目が覚めると、見知らぬ医務室?保健室?に居ましたわ。
「先生、目が覚めたみたいだよ」
白と黒の髪の少々目つきが悪い少女が、わたくしが起きたことに気づき先生を呼ぶ。
え、誰……!?
でもすごくいい声ね。
音声作品とか出してそう。
「"よかった、目が覚めて"」
隣の部屋にいたらしい先生とアビドスの皆様にヒフミさん、そして見知らぬ人たちが3人ほどこちらの部屋に入ってきましたわ。
彼女たちは便利屋68、金さえ貰えば何でもするアウトロー……らしい。
らしいというのも、ボロボロになりながら戦ってるわたくしを見かねて、助けてくれたそうなのですよね。
アウトロー?アウトローかしら?
えっ、ゲヘナで指名手配されている?アウトローかも……
因みに赤髪の人が社長の陸八魔アルさん、白髪の人が室長の浅黄ムツキさん、白黒の人が課長の鬼方カヨコさん、紫髪の方が平社員の伊草ハルカさんだそうですわ。
平社員だけ急に格が落ちてませんか……?
いえ、本人がいいならいいですけど。
どうやら、ここはアビドスの保健室らしいですわ。
なんでも、戦闘が終わって死にかけたわたくしをどこからか現れたピンク髪の妖精が治療してくれたらしく、その場にとどまるもの危ないのでいったんここに……ということらしいですわね。
どこからともなく現れて消えていったということで、十中八九セリナさんですわね。
絶対怒られますわ……。
お礼をしないといけませんが……セリナさんの好きなもの知らないのですよね。
ボランティアが趣味とは聞いてるのですが。
無難にお菓子とかでいいでしょうか……。
「それで、サマナちゃんになにがあったのさ?」
何から話して……というか、何を話していいのやら。
セイア様のことは機密事項なので話せませんし。
ということで、わたくしが選択したのは……
「さあ……?」
お茶を濁すことしかできませんでしたわ。
「さあってどういうことなのよ!」
「ん、はぐらかさずちゃんと説明すべき」
うーん、困りましたね。
「"私からもお願いするよ。あそこまでやるなんて普通じゃないから"」
先生にまでそういわれては仕方がないですか……。
「といっても、わたくしに恨みのあった何者かに襲撃されたということしかわかりませんわ。心当たりはいくらでもありますし」
「あはは……確かにそうですね」
ヒフミさん!?
えっ嘘でしょう……さすがにヒフミさんにまでそんな風に思われるほど多方面から恨みを買ってましたの!?
半分冗談だったのですが……。
「"えぇ……"」
さすがの先生も困惑していますわ。
ヒフミさんが肯定しちゃったせいですわ。
「うーん、釈然としませんけどサマナちゃんがそういうなら……」
「ん、仕方がない」
疑われてる気がしますが、致し方ありませんね。
「ねえねえ、あなたってもしかしてルシファーって呼ばれてたりする?」
「えっ……知っていますの!?あっ」
自白しちゃったわね。
「やっぱり!ほら!私の目に狂いはなかったわ!」
「この方がアル様の……」
えっわたくし、アルさんに何かしてしまいました!?
身に覚えが全くないのですけど。
「わーひどいな~。アルちゃんのこと弄ぶなんて~」
えっえっえっ、どういうことなんですの?
などと宇宙猫になっていると、カヨコさんが助けてくれましたわ。
「はあ、その辺にしておいてあげなよ。うちの人たちがごめんね。社長が憧れてるアウトローってのが、あなたのことらしくて」
「ルシファーはね、誰にも負けないし、決して群れたりしないし、気に入らないものはすべてぶっ飛ばすの!」
なにそれこわい。
わたくし、昔はそんな風に見えてましたの?
「さっき負けたし、今はセイア様の付き人だし、なんならさっきほかの人と行動してましたわね。それに、降りかかる火の粉は払いますけど、筋の通らないことはしないように心がけていますわ。つまり勘違いってことですわね」
「な、ななななんですってー!?」
なるほど、ムツキさんが弄りたくなるのもわかる気がしますわね。
白目剥いてるの面白いですし、なかなかいい声で鳴きますから。
「ア、アル様……この偽物を始末すればいいんでしょうか?」
「ハルカ、本当に死んじゃうからやめときなよ」
物騒すぎますわよ!?
流石に今からもう1戦というのは勘弁願いたいですわね。
こんなボロボロの状態で連戦とか、もう人間じゃありませんわよ。
「それでも憧れたのよ……ルシファーに」
憧れるのは勝手ですけど……なんだか恥ずかしいですわ。
「ねぇ、よかったらなんだけどモモトーク交換しない?」
「そんなことでよければ別に……助けてもらった恩もどこかで返したいですし」
好きでやったことだから気にしなくていいとは言われたものの、それで気がすまないのがわたくしというものでして。
というか、そういうところがアウトローらしくないですわね。
どちらかといえば、侠客に近いのかしら?
「じゃあ、困ったときはうちに依頼してよ」
「くふふ~。お金にはいつも困ってるもんね、アルちゃん?」
「そ、そそそそ、そんなことないわ!でも、憧れの人からの依頼……いいかも」
うーん、それでいいなら……。
依頼するようなことがあるかはわかりませんけど。
「さて、ヒフミさん。帰りますよ」
「え?」
え?って言われましても。
ヒフミさんを連れ戻しに来たわけですし。
「サマナちゃん、そのケガで動けるんですか?」
え?まあうん、結構回復してきましたし?
そういって、立ち上がると普通にびっくりされましたわ。
流石に戦闘するとなると、数日は無理ですが……。
多少治りが早い自覚はありますが、正義実現委員会の委員長は食らった傍から治っていくそうなので。
「"ちゃんと安静にするんだよ?"」
「わかりましたわ。まあ、襲われたらその限りではありませんが」
次会ったときは、必ず倒しますわ。
セイア様について知っていることをすべて吐かせてやる。
「っ…‥サマナちゃん?あの表情は一体……」
おっといけない、殺意が漏れ出てしまいましたかね?
ホシノさんに心配されてしまいましたわ。
何故かわからないですが、武装を召喚したり、どこからでも神秘を出力したりできるようになりましたし。
死に際で呪力の核心でもつかんだんでしょうか?
まあ、何であれ使えるものは使いますわ。
あの力はまだまだあんなものではない、そんな気がしますの。
と、いうことでヒフミさんと共に、トリニティへ帰りましたわ。
そして後日、ナギサ様に呼び出されてしまいましたわ。
わたくし、何かやっちゃいました?
うーん、心当たりしかありませんね!
ということで、ナギサ様から指定のあった時間に、いつものテラスに来ましたわ。
入口の護衛の方には話が通っていたようで、そのまま通してくださりましたわ。
武装は預けることになりましたけど。
あの日から襲撃されても大丈夫なように"少々"多めに武装を持っているので、護衛の方にギョッとされてしまいましたわ。
うんまあ、残当ですわね。
「ごきげんよう、ナギサ様」
「ごきげんよう、サマナさん。どうぞ、お掛けになってください」
ナギサ様に促されるままに、いつも座っていた席に腰掛ける。
セイア様たちとしたお茶会を思い出して、胸が苦しいですわ。
「久しぶりに、お茶でもしながら話しましょうか。サマナさんの好きだった、ロールケーキも用意しましたよ」
「ええ、いただきますわ」
言われるがままに、用意されていた紅茶に手を付ける。
さすがナギサ様ですわね。
いい茶葉を使っているようですわ。
と、いってもわたくしはあまり詳しくないのですけどね。
この香りは、ラベンダーですわね。
それくらいは分かります。
ラベンダーの花言葉は……『優美』『沈黙』、そして"疑惑"。
お前を疑っているぞ、という意思表示でしょうか?
普段から監視されていますし、ナギサ様ならそういう裏があってもおかしくありませんわね。
ロールケーキには……手が付けられませんでしたわ。
あの日々を思い出してしまうので、ロールケーキは胃が受け付けなくなってしまいましたの。
「最近はどうでしょうか?あまり寝れていないようだと聞いておりますが」
「いえ、大丈夫ですわ。ちゃんと授業は受けていますし、ナギサ様の心配するようなことはありませんので」
休職中とはいえ、ティーパーティーを除名されるわけにはいきませんので。
セイア様との最後の繋がりですから。
「そういうことではないのですが……」
どういうことなのでしょうか?
それにしても、すぐに本題に入らないとは、ナギサ様らしくもないですわね。
「ナギサ様はお暇ではないでしょうし、そろそろ本題をどうぞ」
「っ……そうですね」
なぜそうも悲しそうな顔をしているのでしょうか?
理解できませんわ。
それからナギサ様は、いつものようにお茶を飲まれると、話し始めましたわ。
「ふう。単刀直入に聞きます。襲撃されたという話をヒフミさんから聞きましたが、本当に心当たりはないのですか?」
やはり、そのことですか。
セイア様の敵である、そう伝えるのは簡単ですわ。
でも、それはできませんわ。
これは、わたくしの、わたくしだけの復讐ですの。
誰にも邪魔させません。
「ええ、ありませんわ。心当たりが多すぎますもの」
ナギサ様だって、わたくしの昔の異名、そして最近の評判も知っているでしょう?
「それは、そうなのですが。でも、私は心配なのです。何かお力になれませんか?」
心配してくださっている?わたくしのことを?
常に監視をつけているのに?
そんなことはありえない……とは言い切れませんが。
「いいえ、大丈夫ですナギサ様。自分の身は自分で守れます」
新しい力だって手に入れた、武器だってたくさん用意した。
1人でも、全てを焼き尽くすまでは戦えますわ。
「ですがっ!」
「本当はエデン条約のことで手いっぱいなのでしょう?わたくしのことはお気になさらず、ナギサ様のなすべきことを、ナギサ様にしかできないことをおやりくださいまし」
そういうと、ナギサ様も引き下がってくださりましたわ。
さて、用件は以上のようなのでそろそろお暇いたしましょう。
この後はセリナさんに菓子折りに向かう予定ですし。
「用件は以上でしょうか?であれば、そろそろ失礼させていただきますわ」
「あっはい。そうですね、今日はお開きといたしましょう。私もやらなければならないことがたくさんありますし」
ナギサ様にお礼を述べて退室し、武装を受け取ると救護騎士団のもとへ向かいましたわ。
「サマナさん……」
取り付く島もない、とはこのようなことをいうのですね。
口調はいつものように丁寧でしたが、拒絶の意思を感じました。
大切な友人の付き人であり、そして私のかわいいかわいい後輩……。
襲われて怪我をしたと聞き、心配だったのです。
まあ、私の、"私たち"の大切な人を傷つけた報いを受けさせるために、事情を聴きたかったという面もあるのですが。
やはり、少し寂しいですね。
信頼してもらえていないのでしょうか?
せっかく昨日夜なべして作ったロールケーキも食べてくれませんでしたし。
今回お茶にブレンドしたラベンダーの花言葉は、『あなたを待っています』。
セイアさんのことを忘れろとは言いませんし、そんなことは私にもできませんが、それでもかつてのような笑顔をまた見せて欲しいという気持ちを込めました。
直接言葉にできればよかったのですが、立場上そういったことはできないのが恨めしいです。
いいえ、詭弁ですね。
誰も聞いていないこの場であれば、可能でしょうに。
そうですね、私は怖いんです。
サマナさんに、セイアさんのことで恨み言をぶつけられるのが。
トリニティ内部で起きたということは、生徒会長の一人である私にもセイアさんのことに責任の一端がありますからね。
そして、何よりも恐ろしいのは、私がサマナさんが実は裏切者である可能性を捨てきれないことを見抜かれ、糾弾されてしまうことです。
あの子はとても聡い子ですから。
ティーパーティーはセイアさんが懇意にしているだけで入れるような組織ではありません。
そういったものも要素としてはありますが、知識や政治的手腕など実力というものも相応に求められます。
まあ、ミカさんのような例外もあるにはあるのですが。
理屈でも、感情でも、サマナさんは裏切者ではないとわかっていますわ。
でも、ほんの、ほんの僅かに生まれてしまった疑心が私に待ったをかけています。
もしも、裏切者であった場合のリスクを考えてしまうのです。
信じてあげたい……でもそれはできない。
そんな矛盾した私に嫌気がさしてきますね。
本当は、辛いです、苦しいです、疑うのはもう疲れました。
でも、そんなこと、誰にも言えません。
セイアさんのような予知夢も、ミカさんのような圧倒的武力もない私に、唯一残された政治という戦場。
ここは、ここだけは、譲れません。
絶対に勝利して見せます。
それにしても、次狙われるとすれば、代理ホストの私だと思っていたのですが。
読みが外れたのでしょうか?
それとも、サマナさんの言うように無関係だった?
サマナさんにもっと護衛を……いえ、現実的ではありませんね。
余裕もありませんし、何より政治的に隙を見せることになる。
どちらにせよ、エデン条約の締結を急がなければなりませんね。
私がいなくなったとしても、ミカさんを、そしてサマナさんを守るために。
そうです、たとえ私の命に代えても。
ナギちゃんは心優しいので、政治とか暗躍とか向いてないような気がします。
でもできてしまった、そして何よりもやらなければいけなかったというのが、エデン条約編の疑心暗鬼にとらわれたナギちゃんだったのではないかと思います。
まあ、今作でも順調にそのルートを進んでいますし、悪化しているような気がするんですがね!()
そういえば前回のあとがきにも追記したんですけど、ホシノやばすぎませんか……?
インフレさせた自覚結構あったんですけど、クイックブーストもどきとかビームシールド展開したくらいじゃマジで勝てるビジョンが見えないですね。
もう一切の自重をやめて、エクバシリーズくらい無茶苦茶な動きさせちゃおうかしらって思ってしまいました。
描写しきれるかわかりませんけどw
あ、あと多分本人が消したコメントに言及するのもあれなんですが、サマナちゃんが乙骨みたいってのが来てました。呪術廻戦を懐玉・玉折編までしか見れてないので、どんな能力か知らなかったんですけど、調べたら確かに似てるというか割とそのまんまだわ!ってなりましたね。
覚醒するところは若干、五条先生の天上天下唯我独尊のところを思い浮かべながら書いたんですけど、これは予想外でした。
コメントしてくれた人がまだ見てくれてるかわからないですが、特に気にしてないので消さなくて大丈夫ですよ!
追記
トラル大陸まで旅に出るのでしばらく更新できないです。
ごめんなさい。