「暑ちぃ・・・」
モノレールの駅に降りると車内との温度差で余計に暑く感じる。毎年言っている事だが去年より暑くなってる気がする・・・まぁいいか。その内涼しくなる。駅を出て学園の方へ歩き出す。
夏休み中はいろいろあったな・・・補習、特別訓練、機体の修理と改修、それに伴う動作テストとデータ収集、モルゲンレーテ社での訓練に勉強・・・あっという間に最終日だよ。勿論楽しい事もあったけどね。本当にあっという間だったなぁ・・・IS学園に来る以前の連休中は結構自堕落的だった気がする。毎日夜更かしして昼間で寝て家でダラダラして・・・振り返ってみるとあの日々はある意味で"平和"だったなぁ。今だからこそ愛おしく感じるのかもしれない。もう戻る事は出来ないなら前に進もう。幸い"希望"はある・・・だが、それが"依存"や押しつけにならないように気を付けなきゃな・・・考え事をしながら歩いていたら学園が見えて来たな。
「ん?」
学園の門の前に篠ノ之達が居た。全員なんだか表情が暗いような・・・てか怒ってね?・・・嫌な予感がするな。迂回して裏から入ろうかなっと思ったが目が合っているしそれは流石に失礼だよな。このまま行こう。死にはしない。一応挨拶くらいはしておくか
「よう、お出かけかい?熱中症と車には気を付けろよ」
よし、これでいい。人としての礼儀は果たした。さぁて部屋でゆっくり休むかな。そのまま行こうとしたら・・・
「待て」
篠ノ之に呼び止められた。やっぱりダメだったか・・・
「なんだよ?」
「この状況を見てどう思う?」
どう思うかだって・・・大方察するが確証がない。聞いてみるか
「答える前にちょっと聞きたいんだが」
「なんだ?」
「誰かを待っているのか?」
「そうだ」
「その待っている奴から誘われたのか?」
「ええ、そうですわ」
「全員同じ奴か?」
「そうよ」
「行くのはプールとかか?」
「うん、そうだよ」
「お互いが誘われている事は―――」
「知らなかったぞ」
篠ノ之、オルコット、凰、デュノア、ボーデヴィッヒの順に聞いたが流石にこれは酷いな。まったく・・・こいつらも自分だけを誘ったと思っていたんだろうな。
「そうだな・・・誰の事とはとは言わないがあいつは殴られてもいいと思うよ」
「「「「「チッ・・・」」」」」
五人から舌打ちが聞こえた。あーあ、怒らせたな・・・知らねぇぞ。
「おーい、皆。待たせたなぁ!」
話ているうちに織斑が来た。面倒だから見つかる前に行きたかったのになぁ・・・
「あれ?秋月。帰って来たのか」
「よう」
「お前夏休み中に何やってたんだよ?一緒に遊ぼうって言ったのに一度も来なかったじゃないか」
「ああ・・・」
なんか怒ってるみたいだが約束をしたつもりはない。
「用事があったんだよ。終業式の日にも言ったはずだが」
「でも一日も遊べる日がないなんておかしいだろ」
「いろいろあったんだよ」
「いろいろってなんだよ?」
「それは言えん。それに俺は都合が良ければ連絡すると言ったがだけで具体的な約束はしていないだろ。話聞いてたか?」
「なんだよそれ・・・」
夏休みに入ってからメールやLINEで遊びに誘って来たが"忙しい"とか"用事がある"とかで全部断った。だって面倒だし関わったらロクな事にならん。
「じゃあさ、俺達これから今年オープンしたアミューズメントプールに行くんだけどさ―――」
「そうか。熱中症と車には気を付けろよ。後は貴重品の管理もな。それじゃ楽しんで来い」
織斑が言い終わる前にこちらの言葉を被せる。何を言おうとしているかは分かるから早く立ち去った方がいいな。
「ちょっと待てよ!」
「なんだよ・・・」
「だから―――」
「ああ、お土産か?そんなん気にしなくていいから楽しんで来いよ。またな」
「そうじゃなくて!秋月も一緒に行こうぜって言ってんだよ!」
「なんで?」
「なんでって・・・折角の夏休みだし皆で行った方が楽しいだろ」
やっぱりこうなったか。だから遭わないようにしていたんだがなぁ・・・タイミングが悪かったか。だがこのまま流されるつもりはない。
「悪いが俺は行かない」
「なんでだよ?」
「やる事があるからだ」
「やる事ってなんだよ?」
「それはお前には関係ないだろ。じゃあな」
暑いからこれ以上は付き合い切れん。早く涼しい部屋に帰ろう・・・立ち去ろうとしたら
「まあまあ、いいじゃない」
「そうだよ。折角だからさ」
凰とデュノアが俺を両側から腕を掴んできた。なんのつもりだ?
「どうせアンタ誰とも遊ばなかったんでしょ?」
「皆で一緒に行こうよ」
失礼だな・・・確かに忙しかったけど俺だって布仏さんと映画を観に行ったり花火大会には行ったぞ。あ・・・変な事はしてないぞ。ホントダヨ。
「ご心配なく。それなりに楽しんだから満足しているんでね。だから俺は―――」
ギュッ
俺の腕を掴む力が強くなってちょっと痛い。
「なんだよ?」
「いいからアンタも来なさいよ・・・」
「秋月君、ここは折れて。お願いだよ・・・」
二人は小声で言って来たがなんか怪しいな。
「秋月、いい機会だから一緒に行こう」
「そうですわ」
「うむ。同じ専用機持ち同士、親睦を深めようじゃないか」
なんか篠ノ之とオルコットとボーデヴィッヒが便乗して来たような・・・あっ分かったぞ。こいつら織斑の望みを叶えてポイント稼ぎする気だな。流石の連携力だな・・・だが冗談ではない。貢ぎ物になってたまるか。
「一夏。コイツを連行するわよ」
「いいのか?」
「一緒に行けた方が良いでしょ」
「おう、そうだな―――」
「悪いがそうは行かない」
「なんでよ?」
「俺まだ宿題が終わっていないんだよ」
「はぁ?アンタ今日が最終日よ!?」
「だから片付けるために―――」
「でもアンタの事だからまったく手を付けてない訳じゃないでしょ」
チッ・・・よく分かったな。確かに凰の言う通りでほとんどやってある。残りは日記くらいで今日の分を書けば終わりなんだが・・・だからといって流される訳には行かない。仕方ない・・・
「全部は終わっていないし織斑先生からの宿題だぞ。出来なかったらお前らに邪魔されたって言うからな」
「「「「「うっ・・・」」」」」
俺の腕を掴む力が弱まったところで抜け出す。さすがに織斑先生の名を出されれば引くよな・・・
「そこまでして行きたくないのかよ・・・」
織斑は不安顔で言うが付き合う必要はない。
「都合が悪いんだから仕方ないだろ。遊ぶのはやる事をやってからだ」
「でも・・・」
納得いかないのかまだ食い下がってくる。
「俺のことはいいからさ"お友達"と一緒に行けよ。時間がなくなるぞ」
「分かったよ・・・」
織斑達はモノレールの駅へ向かったが少し意地が悪かったかもしれないな。まぁいいか。取り合えずやっと解放されたな。やれやれ・・・
明日から二学期が始まる。授業も本格的に難しくなってくるだろうし行事も多いから忙しくなるだろうなぁ・・・無事に乗り切れることを祈ろう。今はそれでいい。