなる。

 

すると、あくまでも担任の先生と保護者の関係だと言い張る不思議な魅力を持った殿方に対して、つい試してみたくなる いたずら心が不意にコクリコに働いたのだ。それはまだ残酷な運命の存在を知らない青臭さが全開の【百花繚乱】の現委員長に見せつける意味合いもあった。

 

しかし、その場の思いつきで腕を絡ませようとして 思わず石に躓いて前のめりに倒れ込もうとした瞬間、明らかに生徒とは思えない外見年齢の豊満な体型をした危ない色香を漂わす“ヘイローのある大人”魑魅魍魎の頭領:コクリコの身体はたちまちのうちに怪獣退治の専門家の逞しい胸板に引き込まれていたのである――――――。

 

その力強さや温かさはこれまでの人生にはまったく存在しなかったものであり、想像もつかなかった体験に思わず見上げた殿方の顔の近さに目を見開いて甲高い声と共に身体が飛び上がりそうになっていた。

 

それで人生で初めて腰が抜ける体験が重なり、自分の身体を 服の上からとは言え 大きな手をした他人に触らせ、朝の走り込みの帰りがおんぶともなれば、心臓の鼓動が相手に伝わるんじゃないかと思うぐらいにコクリコのドキドキは止まらなくなり、座敷牢に戻って殿方の姿が見えなくなったのを見届けるや否や、すぐに布団の中に潜り込んだ。

 

それでずっと思い返すのだ。本来ならば怪書の力で触れることさえできない存在になってから久しく人の温もりを忘れており、誰かに触れられること、それを嫌だとは思わなかった自分に気づいてしまった。そんなはずはないと自分に言い聞かせることが短い時間に何度も繰り返される。

 

そう、自分はこれまで守ろうとしてきた全てに裏切られ、自分が信じてきたものが全て偽りなら今度は自分が『物語』を作り出すと決意し、この世にうごめく風聞や怪談を種とし、黒い花を咲かせ“魑魅魍魎の頭領(花鳥風月)”になってみせると誓って日の当たらない場所にずっと閉じこもってきたのだ。それは布団の中のような安らぎがあったから――――――。

 

けれども、怪異の力を得て尋常ならざる存在になっていたからこそ、ウルトラマンの心を教育現場で実践するために防衛チームのエリート候補生を辞して教職の道へと進んだ愛と勇気の化身の常人離れの力強さを 人一倍 敏感に感じ取っており、自分の肩を掴んだ時の手や自分を胸元に抱き寄せた時の腕は明らかに人間のものではない――――――。

 

まったくもって理解の範疇を超えたものでありながら、理解ができない()()に恐怖を覚えるのではなく、段々と崇高なる神秘というものを感じて抵抗なく受け容れるようになっていたことを認識する。

 

誰も信じられないからこそ誰も寄せ付けない力への渇望へと繋がったのだが、誰かに身体を預けてもいいという安心感が生まれたのは力への揺るがない信頼から誰かを信じられるようになってきた兆しなのか――――――。

 

そして、朝食の時間になっても寝床から出てこないのに呆れた七稜 アヤメを布団の中からチラッと見て、初めて【百花繚乱】の現委員長に嫉妬していたことにも気付かされた。

 

世間的な評価は間違いなく悪童である箭吹 シュロのことを本職が小学校の先生であるという独自の視点から問題点を把握しながらも愛情を持って接してくれる包容力(偉大さ)は、こうして醜態を晒して自分の在り方に悩める青少年である【百花繚乱】現委員長:七稜 アヤメにも向けられていたという当たり前の事実に気づいてしまったからだ。

 

そう、あの時 何よりも欲しかったものを 現在 持っている七稜 アヤメのことが羨ましくてしかたがなかったことに段々と気づいたのだ。

 

守ってもらえているのだ。それがどれだけ尊いことなのかを理解せずに当たり前のものとして受け取っているのが実に子供の浅ましさで鼻についた。

 

 

――――――先生がいてくれたら、勘解由小路の巫女じゃなくなっても(わたし)は先生の生徒でいられたのかな?

 

 

座敷牢での穏やかな日々が続く。シュロの成長を見守りながら、アヤメには遠回しに嫌味を浴びせ、北条先生との大人の駆け引きを楽しむ日々だった。

 

一方で、それだけ北条先生に密着した生活を送っていただけに論旨明快で筋の通った思想的な影響を多分に受けるようになり、担任の先生にも創作をして欲しいとシュロにせがまれて怪談家デビューした北条先生の作風に魅了されていったのだった。

 

当然、七稜 アヤメはシュロのお願いを軽くは考えず、怪異に利用されることを恐れて北条先生の怪談家デビューに猛反対したが、これは大人の駆け引き(諜報合戦)であった。このままでは怪異の力を立証できず【花鳥風月部】を反乱分子として裁くことができない以上、互いにリスクを背負うしかなかったのだ。

 

勝てば【花鳥風月部】は裁かれ、負ければ【百花繚乱】が裁かれる――――――、限りなくクロだとわかっている相手を法廷に引き摺り出すための、そんな大人の駆け引き(諜報合戦)である。

 

怪談家:北条 アキラの作風は【アーカイブドキュメント(怪獣図鑑)】に記録されている実際にあった怪事件をプライバシー保護のために虚飾を交えたものであり、そのレパートリーの多さと奇想天外にして奇々怪々(事実は小説より奇なり)の内容には引き込まれるものがあったのだ。

 

特に、【ドキュメントUG(ウルトラ警備隊)】に記録されている幻覚宇宙人:メトロン星人の事件を元にした怪談『狙われた街』はかつて誰よりも正義を信奉して全てに裏切られて“()()”を成すことに取り憑かれていたコクリコをして傑作と言わしめた。

 

 

メトロン星人の地球侵略計画はこうして終わったのです。

 

人間同士の信頼感を利用するとは恐るべき宇宙人です。

 

でも、ご安心下さい。このお話は遠い遠い未来の物語なのです。

 

え? 何故ですって?

 

我々人類は今、宇宙人に狙われるほど、お互いを信頼してはいませんから。

 

 

一方で、ウルトラマンの心を教育現場で実践するために教職の道を志した地球人:北条 アキラの怪談で聞く価値はあっても不評のジャンルが存在していた。

 

というより、それは完全なジャンル違いと言えるものなのだが、愛と勇気を教えに遠くの星からやってきた男にとっては人生のテーマとも言えるものを地球のディストピア小説をモチーフにして伝えようとしているため、説教臭いとしてコクリコから不評であったのだ。

 

つまり、怪談家:北条 アキラの怪談は【アーカイブドキュメント(怪獣図鑑)】に記録されている嘘のような地球で実際にあった話を元にしたものこそが出来がよく、本人の思想信条や理想社会の在り方を語ろうとして地球のディストピア小説をモチーフにしたものは怪談として出来が非常に悪いのだ。たしかにディストピアの恐怖政治は怖いと言えば怖いものだが、それは怪談に求められている恐怖ではない。

 

ただ、説教臭いだけで聞く価値はある;つまりは実際にあった怪事件を淡々と語るものこそ怪談として真に迫っているが、ディストピア小説の体裁でキヴォトス人の在り方を批判しているのは社会風刺である。理不尽な現実に対する怒りが隠されていた。

 

それは、信じていた正義に裏切られた過去があるコクリコとしては、一見すると公正な正義や完成された秩序があるように見えるが、実際には抑圧や不公正など社会的な矛盾や非道徳が蔓延した悪夢のような社会像を描き出すディストピアものは聞いてて痛快だったのだ。

 

そして、正統派の恐怖から外れた ディストピア小説ならぬ ディストピア怪談を通じて【花鳥風月部】に翻意を促す意図があることに気づくことになり、魑魅魍魎の頭領として自分が語り尽くせる怪談の数よりも膨大な記録がある【アーカイブドキュメント(怪獣図鑑)】の怪事件を語るだけに終始しない怪談家:北条 アキラの思惑が見通せなかった。

 

怪談家デビューを決めた北条先生の意図を見抜くには幼すぎるシュロは怪談として語られるディストピアを想像してみて『あれもイヤ』『これもイヤ』とわがままを言うのに対し、正義が正義として成立していないディストピアという概念にカルチャーショックを受けた七稜 アヤメは自分の正義の在り方を問うようになった。

 

そう、まさにそれこそが怪談家:北条 アキラの恐るべき魔法(話術)であったことに気付いた時には、いろんな意味で手遅れになって、全員が絡め取られていたのだ。

 

 

――――――ウルトラマンは神ではない。どんなに頑張ろうと、救えない命もあれば、届かない想いもある。

 

 

――――――でもね。だとしてもね。求めていた神じゃなくてもね。

 

 

――――――ヒーローが必要なんだよ、みんな。ヒーローが必要なんだ。ヒーローが。

 

 

そんな運命の時は来た。実はそんなに長くはなかった座敷牢での奇妙な共同生活の日々も終わりを告げる。【花鳥風月部】が起訴猶予処分で釈放されることが決まったのだ。

 

というより、本音としてはいつまでも“シャーレの先生”にして“GUYSの先生”である【キヴォトス防衛軍】軍事顧問:北条 アキラを【百鬼夜行】の片田舎に縛り付けるわけにはいかず、決定的な証拠が得られない以上は【花鳥風月部】に対して厳重注意が精一杯といったところであった。

 

それに対して自称:怪談家である箭吹 シュロは担任の先生にずっと一緒にいようと縋り付き、最終的には泣き顔を浮かべる生徒に、担任の先生であることを否定しない北条先生は貸し出したミレニアム製の超高性能ノートパソコンをプレゼントにして毎週連載のネット小説を見続けることを約束したのだ。

 

逐次追跡されているノートパソコンの存在が【花鳥風月部】の弱点となることは百も承知で、先生から親愛の証としてプレゼントされて満面の笑みを見せるシュロに保護者であるコクリコは素直に『良かったねぇ』と微笑むと、担任の先生に対してわざとらしくもたれかかった。

 

それを拒むことなく温かく受け止めてくれた殿方の表情は『黄昏』送りにされるという最悪すぎる出会いからであっても普段とまったく変わらない輝きに満ちており、今でも口説き文句としか思えない【連邦捜査部 S.C.H.A.L.E(シャーレ)】への誘いが胸をときめかせていた。

 

そう、あくまでも“ヘイローのある大人”という唯一無二の特性に学術的興味を持っているだけなのは理解しているが、それでもかまわない。

 

そして、北条先生は座敷牢での取り調べの日々の中でその正体が約20年前の【百花繚乱】の構成員ではないかと当たりをつけて裏で調査を進めさせていたのだ。

 

【花鳥風月部】というテロリストグループの首魁である自分の正体が暴かれることに最初は危機感を持っていたのに、自分の正体が暴かれることで本当の(わたし)を知ってもらえることに喜びを覚えていることに気づいた時には、どんどん自分という女の深みに殿方が嵌まっていく姿を夢想して身体中が熱くなった。

 

実際、学園都市:キヴォトスのIT革命は十数年前ということで確実にデジタルネイティブ世代ではない外見年齢から、実はシュロにノートパソコンを貸し出して話題を振っていく裏で年代の特定を進めており、

 

更には、敵対する警察組織【百花繚乱】に対しては『さもありなん』という態度なのだが、その起源となる【百花繚乱】初代委員長である“大預言者”クズノハと【百鬼夜行】の祭礼を司る由緒正しき名家:勘解由小路家の話題に対しては普段の京都仕草が揺らぐことが最大のヒントとなった。

 

そして、【百花繚乱】に所属している高等部1年:勘解由小路 ユカリがどうしてそんなに頑張っているのかを何気なく訊いた際に得た『20年前の勘解由小路家の汚名を雪ぐため』という証言に加えて、

 

【百花繚乱】委員長にとって精神的支柱となるのが初代委員長:クズノハであり、初めて怪異に遭遇した時に<百蓮>の真の力を発揮できなかったことで自信喪失した“何でも出来て頼れる委員長”の姿と重なって見えたのだ。

 

なので、マイナスエネルギー対策の第一人者を自負する地球人:北条 アキラは 断定はできないが十中八九そうだろうと想定して コクリコの中にある憎悪を溶かすように接してきたわけであり、直感的に『こんなところに居ちゃいけないのだ』と嫌な思い出がたくさんある土地から連れ出すのが正解だと導き出していたのだ。

 

だから、起訴猶予処分で釈放されることが言い渡された際、【連邦捜査部 S.C.H.A.L.E(シャーレ)】の新しい職員として雇い入れようと声を掛け、それに対してコクリコがはっきりとした言葉を発する前に『ああ、手が滑ったああ!』とわざとらしく<百蓮>を投げ渡す試し行動(悪巫山戯)から答え合わせは済んだのである。

 

合図と同時に北条先生の頭上に花瓶が落ちるように仕組んであったため、昔取った杵柄、コクリコは<百蓮>で即座に落下物を過たずに射抜いたのだ。<百蓮>こそが【百花繚乱】委員長の証であり、継承戦の勝者となることで掴み取ることができた誇りでもあったから、ずっと――――――。

 

 

――――――ありがとう、()()()()()さん。助かりました。

 

 

もうダメだった。破顔。冷酷な微笑を浮かべる悪女から険を取り上げた時、少女だった頃の思い出(わたし)が頬を伝う涙となって溢れだす。

 

実際には2歩ぐらい後ろで粉々になった花瓶が降り注ぎ、振り返ることなく確信をもって呼んでくれたのだ。都合よく花瓶が落ちてきて<百蓮>を使わざるを得ないように全てが目の前の人間に仕組まれたことであったとしても、もう騙されてもいいと思えた。

 

銃声を聞きつけて<百蓮>がコクリコの手にあることに【百花繚乱】現委員長:七稜 アヤメが血相を変えて詰め寄るものの、手慣れた所作で丁寧に<百蓮>を差し出すコクリコの表情はいつになく真剣なものがあり、冗談交じりに『このまま継承戦を挑んじゃおうか?』というコクリコの満ち足りた表情に圧倒されるのであった。

 

 

結局、誘いは有り難いけれどもコクリコは心から微笑んで丁重に断った。自分だけが赦されたら、【花鳥風月部】のみんなのことを見捨てることになるから。それが生来責任感が強く芯の通った魑魅魍魎の頭領の責任だった。

 

 

その道を決めることになったのは、そこに怪異に蝕まれて全身が目玉だらけになった【花鳥風月部】土生 アザミが現れたからなのだ。身体中に肉々しい触手と目玉が生えた姿はあまりにもおぞましく次々と悲鳴が上がる。

 

言語能力の著しい低下が見られたが、どうやらPre-Xデーで【エビス分校】を訪れた際に怪異をけしかけた張本人だったものの、暗闇の激戦の中で北条先生が手にした<百蓮>から放たれた弾丸によって致命傷を受けて、そうとは知らずに北条先生の応急処置を受けて病院に搬送されたことから憎悪に呑まれたようである。

 

しかし、本来の怪異化した姿は目玉の化け物ではなくヘビの化け物であり、髪の毛の部分がヘビであるはずが目玉だらけの肉々しい触手に置き換わっているところから、【花鳥風月部】の一員としてまともな状態ではなくなっていたのだ。

 

自身を死の淵に追いやって生死を彷徨わせた<百蓮>の資格者である北条先生への憎悪に呑み込まれて正気を失っており、更には敬愛する部長:コクリコがそんな自分の仇である北条先生や宿敵である【百花繚乱】委員長:七稜 アヤメと親密な様子を見せていることに混乱をきたしたのだ。

 

そのため、北条先生はトライガーショットのメテオール弾:キャプチャーキューブで怪異化した土生 アザミの動きを封じた隙に七稜 アヤメの手を引き、北部自治区の郷里を怪異が現れたので住民に避難するように大声で叫びながら駆け出していた。

 

その間にコクリコがキャプチャーキューブ越しに呼びかけるが、未知の怪異に蝕まれた土生 アザミはコクリコがすぐに駆け寄ってきたことで解放されたと安心しきったことで復讐心に完全に染まってしまったのであった。

 

そこからは憎悪を迸る百の眼の暴風となって手当たり次第に触手を振り回して長閑な郷里を荒らし回る“()()”から程遠い畜生(ケダモノ)のやることに過ぎなかった。力への傾倒。単なる暴力。そこには恐怖を煽ることで得られる爽快感(カタルシス)がない。

 

 

――――――故に、コクリコは決断を迫られる。<百蓮>で怪異化した土生 アザミを楽にしてやるべきかを。

 

 

怪獣退治の専門家と【百花繚乱】委員長が揃っている状況なのだ。それは意図も容易く実行に移されることだろう。

 

けれども、自分も知らない怪異に土生 アザミが呑まれたのを離れて見ていた箭吹 シュロはそんな残酷な決断を望まず、ここでも『あれもイヤ』『これもイヤ』だとわがままを言うのだ。

 

一方、ウルトラマンに変身して怪異化したキヴォトス人を元に戻せるのか確証がない北条 アキラは、<百蓮>で 即刻 怪異の撃滅を主張する【百花繚乱】委員長:七稜 アヤメに詰め寄られていた。

 

勝手に<百蓮>を持ち出していたことに関しては、この際 終わったことなのと緊急時ということもあり、どうだってよかった。北条先生こそが<百蓮>の資格者だったのだから、自分にはそれを非難する資格がない。

 

だとしても、【花鳥風月部】部長:コクリコに<百蓮>を触れさせることだけはどうしても許せなかった。

 

どうしてずっと良い子にしていた私じゃなくて、犯罪者のコクリコを選んだのか――――――、そのことが 座敷牢での奇妙な共同生活やそれ以前のつきっきりの旅を通じて 自分は北条先生に選ばれない存在であることをはっきりとつきつけられたみたいに思えて、とても悲しかった。

 

しかし、北条先生の眼差しは常に理想に燃えていたのだ。そこには何の後ろめたさもない。ただ後光が射すのみである。

 

 

――――――本当は敵なんかいない。それがウルトラの願いなんだ。

 

 

忘れていた。この人は私たちと同じキヴォトス人とはちがう。人類同士の戦争が終結した後、半世紀に渡って怪獣や侵略者と戦い続けた歴史を持つ、遠くの星からやってきた先生なのだ。

 

だから、可能な限り、決してあきらめない。選び続けるのは青臭い理想。人としてあるべき選択の数々。学校教育だけでは想像もつかないような遥かな夢を抱き続けているのだ。

 

でも、それで目の前の現実は変わることなんてない。撃つしかないのだと、<百蓮>を押し付ける七稜 アヤメに対して北条先生は微かに笑う。ウルトラの星の瞬きのごとく。

 

 

――――――最後まで諦めず、不可能を可能にする。それがウルトラマンの心だ。

 

 

そして、仇の姿を求めて郷里で暴れ回る百々目鬼とでも呼ぶべきおぞましき目玉の化け物となった土生 アザミの前に姿を堂々と現した北条先生は両膝を着いて手にしたトライガーショットを床に転がすと同時に身体のバネを活かして一気に懐に飛び込んだのだ。

 

その目の良さが命取りと言わんばかりに機先を制し、それで何をするのかと言えば、肉々しい触手に覆われた目玉だらけの化け物の耳元で囁いたのだ。『痛かっただろう』『痛くしてごめんね』と謝罪の言葉から入ったのだ。

 

現場に駆けつけたコクリコとシュロ、それからアヤメは 一瞬で何が起きたのか わからずにいたが、暴れ回っていた目玉の怪物の動きがピタッと止まったのを見て、何をしたのかはなんとなくわかってしまった。

 

触ることも汚らわしい目玉だらけの肉々しい触手の手をしっかりと掴んで目玉の化け物をその曇り無き瞳でまっすぐ見据えてたじろかせたのだ。全身に百の眼があろうと、真実を追い求める者の双眸には敵わないと見える。

 

これだから『北条先生は女殺しの才能があるのだ』と惚れ惚れするような呆れたような感情を抱きながらも駆け寄ろうとした。本当に何とかしてしまう希望が見えてきた。

 

 

――――――だが、次に北条先生が求めたのはまさかの『黄昏』送りであった。

 

 

これには目玉だらけの怪物と化して正気を失っている土生 アザミもそのヤバさが魂に刻まれているのか掴まれた手を振り解こうとして思わず後退るほどであり、駆けつけた全員が北条先生の無謀としか思えない蛮勇ぶりに慄いた。

 

コクリコは思い悩んだが、身体に深く刻まれた北条先生の温もりと力強さ、あっさりと『黄昏』から帰還した特異性に全てを賭けて『黄昏』送りをすぐに実行したのである。

 

結果、怪異から引き離されて元の人間の姿に戻った土生 アザミの手をしっかりと繋いで『黄昏』から再び生還を果たす北条先生の姿を目撃することとなったのである。

 

なぜそんなことができるのかなんて誰にもわからない。北条先生も知らん(そういうルールになっている)知る由もない(真実は残酷である)。先生に救われることになった土生 アザミも意識朦朧とする中で先生の手を 精一杯 握り返してぺたんと座り込んでいるぐらいだ。何が起きたかを説明できる者はいないだろう。

 

ただ、誰の目から見てわかることは尊い奇跡が繰り返されたということだけだ。なぜかはわからなくても、できたのだから、それでいいではないか。人の命を救うこと以上に大切なことなんてないのだ。こうやって仲間の無事を喜んで駆け寄ることができたのだから。

 

そして、人を救うために『黄昏』を利用する不可能、偉業、奇跡を目撃したことで、コクリコとシュロ、アヤメの三者三様のこれまでの常識や思考を縛る鎖が音を立てて崩れ落ちることとなった。

 

しかし、『黄昏』を利用して土生 アザミから分離させたヘビの怪異と目玉の怪異は次元の壁を突き破って宿主の元に戻ろうとしてきたのである。

 

それに対して北条先生は担任の生徒である箭吹 シュロに『あれもイヤ』『これもイヤ』という二律背反の理不尽な現実を押し付けるトロッコ問題(ディストピア)を力技で打ち破る最強の怪異(ヒーロー)を創作することをディストピア怪談を語る中で勧めていた。

 

今まさに『黄昏』さえも克服して 怪異を打ち倒す 存在そのものが怪異(ヒーロー)としか言えない存在が目の前にいて、怪談家:北条 アキラの怪談に出てきた中二病をくすぐる復讐鬼への創作意欲が沸き起こり、ここ数日はずっとそのことを文章に書き起こしていたばかりであった。名前からして強そうなのが三点盛りの最強セット。

 

担任の先生から担任の生徒に向けて不可能を可能にする怪異(ヒーロー)の力を与えて欲しいと土壇場で言われたら、それはもう――――――!

 

意気揚々と怪書の力が解放されると、ここに来て初めてコクリコと七稜 アヤメは北条先生の狙いが怪異の力を得ることにあったことに気づいた時には、怪談が呪文となって北条先生の身体を覆い尽くし――――――!

 

そこに立つ者こそが朽木 修羅先生の大型新連載(予定)の怪異の鎧と退魔の剣(復讐の先の勇気の力)の最強ヒーロー――――――!

 

 

ハンターナイトツルギ!

 

 

 

 

 

勘解由小路 コクリコ「――――――惑星守護神:ギガデロス」

 

勘解由小路 コクリコ「本当に、世界はこんなにも大きい。いかに【百鬼夜行】が世界の片隅でしかなかったことか」

 

七稜 アヤメ「………………」

 

勘解由小路 コクリコ「まあ、そう気に病む必要はないさ、アヤメ」

 

七稜 アヤメ「だとしても、2人も現れた“七囚人”、そのどちらも逃がすだなんて……」

 

勘解由小路 コクリコ「北条先生の怪獣退治はいつだって満点じゃないと云う」

 

勘解由小路 コクリコ「それこそ、生徒(アヤメ)を庇って『黄昏』送りになったのは完全に予想外のことで、帰還できたのもまったくの偶然の奇跡――――――」

 

勘解由小路 コクリコ「それでも、先生は偏見を持つことなく忌まわしき『黄昏』や怪異すらも全て人々を救う力に変えてみせた」

 

勘解由小路 コクリコ「結局、力に善悪はない。全ては使い方次第ということやねぇ」

 

七稜 アヤメ「それは【百花繚乱】の委員長の証である<百蓮>にしてもそう。人々を救うという目的が果たせるのなら、怪異だろうが、霊銃だろうが、先生にとっては何だって良かったんだ」

 

勘解由小路 コクリコ「まあ、その『人々を救う』という目的のために我やアヤメの純情を散々弄んできたのだけれど、あの人がやることは純然たる力として善悪を超越しているから」

 

勘解由小路 コクリコ「戦い(ファイト)の意味は憎しみじゃない」

 

七稜 アヤメ「守りたいのはみんなで描く夢なんだ」

 

七稜 アヤメ「良い怪獣と悪い怪獣――――――、名詞だけで判断するな。名詞は形容詞じゃない。名詞が辿った歴史を見ろ」

 

七稜 アヤメ「だから、先生は常に真実を求めて私たちに接してきてくれた……」

 

七稜 アヤメ「本当は私の真実(こと)だけを求め()て欲しかったけれど、嬉しかったな」

 

勘解由小路 コクリコ「おや、それならまた座敷牢で寝食を共にする日々を送ろうかえ?」

 

七稜 アヤメ「ご冗談を。あれは先生とつきっきりの旅でしたから、コクリコ()()()()先輩はお呼びじゃないです。またネチネチと嫌味を浴びせられる日々は懲り懲りだよ」

 

七稜 アヤメ「先生、早く戻ってきて。それでまた一緒に――――――」

 

勘解由小路 コクリコ「そうやねぇ。奇々怪々 複雑怪奇で理不尽な世の中をあるべき理想へと変えていけることを信じられない者にとって、それはもまた怪異だから」

 

 

――――――さあ、先生。世界を変革する燃え滾る情熱の物語を、我らを救い、みなを救い、理不尽な世の中を変えてしまう『百物語』を、遠くの星から愛と勇気を教えてくれる先生の『百物語』の続きを諸人に魅せてくれたもれ。

 

 

*1
艇体下部はスカートと呼ばれる合成ゴム製のエアクッション用側壁が四方に垂れ下げられており、吹き込まれた空気を運行上十分な高さで保持する。

*2
江戸時代では罪を犯したり、駆け落ちしたり、親から勘当されたりすると人別帳から名前が外され、問題を起こしそうな人物に前もって「札」をつけ、監視の対象とするようになったという。これが「札付き」という言葉の由来とされる。

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