時を超えた光学兵器   作:モモンガ隊長

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3話 いきなりの脱線!?

「約束通り1番の成績を取ってる学ちゃんはとっても偉いわ。だからママ文句は言わないけれど、野蛮なスポーツで怪我でもしたら一生を台無しにするわよ。今からでも塾に通えば行きたい大学がより取り見取りなのに……はい、水筒とお弁当よ。車には気を付けてね。あと知らない人に付いていっちゃダメよ?」

「う、うん。気を付けるよ」

「暗くならない内に帰って来るのよ。帰ってきたら予習を忘れずにね。それから――」

「い、いってきまーす」

 

 僕はママの話が終わるのを待ち切れず家を飛び出した。クラスでトップの成績をキープする事で僕がスポーツする事に渋々納得してくれているけど……やっぱり快くは思ってくれてないのかな?

 

 僕の朝は早い。ラジオ体操と軽いジョギングで全身の筋肉をほぐすのが日課だ。平日は学校に通って夕方には家に帰る。そして夕飯前に適度なトレーニングをして、お風呂上りには入念なストレッチを行う。これには筋肉が伸びやすくなっているのと疲労回復の効果がある。

 

 僕の夜も早い。どんなに遅くても夜9時には寝るようにしている。テレビ番組はニュース以外興味が出ない。今更アニメっていう精神年齢じゃないしね……。

 大人にとってもそうだけど、子供にとって睡眠はとても大事なファクターだ。成長ホルモンの分泌と深い睡眠はアスリートの体作りに欠かせない。

 

 がり勉の僕は夜型人間だったのに……よくあれだけ身長が伸びたなぁ。

 

 僕は来年から小学四年生になる。この三年間は神経系トレーニングを中心にやりつつ、走り方のフォーム改善にも注力してきた。体はリセットされてても、記憶という経験則が自然と以前の僕の走りを再現しちゃうんだよね。この矯正にはかなり時間がかかったよ。まさか記憶に苦しめられるとはね……それでも走りのフォームは格段に良くなった。

 お手本は僕の知ってる人物の中で一番走法の技術に長けた陸君だ。西部ワイルドガンマンズのエースランナーにしてセナ君の兄貴分でもある彼のフォームは本当に綺麗で無駄が少ない。進君が教えを乞うのもよく理解出来る。セナ君だって彼の教えを受けたからこそ、あそこまで速く走れるようになったと言っても過言じゃない。

 面と向かっては言えないけど、僕も心の中では師匠と呼ばせて貰おう。彼が得意とするロデオドライブも走法テクニックの一つで、膝を曲げない大股ステップで上体をロデオのように揺らしてスピードに緩急とつけるチェンジオブペースだ。セナ君のストップ&ゴーとは違って、こっちはハイ&ローだね。セナ君のデビルバットゴーストもクロスオーバーステップを利用したカット技法で、どちらも練習次第で誰にでも身に付ける事が出来る。もちろん簡単じゃないけどね。

 

 だから僕でも練習すればきっと出来る……はず、多分。

 

 でもセナ君と同じ走法を身に付けたからと言って彼のような走りが出来るかと問われたら……答えは、否だ。煙のように消えてディフェンダーを抜き去るなんて、セナ君の超人的なスピードとカットがあって初めて為し得る絶技だからね。残念ながら僕はそのどちらも持ち合わせていない……今のところは、ね。

 

 そうは言っても走力自体は確実に上がってるよ。一年生の一学期はクラスでも下から数えた方が早かったけど、三年生の三学期には学年で6位になれた。小学校を卒業するまでに1位を取るのが当面の目標かな。走りのフォームが年々良くなってると体育の先生も褒めてくれた。この先生は陸上部の顧問で運動熱心な僕に何かと目をかけてくれる。なるべく多くの競技を経験したい僕には大歓迎さ。

 

 

 さて、そんな僕が休日の朝からどこに出掛けているかと言うと、市内で一番大きい泥門総合運動公園だよ。日曜日の午前中は欠かさずココに来て三時間は遊んでいく。運動公園の遊具って本当に考えて作られてるよね。遊んでいるだけで敏捷性やバランス感覚を養う事が出来るし、無料だし小言も聞かなくて済むから一石三鳥かな。

 最初は友達と一緒に通ってたんだけど、今じゃ僕一人だけになっちゃった。日曜の朝は見たいテレビがあるんだって……でも寂しくないよ。午後になれば学校のグラウンドで野球とかサッカーして遊ぶ約束だからね。

 それに健康オタクを自称するおじさんとも仲良くなったんだ。最初は知らない人だったけど、毎週会う常連さんだから顔見知りになったよ。40ヤード走のタイムだって計ってくれるし、キャッチの練習にも付き合ってくれる。自分でボールを投げて捕る事も出来るけど、投げて貰った方が何倍も練習になるからね。おじさんは野球の方が好きみたいだけど、少しくらいの我が儘は子供の特権だよ。

 

 子供の頃から遠慮してたら人生なんてずっと我慢で終わっちゃう。

 後悔なんてしたくない。だから僕はそういう生き方をするよ。

 

 

 そうそう、この前偶然姉崎さんと会ったんだ。小学生の姉崎さんは初めて見たけど、とても懐かしく思えたよ。僕の事は知らないみたいだった……当然か。セナ君を探してたけど、僕は見てないって答えた。セナ君って休みの日までパシリやってたの?

 気の毒だとは思うけど、パシリの経験があの超人的なカットを生む。そう考えると……迂闊な事は何も言えない。でも、セナ君ならきっと大丈夫さ。僕と違って天才だからね。

 

 それより姉崎さんの可愛さは半端じゃないね。御幣を恐れずに敢えて言おう、僕の学校には彼女ほど可愛い子はいない。そう言えば、あれからヒル魔君とはどうなったんだろう? 大学からは皆と本当に疎遠になっちゃったからなぁ。付き合ってたってのは都市伝説だよね?

 泥門ってヒル魔君とセナ君以外、女っ気なかったよね。僕なんか医大生で長身なのにモテた記憶がないぞ。

 

 くそっ、どうしてだ!?

 もう三高は時代遅れなの!?

 それとも僕が凡人だったからなのか!?

 凡才には彼女も出来ないと言うのか!? 

 

 確かに才能も欲しいけど、彼女が欲しくないと思った日はない。でも、今の僕にはアメフトが全てだ。アメフトしか見えないと言っても過言じゃない。でもまぁ……応援してくれる可愛らしい彼女くらい、いてもいいよね。悪いっていうなら論理的に証明してくれないと僕は納得出来ないよ。彼女がいた方が何かと励みにもなるだろうし、試合を見に来てくれたらテンションも上がるだろし、マネージャーになってくれたらいつも一緒にいれるよね。そしたら僕は三倍頑張れる気がする。

 

 よし、彼女を作ろう!

 

 幸い今の僕には大人の老練なテクがある。その手のハウツー本は何冊も読破して完全に暗記している。実践した経験はないけど、女性を喜ばせるトーク術も勉強済みだ。

 ギャップに萌える女性は少なくない。男性にも同じ事が言えるからね。でも僕にワイルドさは皆無だ。それならば僕の戦えるフィールドで勝負すればいい。褒められ喜ばない女性はそうはいないし、優しくマメな男性は好かれやすい。大事なのはそれを意中の女性に向けて実行する事だ。誰にでもやってしまえば只のチャラ男に成り下がる。

 

 大丈夫だ、僕はやれる!

 I can do it!!

 

 自己暗示は潜在意識や能力を引き出すのにとても便利だ。僕は鍛錬でも暗示の力も併用している。イメージトレーニングやメンタルコントロールはスポーツマンとして試合でより良いパフォーマンスを発揮するのに役立つ。

 恋愛だって似ていると思う。駆け引きも必要だけど、時には思いっきりぶつかる事も重要だ。臆病になっていたら一生勝負なんて出来ない。

 

 やるぞ。やってやるぞ!

 凡才だって彼女が出来るって事を証明してやるんだ!!

 




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