Blue Archive -Document GUYS feat.LXXX-   作:LN58

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EP17 虚構と現実に揺れるココロ -Ⅴ.そして、始まる絶望と希望の宝探し-

 

 

――――――時刻は正午と呼ぶにはまだ早すぎる頃!

 

 

ピッ!

 

 

チュドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!

 

 

ガラガラガガラガラ・・・ガッシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!

 

 

――――――オーホッホッホッホッホ!

 

 

金獅子 シブキ?「ごめんあそばせ! あなたたちは みんな ここで死ぬのですわ!」

 

十六夜 ノノミ「きゃあああああああああ!?」

 

ロボット職員「ノノミさん!」ガシッ

 

プレジデント「な、何をした?!」

 

朝霧 スオウ「……今の揺れと爆発音からしてエレベーターホールが爆破されたのか!?」

 

ロボット職員「ん」

 

十六夜 ノノミ「み、見てください、窓の外を!」

 

ロボット職員「――――――旧庁舎周辺が崩落ッ!? そこまでするか!」

 

十六夜 ノノミ「し、シブキ様……!」

 

プレジデント「ば、馬鹿なああああああ!?」

 

ネフティス幹部「まさか、自分諸共……!?」

 

朝霧 スオウ「くっ!」ジャキ!

 

金獅子 シブキ?「本当にあなたたちは揃いも揃って愚か者ばかりですわ。ちゃんとこの場所にサーモバリック爆弾を落とすことは予告しましたし、【連邦生徒会】も全自治区に通達していましたのにね」

 

債権者団体の代表「な、なんてことだ……」

 

ZK社長「頼む! 助けてくれ! 【アビドス】に手を出そうとしたのが間違っていたんだ! だから、命だけは――――――!」

 

質屋連合長「そうだ! こんなところで死にたくない!」

 

押収品競売組合長「まさか、こうなるとは思いも……」

 

私債労働組合長「最初から関わっていなければ……」

 

プレジデント「ええい、ジェネラル、今すぐにヘリを回せ! ミサイルが発射されるぞ! グズグズするな、急げ!」

 

金獅子 シブキ?「無駄ですわよ。さっきの爆発でエレベーターも階段も崩落しましたから、ヘリポートには辿り着けませんわ」

 

ネフティス幹部「そ、そんな……!?」

 

十六夜 ノノミ「…………ガリバーさん」ジンワリ・・・ ――――――全身から汗が流れ落ちるのを感じる。

 

ロボット職員「…………大丈夫。必ず守るから」ギュッ ――――――強く手を握りしめる。

 

金獅子 シブキ?「ああ、窓を突き破って飛び降りることはできますわね」

 

金獅子 シブキ?「でも、あなたたちが馬鹿の一つ覚えで兵隊をたくさん集めてくれたおかげで、今頃 大勢の兵隊が倒壊したビルの生き埋めになっているでしょうね。おかわいそうに」

 

朝霧 スオウ「――――――立会人となる“シャーレの職員”を穏当に追い払うための仕掛けが裏目に出たか」ギリッ

 

プレジデント「くっ! いくら欲しい!?」

 

金獅子 シブキ?「あらあら、無様ですわねぇ、プレジデント! ご隠居が見たら泣きますわよ、あまりにも情けなくて!」

 

朝霧 スオウ「今すぐにミサイルの発射を止めろ!」ガシッ

 

金獅子 シブキ?「私を満足させたら止めてやってもいいですわよ」

 

朝霧 スオウ「黙れ! 今すぐに止めろ!」ジャキ! ――――――胸ぐらを掴みながら銃口を突きつける!

 

金獅子 シブキ?「それが人に物を頼む態度かしらね、サテライトのクズが」

 

金獅子 シブキ?「別にいいのですのよ。お得意の暴力で言うことを聞かせてご覧なさい」

 

金獅子 シブキ?「まあ、その間にも貴重な時間はどんどん流れていくのだけれど」

 

朝霧 スオウ「くっ」

 

金獅子 シブキ?「私という存在に安心しきって『ミサイル攻撃はない』と思い込ませることができたわけですから、私一人の命で神聖なるアビドス砂漠を侵す賊徒共を始末できるのなら、安いものですわ」

 

プレジデント「ば、馬鹿な! く、狂っているぞ!」

 

 

金獅子 シブキ?「そうですわよ、プレジデント。私はあなたに決定的な恥をかかせるために盛大にみなさんを巻き込むことにしたのですから、これぐらいは驚いてもらわないと」

 

 

プレジデント「な、なにっ!?」

 

金獅子 シブキ?「身の危険を感じると自身が関わっている証拠だけを消して『子会社の暴走』や『社員の独断』と無関係の立場を主張して平気で他人を切り捨てて 今の“プレジデント”の地位に昇りつめたのでしょう?」

 

金獅子 シブキ?「――――――()()()()()()()()()!」ビシッ

 

プレジデント「――――――っ!」

 

朝霧 スオウ「………………!」

 

十六夜 ノノミ「それはつまり、首都機能移転を果たした後に土地の管理を任せたアビドス自治区に不法滞在者が集まって【アビドス高等学校】の看板を使われたことへの――――――?」

 

金獅子 シブキ?「ええ。管理を任されたと言うのに、ちゃんと仕事をしてこなかった責任(ツケ)を責任者に取ってもらいませんと」

 

金獅子 シブキ?「それに、100年間の租借契約を結んだ時と比べて随分と【カイザーコーポレーション】も成長したようですが、今も昔もキヴォトスの真の支配者は【アビドス】であることを忘れないように釘を差しておきませんとね」

 

金獅子 シブキ?「ですから、ようやく穴蔵から引きずり出すことができましたよ、ドブネズミの親玉を。ご協力に感謝いたしますわ、ノノミさん」

 

十六夜 ノノミ「……そうでしたか」

 

金獅子 シブキ?「それでプレジデント、そんなあなたに会わせたい方たちがたくさんいますのよ?」

 

金獅子 シブキ?「さあ、入ってきなさい! カメラを回して! あとは好きにしていいわ!」

 

プレジデント「お、お前たちは――――――!?」ビクッ

 

元カイザー社員「覚えていてくれているとは光栄だね、プレジデントさんよぉ!?」ジャキ!

 

元カイザー社員「俺たちはてめえに責任を擦り付けられて左遷させられた者だぁ!」’ジャキ!

 

元カイザー社員「てめえに復讐することだけを考えて今日まで生きてきたんだ! 積年の恨みを思い知れぇ!」”ジャキ!

 

プレジデント「や、やめろ! 待て! 話を――――――!」

 

プレジデント「う、うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」

 

 

ズバババババババ・・・!

 

 

プレジデント「す、スオウおおお――――――!?」

 

朝霧 スオウ「………………」スン ――――――ただ見ているだけ。

 

十六夜 ノノミ「……スオウさん」

 

ロボット職員「……因果応報ですね」

 

ロボット職員「防衛室長と癒着して【連邦生徒会】の乗っ取りを企んでいた報いを受けろ」ボソッ

 

カイザーPMC「ぷ、プレジデント!?」

 

カイザーPMC「プレジデントをお守りしろ――――――」

 

カイザーPMC「ぐおぁあああ!?」

 

金獅子 シブキ?「おっと、雑魚は引っ込んでなさいな!」バン! バン! ――――――黄金のデザートイーグルが火を噴く!

 

カイザーPMC「ぐああああああああああ!?」

 

カイザーPMC「ぐおおおおおおおおおおおおおおお!?」

 

プレジデント「だ、誰か、助け――――――」

 

金獅子 シブキ?「さあ、みなさんもどうぞ」ゴトッ ――――――用意させた銃が箱に詰められていた。

 

金獅子 シブキ?「もはや死を免れない状況になったのなら、この場で思い切り恨みを発散しても罰は当たらないと思いませんこと?」ニヤリ

 

債権者団体の代表「………………」ジャキ!

 

ZK社長「………………」ジャキ!

 

質屋連合長「………………」ジャキ!

 

押収品競売組合長「………………」ジャキ!

 

私債労働組合長「………………」ジャキ!

 

プレジデント「ま、まさか――――――」

 

プレジデント「や、やめ――――――」

 

 

ズバババババババ・・・・!

 

 

プレジデント「うわあああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

ネフティス幹部「い、いくら【真なるアビドス生徒会】にとって今回の一件は【カイザー】に大元の責任があったとは言え、これは――――――」アワワワ・・・

 

ネフティス幹部「いや、これが本来の【アビドス】のやり方――――――」ガタガタ・・・

 

金獅子 シブキ?「さあ、ノノミさんとガリバーさんもどうぞ」

 

十六夜 ノノミ「あ、いえ、遠慮しておきます……」

 

ロボット職員「プレジデントを害する理由も害していい理由もありませんので」

 

金獅子 シブキ?「そうですか。では、早々にこの場を立ち去ることをおすすめしますわ。もう総会はお開きです」

 

 

――――――今なら、まだ間に合うはずですから。

 

 

金獅子 シブキ?「どうか、お元気で。生きていたら、またお会いしましょう」

 

十六夜 ノノミ「シブキ様……」

 

ロボット職員「あなたはやっぱり――――――」

 

金獅子 シブキ?「これまで代々誇りとしてきた愛すべき自治区の管理を疎かにしてきた過去への清算――――――、それがその時代に総帥となった(役割が回ってきた)私なりの()()()ですわ」シー! ――――――黄金の扇子で口元を隠す。

 

 

――――――オーホッホッホッホッホ!

 

 

今、僕の目の前で()()()()()()が起ころうとしている。

 

これまで学園都市:キヴォトスで 散々 生徒や他人を喰い物にしてきた悪どい商売をしてきた大人たちが、【真なるアビドス生徒会】の代表者である金髪ロールのライオン耳の誇り高き獅子の令嬢によって断罪されようとしているのだ。

 

その真意を金箔を張った扇子で口元を隠し、その正体も目元をサングラスで隠した装いで、かつてプレジデントによって立場を追われた積年の恨みを抱いた復讐者たちを率いて、【プライベートファンド】の総会を華麗に制圧したのである。

 

さすがは“暁のホルス”に匹敵する【アビドス】の神秘の継承者である“繁吹きのライオネス(メスライオン)”であり、

 

黄金仕様のデザートイーグルだけで並の戦力では相手にもならないはずの【カイザーPMC】を屠ったことで、危機に直面した際は自分だけが助からんがために平然と他人を踏み台にして逃げ遂せてきたプレジデントはついに完全に逃げ場を失うことになり、

 

租借地の管理を託された業者がこれまで犯してきた罪科への落とし前を付けさせるためにこうして自ら死地に赴いて最高の処刑方法を実践したのである。

 

他人を平然と切り捨てて成り上がってきたプレジデントによって虐げられてきた者たちが取り囲んで殴る蹴る撃つの十字砲火(リンチ)を浴びせ、強者が弱者に一転攻勢を受けて辱められる様子をしっかりと記録に収めて弱みを握るのだ。これが最高の娯楽だと言うのだから、【真なるアビドス生徒会】の“天上人(トップス)”たちは相当に意地が悪い。

 

そのため、もはや誰も助からない状況に衆人を追い込んだことで【カイザーコーポレーション】の恐怖の支配は崩壊し、剥き出しになった恨み辛みが弾丸となってプレジデントの身体に四方八方から降り注ぐことになったのだ。キヴォトスの住人でなかったら、すでに金属片一つ残らないほどに弾丸の雨に身体が抉り取られていたはずである。

 

この辺りの人心掌握はどこまで行っても人材を使い潰すだけのブラック企業に過ぎない【カイザーコーポレーション】では決して成し得ない;砂漠化がなければ今も最強校として存続していたであろう 夢があふれる黄金郷【アビドス高等学校】で受け継がれてきた完成された技術であり、君臨するとはこういうことであると理解することとなった。

 

それでもって、切り捨てられた者を使って正当なる復讐であると錯覚させることで、寄って集ってプレジデントに集団暴行を加える列に参加した【プライベートファンド】の面々を見る眼差しは冷え切っており、予告通りに【プライベートファンド】をミサイル攻撃で消し去る決意を撤回させる最後の機会は潰えてしまったのである。

 

 

――――――そう、本当はここまでのことはしたくなかった。やらざるを得ない矜持があるから、したまでのこと。

 

 

――――――金持ち喧嘩せず、正式な謝罪をしてもらえたら寛大にも全て許すつもりでいたのだ。

 

 

――――――だって、クズ共の相手をする時間や労力がもったいないから。価値など元より認めていないから『許す』という手順を必要としているに過ぎない。

 

 

だから、僕とノノミが総帥閣下の折角のお誘いを確固たる意志と規範によって断って集団暴行の列に加わらなかった時、その回答に満足してもらえたらしく、僕たちにだけ聞こえるように本音を聞かせてくれたのである。

 

その声音は既成事実を作るために総帥閣下から“お兄様”と一方的に呼ばれている北条先生の見立て通り、

 

100年間の租借契約であったために先の問題だと考えていた【アビドス】の問題の最終決着が自分の代で来るとはプレジデントが予想していなかったように、

 

総帥閣下もまた自分の代で歴史の表舞台に返り咲くためにこれだけのことをしなくてはならなくなった不安や恐怖を必死に押し殺した上でキヴォトス最強校の代表として気丈に振る舞ったものであることを伝えていた。

 

いつかは【アビドス】の復興が果たされることを心から願っていたものの、それが今日の出来事になるとは夢にも思わなかった矛盾を地球人:北条 アキラがもたらした奇跡によって暴かれた少女は先人たちが敷いたレールの上を走り出す他なくなっていたのだ。それが時代錯誤なものであろうと。

 

扇子で隠された口元やサングラスで隠された目元が示すものが同じならば、悪役令嬢に相応しい高笑いもまた必死に隠そうとしている心の叫びの現れなのだ――――――。

 

 

――――――撃ちたくないのに撃つしかない地獄で響く高笑いはまさに正気と凶気の狭間の心の涙であった。

 

 

十六夜 ノノミ「ガリバーさん」ギュッ

 

ロボット職員「うん」

 

十六夜 ノノミ「変えてあげてください。私たちが変われたように」

 

十六夜 ノノミ「そして、全てを救ってください」

 

ロボット職員「あの時(1周目)にはできなかったことを、今度は――――――!」

 

 

――――――今度こそ救ってみせるぞ、【アビドス】のみんなを! 関わる人全てを!

 

 

1つ、繁栄の理を取り戻すこと。

 

 

2つ、陰謀の夜を超えること。

 

 

3つ、王権を自ら掴み取ること。

 

 

――――――――――――

 

―――――――――

 

――――――

 

―――

 

 

――――――時は【プライベートファンド】の総会の前日に遡る。

 

 

ロボット職員「……ノノミさんからの定時連絡が途絶えました」

 

北条先生「そうですか。嫌な予想ばかりが当たって嫌になりますよ」

 

宇宙格闘士の帝王「見下げ果てたやつらだ。まさか、自分たちの令嬢を人質にして【アビドス対策委員会】に例の売買契約の無効を迫ろうとはな」

 

神代キヴォトス人「だが、それは同時に【アビドス生徒会】新生徒会長を拉致監禁したことになるのだから、もうやつらとしては引き下がることはできなくなったわけだ」

 

奥空 アヤネ「作戦通りとは言え、ノノミ先輩が心配です。手荒な真似をされる可能性は低いとは思いますが……」

 

黒見 セリカ「でも、本当に 明日 総会が開かれるの? 正午になったら戦略兵器のサーモバリック爆弾でアビドス中央駅一帯が吹き飛んじゃうのよ?」

 

砂狼 シロコ「うん。【連邦生徒会】も全自治区に通達したし、明日も通達するから、明日はキヴォトス中の注目が集まることになる」

 

北条先生「もう止めるなんて無理ですよ。すでに『正午までに旧庁舎から人っ子一人いなくなればビビッて一目散に逃げ出した』と評価が下されるようになってますから。世論操作もお手のものです」

 

砂狼 シロコ「そうだね。いつの間にか『ミサイルの発射時刻を過ぎても居続けないといけない』ってことに話が変わったから、【真なるアビドス生徒会】は確実に【プライベートファンド】の逃げ道を潰しにかかっている」

 

奥空 アヤネ「はい。ですから、もうミサイルの発射前に総会を終わらせて即退散することも許されない状況です」

 

黒見 セリカ「いや、時間通りにミサイルが発射されるとは限らないじゃない! 馬鹿な意地を張ってないで即刻中止よ、こんなの!」

 

黒見 セリカ「どうして逃げないのよ!? 命が惜しくないの!? それとも、本当に馬鹿なの!?」

 

宇宙格闘士の帝王「そんなのは簡単な理屈だぞ、セリカ」

 

神代キヴォトス人「――――――『命が惜しくなる状況にはならない』と高を括っているから、こうなる」

 

黒見 セリカ「ええ?!」

 

宇宙格闘士の帝王「つまり、自分が死ぬまでのことにはならないだろうと甘えきったことを考えているから、追い詰められた状況で楽観的な思考へと流されることになる。実力差がはっきりした対戦の前で 覚悟のない弱者側が陥る現実逃避(よくあること)だ」

 

黒見 セリカ「そ、そんな……」

 

砂狼 シロコ「………………」

 

奥空 アヤネ「………………」

 

 

神代キヴォトス人「さて、あれだけの忠告を無視して愚かな選択を重ねてくれたものだが、賽は投げられたのだ。最終確認といたそう」

 

 

神代キヴォトス人「我は新アビドス自治区に残ってデモ集会を監視いたす。当日、【プライベートファンド】が揺さぶりをかけにくる可能性がないとも限らんのでな」

 

ロボット職員「私は手筈通りに金塊の入ったアタッシュケースを持って総会が開かれるアビドス中央駅旧庁舎に向かいます」

 

宇宙格闘士の帝王「オレはいつでもコーイチの救出に迎えるように空で待機していればいいんだな?」

 

北条先生「そして、僕は予定通りにアビドス砂漠の未調査領域の調査を進める――――――」

 

奥空 アヤネ「嫌な予感がします。先生、気を付けてください」

 

黒見 セリカ「大丈夫よね? 【連邦生徒会】の報道特番でしっかりと全自治区に戦略級のサーモバリック爆弾が旧アビドス自治区に落とされることを通達したし?」

 

黒見 セリカ「でも、先生が解説してくれたサーモバリック爆弾の本当の恐ろしさは酸素欠乏だから、爆心地に近かったら助かりようがない……」

 

砂狼 シロコ「生物を殺し尽くすのにこれほど適したものはない」

 

砂狼 シロコ「そんなものを対怪獣兵器として撃ち込んでいるわけだよね」

 

神代キヴォトス人「まあ、それで倒しきれないのが“怪獣(KAIJU)”というわけだがな」

 

神代キヴォトス人「先生、明日は新型を投入するのであろう。決して気を抜かぬように」

 

 

――――――敵の思惑通りに我らは分散することになる。明日は必ず大きなうねりが起きるはずだ。気を引き締めていくぞ。

 

 

結局、【真なるアビドス生徒会】の通告や【連邦生徒会】の通達も虚しく、【プライベートファンド】の総会は予定通りに開催される運びとなり、嘘か真か、本当にそれだけの被害をもたらすかもわからないサーモバリック爆弾が落とされるか半信半疑の中、誰も『抜ける』と言い出せないチキンレースが開幕となる。

 

しかし、【真なるアビドス生徒会】の面々と直に会ったことで、砂漠化の問題を解決して帰還事業を始めようとした矢先、自分たちの聖地であるアビドス砂漠を砂漠横断鉄道という粗大ゴミ置き場にした関係者への怒りは凄まじく、十中八九【プライベートファンド】を滅ぼすために予告通りにミサイルを発射するのは間違いないと断言できる。

 

そのため、“シャーレの先生”をはじめとする信頼できる大人たちとしては【真なるアビドス生徒会】の忠告通りに『総会には参加すべきではない』という考えであった。あれは間違いなくやる。

 

それこそが現状における賢明かつ合理的な判断だが、【真なるアビドス生徒会】の決定に従うことは同時に【プライベートファンド】に協力した人たちを見殺しにする選択でもあり、戦略兵器としては核兵器に次ぐ威力を持つとされるサーモバリック爆弾によってアビドス中央駅周辺が消滅する異常事態が起きることを容認したことにもなる。

 

それの何がまずいのかと言えば、それがキヴォトスにおける大量虐殺を目的とした戦略兵器の使用の悪しき前例となって後世における重要な判断の場面で禍根を残すことであり、そうさせないために【連邦生徒会】の報道特番を通じて避難;総会の中止を促したわけだが、何日も前から兵隊を集めた現地に動きはなかった――――――。

 

それを踏まえて、この度、【アビドス生徒会】新生徒会長となった十六夜 ノノミは総会の開催目的である【ネフティス】との間の売買契約を成立させて総会を即解散させることによって多くの人命を救う賭けに出ることにしたのだ。

 

当然、それで【プライベートファンド】が受けることになる世評など知ったことではない。むしろ、非常事態宣言が解除されていない怪獣無法地帯に突如として乱入してきた連中にくれてやる情けは人命第一の最低限の人道的な措置のみである。何があっても命だけは助けてやる(余計な手間をとらせやがって)

 

また、【真なるアビドス生徒会】の忠告通りに総会に参加するかしないのかのチキンレースを降りてしまった場合、【真なるアビドス生徒会】の怒りを買ったことで後先短いとは言え、<列車砲>の獲得のために結成された【プライベートファンド】の連中に次回の総会の主導権を完全に握られ、それで期限切れまで持っていかれる可能性が高く、今この場で決着をつけないと禍根をしぶとく残すことが考えられた。

 

よって、もはや【アビドス】のみならず【キヴォトス】の未来を左右することになる重要な選択を下すために、ネフティスの令嬢である【アビドス生徒会】新生徒会長:十六夜 ノノミは前生徒会長:梔子 ユメが残したとされる【セイント・ネフティス】との<列車砲>の所有権までも含めた件の契約を成立させる最終調整のためにネフティス幹部の下に単身で赴いた――――――。

 

しかし、【プライベートファンド】から<列車砲>を取り戻すと共に【アビドス】の栄光を取り戻そうとする野心を顕にした【セイント・ネフティス】に一人で訪れた十六夜 ノノミは拘束されることになり、契約そのものを無効にするための人質になったことを定時連絡が途切れたことで知らせてきたのである。

 

これもまた予測できていた展開の一つであり、自治区とは切っても切れない関係の学園とはちがって故郷を捨てることも厭わない企業としての主張と身勝手を振りかざす【セイント・ネフティス】が【アビドス生徒会】ひいては【アビドス対策委員会】と敵対したことにより、生徒たちが主権者である学園都市:キヴォトスの平和のために存在する【連邦捜査部 S.C.H.A.L.E(シャーレ)】は【アビドス生徒会】生徒会長:十六夜 ノノミの救出のために公然と動き出すこととなる。

 

そう、十六夜 ノノミの捨て身の行動によって【連邦捜査部 S.C.H.A.L.E(シャーレ)】が民間の取引の現場に介入する大義名分が生まれたわけなのだが、あくまでも実力行使は最終手段として、地球人:北条 アキラの名に泥を塗ることのない 栄誉ある戦いへと臨むことになったのだ。

 

もちろん、それにはキヴォトスの頂点に立つ存在である地球人:北条 アキラの意向と方策があり、【真なるアビドス生徒会】の制裁を利用して【プライベートファンド】を生かすも殺すも先生次第であり、己の利益の最大化のために【プライベートファンド】を排除しようとしているのは一面としては間違いないのだが、

 

そもそもとして、失踪した“連邦生徒会長”によって赴任させられた怪獣退治の専門家が一所懸命にアビドス遠征をしている最中に、突如として砂漠横断鉄道の再開発を強行してきた【プライベートファンド】を怪獣無法地帯から追い出して犠牲者をゼロにしたいと思うのは至極当然の話であり、最初から正義は北条先生の側にあることをはっきりと教え込むだけのことである。

 

しかし、万人が超人と認めた“連邦生徒会長”ですら御せなかった犯罪天国(ゴッサムシティ)の住人というのがキヴォトス人であり、そんなキヴォトス人から9割以上の支持率を叩き出した“連邦生徒会長”の実質的な後継者である地球人:北条 アキラが下した一手というのが圧倒的銃社会の人間では導き出せない平和の星からの挑戦状であった――――――。

 

 

砂狼 シロコ「ん、本当にそれで行けるの、先生?」

 

黒見 セリカ「たしかに、ガリバーさんだったらレールガンや電磁装甲で正面突破も不可能じゃないと思うけど、やっぱり、私たちもついていった方が――――――」

 

ロボット職員「大丈夫ですよ。先生を信じましょう」

 

ロボット職員「そして、私のことも信じてください。必ずノノミさんを連れて帰ります。契約も勝ち取ってね」

 

奥空 アヤネ「お願いします、ガリバーさん」

 

北条先生「では、【プライベートファンド】の件が片付いたら、みんなの頑張りを労って祝勝会を開きましょうね。良いシャンパン(スパークリングワイン)を仕入れたんです。新型のお披露目もしましょう」

 

 

――――――さあ、愛と勇気が世界を救うと信じて! それで互いの健闘を称え合ってのシャンパンファイトです!

 

 

 

 

 

――――――そうして迎えた【プライベートファンド】の総会の当日。

 

 

ワイワイ、ガヤガヤ、ワーワー!

 

 

ロボット職員「作戦領域に進入。任務開始です」

 

ロボット職員「やっぱり、この期に及んで逃げ出してはくれないか……」

 

ロボット職員「だからこそ、【真なるアビドス生徒会】が本気であることを示すためにミサイルが落とされる……」

 

ロボット職員「で、いつも犠牲になるのは末端の人間ばかり――――――!」

 

ロボット職員「そこで、この超高性能集音マイクの出番ってわけですね、先生!」スッ

 

――――――

押収品競売組合長「新アビドス自治区の方面の警戒は最大限に! 各自地区から生徒たちが集まって我々に対するデモ集会が開かれるそうだ!」

 

押収品競売組合長「そこからデモ集会に参加した生徒たちが暴徒と化して総会に雪崩込んでくる可能性があるぞ!」

 

押収品競売組合長「総会が始まるまで、絶対に誰も通すな!」

――――――

 

マーケットガード「はっ!」ビシッ

 

マーケットガード「なあ、聞いたか?」’

 

マーケットガード「ああ、『今日の正午にミサイルが旧庁舎(あそこ)に落とされる』って話だろう? 昨日の報道特番で【連邦生徒会】が全自治区に通達していたな」

 

マーケットガード「俺たち、こんなところにまだ居て大丈夫なのか?」’

 

マーケットガード「まあ、大丈夫だろう。もし本当にそんなことになるなら、それこそ我らが“シャーレの先生”が黙っちゃあいないぜ」

 

マーケットガード「だ、だよな。ハザードマップを完成させるためにアビドス遠征をやっているってのに、街の方でミサイルが大爆発なんてしたら、それどころじゃないもんな」’

 

マーケットガード「ああ。アビドス遠征の妨害をするやつらは漏れ無く“キヴォトスの敵”認定されるわけだから、今や万人がキヴォトスの頂点に立つ存在だと認めている“シャーレの先生”のやることを邪魔する度胸のあるやつなんていねえよ」

 

マーケットガード「そうだよな。なんてったって、あの【カイザーコーポレーション】から土地を奪い返して新アビドス自治区の成立を認めさせたぐらいだもんな」’

 

マーケットガード「そういうことだ。だから、デモ集会している連中にしても、俺たちと戦り合ったら“シャーレの先生”の意志に背くことになるから、心配しているようなことにはならねえよ」

 

マーケットガード「そっか。よかったぁ」’

 

 

ロボット職員「みなさん、おつかれさまです! おつかれさまです! おつかれさまです!」スタスタ・・・

 

 

マーケットガード「おい、見ろ。あれって“シャーレの職員”だぜ」

 

マーケットガード「ああ、“先生の半身”って評判の!」’

 

マーケットガード「ということは、今回の総会の立会に来たみたいだな」

 

マーケットガード「あのアタッシュケースの中身は――――――?」’

 

マーケットガード「おそらくは札束か、金塊ってところだろうな。俺たちが守っているのが【プライベートファンド】の総会ってわけだし、公正中立な立場の人間として交渉に必要な資金を預かっているんだろう」

 

マーケットガード「なるほど、“シャーレの職員”が持ってきたものならば絶対的な信用があるから、イチャモンをつけられないようにしているんだな。(あったま)いい」’

 

マーケットガード「そういうことだろうな」

 

マーケットガード「お、あれはお迎えかな?」’

 

マーケットガード「おいおい、どこの部隊だ、ありゃあ? 荷物を預かるフリをしてアタッシュケースを奪い取ろうとしているのが丸わかりだぞ?」

 

マーケットガード「助けないと!」’ガタッ

 

マーケットガード「馬鹿! 俺たちの任務は護衛じゃない! 持ち場を離れるな! 金がもらえなくなるぞ! いいのか!」ガシッ

 

マーケットガード「で、でも――――――!」’

 

 

――――――次の瞬間、“シャーレの職員”ロボット職員:マウンテンガリバーの肩アーマーのワイヤーアンカーが強盗を鷲掴みにして宙吊りにした!

 

 

マーケットガード「おお、さすがは【SRT】の抗議活動を鎮圧した実績をお持ちで。そりゃあ、艦載砲の試作モデルとされるレールガンをぶっ放すんだから、本当に赤子の手をひねるみたいだ」

 

マーケットガード「迎えに来た兵士をそのまま鷲掴みにしたまま歩かれたら、こっちとしては何も手出しはできないな……」’

 

マーケットガード「そういうわけだから、今日一日も何事もなく警備の仕事を終えて報酬(ギャラ)をたんまりもらって帰るぞ」

 

マーケットガード「ああ、それが一番だ。触らぬ神に何とやらだ」’

 

――――――

押収品競売組合長「――――――な、何だ、あれは? あれは“シャーレの職員”なのか?」

 

押収品競売組合長「馬鹿な。『誰一人として通すな』と命令したのだから、相手が“シャーレの職員”だから撃つわけにはいかないにしても、何でもいいから理由をつけて追い払うのが与えられた役割だろうに、この役立たずが……」

 

押収品競売組合長「しかも、アタッシュケースを預かるどころか、逆に荷物として一緒に運ばれているとは、あれでは……」

 

債権者団体の代表「くっ……」

 

ネフティス幹部「――――――失敗したようですね」

 

押収品競売組合長「黙れ、【ネフティス】!」サッ ――――――合図を送る!

 

マーケットガード「――――――」ジャキ!

 

マーケットガード「――――――」ジャキ!

 

ネフティス幹部「何の真似でしょうか?」

 

押収品競売組合長「お前たちの企みなど、とっくに知っている」

 

ネフティス幹部「……『企み』とは?」

 

債権者団体の代表「白を切るな。我々【プライベートファンド】を裏切ろうとしているのだろう」

 

ネフティス幹部「……どうやら、誤解があるようですね」パチン! ――――――合図を送る!

 

カイザーPMC「――――――」ジャキ!

 

カイザーPMC「――――――」ジャキ!

 

押収品競売組合長「な、なに?!」

 

債権者団体の代表「――――――か、【カイザーPMC】!?」

 

ネフティス幹部「言葉には気を付けてください」

 

ネフティス幹部「裏切るも何も、<列車砲>は最初から私たち【ネフティス】の物です」

 

債権者団体の代表「や、やれっ! 相手が【カイザーPMC】であろうと関係ない! ここまで来て負けてなるものか!」

 

 

ズバババババ・・・! ドォオオオオオオオオオオン!

 

 

十六夜 ノノミ「……銃撃の音。やはり、こうなってしまいましたか」

 

朝霧 スオウ「……ああ、予想していた通りに事が運んでいるな、先生のな」

 

朝霧 スオウ「――――――完全に先生の掌の上というわけだな」

 

十六夜 ノノミ「スオウさん」

 

朝霧 スオウ「こうして待っているのも退屈だろうから教えてやるが、先生は【ネフティス】側の人間である私に対して【ネフティス】側の動きを全て予測してみせたのだ」

 

朝霧 スオウ「だから、先生は今日の総会に介入しない意思表示として未調査領域の調査に出ることを告知し、代わりに立会人として“シャーレの職員”を送り込むことも包み隠さず公表していた――――――」

 

朝霧 スオウ「見ろ。今こうして総会が始まる前に【ネフティス】と【プライベートファンド】が仲間割れすることを予測して、総会の現場で起きている銃撃戦をあの距離から集音マイクで拾って、それを垂れ流しにして練り歩いているぞ」

 

朝霧 スオウ「おかげで、厳重な防衛網を敷いていたのに侵入を許したんじゃないかと外では動揺が広がっていて、ただの立会人であるはずの“シャーレの職員”が混乱を落ち着かせるために自分が現場の確認をすると制して、持ち場を維持するように言い含めて旧庁舎までの道を開けてもらうことになったな」

 

朝霧 スオウ「何日も前から兵隊を集めて何重にも防衛線を敷いたのに、こんなやり方で旧庁舎までの道を何事もなく通り抜けることができるだなんて、誰が予想できる……」

 

十六夜 ノノミ「さすがです、先生。常に私たちキヴォトス人の百歩ぐらい先を――――――、いえ、人類同士の戦争が終結した遠くの星からやってきたんですから、100万光年ぐらい先を行っていますね」

 

十六夜 ノノミ「でも、どうして そのことを――――――?」

 

朝霧 スオウ「もちろん、先生は展開を予想しただけであって対策までははっきりとは言わなかったが、【ネフティス】側の人間として報告はしたさ。聞き流されたがな」

 

 

朝霧 スオウ「だから、自ら半身と呼んで“シャーレの先生”が送り込んだ“シャーレの職員”の旧庁舎への到着を許した時点で、この勝負、お前たち【アビドス対策委員会】の完全勝利だ」

 

 

朝霧 スオウ「見ろ。もう着いたぞ。一直線だと、こんなにも早いな」

 

朝霧 スオウ「本当ならば『ビルの倒壊に巻き込んで避難させる』という()()()()()が用意されていたが、総会の現場で起きる銃撃戦を予想しての集音マイクだけで全てが無力化されてしまったのだ」

 

朝霧 スオウ「現場は銃撃戦の真最中で外の様子に気を配る余裕もないだろうから、この到着の速さはまるで魔法を使ったみたいに感じられるだろうな」

 

十六夜 ノノミ「実際、魔法なんですよ。人類同士の戦争が終結した平和の星からやってきた先生が教えてくれた 人を傷つけない 優しさと強さを兼ね備えた魔法です」

 

十六夜 ノノミ「私たちは みんな 先生の魔法にかかっているんです」

 

朝霧 スオウ「だから、自分から【ネフティス】に囚われに――――――?」

 

十六夜 ノノミ「はい。ここまで丁重にお連れしてくださり ありがとうございました。おかげで、ガリバーさんはアタッシュケースを守ることに専念できました」

 

朝霧 スオウ「そうか。始めから何もかも――――――」

 

朝霧 スオウ「……先生は怪獣退治の専門家だ。人間の常識を超越した超常の総称である“怪獣(KAIJU)”の相手をずっとしてきたんだ。海千山千の魑魅魍魎の相手もお手の物ということか」

 

 

――――――全ては先生の計画の内。シナリオ通り。そういうことか。

 

 

十六夜 ノノミ「スオウさん、どうやら現場は決着が着いたようです」

 

朝霧 スオウ「ああ。結果は見るまでもなく【カイザーPMC】を引き入れた【ネフティス】の勝利だ。銃声のちがいでわかる」

 

朝霧 スオウ「――――――しかし、だ」

 

朝霧 スオウ「では、そろそろ出るとしようか。立会人である“シャーレの職員”も迎えてな」

 

十六夜 ノノミ「はい」

 

十六夜 ノノミ「でも、執事さん……」

 

朝霧 スオウ「それ以上は考えるな。あとは成るように成るさ」

 

朝霧 スオウ「――――――()()()()()()()()()()()()

 

 

パラパラ・・・、シュウウウウウウ・・・!

 

 

ネフティス幹部「これで終わりでしょうか?」

 

質屋連合長「用意した戦力が、全て……」

 

債権者団体の代表「まさか、これほどの強さとは……」

 

私債労働組合長「いや、あり得ない! 【ネフティス】が【カイザー】と手を組むだなんて!」

 

私債労働組合長「どういうことだ! 犬猿の仲じゃなかったのか!?」

 

ネフティス幹部「ええ、たしかに仰る通りです」

 

ネフティス幹部「しかし、あの者たちが何も見返りを求めず、砂漠横断鉄道の債権を差し出したとでもお思いで?」

 

ネフティス幹部「取引をしていたのですよ、裏で」

 

押収品競売組合長「だ、だとしても、自分たちの令嬢を人質にするとは!」

 

ネフティス幹部「――――――『致し方なかった』それだけです。後ほど謝るとします」

 

ネフティス幹部「ですが、かつてお嬢様が与えた損害を考えると、これでようやく取り返せるといったところでしょう」

 

ネフティス幹部「今や【ハイランダー鉄道学園】ではなく【アビドス高等学校】の生徒会長となったお嬢様ですが、こうして人質にして総会には出席できないようにしたので、いくら“シャーレの先生”でもどうすることもできません」

 

ネフティス幹部「あとは、【真なるアビドス生徒会】から『偽物の生徒会長:梔子 ユメが結んだ契約は無効である』と一言いただければ、晴れて<列車砲>の所有権は我々【ネフティス】に返ってくるのです」

 

ネフティス幹部「そして、お嬢様は【アビドス】の生徒として、卒業まで幸せな日々を送れることでしょう」

 

債権者団体の代表「ど、どういうことだ? <列車砲>が【ネフティス】の物? 【カイザー】の物になるのではなく?」

 

ネフティス幹部「……【カイザー】は<列車砲>に興味がないのかと」

 

ネフティス幹部「ちなみに、私が裏切ったという情報はどちらから?」

 

債権者団体の代表「そ、それは……」

 

 

朝霧 スオウ「――――――()()

 

 

ネフティス幹部「スオウさん!?」

 

カイザーPMC「――――――」ジャキ! ――――――雇い主であるネフティス幹部に対して、

 

カイザーPMC「――――――」ジャキ! ――――――スオウの指図で一斉に銃を向ける!

 

ネフティス幹部「ま、まさか、寝返って――――――?!」

 

 

ロボット職員「おつかれさまです。総会が始まる前に何やら白熱した議論が交わされていたようですが、ちょうど合意が得られたみたいで何よりです」

 

 

ネフティス幹部「え、もしかして、ガリバーさんですか!?」

 

ネフティス幹部「そ、そんな馬鹿な!? 早すぎる!? あの防衛線をもう突破してきたというのですか!? まさか、レールガンを使ったのですか!?」

 

ロボット職員「いいえ、普通にみんな通してくれましたよ?」

 

 

十六夜 ノノミ「執事さん。みんな、先生の魔法にかかっているんですよ。だから、ガリバーさんは誰とも戦うことなく まっすぐ ここに来ることができたんです」

 

 

ネフティス幹部「お、お嬢様……」

 

ネフティス幹部「ど、どういうつもりですか、スオウさん、これは!?」

 

朝霧 スオウ「………………」

 

 

プレジデント「では、私が説明してやろう」カツン! ――――――杖をついたスーツ姿のロボットが堂々と入場!

 

 

ネフティス幹部「ぷ、プレジデント?!」

 

プレジデント「彼女は元々【カイザーPMC】に所属していた。そういうことだ」

 

朝霧 スオウ「……昔の話だ」

 

ネフティス幹部「行く当てのないあなたを誰が拾ったと!? まさか、恩を仇で返すとは……!」

 

朝霧 スオウ「誰が助けて欲しいだなんて頼んだ?」

 

プレジデント「ジェネラル」

 

ジェネラル「全員おとなしくしてもらおう」バッ ――――――その場にいた【カイザーPMC】を全員従える!

 

ネフティス幹部「なっ」

 

債権者団体の代表「そんな……!」

 

プレジデント「おっと、こちらのお二人:“ネフティスの令嬢”と“シャーレの職員”は別だ。それ以外は部屋の外に来てもらおう」

 

プレジデント「では、お二人はしばらくお待ちを。債権の譲渡に関して彼らと話し合うことがあるのでね」

 

十六夜 ノノミ「――――――あなたがプレジデント。あなたも来たんですね、ここに」

 

ロボット職員「――――――十六夜 ノノミとの合流に成功。これで作戦の第一段階はクリア」

 

 

――――――時刻はまだ正午に非ず;ミサイル発射まで時間的な余裕はある。

 

 

こうして【プライベートファンド】の総会は元々<列車砲>は自分たちの物であるという立場の()地元の大企業【セイント・ネフティス】の裏切りに遭って開会前に激しい銃撃戦の末に制圧されることになった。

 

解決の目処が立たない砂漠化対策のために費用がかさんだ【アビドス生徒会】を借金漬けにしてアビドス自治区の土地を次々と差し押さえていった借金取りの実働部隊ということでまったく良い感情を持っていないはずの【カイザーPMC】をまさかの【セイント・ネフティス】が雇っていたこともそうだが、

 

怪獣退治の専門家である地球人:北条 アキラによる数々の新発明や超兵器が投入されたアビドス遠征が始まってからは評判を下げ続け、それに釣られて最低最悪のブラック企業【カイザーコーポレーション】の強大さを都合よく【プライベートファンド】が忘却していたことも大きかった。

 

しかも、砂漠横断鉄道の再開発で【セイント・ネフティス】に債権譲渡するに当たって裏取引を持ちかけていた【カイザーコーポレーション】はあらかじめ罠を張っていたのだ。それに気付かないでいたのが【セイント・ネフティス】なのだから、十数年前の砂漠横断鉄道の失敗もさもありなん――――――。

 

アビドス遠征が始まると同時に怪獣無法地帯となってしまった上にアビドス自治区の大半の土地を所有している事実がバレてしまい、そのために怪獣無法地帯のハザードマップの作成と提出という無理難題が課せられることになり、当然ながら【カイザーコーポレーション】にとっても百害あって一利なしの土地の権利を早々に手放した方がいいに決まっていた。それは怪獣無法地帯と化した現地で働く死と隣り合わせの社員たちの必死の声でもあった。

 

しかし、本社としては【真なるアビドス生徒会】と交わしていた100年間の租借契約で管理を任されていたアビドス自治区の土地を【アビドス高等学校】の生徒を自称する詐欺集団に隙をつかれて奪い取られた形になっていたため、相手を借金漬けにして可能な限り搾り取りながら返還日までにじっくりと土地の全てを買い戻していく消極的な戦略をとっていたことが仇となっていたのだ。

 

そのため、アビドス遠征が終わるまでの間のリスク管理として、怪獣無法地帯となって買い手がつかないはずの不毛の大地の土地の管理者としての義務と責任を押し付ける相手として、十数年前に地元を見捨てて今頃になってノコノコと出戻りをかまそうとしていた【セイント・ネフティス】に当たりをつけており、その上で【セイント・ネフティス】の全てを根こそぎ奪い取るつもりでいたのだった。それこそが【カイザー】の【カイザー】たる所以なのだ。

 

 

――――――結果、開会前の【プライベートファンド】の仲間割れの末の銃撃戦の勝者は【セイント・ネフティス】などではなく、始めにそこに居なかったはずの【カイザーコーポレーション】という北条先生の予測通りの展開となったのである。

 

 

そして、別室に連れ込まれたネフティス幹部や債権者団体の代表たちはあらためて<列車砲:シェマタ>の情報がプレジデントに行き渡り、その存在を隠していたことについて問い質されるのだった。

 

つまり、ネフティス幹部は先程『【カイザー】は<列車砲>に興味がない』と嘘を吐いていたことがバレたわけだが、そもそもとして総会を制圧するために【カイザーPMC】を引き入れた時点で<列車砲>の存在が上に報告されてしまうではないか――――――。

 

だいたい、手に入れられるものはどんな手段を使ってでも奪い取るのが【カイザー】なのだから、この際<列車砲>も簡単に手に入れられそうだと思えば、直前に結んだ取り決めを反故にしてでも、すぐにでも自分たちのものにしようと動くのも当然の帰結であった。さすがは何処よりも金に汚いブラック企業の面目躍如である。機を見るに敏であった。

 

なぜなら【プライベートファンド】が買い取った債権は元々は【カイザーコーポレーション】のものなのだから、それを安く売りつけるはずもなく、元々【プライベートファンド】としては決して安くない債権を買い取るために資金を出し合った寄せ集めの団体に過ぎないため、この最終局面でなけなしの金を叩いて傭兵を雇うことで資金が尽きかけていたのである。

 

つまり、<列車砲>の獲得を画策した【プライベートファンド】にしてみれば、<列車砲>の存在に気づいて【カイザーコーポレーション】が債権を買い戻す動きを見せられたら一気に息の根を止められるため、何が何でも【カイザーコーポレーション】に知られてはいけなかったのだ。

 

 

――――――なのに、しかし、そんな下心満載の下卑た願いが叶えられる道理など最初からなかったのだ。

 

 

砂漠横断鉄道の再開発を諦めきれずにいた【セイント・ネフティス】だったが、そこで【ハイランダー鉄道学園】と事業提携して送り込まれた【ハイランダー監理室】の人間がかつて【カイザーPMC】に所属していた朝霧 スオウだったのだから。

 

その辺りの経歴調査をまったくせずに核心に一番近づけてはいけない人間を入れた【セイント・ネフティス】の間抜け具合も然ることながら、総会の場で【プライベートファンド】を制圧するために【カイザーPMC】を使ったことで、そのままプレジデントの華々しい登場に利用されることになったのは、まさに愚鈍の極みだった。

 

そのため、砂漠横断鉄道の裏で建造されていた<列車砲>をお得に手に入れようとしている【プライベートファンド】の突き上げを受けていた【セイント・ネフティス】は仇敵である【カイザーコーポレーション】の力を利用する奇策で【プライベートファンド】の裏を掻いたつもりであったのだが、考えられる上で最悪の相手である【カイザーコーポレーション】の介入を許す自業自得の結果につながったのだ。

 

結果としては、別室で【プライベートファンド】を構成している企業を【カイザーコーポレーション】がそれ相応の金額:1000円で銃を突きつけながら買収する流れとなり、晴れて【プライベートファンド】を構成する企業は子会社となったのである。M&Aは【カイザー】の専売特許なのをなぜ今まで理解していなかったのか――――――。

 

 

――――――それと、知らなかったのなら、教えてやろう。

 

 

――――――我々【カイザー】の紋章(エンブレム)悪魔の魚(タコ)である理由はそれだけ多くの会社を従えているからだ。

 

 

――――――良かったではないか。これで今日からきみたちは我々【カイザーグループ】の一員になれる。

 

 

こうして【プライベートファンド】は構成している企業が尽く【カイザーコーポレーション】の子会社となったことで代表権限がプレジデントのものとなり、上機嫌のプレジデントが会場に戻っていくのをかつては【プライベートファンド】で今となっては【カイザーグループ】の一員でしかなくなった者たちはただただ惨めに見送ることしかできなかった。

 

そして、【プライベートファンド】に参加して買収されてしまった企業とは異なり、名義人だった【セイント・ネフティス】だけは【アビドス生徒会】との売買契約がまだあったために まさに九死に一生を得て この悪魔の魚に絡め取られることはなかったが、ただ それだけである。

 

そう、【プライベートファンド】が子会社化したことで【カイザーコーポレーション】の手に債権が戻ってしまったため、再び社運を賭けて再開させた砂漠横断鉄道だったが、事業計画は完全に破綻したのだ。遅かれ早かれ、【プライベートファンド】だった抜け殻たちと共に沈んでいくことになるだろう。

 

それを哀れに思う必要はない。そもそもが助力を求めた“シャーレの先生”からの宿題である事業計画書の再提出もできていなかったぐらいの体たらくである。砂漠化の根本的な解決になっていない無駄な事業であった。

 

こうなることがわかっていたからこそ、アビドス遠征が始まってすぐに【カイザーコーポレーション】から土地の権利を必要な分だけ取り返してスリム化した新アビドス自治区を成立させた“シャーレの先生”が再三の忠告をしていたのにも関わらず、アビドス遠征が始まって売りに出された債権を【プライベートファンド】に与して際限なく買いに走った時点で経営陣の無能さはすでに露呈していたのだ。

 

そして、再開発の工事を怪獣無法地帯と化した場所で強行して 案の定 怪獣に襲われて、世間からは非難轟々、我が身惜しさで現場からは人が逃げ出しているので、もはや どうすることもできなくなっていた。再び走り出した砂漠横断鉄道の夢はまたもや砂漠の蜃気楼のごとく儚く消えていったのである。

 

いや、それは怪獣無法地帯などに関係なく、最初から【ネフティス】の無能な経営陣の頭の中にしかなかった幻想的風景に過ぎなかったのであろう――――――。

 

 

カイザーPMC「プレジデント、<列車砲>の位置が判明しました」

 

プレジデント「ほう。ゲストのお二人にもお見せしろ」

 

カイザーPMC「それでは、こちらの画面をご覧ください」

 

ロボット職員「――――――これは、ここから約480km先の閉鎖地区?」*1

 

十六夜 ノノミ「ということは、まだ【キヴォトス防衛軍】の調査が及んでいない場所です」

 

プレジデント「……うむ。要塞兵器とも呼べる前人未到の巨大兵器だ。未だに見つかっていないのなら、当然 未調査領域にしかないわけだな」

 

プレジデント「……砂漠横断鉄道の裏で開発が進められた<列車砲>である以上は路線沿いにしかないわけだが、強力な兵器が1つあったところで先日のライバッサーやガゾートの群れを対処できるはずもない、か」

 

カイザーPMC「いかがいたしますか?」

 

プレジデント「正確な位置まで割り出せ。移動手段も検討しろ。場合によっては【キヴォトス防衛軍】の調査に参加することになるかもしれん」

 

カイザーPMC「はっ!」

 

十六夜 ノノミ「あの【カイザー】が、私たちの調査に協力してくれるのですか?」

 

プレジデント「もちろん、これは紳士的なビジネスのためだがね」

 

ロボット職員「――――――【真なるアビドス生徒会】の制裁を恐れて、か」

 

プレジデント「……本当ならば【アビドス】のことは100年の租借期限までに不法滞在者共から土地を全て取り返すというだけの話に過ぎなかったのだ、私の代では。それまでは搾り取れるだけ搾り取って」

 

プレジデント「それが“シャーレの先生”のおかげで私自らが真摯に取り組まねばならなくなったのだ」

 

ロボット職員「……そうでしたか」

 

プレジデント「しかし、実に滑稽だったぞ。【ネフティス】は<列車砲>さえ手に入れさえすれば、かつての栄光を取り戻せると本気で思い込んでいたらしい」

 

十六夜 ノノミ「――――――砂漠化と何の関係があるんでしょうね? そもそも、取り戻せる栄光なんてものが元からあったんですかね?」

 

プレジデント「ほう、さすがは大企業の後継者なだけはある」

 

プレジデント「いや、この場合は先生の教えの賜物と言うべきか」

 

十六夜 ノノミ「先生の教えだけじゃありません」

 

十六夜 ノノミ「ホシノ先輩の言う通りでした。目的のために手段を選ばなくなってしまえば、自分たちの在り方を見失ってしまう……」

 

プレジデント「ほう。小鳥遊 ホシノのことか。噂はよく聞いているとも。あの“黒服”が目をつけていたようだな」

 

ロボット職員「――――――“黒服”か。嫌な奴の顔を思い出した」ググッ

 

十六夜 ノノミ「……ガリバーさん?」

 

ロボット職員「つまり、砂漠横断鉄道も<列車砲>も 目的を見失っていたがために誤って生まれ落ちてしまった 人々を惑わすだけの傍迷惑な負の遺産でしかなかったんだ」

 

朝霧 スオウ「はっきりと言うものだな。【アビドス】こそ手段を選んでいなかっただろうに」

 

朝霧 スオウ「あのお嬢様学校の【トリニティ】でさえ『昔は敵の爪を剥いでいた』と言われているくらいに苛烈だった頃があったくらいだぞ」

 

十六夜 ノノミ「はい。私たちもホシノ先輩の在り方に従って一線を越えることは絶対にしませんでしたが、借金を返すために平和の星の出身である北条先生の価値観からは決して褒められることがないこともしてきました」

 

ロボット職員「………………

 

十六夜 ノノミ「それに、つい最近、その【真なるアビドス】の本当の恐ろしさを私たち自身が思い知らされることになりました」

 

 

――――――今まさにこの場所にミサイルが落ちようとしています!

 

 

ロボット職員「プレジデント、『【プライベートファンド】から【カイザーコーポレーション】の代表であるあなたに代表権限が移った』ということで、間違いないですか?」

 

プレジデント「その通りだ。結果として売りに出した債権は私の元に戻ったことになる」

 

十六夜 ノノミ「ということは、これで砂漠横断鉄道の再開発はできなくなりましたね、再び【カイザー】の所有地になりましたから。ガリバーさんに運んでもらった100万円の金塊も無駄になりましたか」

 

プレジデント「いや、工事がしたければ好きにすればいい。最初から採算性など望むべくもない事業だ。元から興味などない。私はここに集まった夢追い人たちとちがって現実を生きているのでね」

 

十六夜 ノノミ「では、形だけでも【ネフティス】との間の売買契約を成立させてください。執事さんを呼んでください」

 

プレジデント「ほう、今回の再開発が頓挫して死に体の【ネフティス】と取引……」

 

十六夜 ノノミ「急いでください! ミサイルが落ちてくる前にここから逃げないとですから!」

 

プレジデント「……まだかね、<列車砲>の座標は?」

 

カイザーPMC「プレジデント、今、座標を特定しました!」

 

朝霧 スオウ「…………!」

 

プレジデント「見せろ」

 

プレジデント「――――――『アビドス砂漠閉鎖地区:セクター35-9』?」

 

プレジデント「……ここに<列車砲>が隠されているのか」

 

プレジデント「ふむ。今この時も【キヴォトス防衛軍】が怪獣無法地帯で怪獣と戦っているという話だったな」

 

ロボット職員「え、『怪獣と戦っている』というのは本当ですか!?」

 

朝霧 スオウ「ああ。現地の【カイザーPMC】の基地からの観測情報だ。間違いない。先生は今も怪獣と戦っている」

 

ロボット職員「くっ」

 

十六夜 ノノミ「先生が今も怪獣と戦ってくれているのに、私たちキヴォトス人はどうして――――――?」

 

プレジデント「どの道、【ネフティス】との売買契約が終わるまでは<列車砲>には手出しできないわけか……」

 

プレジデント「いいだろう。ここは先生に恩を売っておくとしよう!」

 

ロボット職員「!」

 

 

プレジデント「この場にネフティスの令嬢が総会に招かれた理由である【ネフティス】との売買契約を済ませるといい」

 

 

プレジデント「連れてこい、ジェネラル」

 

ジェネラル「はっ!」

 

十六夜 ノノミ「ありがとうございます、プレジデント」

 

ロボット職員「なら、『<列車砲>を悪用することはしない』という旨の共同声明への署名をいただけないでしょうか?」

 

プレジデント「用意がいいことだな。さすがは“シャーレの職員”だな」

 

プレジデント「どうだ、私のところに来ないか? 今なら私の右腕にしてやろう」

 

ロボット職員「キヴォトスが平和になったら考えます。今は北条先生の怪獣退治のお手伝いに全力を出していますので」

 

プレジデント「それもそうだな。それなら、先生によろしく伝えておいてくれ」

 

ロボット職員「はい」

 

ロボット職員「――――――誰がお前の言葉なんかを信じるか」ボソッ

 

 

こうして前生徒会長:梔子 ユメが残していった【アビドス生徒会】と【セイント・ネフティス】の間の売買契約はロボット職員:マウンテンガリバーとプレジデントの立会の下に成立することになり、晴れて【“雷帝”の遺産】の1つとされる<列車砲:シェマタ>の所有権が【アビドス生徒会】のものと認められたのである。

 

実質的にキヴォトスの表と裏を支配している二大組織【連邦捜査部 S.C.H.A.L.E(シャーレ)】と【カイザーコーポレーション】がアビドス遠征のために手を組んだわけであり、これには【プライベートファンド】程度の寄せ集めの団体がどう逆立ちしても太刀打ちできるはずもない。

 

そして、署名を交わした契約書はその場で電子化して【連邦生徒会】に抜かりなく提出されることになり、【アビドス生徒会】ひいては【アビドス対策委員会】の目的は平和の内に達成されたのである。

 

このことは同時刻にアビドス砂漠で怪獣退治をしている“シャーレの先生”の偉業の一つに数えられることになり、あの最低最悪のブラック企業【カイザーコーポレーション】さえも協力させることで、【“雷帝”の遺産】を巡る紛争を一発も銃弾が放たれることなく解決に導いてしまったのである。まさに平和の星からやってきた男の面目躍如である。

 

目的は達成された。よって、あとは正午のミサイル発射までに早々にこの場を去るだけ――――――、なのだが、そうは問屋が卸さないのは知っての通りである。

 

 

十六夜 ノノミ「これで<列車砲>を含む関連施設の権利は【アビドス生徒会】のものとなりました」

 

十六夜 ノノミ「この契約で獲得した<列車砲>は平和利用することをお約束します」

 

ネフティス幹部「お嬢様。わ、私は――――――」

 

十六夜 ノノミ「私から言えることは、もう何もありません」

 

ロボット職員「では、目的は果たしましたので、我々としては これ以上 ここに居る意味はありません」

 

ロボット職員「みなさんも急いでこの場から脱出してください!」

 

十六夜 ノノミ「そうです! この場所に向けて直にミサイルが発射されます!」

 

プレジデント「そうだな。総会はこれでお開きだ」

 

朝霧 スオウ「では、プレジデントをヘリポートにお連れしろ」

 

ロボット職員「待ってください、プレジデント。最後に下に集まっている傭兵たちに撤退命令を出してください。【プライベートファンド】の代表権限はあなたが握っています」

 

プレジデント「ああ、そうだったな。面倒だが、そのまま帰って見殺しにしたとなれば世間がうるさいからな」

 

プレジデント「ジェネラル、【プライベートファンド】の連中をここに呼べ。そして、解散命令を出させて集めた傭兵共を帰らせろ。それがここでの最後の仕事だ」

 

ジェネラル「はっ! となれば、傭兵たちが我先にと逃げ出して渋滞と混乱がもたらされるため、空路の安全の確保に向かいますので、しばしお待ちを!」

 

プレジデント「……そうだな。下に居る連中は対空砲も用意していたからな。出てすぐに撃ち落とされる危険性があったか」チッ

 

 

バタバタバタ・・・

 

 

十六夜 ノノミ「……うまくいきましたね、ガリバーさん」

 

ロボット職員「……そうですね」

 

朝霧 スオウ「……ああ、北条先生の完璧な作戦だったな」

 

朝霧 スオウ「そもそもが【カイザーコーポレーション】【連邦捜査部 S.C.H.A.L.E(シャーレ)】【真なるアビドス生徒会】が裏で繋がっていたわけなのだから、【プライベートファンド】【セイント・ネフティス】【ハイランダー鉄道学園】で対抗できるわけもないか」

 

ロボット職員「いや、裏なんて最初からないですから。こんなのは先生からの再三の忠告を無視した結果でしょうに」

 

十六夜 ノノミ「そうです。勝手に怪獣無法地帯に乗り込んできて自滅しただけですよ」

 

朝霧 スオウ「ああ。だから、私としては先生の存在がキヴォトスで一番恐ろしいものに感じられる」

 

ロボット職員「どうして?」

 

朝霧 スオウ「どんな結果も先生の偉業に結びつけられて語られているからだ」

 

十六夜 ノノミ「それは当然ですよ。先生の予測は最悪の場合を想定した上で他の場合についても検討を重ねて対策をいくつも用意してますから」

 

ロボット職員「それだけの対応力が失敗をただ失敗のままにさせない展開や価値に繋げることができるというわけなのでしょう」

 

朝霧 スオウ「だとしても、最悪の状況というものが容易に想像がついても、1発の弾丸も放たれることなく旧庁舎に辿り着いて、難なく売買契約を成立させて、ミサイルの発射時刻まで十分に時間を余らせて退散できる状況;常人では考えつかないような奇跡の連続が起きることをどうして信じられた?」

 

ロボット職員「……たしかに、想像を遥かに超えた最高の展開にはなっていますね、本当に」

 

十六夜 ノノミ「……そうですね。終わってみると、本当に凄いことになっています。まさか、ここまで上手くいくだなんて想像もしていませんでした」

 

朝霧 スオウ「……それはいったいどういうことだ? こうなることまで教えられていたから、先生の作戦に従っていたんじゃないのか? だから、集音マイク1つだけ、身一つだけで、この場に乗り込むことができたんじゃないのか?」

 

ロボット職員「いや、たしかに集音マイクを持たされたのは先生の作戦でしたけど、旧庁舎までの道程は決められていませんでしたよ。あの時はとにかく間に合えばいいと言いますか、自然とそうなったと言いますか……」

 

十六夜 ノノミ「私も、ガリバーさんが無事に金塊が入ったアタッシュケースを持って総会に来ることを前提に、みんなで考えたスピーチで【ネフティス】との売買契約を総会で認めさせることしか考えていませんでした」

 

十六夜 ノノミ「なので、あの場でプレジデントが現れて結果として味方してくれたことは本当に予想外でした」

 

十六夜 ノノミ「でも、こうやって真正面から巨大な組織に一人の人間として対峙してみてわかったんです」

 

 

――――――怪獣退治の専門家である北条先生が“怪獣(KAIJU)”という人智を超えた巨大な存在を人類の力で倒す可能性をどこまでも信じ抜いていることの偉大さが。

 

 

十六夜 ノノミ「そう、『できる』とか『できない』とか、もうそんな段階じゃなくて、『できる』のが『存在の全て』みたいになっていて……」

 

十六夜 ノノミ「それで、不安を生み出していた『できない』がないんですから、後はひたすら前に突き進むのみです」

 

ロボット職員「そうですか。強くなりましたね、ノノミさん」

 

朝霧 スオウ「…………そうか」

 

 

ゾロゾロゾロ・・・

 

 

カイザーPMC「プレジデント、お連れしました」

 

プレジデント「よし、解散命令を出せ。総会は終わった。ジェネラル、ご苦労だった」

 

ジェネラル「では、急いで退路を確保します」ダダッ

 

朝霧 スオウ「む、来たか」

 

ロボット職員「これで終わりですね。脱出しましょう」

 

十六夜 ノノミ「はい。みんなのところに帰りましょう」

 

朝霧 スオウ「いや、待て。誰だ――――――」

 

ロボット職員「え!?」

 

十六夜 ノノミ「あ、あれは――――――!?」

 

 

――――――オーホッホッホッホッホ!

 

 

金獅子 シブキ?「さすがですわね、“教父(せんせい)”。それでこそ、北条先生が自身の半身と謳っただけのことはありますわ」

 

ロボット職員「ええっ?!」

 

十六夜 ノノミ「し、シブキ様!?」

 

ネフティス幹部「こ、これはいったい――――――?」

 

プレジデント「……どういうことだ?」

 

 

朝霧 スオウ「――――――旧庁舎(ここ)にミサイルを落とすと言った張本人がこの場に現れただと!?」

 

 

金獅子 シブキ?「ごきげんよう、みなさん――――――、いえ、サテライトのクズのみなさん」

 

ネフティス幹部「ううっ」

 

ロボット職員「………………」

 

金獅子 シブキ?「それで、この様子だと、もう総会は終わったわけですのね?」

 

プレジデント「ああ、その通りだ、総帥。総会の議題であった【アビドス生徒会】と【セイント・ネフティス】の間にあった売買契約は無事に成立し、総会は解散となったところだ」

 

金獅子 シブキ?「そう、惜しかったですわね、【ネフティス】の方? もう少し持たせることができていれば、『我が【アビドス高等学校】に梔子 ユメなる生徒はいなかった』と証言して契約を無効にしてあげられましたのにね?」

 

ネフティス幹部「そ、それは………………」

 

金獅子 シブキ?「まあ、そのことはもういいでしょう。新アビドス自治区はそうした【真なるアビドス生徒会】が預かり知らぬ過去(こと)の清算のために用意させた場所ですから、今回の売買契約は新アビドス自治区に引き継がれたものとして承認しましょう」

 

十六夜 ノノミ「本当ですか?」

 

金獅子 シブキ?「ええ。みなさん、誰もが騙されていたわけですからね。過去のことは全て水に流して差し上げてもよろしくてよ」

 

債権者団体の代表「そ、そうですか」

 

ZK社長「よ、よかった……」

 

 

金獅子 シブキ?「ただ、この中で 騙されていたわけでもなく 本当のことを黙っていた人間が一人居りますわね?」

 

 

質屋連合長「だ、誰のことだ!?」

 

押収品競売組合長「まさか、裏切り者が……?!」

 

私債労働組合長「そいつのせいで何もかもが――――――?」

 

金獅子 シブキ?「そういう意味ではありませんわよ。もっと単純なことですわ」

 

金獅子 シブキ?「さあ、みなさん、こちらをご覧になって」

 

朝霧 スオウ「……何だ? 何をするつもりだ?」

 

ネフティス幹部「……プロジェクターがついた?」

 

プレジデント「ふむ、今から何が始まるというのかな?」

 

十六夜 ノノミ「……あれは何ですか? トレーラーですか?」

 

ロボット職員「――――――なっ!? う、嘘だろう!?」

 

十六夜 ノノミ「……ガリバーさん?」

 

ロボット職員「あのトレーラーは、まさか――――――!?」

 

 

――――――会議室のプロジェクターで映し出されたものとは、4連装のミサイル発射筒を備えたトレーラー(荷台)を牽引したトラクター(移動式の地上射設備)NATO M1014 MAN&BGM-109G(トマホークの地上発射型)であった!

 

 

学園都市:キヴォトスでは年端もいかない生徒たちが当然のように戦車を乗り回し、取り回しのいい白兵戦用の銃器が普及しており、砲撃はそこまで重要視されていない環境のため、トラックに多連装ロケット砲を乗せるような創意工夫が生まれる土壌ではなかった。

 

よって、突如として【プライベートファンド】の総会にサングラスをかけて現れた【アレクサンドリア財団】総帥:金獅子 シブキが会議室のプロジェクターに映し出したトレーラーが何なのか、キヴォトスの住人ではないロボット職員:マウンテンガリバー以外はピンと来ていなかったようなのである。

 

そう、これこそが自走式多連装ロケットランチャーならぬ自走式多連装ミサイルランチャーが()()()()()()()()()()()()()()()()原因であり、

 

今は機械の身体に意識を移している 元々はネオフロンティアスペース出身の地球人であった ロボット職員:マウンテンガリバーは思わず身体が強張った。

 

 

思い出される『前回』エデン条約調印式に撃ち込まれた【アリウス】の巡航ミサイル――――――、崩壊した古聖堂を中心にして【トリニティ】各地が地獄のような有様となり、その混乱の中で僕はサオリに撃たれた――――――。

 

 

そんな苦々しくも決して忘れるべきではない【アリウススクワッド】との大切な思い出(初めての出会い)はキヴォトスには存在しないオーパーツ:巡航ミサイルの衝撃と惨劇とで結びつけられており、

 

ネオフロンティアスペースの地球の歴史において、特捜チーム【スーパーGUTS】の母体組織である地球平和連合【TPC】が2005年に設立される前に地球防衛軍【UNDF】は解体され、その際に数多の危険兵器などが処分されていたわけなのだが、

 

その中に記録されていた旧兵器の数々;人類の愚かな歴史を代表する夥しい数の忌々しい核ミサイルの一種――――――、

 

それは巡航ミサイルの代名詞:トマホークを改良した地上発射型であり、かつてアメリカ空軍が移動式地上発射機とともに運用していた長距離核ミサイル:GLCM――――――、

 

正式名称:地上発射巡航ミサイル(Ground Launched Cruising Missile) 通称:グリフォンはまさに世界最初の自走式多連装ロケットランチャー:BM-13 通称:カチューシャを超強化した()()()()()()()として記憶にこびりついていたのだった。

 

そう、『前回』エデン条約をめぐる騒乱を解決に導いた後、いったいどこから巡航ミサイルが発射されたかの徹底的な調査をしたわけなのだが、その発射装置こそがまさにこの自走式ミサイルランチャーであり、巡航ミサイルというものをこれまでまったく知らないキヴォトスの生徒たちではトレーラーの正体がエデン条約調印式の現場を地獄に変えたものだと気づくことができなかった、そんな代物であった。

 

 

――――――まさか、『前回』エデン条約調印式を襲った巡航ミサイルの出所はここだったのか!?

 

 

――――――正直に言って、驚く以上に安心した。これのおかげで、僕はこの戦いの勝利を確信できた。

 

 

――――――なぜなら、あの惨劇を繰り返させないために、僕は過去の世界に送り出されたのだから!

 

 

ロボット職員「――――――勝った。やったよ、みんな」ボソッ

 

十六夜 ノノミ「あの、シブキ様? このトレーラーはいったい――――――?」

 

金獅子 シブキ?「少しお待ちになって」

 

金獅子 シブキ?「はい、全ての準備は整ったから、タイマーを10分にセットしてっと」

 

朝霧 スオウ「……何のタイマーだ? 何をするつもりだ?」

 

 

金獅子 シブキ?「――――――『何』って、今からサーモバリック爆弾でこの辺一帯を焦土に変えるカウントダウンですわよ」

 

 

朝霧 スオウ「!!?!」

 

プレジデント「い、今 何と言った!?」

 

ネフティス幹部「な、なんですってえええええええ!?」

 

十六夜 ノノミ「ま、待ってください! ミサイルの発射は正午じゃ――――――!?」

 

金獅子 シブキ?「ええ、そうですわよ」

 

十六夜 ノノミ「え?」

 

 

――――――()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

ロボット職員「そういうことなんでしょう。ほら、何も嘘なんてない」

 

ネフティス幹部「な、なあっ!?」

 

十六夜 ノノミ「そんなっ!?」

 

金獅子 シブキ?「はい。そういうことですので、10分後に()()()()()()()が発射されますわ」

 

朝霧 スオウ「まさか――――――」

 

朝霧 スオウ「ボサッとするな! 急いで脱出路を確保しろ!」

 

カイザーPMC「は、はいッ!」

 

カイザーPMC「い、急げッ!」

 

金獅子 シブキ?「あら、この私が来たのに、逃げられるとお思い?」

 

 

ピッ!

 

 

チュドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!

 

 

ガラガラガガラガラ・・・ガッシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!

 

 

 

――――――そして、冒頭のシーンに至る。

 

 

 

十六夜 ノノミ「ガリバーさん」ギュッ

 

ロボット職員「うん」

 

十六夜 ノノミ「変えてあげてください。私たちが変われたように」

 

十六夜 ノノミ「そして、全てを救ってください」

 

ロボット職員「あの時(1周目)にはできなかったことを、今度は――――――!」

 

 

――――――今度こそ救ってみせるぞ、【アビドス】のみんなを! 関わる人全てを!

 

 

金獅子 シブキ?「あら、どうかいたしましたか、“教父(せんせい)”? 一緒に発射の瞬間を見届けますか?」

 

ロボット職員「申し訳ありません、シブキ総帥。私がここに来た理由は【アビドス生徒会】と【セイント・ネフティス】との間に結ばれる売買契約の立会をするのが当初の目的だったのですが、」

 

ロボット職員「昨晩、契約前の最終調整に向かったところ、【セイント・ネフティス】によって囚われた【アビドス生徒会】新生徒会長:十六夜 ノノミさんの救出も依頼されていたんです」

 

金獅子 シブキ?「そうでしたか。なら、急いで脱出してください。さあ、早く」

 

朝霧 スオウ「…………?」

 

ロボット職員「ええ。ですので、ノノミさんの無事を確保するためにも――――――」

 

 

――――――目前に迫る生命の危機に対して()()()()()()()実力行使させていただきます!*2

 

 

金獅子 シブキ?「――――――『緊急避難』ですか」

 

ロボット職員「そう、緊急避難です。ですので、今は一刻を争うので、これで失礼します」

 

金獅子 シブキ?「……そうですか、『緊急避難』ですか。そう来ましたか」

 

金獅子 シブキ?「だから、()()()()()()()()ノノミさんを【ネフティス】に送り出した――――――」

 

金獅子 シブキ?「全ては緊急避難の口実を得るため」

 

金獅子 シブキ?「ああ、さすがは先生ですね……」

 

朝霧 スオウ「ま、まさか、撃ち落とすつもりか、ミサイルを!? どうやって?!」

 

ロボット職員「はい。今からだと迎撃した方が生存確率が高いです」

 

ロボット職員「さあ、ノノミさん。掴まってください」

 

十六夜 ノノミ「はい!」ガシッ

 

 

バリイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!

 

 

僕はノノミを大切に抱きしめると、両肩のワイヤーアンカーで旧庁舎の窓を突き破って、外壁を伝って屋上のヘリポートを目指した。

 

ここまで完全に計画通りの流れであり、囚われの身だったノノミを救出し、問題となっていた契約を成立させた後、緊急避難を大義名分にして屋上のヘリポートでミサイルを迎撃するという計画の中でもっとも困難に思える最終段階にまで進むことができていた。

 

このミサイル迎撃は北条先生によっていくつもの対策案(プラン)が提示されており、迎撃不可能と判断した瞬間に上空に待機させていた“シャーレの指導員”グレゴール星人:グレゴリオの宇宙船のトラクタービームで回収する手筈になっていた。そのため、僕たちだけは確実に助かる算段は最初からついていたのである。

 

それどころか、今回のミサイル迎撃で一番簡単な場合というのがサーモバリック爆弾が弾道ミサイル*3だった場合であり、素知らぬ顔で上空に待機させていた“シャーレの指導員”グレゴール星人:グレゴリオが未確認飛行物体ということで弾道ミサイルを緊急時対応で撃ち落とすだけで終わるのだ。

 

それこそ、巡航ミサイルがオーパーツ扱いの学園都市:キヴォトスなのだ。超古代人や異星人を味方につけている特捜チーム【GUTS-SAFETY(ガッツ・セイフティ)】の戦力をもってすれば、アビドス中央駅旧庁舎に集まった人たちを見捨てて脱出するだけなら何の苦労もないわけである。

 

しかし、わざわざ危険を犯してまでこの場にいる全員を救うためにミサイル迎撃に挑んだのは、これから歴史の表舞台に返り咲くことになる【真なるアビドス生徒会】がもたらすことになる大乱の芽を摘み取る大義名分からだが、一番は数十年前に始まった砂漠化によって断絶された過去の因習に囚われて現代に望まぬ覇道を歩まされる罪業を背負わせたくないという想いからだった。

 

 

――――――だからこそ、これから覇道を歩む者たちに退くことが許される理由を用意する必要があった。

 

 

それは超常の力に頼ってはいけない。人間同士の争いに介入してはいけない。そんなことのために濫用してはいけない。

 

これは同じ人の手で解決しなければならないことなのだ。その手伝いを同じ人としての枠内でしているだけに過ぎないのだ。

 

この場合は公正に勝つことが重要であり、そもそもとしてメテオールや対怪獣兵器を持ち出せば何でもアリになるのだから、そのことをこれからの後世の歴史に残していくためにも――――――。

 

だから、僕は立ち向かう。大丈夫、怪獣と比べたらミサイルなんて怖くない。殺意が込められているわけでもない、仮面の下で涙に濡れた見せかけの凶弾に“光”は 尚更 負けるはずがないのだから。

 

 

十六夜 ノノミ「ガリバーさん……」

 

ロボット職員「ノノミさん、トラクタービームで回収される準備はできていますか?」

 

十六夜 ノノミ「ううん。私も見届けます」

 

ロボット職員「え? いや、こんな時にそれは困るよ? 計画通りに動いてもらわないと!」

 

十六夜 ノノミ「でも、迎撃に失敗したらガリバーさんはそのままサーモバリック爆弾に直撃なんですよね。他にも、執事さんやたくさんの人たちが下に残されたまま……」

 

十六夜 ノノミ「私だけ逃げるだなんて、やっぱり できません!」

 

十六夜 ノノミ「大丈夫です! 本当に不可能だったら、北条先生はこんな無謀にも思えるミサイル迎撃作戦の許可なんて出しませんから!」

 

十六夜 ノノミ「信じてますよ! 北条先生が信じるガリバーさんのことを! もちろん、私たちみんなが信じているガリバーさんのこと!」

 

ロボット職員「ノノミさん……」ピピピ・・・

 

――――――

砂狼 シロコ「ノノミ! ガリバーさん!」

 

奥空 アヤネ「よかった! 無事でしたね!」

 

黒見 セリカ「旧庁舎どころか、あちこちで大爆発が起きて崩落が起きた時は本当にどうなることかと思ったわよ!」

 

宇宙格闘士の帝王「コーイチ! 今、レールガンを投下するぞ! 受け取れ!」

 

錠前 サオリ「コーイチ、【真なるアビドス生徒会】は巡航ミサイルを使うつもりだ。それも【アリウス】がエデン条約襲撃の際に使用するものと同型に見える」

 

秤 アツコ「でも、巡航速度は約800km/h(亜音速)らしいから、音速(1224km/h)と比べたら大したことないよね」*4

――――――

 

ロボット職員「――――――()()()()

 

十六夜 ノノミ「あ、あれですね! あのコンテナ! 来ましたよ!」

 

ロボット職員「よし!」

 

 

空中で待機していたグレゴール星人の宇宙船から投下されたコンテナは勢いよく落ちたかと思えばパラシュートを展開してアビドス中央駅旧庁舎のヘリポートへと降下した。

 

過たずヘリポートに着地したコンテナのコンソールを操作すると、天板を支える四隅の柱を残してコンテナの壁が四方に倒れ、その中には【エンジニア部】がヘリコプターや汎用作業ロボットからのステップアップで宇宙戦艦を建造しようとした際の第一歩となる産物;艦載砲として開発されたレールガン<スーパーノヴァ>が鎮座していた。

 

十六夜 ノノミが固唾を呑んで見守る中、“シャーレの職員”ロボット職員:マウンテンガリバーは地球人を凌駕する身体能力を発揮するキヴォトス人ですらまともに持てない 元は艦載砲だった レールガンを持ち上げ、すでに何度も怪獣退治のために使われて手に馴染んだそれを起動させた。

 

その前に、今回の契約の立会人としての公正さを証明するためにビデオカメラをこっそり会議室に設置していたため、窓を突き破って上に落ちるかのように勢いよく屋上を向かった後の部屋の様子をロボット職員の通信機能を中継して宇宙船の待機班が見続けており、

 

プロジェクターに映し出された多連装ミサイルランチャー:NATO M1014 MAN&BGM-109G(トマホークの地上発射型)から巡航ミサイルがいよいよ発射されようとしていた。そのことが通信機越しに報告される。

 

そして、ミサイル発射の張本人である【真なるアビドス生徒会】金獅子 シブキが相変わらず口元を黄金の扇子で隠しながら空いた手でレーダー受信機を見せびらかし、レーダー受信機に映し出されることになる赤い点が中心に到達した時が半径2kmが自由空間蒸気雲爆発によって跡形もなく消し飛ぶことを言い触らすのだ。

 

そのため、レーダー受信機によって発射される巡航ミサイルの方角と速度がわかるため、そこからが本当の勝負であった。

 

けれども、失敗を恐れる感情はなかった。一度は救うことができなかった世界を救うために過去に送り出されたのがロボット職員:マウンテンガリバーの正体:コーイチ先生であり、そのために『前回』から『今回』に引き継がれてきたものが 今 世界を救うために役立てられているのだから。

 

 

――――――思い出される悲劇の記憶の数々;キヴォトスには存在しない巡航ミサイルを再び目にしたことで記憶の封印が解かれることになり、全てを思い出したわけではないが、コーイチ先生は救うことができなかった苦しみに再び身を焦がす。

 

 

そう、最初に僕が“シャーレの先生”となって救って そのまま放置してきた【アビドス】から世界の破滅が始まったのだ。

 

その前に僕は負けた。負けてはならない戦いに負けて、気づいたら世界はすでに滅んでいて、僕は機械の身体に意識を移されて過去の世界へと送り出されることになっていた。

 

そこで聞かされたのが キヴォトスの全てを破壊して回っているという かつての生徒の成れの果て――――――。

 

今にも泣き出しそうな顔でキヴォトスの同胞を次々と手に掛けていく“死の神:アヌビス”と化した少女――――――。

 

砂に覆われた街に入り込んで行き倒れていた僕を助けてくれた瞳孔の色が左右で違うミステリアスな雰囲気を醸し出していた少女――――――。

 

だから、僕は誓った。人々の笑顔を守るために今度は決して負けないと。悪に屈しはしないと。最高のハッピーエンドをこの手に掴むのだと――――――。

 

 

ロボット職員「決着は僕たちの手でつけよう、シロコ!」ジャキ! ――――――レールガン展開!

 

十六夜 ノノミ「………………」コクリ

 

ロボット職員「さあ、来い! こんなところで止まるわけにはいかない!」

 

――――――

砂狼 シロコ「ノノミ! ガリバーさん! 来たよ!」

 

錠前 サオリ「コーイチ! 巡航ミサイルが発射されたぞ!」

 

黒見 セリカ「方角は!?」

 

奥空 アヤネ「は、はい! 方角は――――――」

 

秤 アツコ「……コーイチ」

 

宇宙格闘士の帝王「心配するな。亜音速などスロー過ぎて欠伸が出るぐらいだ」

 

宇宙格闘士の帝王「そうだろう、コーイチ? 北条先生?」

――――――

 

金獅子 シブキ?「さあ、発射されましたわよ、サテライトのクズのみなさん?」

 

金獅子 シブキ?「救いようがないクズ共のために“シャーレの職員”は 見事 ミサイルを撃墜することができるか、結果が楽しみですこと」

 

金獅子 シブキ?「……これで、世界は変わる。良い方向に」

 

金獅子 シブキ?「……そう信じていますわ、先生」

 

 

 

 

 

ドッゴーーーーーーーーーーーーン!

 

 

 

 

 

金獅子 シブキ?「あ」プツッ ――――――レーダーから赤い点が消失する。

 

金獅子 シブキ?「……消えた」

 

金獅子 シブキ?「……北条先生、いえ、お兄様。おめでとうございます」

 

 

――――――緊急避難を大義名分にしてレールガン<スーパーノヴァ>で半径2kmは吹き飛ばす威力があるとされるサーモバリックミサイルの迎撃に成功!

 

 

こうして【“雷帝”の遺産】である<列車砲:シェマタ>を巡る騒乱は()()()()終結することとなった。

 

『前回』1周目で何があったのかを徹底的に記録して『今回』2周目に引き継いだのだから、エデン条約調印式に撃ち込まれた【アリウス】の巡航ミサイルのデータもあり、その対策について過去に送り出される前から検討されていたため、今回のミサイル迎撃作戦はその予行演習となったのである。

 

もっとも、カメラ中継されていることを見越して ミサイル発射の張本人:金獅子 シブキが恐怖を煽る演出としてレーダー受信機を見せびらかして方角と速度を明かしているので、これで撃ち落とせなかったらキヴォトスを救うなど絵空事に過ぎない。

 

そもそも、ウルトラマンや空飛ぶ怪獣の飛行速度は常にマッハを超えているのだから、たかだか亜音速の巡航ミサイルごときを捕捉できないのは恥でしかなく、ミサイル迎撃など実に容易いことでしかなかったのだ。

 

 

ロボット職員「――――――ミサイルの撃墜を確認」スッ ――――――発射角度の調整のためにワイヤーアンカーで姿勢調整!

 

ロボット職員「成し遂げましたよ、先生。みんな」フゥ・・・

 

十六夜 ノノミ「や、やりました! やりましたよ、ガリバーさん!」ギュッ!

 

ロボット職員「おおっと、ノノミさん。落ち着いて」ハハハ・・・

 

ロボット職員「さあ、やることは終わったので帰りましょう」

 

ロボット職員「待っててください。レールガンもトラクタービームで回収しますので、コンテナに置いてきますので」

 

十六夜 ノノミ「はい!」

 

十六夜 ノノミ「ガリバーさん!」

 

ロボット職員「何ですか?」

 

十六夜 ノノミ「――――――最高です、ガリバーさん!」

 

ロボット職員「そうですか。私も最高の気分ですよ、今」

 

 

――――――トモダチハ、ゴチソウ。トモダチハ、ガゾートノタベモノ!

 

 

ロボット職員「!?」ピタッ

 

十六夜 ノノミ「が、ガゾート……!?」ゾクッ ――――――見上げると、ガゾートが飛来していた!

 

ロボット職員「ノノミさん、私の側から離れないで!」ガシッ

 

ロボット職員「こんな時にまた――――――」ガシッ ――――――鎮座したレールガンに再び掴む。

 

十六夜 ノノミ「このままだと、人喰い怪獣のガゾートに大爆発の影響で立ち往生しているみんなが――――――!」

 

 

――――――待たせたな! そうだ! 宇宙に帝王は一人、このオレだ!

 

 

宇宙格闘士の帝王(巨大化)「コーイチ、10秒後にトラクタービームを照射するから、そのままコンテナの中に居ろ」ドゴォ!

 

宇宙格闘士の帝王(巨大化)「ガゾートの相手はオレが引き受けた! お前たちは早く離脱しろ!」

 

ロボット職員「助かります、“帝王グレイ”!」

 

十六夜 ノノミ「お願いします! 旧庁舎(ここ)に集まったみんなの命を助けてください!」

 

宇宙格闘士の帝王(巨大化)「いいだろう! 救う価値のない連中ばかりだが、傭兵バイトで集まった女子供にこのオレの勇姿を見せつけるには良い機会だ!」

 

ロボット職員「でも、“帝王グレイ”には闇怪獣に対する有効打を持っていないはずじゃ――――――」

 

――――――

秤 アツコ「それはちがうよ、コーイチ。闇怪獣の厄介な点は倒された後に復活することであって、倒すこと自体は普通にできる。それで十分に時間は稼げる」

 

秤 アツコ「グレゴリオ様としては大爆発で崩落した場所で立ち往生している人たちを助けるための口実が欲しかっただけだから、闇怪獣を完全に倒すことは考えてない。それにガゾートは 元々 無限に湧いてくる」

 

秤 アツコ「今はとにかく、この場から離脱することが最優先だよ。早く戻ってきて、コーイチ」

 

錠前 サオリ「ノノミを連れてな」

――――――

 

ロボット職員「わかりました」

 

ロボット職員「コンテナ、クローズ!」ピピッ ――――――四方に倒れたコンテナの壁が起き上がて密閉空間となる。

 

ロボット職員「ノノミさん、トラクタービームで引き上げるとは言え、安全地帯にコンテナが降ろされるまでは何があるかわかりませんので、私の膝の上に来てください」 ――――――四脚モードで安定性を確保!

 

十六夜 ノノミ「はい!」

 

ロボット職員「おっと、浮き上がったか」ガクン・・・

 

ロボット職員「コンテナの中に入ってトラクタービームで回収されることも計画通りとは言え、レールガンだけが鎮座された閉鎖空間に居るというのは不思議な気分です」

 

十六夜 ノノミ「そうですね」

 

十六夜 ノノミ「でも、無事にやり遂げることができましたね。最後はガゾートが来ましたけど、それも“帝王グレイ”を待機させていたことですぐに対応させることができた、まさに完璧な采配でした」

 

十六夜 ノノミ「本当に北条先生は凄いです」

 

ロボット職員「そうですね。ここまで上手くいくだなんて思っていませんでしたから、それは本当にそうです」

 

ロボット職員「では、今回の作戦の成功を報告しますので、しばらく待っててください」

 

十六夜 ノノミ「はい」

 

――――――

砂狼 シロコ「待って、ガリバーさん。今、会場の方で凄いことになってる」

 

砂狼 シロコ「ねえ、ノノミ? ゴールドカード、持ってる?」

――――――

 

十六夜 ノノミ「え」

 

十六夜 ノノミ「あ!」 ――――――無い! ゴールドカードが無い!

 

ロボット職員「……ゴールドカードがどうしました?」

 

――――――

錠前 サオリ「ああ、スオウ監督官からシブキ総帥がゴールドカードを奪い取った……」

 

秤 アツコ「グレゴリオ様とガゾートがすぐ側で戦い始めたことで会場がまたパニックになっている中でスオウの腹に銃を突きつけてね」

 

奥空 アヤネ「どうやら、ノノミ先輩が持たされていたゴールドカードは<シェマタ>の起動に必要なものだったみたいです」

 

黒見 セリカ「本当に油断も隙もあったもんじゃない。それをみんなが見ている前で踏みつけて粉々にしちゃった……」

――――――

 

十六夜 ノノミ「シブキ様。シブキ様は本当に――――――」

 

ロボット職員「報告に感謝します。引き続き現場の監視をお願いします」

 

ロボット職員「……誰も望んじゃいないんだ、世を乱すことなんて」

 

 

 

――――――オンライン会議

 

 

七神 リン「そうでしたか。レールガンによるミサイルの撃墜に成功したわけですね。本当に良かったです……」ホッ・・・

 

ロボット職員「はい。報告書にあるように<シェマタ>の起動に必要なゴールドカードはシブキ総帥が粉々に踏み砕いて窓から投げ捨てたので、これで<シェマタ>を巡る騒乱は終結です。【アビドス】の問題を【真なるアビドス生徒会】が直々に始末をつけたわけですね」

 

桐藤 ナギサ「だとしても、最後は本当にミサイル攻撃を実行に移したわけですよね。極めて難しい局面ではありましたが、お見事です。感服いたしました」

 

羽沼 マコト「さすがは先生の半身と呼ばれるだけのことはある。本当に不可能を可能にしてしまったな」キキキッ

 

調月 リオ「これでアビドス遠征に集中できるわね。現場に現れたガゾートも“帝王グレイ”が倒したのは確認できた」

 

明星 ヒマリ「ええ。早くアビドス遠征を終わらせて、次は【廃墟】ですよ。もう準備は万端なんですから」

 

ロボット職員「そうですね」

 

ロボット職員「これでようやく会えるね、アリス

 

 

ロボット職員「――――――ん?」ピピッ

 

 

桐藤 ナギサ「どうかいたしましたか、ガリバーさん?」

 

ロボット職員「ちょうどアビドス砂漠の調査に出ていた部隊から連絡が来ました」

 

明星 ヒマリ「そうでしたか。タイミングが良いですね」

 

調月 リオ「いや、これは――――――」

 

ロボット職員「……そう、変だよな、これは?」

 

桐藤 ナギサ「どうしたのですか?」

 

ロボット職員「だって、これって先生じゃない――――――」

 

ロボット職員「今回、私は【キヴォトス防衛軍】の作戦に参加しているわけでもないのに、今この時に私宛てに緊急回線で連絡が――――――?」

 

羽沼 マコト「まあ、ちょうどいいのではないか。全てが片付いたことを早く伝えて安心させてやるといい。<シェマタ>のこともそうだが、ミサイル攻撃がどうなったのか、ずっと気になっていたであろうからな」

 

桐藤 ナギサ「ええ。怪獣を倒した報告も合わせて現場から伝えようとしているのではありませんか。この場で情報共有といたしましょう」

 

調月 リオ「スピーカーを繋いで、“教父(せんせい)”」

 

ロボット職員「わかりました。スピーカーに繋ぎます」ピッ

 

ロボット職員「こちら、【連邦捜査部 S.C.H.A.L.E(シャーレ)】です。先生からの連絡ではないようですが、どうかなさいましたか?」

 

――――――

銀鏡 イオリ「あ、繋がった! 良かった! 良かったよぉ……!」

――――――

 

明星 ヒマリ「?」

 

羽沼 マコト「――――――お前は【風紀委員会】の?」

 

ロボット職員「……イオリさん? どうしたのですか、そんなに慌てた様子で?」

 

――――――

銀鏡 イオリ「き、聞いてくれ! 大変なことになったんだ! もうどうしたらいいのか――――――!」

――――――

 

ロボット職員「落ち着いてください、イオリさん。落ち着いて状況を報告してください」

 

ロボット職員「先生は? 先生はどうしたんですか? こちらはミサイルの撃墜に成功して、全てが無事に終わりましたよ?」

 

――――――

銀鏡 イオリ「こ、これが落ち着いていられるか!」

 

銀鏡 イオリ「――――――せ、先生がッ! 先生がぁ!?」

――――――

 

七神 リン「え」

 

調月 リオ「…………!」

 

ロボット職員「はい、『先生が』どうなったのです、イオリさん!?」

 

――――――

銀鏡 イオリ「そ、それが――――――!」

 

銀鏡 イオリ「先生が――――――!」

――――――

 

ロボット職員「……『先生が』?」

 

――――――

 

 

――――――()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

――――――

 

ロボット職員「は」

 

桐藤 ナギサ「え」

 

調月 リオ「なっ」

 

明星 ヒマリ「今、何て――――――」

 

七神 リン「う、嘘ですッ!」

 

羽沼 マコト「待て! それは何の冗談だ!? ふざけたことを言うな! 一緒に行かせたヒナはどうした、ヒナは!?」

 

――――――

銀鏡 イオリ「そ、それが、ひ、ヒナ委員長も――――――!」ガクガク・・・

――――――

 

羽沼 マコト「ひ、ヒナあああああああああ!?」

 

ロボット職員「う、嘘だろうッ?! ヒナが!?」

 

桐藤 ナギサ「そ、それは本当なんですか!?」

 

明星 ヒマリ「し、信じられません! ヒナさんほどの方まで――――――!?」

 

七神 リン「い、いやああああああああああああああああああ!?」

 

調月 リオ「落ち着いて、みんな! 状況がまったくわからないわ! 何がどうなってそうなったのか、状況を詳しく説明して!」

 

――――――

銀鏡 イオリ「わ、わからないんだ、それが!」

――――――

 

ロボット職員「嘘だ! 姫矢さんの時のような悪い予感はまったくしなかったんだぞ!?」

 

ロボット職員「ん」ピピッ

 

明星 ヒマリ「どうしました!?」

 

ロボット職員「今度はサーベラス様からだ! 新アビドス自治区からです!」

 

桐藤 ナギサ「ど、どうしますか?!」

 

調月 リオ「総会の方は無事に終わったことを報告して、デモ集会を解散させた方がいいわ」

 

明星 ヒマリ「そ、そうですね。それだけは早く済ませて、アビドス砂漠の状況把握を――――――」

 

ロボット職員「それでは、お繋ぎします……」

 

――――――

神代キヴォトス人「聞こえるか、サーベラスだ。聞こえるな、コーイチ」

――――――

 

ロボット職員「はい。サーベラス様」

 

ロボット職員「総会の方は無事に終えることができました」

 

ロボット職員「ミサイルの迎撃に成功し、ついでにガゾートも現れましたが、そちらはグレゴリオ様が対処しました。その後は現場で救助活動をしています」

 

――――――

神代キヴォトス人「そうか。それは重畳だ」

 

神代キヴォトス人「こちらとしては良いニュースと悪いニュースがある」

 

神代キヴォトス人「どっちから先に聞きたい?」

――――――

 

ロボット職員「え」

 

羽沼 マコト「なにッ!?」

 

桐藤 ナギサ「新アビドス自治区でも何か――――――!?」

 

調月 リオ「……なら、まずは良いニュースからお願いします、サーベラス様」

 

――――――

神代キヴォトス人「よし。まずは良いニュースからだが――――――、」

 

神代キヴォトス人「七囚人の一人“災厄の狐”狐坂 ワカモを主犯としたテログループの襲撃を受けたが、何とか撃退に成功した」

 

神代キヴォトス人「そして、悪いニュースというのが――――――、」

 

神代キヴォトス人「撃退には成功したが、肝心の狐坂 ワカモは取り逃がして、赤いホバークラフトでアビドス砂漠の方面への逃走を許してしまった」

――――――

 

ロボット職員「な、なにぃ!? ワカモが!?」

 

七神 リン「……“災厄の狐”が新アビドス自治区を襲撃した?! このタイミングで?!」

 

ロボット職員「今すぐにワカモを止めないと!」

 

ロボット職員「リオ! GUTSガルーダは!?」

 

調月 リオ「出撃自体は可能だけど、まだ新機能の調整が終わってない……」

 

ロボット職員「くっ」

 

羽沼 マコト「なら、人間相手に使うのもどうかと思うが、“帝王グレイ”の助力を乞うしかあるまい」

 

桐藤 ナギサ「はい。ガゾートを倒してくれたばかりで申し訳ないですが、アビドス砂漠をホバークラフトで逃走しているのなら、機動力が欠かせません」

 

桐藤 ナギサ「ん――――――、な、何ですか、あれは!?」ガタッ

 

羽沼 マコト「どうした、桐藤 ナギサ?」

 

 

桐藤 ナギサ「た、大変です、ガリバーさん! たった今、『【トリニティ】に宇宙から謎の巨大ロボットが降下してきた』という報告が――――――!?」

 

 

ロボット職員「な、なにぃいいい!? 次から次へと――――――!」

 

調月 リオ「今、同じ報告が届いたわ、“教父(せんせい)”……」

 

羽沼 マコト「今日はとことん厄日だな……」

 

七神 リン「ど、どうするのですか!? いったいどうしたら――――――!?」

 

ロボット職員「えと、そ、そうだ……」

 

ロボット職員「さ、サーベラス様、実は今――――――」

 

――――――

神代キヴォトス人「ほう、【トリニティ】に謎の巨大ロボットが……」

 

神代キヴォトス人「そして、『先生が怪獣に喰われた』と」

 

神代キヴォトス人「よし、ならば、こうしよう」

 

神代キヴォトス人「コーイチ、お主は新アビドス自治区に帰還した後は狐坂 ワカモの襲撃によって荒らされた自治区を【アビドス対策委員会】の子らとで整理せよ」

 

神代キヴォトス人「そして、【トリニティ】に現れたという謎の巨大ロボットに関しては、グレゴール星人に任せた方が対応しやすいのではないか? 案外、何か知っているかもしれぬぞ? それに賭けてみぬか?」

 

神代キヴォトス人「その上で、狐坂 ワカモの追跡と北条先生の安否を我が受け持とう。今なら我も地理に明るいし、アビドス砂漠に潜む脅威に遭遇した際、守りの固いゼットンやギガデロスなら後れを取ることはまずないであろう」

 

神代キヴォトス人「安心せよ。北条先生は死んでおらん。“地獄の釜の門番”たる我がそう言っておるのだ。今は目の前のことに集中せよ」

――――――

 

ロボット職員「わかりました。グレゴリオ様にはすぐにでも【トリニティ】の救援に向かってもらいます」

 

桐藤 ナギサ「あ、ありがとうございます……」

 

桐藤 ナギサ「い、急いでください! 謎の巨大ロボットから怪音波のようなものが聞こえてきます……!」

 

羽沼 マコト「機龍丸を【トリニティ】に送り込みたいところではあるが、まず出撃に必要なメテオールの発動には先生の承認が必要……」

 

羽沼 マコト「その先生がいなくなった場合に備えての承認ルートのサブプランは用意されているが、まともに機能するかどうか……」

 

調月 リオ「どう、ヒマリ? 状況は掴めたの? 先生のことは聞き出せた?」

 

明星 ヒマリ「黙っていてください、リオ! 今、必死にやってますから!」

 

明星 ヒマリ「いくら“全知”の私でも正しい情報がなければ、正解を導き出すことはできません!」

 

調月 リオ「……そうね」

 

七神 リン「先生……、先生……」

 

ロボット職員「くそっ! 【アビドス】が抱える厄介事が片付いたと思ったら、これだ!」

 

――――――

神代キヴォトス人「うろたえるな、小娘共!」

――――――

 

七神 リン「!」

 

調月 リオ「………………」

 

ロボット職員「サーベラス様……」

 

――――――

神代キヴォトス人「この馬鹿者が! 時にはこういった状況に陥ることもあらかじめ言い聞かせていたであろう、先生は! 不心得者しかいないのか!」

 

神代キヴォトス人「上に立つ者なら、粛々と規定のプログラムに沿って迅速に行動に移せ!」

 

神代キヴォトス人「特に、桐藤 ナギサ! 自治区に怪獣が現れたのなら、すぐにでもすべきことがあるであろう、自治区を預かる者として!」

 

神代キヴォトス人「でないと、【キヴォトス防衛軍】は怪獣退治を遂行できないぞ! それでもいいのか、桐藤 ナギサ!?」

――――――

 

桐藤 ナギサ「は、はい! プログラムに従って、まずは自治区の住民の避難を――――――!」

 

羽沼 マコト「自治区の防衛に限り出撃時に必要なメテオールの使用承認を生徒会長だけでできるように規制緩和する話が進められていたが、いったいいつになったらバム星人の遺産であるロボット怪獣の利用の目処がつくのだろうな、【トリニティ】は?」キキキッ

 

羽沼 マコト「しかし、ヒナ……」

 

ロボット職員「先生が不在である以上、現状ではメテオールなしで発進できるGUTSファルコンが貴重な防衛戦力か……」

 

ロボット職員「サーベラス様が言うように――――――、そして、僕自身の直感を信じるなら、北条先生は志半ばで斃れることなんてありはしない!」

 

 

――――――それはそれとして、これは長い1日が始まりそうだ。

 

 

その日、まるで空気を読まない連中が【“雷帝”の遺産】のことを思い出して非常事態宣言が解除されていない怪獣無法地帯に乗り込んでくるという馬鹿をやらかし、アビドス中央駅旧庁舎でその所有権を決定づける大事な総会を開くことになっていた。

 

それに対して“シャーレの先生”であり“GUYSの先生”である地球人:北条 アキラは最初から最後まで 徹頭徹尾 馬鹿なことをやってないでアビドス遠征が終わるまでおとなしくしているように関係各位に忠告していたわけであり、

 

その忠告が尽く無視されたわけなので、時勢を読めずに欲をかいた間抜けな大人の集まり【プライベートファンド】と、ついでに 事情はどうあれ それに与した【セイント・ネフティス】【ハイランダー鉄道学園】がこれからどうなろうと知ったことではなかった。

 

というのも、公言していないだけで【連邦捜査部 S.C.H.A.L.E(シャーレ)】顧問である北条 アキラには【真なるアビドス生徒会】を通じて【カイザーコーポレーション】との繋がり(コネ)を有しており、それがあって新アビドス自治区の成立が実現したことをあまりにも理解していない人間が多いのだ。

 

そして、【セイント・ネフティス】の幹部である十六夜家の執事が【カイザーPMC】を雇ったという情報が【真なるアビドス生徒会】からもたらされていた時点で、【プライベートファンド】を敵とみなしていた【セイント・ネフティス】が裏切ることは予想がついていたのだ。

 

だから、総会の会場となるアビドス中央駅旧庁舎までに辿り着きさえすれば、自身の半身と評した“シャーレの職員”が全て丸く収めると信じて、【プライベートファンド】がなけなしの資金を投じてありったけの傭兵を雇って形成させた防衛線を突破するための奇策:集音マイクを授けることができたのだ。

 

残るは【真なるアビドス生徒会】が【プライベートファンド】への怒りの鉄槌として正午にサーモバリック爆弾を落とすことだが、それも大した問題に感じていなかった。

 

なにしろ、【真なるアビドス生徒会】の溜飲を下げるためにミサイル発射の瞬間の絶望感を【プライベートファンド】に味わわせれば十分に納得できるものだったからだ。

 

要は、“天上人(トップス)”を自称して他の全てを見下して自分たちの世界に閉じこもりきりの【真なるアビドス生徒会】からすれば、下層民(サテライト)とは顔を合わせることも言葉を交わすことさえも億劫に感じているほどなので形式的な裁きを与えるだけで十分だったのだ。

 

なので、誰もが本音と建前を必要としているのなら、十分な大義名分と因果応報を用意することができれば、発射されたサーモバリック爆弾をレールガンで撃ち落とすことも【真なるアビドス生徒会】にとっては許容範囲なのである。心情としては一刻も早くサテライトのクズ共との関わり合いをなくしたいわけなので。

 

第一、【キヴォトス防衛軍】の怪獣退治でいつも頭を悩ませているのは、それこそ超音速飛行をする空飛ぶ怪獣の対策であり、北条 アキラの出身となる半世紀に渡って怪獣災害に見舞われた地球では超音速兵器が当たり前のようにあるが、戦場カメラマン:姫矢 ジュンの出身であるスペースビーストが飛来した地球では超音速ミサイルはそこまでする仮想敵がいないために一般的ではなかった。

 

つまり、【真なるアビドス生徒会】が発射しようとしているのが巡航ミサイルなら所詮は亜音速でしかないので、これまで超音速飛行する怪獣たちを実際に相手にしてきたロボット職員:マウンテンガリバーなら十分に目で追える程度の脅威でしかないわけなのだ。撃ち落とすにしても元々が艦載砲の予定だったレールガンならば射程も威力も速度も十分である。

 

そして、弾道ミサイルなら未確認飛行物体として【キヴォトス防衛軍】の方で処理すればいいので、学園都市:キヴォトスにとっては未体験のミサイル攻撃に対して周りがいったいどうなるのかと心配になっている中、着々と勝利の方程式を組み上げていた北条 アキラとしてはこの件に関しては何の心配事もなかったのである。

 

 

そんなわけで最終的に北条先生が提示した今回の作戦の骨子というのが、ミサイルを撃ち落とす大義名分として緊急避難を適応させるために、【アビドス生徒会】新生徒会長:十六夜 ノノミを【セイント・ネフティス】の許に送り出して人質にさせることで、要人救出の任務から正当性を獲得させることにあった。

 

 

つまり、【セイント・ネフティス】の幹部である十六夜家の執事こそが今回の作戦の要というわけであり、自分たちの令嬢を人質にとることで一刻も早く【プライベートファンド】の主導権を握るために【カイザーPMC】を使っての総会の制圧を決行させる()()()判断を助長させたわけなのである。

 

それは十六夜 ノノミとは家族ぐるみの付き合いである十六夜家の執事の思惑を読み切った上で【アビドス】復興に懸ける情熱と善意を完全に利用した形になるものの、

 

十数年前の過去に何の成果も上げることができなかった砂漠横断鉄道と未完成の要塞兵器なんかに血道を上げて現在を蔑ろにする姿勢が本職が小学校の先生としては我慢ならないものであったため、

 

かなり力押しの方法になってしまったことには少しばかり反省するところがあったが、子供の願い事は未来の現実であり、それを踏み躙る大人の行為は人類の未来を閉ざす重大な罪とも言える悪魔の所業であるため、それに対する報復を躊躇することは決してない。

 

それこそ、十数年の砂漠横断鉄道のほぼ同時期にネフティスの令嬢:十六夜 ノノミが誕生してから今日までの歳月を無為に過ごしてきたことに対してロボット職員:マウンテンガリバーが疑問を呈したように、

 

就学期間という人生で短くも大事な基礎になる青春時代を砂にまみれた借金返済に追われる日々で終わらせるような学びの環境に生み出した罪深さはウルトラマンの心を教育現場で実践しようと志したマイナスエネルギー対策の第一人者を自負する北条 アキラにとっては許し難き大悪であったのだ。

 

その意味では【真なるアビドス生徒会】にとって今回の仇は【カイザーコーポレーション】の代表であるプレジデントであったが、【連邦捜査部 S.C.H.A.L.E(シャーレ)】の北条先生にとっての仇とは【セイント・ネフティス】の幹部である十六夜家の執事だったわけなのだ。

 

 

――――――その説明を新型機:GUTSアルバトロスの操縦席で聞かされていた銀鏡 イオリは相変わらずの北条先生の読みの鋭さと悪を許さぬ不屈の精神に舌を巻いていた。

 

 

北条先生「……ダメか。サドラの霧をたっぷり吸い込んで胃の中も電子機器が使えないか。通信ができない」

 

北条先生「しかも、【ドキュメントZAT】と同じく、“悪魔の穴”ライブキングの腹の中に“幻のオアシス”コスモリキッドが吸い込まれていると来た」

 

北条先生「おかげで、液体化したコスモリキッドがライブキングの胃液を吸収している盾になっているおかげで、長いこと、消化が滞っているのがわかる」

 

 

北条先生「――――――消化不良で飢餓に陥った“悪魔の穴”が暴れ回っているわけだ」

 

 

北条先生「くそっ。サドラが発生させた霧の中でサドラとデットンを急いで倒したはいいが、霧の中を彷徨う生徒が“悪魔の穴”に落ちたのを見て思わず飛び込んだのは迂闊だったな……」

 

北条先生「少なくとも、再度 変身できるまでのエネルギーが溜まるまでは自力での脱出は不可能……」

 

北条先生「逆に言えば、変身さえできれば いつでも脱出は可能になる……」

 

北条先生「予想はしていたから、こんなこともあろうかと準備はしていたけど、今頃 僕が怪獣に食べられたということでキヴォトス中が大騒ぎになっているだろうな……」

 

北条先生「まあいいや。万が一の場合はコーイチ先生が引き継ぐことになるし、その万が一の場合の予行演習として今回のことが得難い経験になるだろうさ」

 

北条先生「しかし、どこまで落ちていったんだ、霧の中で“悪魔の穴”に落ちていった生徒は……?」

 

北条先生「見捨てるわけにもいかないし、見捨てたら気分が悪い。こればかりはしかたがないか……」

 

 

そして、現在、怪獣退治の専門家:北条 アキラは胃液で消化された発酵臭が染み付いた肉々しい異空間:怪獣の胃袋の中に居た。

 

こうなった経緯は非常に複雑怪奇なのだが、簡潔明瞭に説明すると、未調査領域の調査中に立て続けに怪獣が現れたアクシデントによるものであり、岩石怪獣:サドラと地底怪獣:デットンを手早く倒して変身を解除した直後に“悪魔の穴”に落ちた生徒を助けるべく、躊躇うことなく自身も“悪魔の穴”に飛び込んでしまっていた。

 

元よりアビドス砂漠には“幻のオアシス”と“悪魔の穴”の噂が存在しており、その正体が【ドキュメントZAT】に記録されている大怪獣:コスモリキッドとライブキングであると推測を立てて、地球での戦闘記録を思い出して万が一の対策を準備万端にしていたからこその勇み足でもあった。

 

いや、本人としては強力な消化液にも耐性があるGUYSスーツとヘルメットを着用した上でこの時のために用意していた対策品があるので、変身直後ですぐに脱出ができない状況であったとしても、また変身できるまでの半日以上の時間を耐久できる自信があったので、そこは問題にしていない。

 

しかし、サドラが起こした霧によって通信機器が機能しなくなった状況で単独行動をとった末にそのまま“悪魔の穴”に飛び込んだのは迂闊だった;自身の生存は問題なくとも、司令官不在で大混乱になることはキヴォトス来訪初日で体験した“連邦生徒会長”失踪による大混乱と同様の事態に陥る――――――。

 

そのことに怪獣の胃袋の中で後から気づいても時すでに遅し。

 

願わくば、こうした事態を想定してしっかりと残していった所定のプログラムの通りにみんなが動くことを――――――。それさえも成長の糧となることを希う――――――。

 

そして、やってしまったものはしかたがないとして、“悪魔の穴”ライブキングと“幻のオアシス”コスモリキッドを撃破できる絶好の機会がようやく巡ってきたことを前向きに捉えて、

 

人の心配を他所に 地球人:北条 アキラは怪獣の胃袋に居ることに心を踊らせており、“タロウ兄さん”こと東 光太郎/ウルトラマンタロウがかつて体験したという【ドキュメントZAT】に記録されていたことを自身も体験できたことへの興奮が恐怖を消し飛ばしていた。

 

もちろん、生存者の救出が最大の目的ではあるのだが、普通ならば自身の生存ですら絶望的な状況にあって楽しみを見出だせる冒険心は闇の中でこそ光り輝くものがあった。憧れは止められない。

 

 

梔子 ユメ?「さあ、一緒に行こうね、ホシノちゃん」

 

小鳥遊 ホシノ「はい、ユメ先輩!」

 

 

 

砂狼 シロコ「え、ホシノ先輩がいない?」

 

十六夜 ノノミ「そんなッ! どこに行ってしまったんですか、ホシノ先輩!?」

 

ロボット職員「く、“黒服”ぅううううううううううううう! お前の仕業かあああ!?」

 

 

――――――北条先生が帰還するまでの長い1日、そこから戦いは新たな局面へと向かっていった。

 

 

*1
東京から大阪間の距離は直線にしておよそ400キロメートル。新幹線・飛行機・自動車を利用すると およそ500キロメートル。

*2
日本の刑法では、自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しないと規定している(刑法37条1項)。

*3
大気圏の内外を弾道を描いて飛ぶ対地ミサイルのこと。

*4
空気中の音速は340m/sであり、この速度がマッハ1で、時速に直すと1224km/hとなる。




-Document GUYS feat.LXXX No.17-

岩石怪獣:サドラ 登場作品『帰ってきたウルトラマン』第3話『恐怖の怪獣魔境』登場
霧深く転落事故が頻発しており、「遭難した人間は恐ろしい竜に食われてしまう」と伝えられる魔の山:霧吹山に生息する怪獣。人食い竜伝承の大元は十中八九このサドラであり、生理現象で発生させる霧が山の名前にもなっていることから、かなり大昔から霧吹山に生息していたと思われる。
いくつもの体節を持つ蛇腹状の外皮と逆三角形の頭部、両腕に備わった重厚なハサミが特徴であり、設定では尾から猛毒を噴き出すとされ、サソリの特徴を色濃く持った尾長二足歩行怪獣と言える。

ハサミは“重層ベローズピンチ”と呼ばれ、鋼鉄を易々と切断しうる切れ味と、飛んできた岩塊を真っ向から粉砕するほどの頑丈さを持つ他、腕は伸縮自在で身長の5倍も伸ばすことが可能であり、狩りや攻撃に有用である。足の方もハサミになっているが、そこまで目立った活躍はない。
そして、この怪獣を人食い竜たらしめた最大の能力こそが、体節の隙間から揮発性の液体を分泌して“電磁セクリションフォッグ”という特殊な霧を発生させる能力であり、この霧は特殊な電磁波を帯びているため、強力なジャミング効果を持ち、通信機等の電子機器を軒並み麻痺させてしまう。
この能力によって視界を奪われた登山者を容易く遭難させ、電波妨害によって救助要請をも封じるため、実は山に限らず電子機器に囲まれた都市圏においても脅威となる文明の敵と足り得る。
普段は自らの狩り場である霧の中に身を隠し、迷い込んだ動物や人間をハサミで器用に捕らえては食い殺しているものと思われ、
また、両側頭部の突き出た部分は耳であるが、ここにはサメのロレンチーニ器官に似た構造体が存在するため、視界の悪い霧の中でも獲物を決して逃さない最大の要となる。
しかし、この耳は同時に急所でもあり、潰されるとたちまち戦意を喪失する。非常に優秀な感覚器官であるだけに潰されると生死に関わる最大の弱点となっている。
このように電波妨害を伴う霧に紛れて伸縮自在のハサミで獲物を捕食する人喰い怪獣としては非常に理に適った造形となっており、スペースビーストを思わせる凶悪怪獣である。
しかし、偶発的にデットンと組んでウルトラマンジャックを苦戦させたものの、デットンを倒された直後に八つ裂き光輪で首を切断されて倒された点や、単身調査に来た加藤隊長を捕食しようとして負傷させた後 長時間 粘られて郷隊員の救助が間に合った点を踏まえると、霧に紛れた一方的な狩りを得意としているだけで戦闘能力そのものは高くないように見受けられる。
所詮は人喰い竜として伝承になるぐらい昔から人喰い怪獣しかやっていなかった時代遅れの怪獣ということか。


地底怪獣:デットン 登場作品『帰ってきたウルトラマン』第3話『恐怖の怪獣魔境』登場
『初代ウルトラマン』に登場した地底人が使役する地底怪獣:テレスドンの弟とされる怪獣。ぐんにょりしたボディが妙にいい味を出していると専ら評判。
目立った能力は持たないが、地底怪獣らしく怪力の持ち主で、ブルドーザー2500台分のパワーがあるとされる。
また、劇中では披露していないが、あくまで怪獣としての種はテレスドンであるため、火炎放射能力や地底潜行能力は備わっていると思われる。
あるいは、テレスドンを使役していた地底人が全滅したことによって制御から解放されて野生怪獣になったものと思われる。

以上。相方のサドラや兄のテレスドンがその後の作品で再登場しているのに対し、デットンは一切映像作品に再登場していないため、掘り下げが一切ないまま、突如としてサドラに追い詰められた郷隊員と加藤隊長の目の前に現れた怪獣ということしかわかっていない上、サドラと組んでウルトラマンと交戦するものの、スペシウム光線で返り討ちになった辺り、地底怪獣としてはさほど強い方ではないと思われる。

元々は『初代ウルトラマン』のテレスドンを再登場させる予定だったが、スーツがすでに別の怪獣にしか見えないほどに劣化していたため、急遽“テレスドンの弟”という設定の地底怪獣:デットンが生まれることになったのが真相のようである。
特に、ボロボロになった顔を補修するために素材を盛った結果、テレスドンが眼から口先にかけスマートな直線的なのに比べ、デットンは鼻先がボコボコに盛り上がり、開閉機構が壊れているのか、口も終始開けっぱなしである。
そのため、『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル』で再登場したサドラと戦ったのは原案通りテレスドンの方であり、怪獣としての華がない急造品であるデットンを出す道理はなかったようである。


人食い竜の伝承がある霧吹山に入山する登山者をサドラが今日も襲っており、その霧吹山近くの上空をパトロールしていた郷隊員が怪獣の声を聞いたと主張したことから、その調査のために単身訪れたMATの加藤隊長を襲うが、落石で足を負傷した上にサドラが撒く霧の電波妨害で絶体絶命の中、ハサミを攻撃して難を逃れている。
その後、隊長が未帰還であることから父親が山に登って行方不明となって落命していた過去を持つ郷隊員が霧で覆われた夜の霧吹山にパラシュートで降下して懸命の捜索の末に洞窟で怪獣と戦っていた加藤隊長の救助に成功。
その後、執拗に隊長を襲っていたサドラは突如現れて鉢合わせたデットンと戦い、それに巻き込まれて身動きが取れなくなった郷隊員は加藤隊長を救うため、ウルトラマンに変身する。
共通の敵と認識したウルトラマンジャックに対してサドラとデットンが連携してウルトラマンを追い詰めるが、スペシウム光線でデットンを倒された直後に八つ裂き光輪で首を切断されてサドラは倒される。
こうして怪獣の脅威が去り、互いの無事を喜び合う加藤隊長と郷隊員は探しに来ていた隊員たちに手を振り、この事件は解決となったのである。

後に、最後の怪獣頻出期となる『ウルトラマンメビウス』の時代にも再登場を果たしたサドラはスーツが新造されたことでよりがっしりとした体型となった。
一方、デットンの方はトリヤマ補佐官がゼットンをデットンと言い間違えたぐらいで影も形もない。
そうしてボガールによって復活を果たしたサドラは複数体現れ、霧吹山に入り込んだヒッチハイカーたちを再び霧に紛れて伸縮自在のハサミで幼い子供連れの一家や女子高生の集団だろうと容赦なく片っ端から食い殺しまくっており、人喰い怪獣としての描写は原点よりも更に凶悪となった。
最初の個体はGUYSと交戦した後にボガールに捕食され、2体目はメビウスからメビュームシュートを受けて倒された。
直後に3体目と4体目が出現してメビウスに襲いかかるが、ハンターナイトツルギのナイトシュートで瞬殺。
5体目に至ってはボガールに捕食されている真っ最中の現場を発見され、映ったのは腕だけであった――――――。





――――――瞬殺。

原作でもサドラとデットンは序盤の怪獣でかつグドンやツインテールのようにメジャー怪獣になれなかったマイナー怪獣だったが、扱いの悪さはここでも健在であり、戦闘自体は北条 アキラが変身するウルトラマン80の敵ではなかった。
人喰い怪獣に対しては決して容赦はせず、徹底的に叩きのめして一気に片付けるため、ウルトラ・ライト・ソード(ウルトラメタモーフォーズ)で撫で斬りにしている。

しかし、凶悪度で言えば 打って変わって メジャー怪獣であるグドンやツインテール以上に凶悪な怪獣であった。
なにしろ、アビドス砂漠での未調査領域の調査を引き続き行っている最中に、電子機器を使用不能にする魔の霧を発生させて人間を捕食するのに最適化された伸縮自在のハサミで器用に捕らえてくるため、まるで異生獣:スペースビーストに感じられ、障害物のない砂漠では霧の中からの奇襲攻撃に対応するのは困難であった。
そのため、急激に砂漠の湿度が上昇し、電子機器に障害が出始めた初期段階で異常を感じ取った【キヴォトス防衛軍】軍事顧問:北条 アキラはすぐに全体の調査の中止を命じ、生徒たちを四次元都市:フォーサイトへの避難を指示して事なきを得ていた。
今回の怪獣災害ではサドラとデットンによる直接的な被害は出なかったものの、サドラが発生させた砂漠の霧に紛れて“悪魔の穴”ライブキングに飲み込まれた生徒を察知したことで、その救助のために意を決して“悪魔の穴”に飛び込んでしまったことでキヴォトス中が恐慌状態になってしまうのであった。
その点では、間違いなくサドラは人喰い怪獣としても、弱小怪獣としても、凶悪怪獣としても、嫌らしさ満点の総合バランスに優れた“災害の化身”と言える。

――――――デットン? その場に現れた傍迷惑な一般通過怪獣ですが、何か?
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