もし聖杯戦争で雁夜おじさんがオーラント(偽王)を召喚していたらっていう話。
短編なので続きませんし、何番煎じかも分からないほど使い古されてるネタです。
書きたかったから書いた。後悔はしていない。

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【一発ネタ】オーラントが聖杯戦争に呼ばれたらしいですよ【デモンズソウル×フェイト】

「閉じよ、閉じよ、閉じよ、閉じよ、閉じよ。繰り返すつどに五度ただ満たされる時を破却する」

 

 暗い暗い地の底で、男の声は響き渡る。

 男の声と表情は今にも倒れ、死んでもおかしくなさそうなほどに衰弱している。しかしそれでも、眼光だけはギラギラとした意思の炎を宿していた。

 自身の身を全く省みていないその姿は、見る者の心を否応無しに引き付ける(狂気)すら感じさせるほど。

 

「告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に」

「聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うなら応えよ」

「誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者」

 

 そして男の近くには、下卑た笑みを浮かべる闇に蠢く影が一つ。

 影は老人の形を取ってはいるが、隠し切れぬ屑の匂いを撒き散らせながら苦痛に顔を歪める男を実に楽しそうに眺めている。

 嗜虐心を満たすためだけに存在する玩具()を弄んでいるようなその様は、正常な思考を持つ人間であれば嫌悪感を覚えずには居られない程だ。

 

「されど汝はその目を混沌に曇らせ侍るべし」

「汝、狂乱の檻に囚われし者。我はその鎖をたぐる者」

 

 そして男と爺が行っているのは、すぐそこに控えている一つの戦争に備え、己の手札となる兵士を召喚する行為であった。

 それは“この世界”で英雄と呼ばれ、死した存在の魂を召喚する事で行われる英雄たちの戦争だ。万能の(願望器)を求め、七人のマスターと七人の英霊――サーヴァントと呼ばれる存在が殺し合いを行う一般人には知られる事のない戦争。

 

「汝三大の言霊を纏う七天!」

「抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!」

 

 その言葉とともに、眩い光が地下を照らし出した。

 眩いばかりの光に包まれ、男はその場に膝をつく。

 ……魂の根源から衰弱しきっている男の姿は、見る者が見れば魔力を根こそぎ奪われたであろう事実を知る事が出来るだろう。

 しかしそれでも、男は必死で――それこそ、文字通り命を削ってまで己が呼び出したサーヴァント見上げた。

 

 

 そこには、先ほどまでは存在しなかった一人の(老人)が威風堂々と立っていた。

 オールバックに整えられた髪は一本残らず白く染まっており、質の良い布で仕立て上げられた上品な服もやはり白。

 加えてかなりの長身であり、しかし着ている服を押し上げるような盛り上がった筋肉は、頼りないといった類の印象を全く抱かせない。

 老いてなお失われていない強者としての覇気と姿は、出会った事などないはずの「王」のイメージを植えつける。

 

 

 黒に塗れた地下室に現れた、白を纏った老人のサーヴァント。

 同じ老人でも英雄と呼ばれる存在はここまで違うものなのかと、そんな印象をサーヴァントを呼び出したマスターに――間桐(マトウ)雁夜(カリヤ)に抱かせる程、彼が召喚したサーヴァントはその身に纏う雰囲気のみで次元の違いを連想させる。

 

「ちっ、失敗しよったか。まあ貴様のような落ちこぼれでは、所詮この程度ということかか」

 

 しかしこのサーヴァントは、本来無いはずのものを持っていた。

 それは知性と理性。

 燃え盛る業火か、或いは鮮血のような深紅の瞳に宿るのは、深慮遠謀を可能とする知性の輝き。

 爺は、狂化によりステータスの上昇を試みようとしてバーサーカーを呼んだのだ。

 しかし雁夜が呼び出したサーヴァントは理性を持っていた。失敗と断じ、蔑むように雁夜を馬鹿にしたとして、それはある意味当然の帰結なのだ。だが――

 

「なんだよ、こいつ……バーサーカーって、こんなに強いものなのかッ!?」

 

 落胆する爺とは対照的に、雁夜は驚愕の声を上げる。

 サーヴァントの召喚を行って消耗した後とは言え、ステータスを確認する事はできる。そして彼がその目で確認した己のサーヴァントのステータスは、驚異的の一言に尽きた。

 

 しかし雁夜の困惑を置き去りにし、白のサーヴァントは頭を動かして確認するように周囲を見回す。そしてある一点――影のような爺を見た時、その視線を固定する。

 

 ――このサーヴァントは、まずい。

 

 そう思ったのは、雁夜が先か爺が先か。

 そのどちらかが口を開こうとした瞬間、口が動くよりも早く白きサーヴァントは動き()()()()いたのだ。

 白きサーヴァントは爺を――間桐(マトウ)臓硯(ゾウケン)の首を片手で掴み、喉を押し潰しながら持ち上げていた。

 臓硯の首を掴んでいる手には白き光りが纏われており、その光りは命の根源を凄まじい勢いで吸い尽くしている事を見る者に理解させる。

 喉を押さえられている所為で悲鳴すら上げる事が出来ない臓硯は、その身に蓄えた魔力()を吸い取られていく。

 白きサーヴァントが行っている魔力の……いや、既に魂の吸収とさえ言えるその技は、臓硯の仮初の肉体を通して本体の――間桐(マトウ)(サクラ)に宿った本体の命さえも一瞬で吸い尽くす。

 

 目の前に食事()が存在していたから食い尽くした(吸い尽くした)

 その程度の自然さと呆気なさで、500年を生きた大魔術師・間桐臓硯は断末魔の悲鳴を上げる事すらなくその生を終えた。

 

 己にとっての巨悪であった臓硯の呆気ない死に様を見ているはずの雁夜は、しかし現状に思考が追いつかない。

 しかしそんな雁夜を置き去りにし、白きサーヴァントは出力を上昇させる。

 そしてそれに応えるように、白きサーヴァントの左肩甲骨辺りから翼にも見える膨大な力が吹き上がった。その力は魔力に近いが魔力ではなく……魔力よりも、生命()の根源に近い。

 高純度のそれが展開されたサーヴァント付近の蟲たちは我先にと逃げ出し、その力に触れただけで蟲たちは緑に近い光の粒子となって消滅していく。

 

 

 そしてサーヴァントの変化によってもたらされた現象は、蟲たちの逃走だけに留まらない。

 臓硯と呼ばれる存在を吸い尽くした事で得られた膨大な魔力が、()()()雁夜の内に流れ込んだのだ。

 500年を生きた事で蓄えられた魔力は莫大の一言であり、そんな物を受け入れてしまった雁夜は激痛と共に地面を転がり、血を吐きだすような悲鳴を上げる。

 しかしマスターのそんな状態を尻目に、白きサーヴァントはゆっくりと何処かに向かって歩みを進め始めた。

 

 地面を転がりながらその様子を視界に納めた雁夜は、この白きサーヴァントが次に何処に向かうつもりなのかを本能的に理解した。……と言うよりも、理解できてしまった。

 この家に存在する己以外の魔術師は、たった二人だ。

 間桐臓硯と間桐桜。

 その片方を一瞬で吸い尽くした存在が向かう先など、残った片割れしかありえない。そう、()()が思っているのが何よりの証だ。

 

 ――ここでこいつを止めなければ、桜ちゃんが殺されてしまう。

 

 そう理解してしまった雁夜は、驚異的な意志の力で激痛を押さえ込み、地下室全てに響き渡る大声で叫んだ。

 

「俺の命令を聞けッッ!!!」

 

 雁夜の発したその言葉と共に白きサーヴァントの暴威は鳴りを潜め、その歩みの先を雁夜へと変更した。

 

 衰弱に継ぐ衰弱、そこに追い討ちを書けるような激痛。

 そして、理解の出来ない状況。

 知性を宿しながら理解できないサーヴァントの行動。

 意味の分からない現状に翻弄されながら、しかしこれだけは言っておかねばと、残った全ての体力を使い地の底から響くような声で雁夜は己の最優先事項を口にする。

 

「……いいか……桜ちゃん、には……手を……出すな。……絶対、に、だ……」

 

 良く耐えたと賞賛されるべき雁夜の意識は、その言葉を最期に完全に闇の中に落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 【クラス】  バーサーカー

 【マスター】 間桐雁夜

 【真名】   真名なし(便宜上【偽王】とする)

 【性別】   男性

 【身長・体重】詳細不明

 【属性】   混沌・狂

 【筋力】A+   【魔力】A+

 【耐久】B+   【幸運】C

 【敏捷】A+  【宝具】EX

 

 

 

 【スキル】

 

・偽王の契約

 ランク:A

 かつて何処かの世界で王として北の大国に君臨していた一人の男は、その真意を誰にも語る事無く世界から消えた。偉大であった王の変わりに国に君臨したのは、男に良く似た姿と絶大な力を持つデーモンであった。

 

 偽王は本質的に本体(マスター)に魔力を届ける存在(作り物)である。

 偽王と契約を結んだ存在は、ある一つの契約を除き全ての契約を上書きして強制的にこの契約を結ぶ事になる。

 この契約は、偽王が得たあらゆるモノをマスターへと譲渡する契約である。

 またマスターのもっと望んでいる行為をとり続ける副次効果を持ち、最初から自我と呼ばれるものが存在しないため精神系の干渉を受け付けない。

 

 

・デーモン

 ランク:?

 デーモンとは、世間一般で言うところの悪魔の事ではない。

 人の想像、思い……そう呼ばれるものに反応した「色のついていない」ナニかが、それぞれの【伝承】通りに姿形と力を得た存在がデーモンである。

 偽王たる彼は、この世界ではない世界に存在した「北の大国の偉大な王」を模して創られている。

 

 

・ソウルの業

 ランク:EX

 この世界ではない何処かの世界には、生命を操り不可能を可能としたソウルの業と呼ばれる技術が存在していた。しかし命を操る禁忌の技術は、やがて世界を滅ぼす古い獣を呼び覚ましてしまったという。

 

 ソウルと呼ばれる生命エネルギーに近いものを自在に操る技術の習熟度を表す。

 EXランク相当となったこれはあらゆるソウルの業を極めており、他者の命を喰らい尽くして己の物にすることすら可能である事を証明している。

 

 

 

 

 【宝具】

 

・ソウルブランド(偽)

 ランク:A++

 種別:対人宝具

 レンジ:1〜2

 最大捕捉:1人

 

 彼の王家に伝わる二振りの剣の片割れであり、魂を切ると謳われた剣。

 この剣は王が即位して後、常に王の手にあり続けた正真正銘の愛剣である。

 また、この剣はデーモンに近づくほど力を増す性質を持つ。

 故にデーモンである偽王が扱えば最高の威力を引き出す事ができる。……が、偽王が振るうこの剣はソウルブランドと呼ばれた剣の偽物である。

 しかし偽物故本物よりも劣っているという事はなく、偽王は「設定通り(本物同然)」に“ソウルブランド”と呼ばれるこの剣を振るう事が出来る。

 デーモンとしての性質故、伝承で語られたこの剣は本来持っていないはずの“魂を切る”効果を得ている。そしてそれは剣自体の効果ではなく、偽王のデーモンとしての性質故の効果であるため真名開放を必要としない。

 

 

・ソウルアブゾーブ

 ランク:A++

 種別:対人宝具

 レンジ:1〜2

 最大捕捉:1人

 

 偽王が(ソウル)を喰らうと呼ばれ恐れられる由来となった業。

 宝具に分類されているが本質的には魔術であり、僅かな溜めを必要とする代わりに無詠唱で放つ事が出来るソウルの業。

 人間に当てると現在習得している“強さ”を一段階下げ、その強さを得るために犠牲にしたナニカを奪う。サーヴァント相手であれば、最も高いステータスを一段階下げた上でその強さに至る為に支払った魔力を奪う。

 

 

 

北の大国(ボーレタリア)

 ランク:EX

 種別:対軍宝具

 レンジ:1〜99

 最大捕捉:1000人

 

 偽王の由来となった「北の大国」の騎士団をソウルに飢えた怨霊として召喚する。宝具ではあるが大掛かりな魔術は必要とせず、呼び出したい時に呼び出したいだけ召喚可能である。

 この中でも「つらぬきの騎士メタス」「長弓のウーラン」「塔の騎士アルフレッド」の三人は英雄と呼ばれた実力者である。それらに加え「王の飛竜」と呼ばれる、最強の幻想種である竜を呼び出す事も可能。

(処刑人ミラルダ、赤眼の騎士などの名を知られていない者たちも英雄クラスの実力者)

 

 

 

 

 



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