名誉温泉開発部   作:第三のケモナー

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お久しぶりです









ゴーヤはワタを取ってから

 

 

 

 

 

『早瀬 ユウカ』

 ブルーアーカイブをやっているならば、知らない者が居ないのではないかと言われている生徒である。チュートリアルのタンクであり、先生の初めて(メモロビ)を奪った生徒で、その面倒見の良さと擬音が付きそうなフトモモで屈指の人気を誇っている。

 

(な、何故此処に!?)

 

 勿論、ここがシャーレだからというのは分かってはいるが、まさか今日が当番だとは思っても無かった。

 

 現在、自身はC&Cのメイド姿である。ミレニアムサイエンススクール所属……ましてや生徒会であるセミナーの生徒となれば、この格好に対しての言い訳が出来るはずがない。

 

(解決してくれそうな先生も居ないし、どうしよう……)

 

 しかも、先生が居ないとなるとかなり不味い状況になりかねない。

 

『その格好と校章、C&Cの……あなた何故それを!? ちょっとお時間よろしいですか?』

『うわぁぁぁ囧』

 

 下手するとミレニアムサイエンススクールとゲヘナ学園に亀裂が出来る切っ掛けになるかもしれない。そして戦争が始まり、壁が生まれて三つ巴になり、キヴォトスは混沌を極めて……

 

(……元々カオスだったよキヴォトス)

 

 つまらないセルフツッコミをしたところで、イナは現実に戻る。取り敢えず、C&Cのメイド服だと確信されないようにスカートの端を掴み、袖のミレニアムサイエンススクールの校章をユウカに見えないように隠す。

 

「あれ、先生じゃない……その服は……」

 

 ユウカは入ってきたイナの姿を確認して、見覚えのあるメイド服を着ている事を訝しむ。

 

「は、初めまして! 先生に用事があって来ましたイナです!」

 

 そう言うと、スカートの端を持っている事を不審に思われないように、ちょこんとスカートの両端を少し広げて挨拶する。そして、ユウカに早速服装について突っ込まれたため、急いで話題を変えようと先生の名前を出す。

 

「み、ミレニアムサイエンススクールの早瀬ユウカよ」

 

 ユウカは、イナのメイドっぽい仕草と普段のC&Cを比べてしまい若干の動揺を見せるも、自己紹介を済ませていく。

 

「先生ならすぐに戻って来るって言ってたけれど……何の用で?」

 

 話題を逸らす事には成功したが、明らかにイナの恰好に既視感を感じていた。イナもそれを感じ取ったのか、いい感じの適切な言い訳を考えていた。

 

(ヤバいヤバい! どうにか切り抜ける方法を……)

 

 よくネタにされがちな彼女だが、セミナーの会計を任されるのもあって実力と記憶力は高い。下手な言い訳をすれば矛盾点を突っ込まれるだろう。となれば、正直に話すしかない。

 

 

 イナは覚悟を決めて、本当の事を話すことにした。

 

「わ、私、本当は外出を禁止されている身なんです!」

 

 いきなりのカミングアウトにユウカは困惑する。

 外出を禁止されているといえば、ミレニアムにも似たような生徒は存在する。セミナーから除籍し、『反省部屋』に居る元セミナーの生徒なのだが、それと似たような扱いを受けているのだろうかとユウカは考える。

 

「大人しくしてたんですけど、(自分がやらかした)爆発で倒壊してしまって……」

「爆発!?」

 

 実際は自分が下ごしらえをしてしまったが為に起こってしまった事故であり、イナは食材が勿体無いので料理をしただけ。……風紀委員会からすれば『大人しくしてないじゃないか!』と言われそうである。

 

「先生なら何とかできるんじゃないかとメイド姿に変装して来たんです!」

「逆に目立つんじゃないかしら……」

 

 実際イナがシャーレに来るまでに、メイド服を着ているのを2度見した人は数多く居た。

 

「それが、ヴァルキューレにバレなかったんですよ」

「えぇ……」

 

 正確には目立ちすぎて不審者扱いされた挙げ句、痛い者や微笑ましい中等部扱いで見送られただけである。

 ひとまず、先生を頼ってきた理由は分かった。しかし、外出禁止になるほどの事は何だろうと気になったユウカはイナに問い掛ける。

 

「理由は分かったけど、何故外出禁止に?」

「そ、それは……」

 

 イナは言うか言うまいか迷ったが、言わないというのも怪しまれるので一呼吸を置いて話す事にした。

 

ーー

 

 

「ヴァ、ヴァルキューレとカーチェイスして車を26台破壊した!?」

「ち、違うんです! 自分が破壊した事になっているんです! 免罪です!」

 

 それを聞いたユウカは、思わず大声を出してしまった。すかさずイナは訂正するも、信じられないといった風だ。目の前のテロリスト(仮)に怪しい目を向けつつ、ずっと気になっていた事をユウカはイナに聞いてみる。

 

「……ところで、ずっとスカートの端を掴んでるようだけど、何か隠してるわね!」

 

ギクギクゥ

 

 挨拶した時からイナがスカートの裾と袖を隠している事にずっと違和感を感じていた。裾と袖と言えば武器や危険物を隠すのに打って付けの場所である。

 何かやましい事があるようなイナはすかさず後ろを向く。それを見逃さないユウカは背後からヌッと近づき、イナの腕を掴んだ。このテロリスト(仮)は何か危険物を隠してる可能性が高い。

 

「ちょっと! 抵抗しても無駄よ!」

「こ、この服親戚の! 親戚のだから!」

 

 イナはミレニアムの校章を見せたくないが為に抵抗し、ユウカはスカートとイナの腕を掴んでいる。

 

「初めて! 私の初めてだから!」

「な、なに訳の分からない事言ってるのよ!」

 

 益々怪しい言動に更なる疑惑がかかるイナ。

 

 

 揉み合っている内にシャーレオフィスのドアが開いて誰かが入ってきた。

 

「"ただい……"」

 

 入ってきたのは先生だった。

 それに気が付いた二人は動きを止める。

 

「"……ごめんね"」

 

 中に居たユウカとイナを見るなり、先生はシャーレオフィスを退出しようとする。

 それもそのはず、ユウカがイナのスカートを捲し上げようとしているところを必死でイナが抵抗している光景にしか見えなかった。

 

「「……」」

 

 一瞬二人が見合わせた時、状況の異常さに気が付いた二人は先生を追いかける。事情を説明しても中々納得しない先生に頭を抱えつつ、やっとの事で理解して貰えたのであった。

 

 

 

 

「"そういう事情だったんだね"」

「だからそう言っているじゃないですか!」

 

 結局、イナの着ているC&Cのメイド服はバレてしまった訳だが……

 

「取り敢えず、そのメイド服は没収よ!」

 

 ユウカから言われてイナは来ているメイド服を脱ごうとし、襟に手を掛けた所で止まってしまう。どうして止まってしまったのか分からない先生とユウカ。

 

「……それは出来ません、ユウカ先輩」

「どうしてよ」

 

「着替える服がありません」

 

 そう、イナは自宅から着替えを持ってきていなかった。詰まる所今着れる服がメイド服しかない。

 

「で、出来ないと言われても……うーん」

 

 流石に着替えを持ってきていないとは思っていなかったユウカ。このまま下着姿で帰すことも頭の隅で一瞬考えたが、その考えを切り捨てる。それだとイナが可哀そうであると同時に、シャーレから下着姿の生徒が出てきたとなれば大事件になるからだ。

だが、そのままC&Cのメイド服を着ていても問題となる事実は変わらない。

 

「"クローセットとかタンスとかは無事なの? 無事だったら私が取りに行くよ"」

 

 先生の言った通り、爆発に巻き込まれていてもクローゼット自体は無事であった。現在外出禁止のイナへの配慮で、先生が取ってきてくれるそうだ。しかし、イナはあまり乗り気ではない様子である。

 

「い、いや、それだったら自分で取りに……」

「その服で? これ以上は流石に駄目よ」

 

 イナ一人で行こうとするが、それを良しとしないユウカがそれを阻む。何故かイナは、先生の提案に難色を示す。

 

「"もしかして、『個人的な用事』?"」

 

 先生はそんなイナを見て何かを察したのか、問い掛けてくる。以前にアビドスでイナが言っていた『個人的な用事』という言葉を思い出した先生は、またそうではないかと思っていた。

 

「な、何故それを……」

 

 先生の言っていた事が当たっていた様子のイナ。

 

 ミレニアムのメイド服を着ていないと出来ない用事……恐らくイナの中で無視出来ない出来事があったと推測する。学校外でもこういう事をやっているのかと疑問を持つ先生だったが、思えばアビドス自治区でも同じような事をやっていた。

 

("前回はゲヘナ風紀委員会の暴走を止めるためだったけど、ミレニアムで何かあったのかな")

 

 現在、先生は『ゲーム開発部』というミレニアムの部活の手助けをしている。廃部寸前の部活を何とかしようとその部活の生徒と共にミレニアムプライスで賞を取る為に動いていた。

 

「"ユウカ、セミナーの会長に着用許可って取れる?"」

 

 早速、セミナーの会長ならばとダメ元で行動に移す先生。

 

「なッ! 駄目です! いくら先生でも……うぅ、分かりました」

 

 当然ながらそんな許可は降りる筈がない。ユウカはいきなりの先生の行動に困惑するが、先生の真剣な眼差しに気圧されて渋々といった風で連絡する。

 

「どうせ許可降りる訳……あら?」

 

 ユウカの様子がおかしい。画面に書いてるであろう文面を見たと思ったら、もう一度端末で文字を打ち込んで静かになる。

 

「あなたって『纏 イナ』で合ってる?」

「え、そうですけど」

 

 自己紹介の際に名字は教えていなかった筈だが、イナのフルネームを確認するユウカ。

 

 

「あ、あり得ない……あなたに『メイド部服装の許可』が降りたわ」

 

 

 イナも含め、その言葉にこの場に居る全員が驚く。ユウカは最初、あの合理的な考えを持つ会長が私情で許可する訳がないと思っていた。そして私情じゃないとすれば、何か『裏がある』という意味も含んでいた。

 とにかく許可が下りた以上、メイド服を着てもいい事になった訳だが……

 

「待ってちょうだい、『条件』?」

 

 会長から送られてきた文面の続きがあることに気が付いたユウカ。どうやら、着るためにある条件が必要なようだった。

 

「『即時、メイド部への訪問を命ずる』?」

 

 その条件とは、寄り道せずにイナがメイド部およびC&Cに訪れなければいかないというもの。勿論、イナ自身はゲヘナ学園の生徒であるため強制力はない。しかし、メイド服に他学校の校章があしらわれている以上強制力があり、行かなければならない。

 

「……分かりました」

 

 断ることもできる状況でも、イナは行くことに決めた。何故そこまでメイド服にこだわるのか分からないが、許可が出て本人がその条件でいいのであれば、そうする他ない。

 

「"もし、困ったら相談して? これ私の連絡先"」

 

 先生はイナの事が心配になり、連絡先をイナへ教える。

 

「あ、ありがとうございます……それとユウカ先輩も」

「え、えぇ」

 

 イナは先生の連絡先を追加すると、まだ困惑気味のユウカと連絡先を交換する。

 

「"ちょうど私もミレニアムに用事があるから皆と一緒に行こう"」

 

 

 こうしてミレニアムにいく事になった三人。一旦メイド服問題は解決したものの、会長の思惑、イナの目的が分からない事もあり、それぞれが頭を悩ましていたのであった。

 

 

 

 

 








いかがでしょうか。
C&Cに赴くことになったイナ、どうなるのでしょうか

というかみんな外出禁止って事忘れているような……

それでは次回もよろしくです!
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