便利屋チェイテと愉快な仲間たち   作:鮪薙

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No.192『あっちこっち文化祭Session2』

 レイミィ・バートリーはここからどうするかと本気で悩んでいた。ライブを終え、お化け屋敷を体験し今こうしてサポート科で楽しんでいる壊理、だがここで終わらせるのも勿体無いというものがある。

 

 そもそも雄英高校の敷地で行われる文化祭を一日で全部周るのはほぼ不可能であり、だと言うのにどれも中々に楽しそうな出し物だということでレイミィはうーむと言う声を口から漏らすくらいには悩んでいると

 

「何真剣な目でパンフレット眺めてるのよアンタ」

 

「ん? あぁラブラバ……ラブラバ?」

 

「驚くような要素あったかしら今の会話に」

 

「いや、此処に貴方が居るのが驚いたっただけなんだけどジェントルは?」

 

 いつもなら二人セットなのにと言う疑問をそのままぶつければ、彼女は黙ったまま壊理が居る方向を指差し、見てみれば

 

「わぁ、なにこれ!」

 

「これが私の〝個性〟でね、分かりやすく言うとすれば不可視の柔らかい壁を作り出すことが出来るのさ」

 

「いつの間に……この場合は私が気付かないくらいに考えてたってことかしら」

 

「でしょうね、んでどうしたのよ」

 

 別に隠し立てするようなことじゃないしとレイミィが悩みを話せばラブラバはふぅんと何やら意外だという顔をすることになる。

 

 まさかそんな悩みをこの少女がするとはねと、同時に何を悩む必要があるのだろうかという疑問も湧いて出たので答えるついでで聞いてみることにした。

 

「んなもん、気になったところを見ていけばいいんじゃない? 悩むほどなの?」

 

「悪いわね、私も壊理も祭りは初心者なのよ」

 

「祭り初心者ってなに……あ、あぁ、そういうことね、うん」

 

 レイミィからの言葉に反射的に反論をしようとして即座にそう言えばそうよねと微妙な表情になるラブラバ。だが同時に納得はするのだがそれはそれで悲しい話よねと若干遠い目をしたくなるという心情もある。

 

(ま、今更なことなんだけど)

 

「とすれば適当に周るのが吉ってことかしらね。うーん、それはそれで悩ましい話になるんだけど」

 

「なんか気になるものとか無かったわけ? ほら、祭りの手伝いはやったことあるんだからその時に目に入ってたとか」

 

「気になったって言うとそうね、射的とか? 丁度パンフレットにも載ってるし」

 

「ならそれで良いんじゃない、後は適当に歩いてれば壊理ちゃんとかが気になるのを言ってくるでしょうよ」

 

 ぶっきらぼうとしか思えないアドバイスだがレイミィにしてみればなるほどとなる、要はラブラバはたかが祭りに深く考えすぎなんだよお前はとこう言いたいのだろうと。

 

 ともすればパンフレットを片手に悩むというのは時間の無駄かもしれない。そう思いつつ壊理を見れば丁度、目線が合わさりそれからレイミィは軽く微笑んでから

 

「壊理、そろそろ他の所も適当に見に行きましょうか」

 

「うん!」

 

「おや、行ってしまうんだね。くけけ、その娘の反応も中々見てて楽しかったんだけど」

 

「むむ、もう少し体験してもらいたい物もあったのですが……」

 

「悪いわね、パワーローダー先生に発目、折角の祭りだものここだけで終わらせるのは勿体無いでしょ?」

 

「それもそうだね、楽しんでくると良い」

 

どうやら長くない時間で壊理は全員に気に入られてたらしいのがよく分かる反応にレイミィはこの娘はある種の才能があるのかもと思いつつ、改めてラブラバの方を向いて

 

「んじゃ、行ってくる。あ、それとアドバイス助かったわ」

 

「あれは別にアドバイスでも無いと思うんだけど……まぁいいわ、受け取っとくわよ」

 

 大袈裟なんだからと呆れながらラヴラバは去っていく二人の背中を見送る。こうして始まることになる二人の文化祭巡りではあるのだがスタートした当の本人らはと言えば

 

「むむっ、あっ……あぁ」

 

「あ~、残念! でもまだチャンスはあるし段々と上手くなってるから次行ってみよう!」

 

「これ中々難しいわね」

 

 現在地は二年普通科の出し物コーナー、そこではThe縁日と言う感じの出店が並んでおり二人はその中の一つである風船釣りにて楽しんでいた。

 

 事の始まりは単純に風船釣りを見た壊理が気になると言いレイミィも見たことあるけどやったこと無いわねこれとなり、更にそこの店主役の生徒曰くここの普通科は全部が便利屋にお世話になっていたということで会話が弾みというのが流れだったりする。

 

 なお、二人が風船釣りを始めて既に数分経っていたりするくらいにはハマっていたりする、曰く難しいけどそれが楽しいらしい。

 

「だよね~、私も子供の時に何度かやったことあるんだけど見た目簡単そうでやってみると全然釣れなくてさぁ。もう一度やるんだって駄々捏ねちゃったりしたよ」

 

「子供ってムキになると延々と挑戦するわよね、祭りの出店やってるときにも見たことあるわそういうの」

 

「うんうん、ところでバートリーちゃん、それ何度目の挑戦?」

 

「……12回目」

 

 おかしい私はここまで不器用じゃないはずなんだけどと呟きながら13回目に挑戦するレイミィの側には積み重なった百円玉、これには店主の女子生徒も風船釣りで連コンする構えの人は流石に初めて見たなぁと笑うしかない。

 

 けれどその姿を見ても不思議と悪い印象になったりはせず、寧ろ便利屋の所長と言う肩書があってもこうしてみると普通の女の子だったりするんだなと言う所謂ギャップみたいなものを感じて微笑ましくも思ってしまうとは彼女の感想だ。

 

「(まぁそれはそれとして)にしても意外だなぁ、バートリーちゃんってこういうのは難なくやれちゃうイメージだったんだけど」

 

「私としてもそのつもりだったんだけどねって、あっ、くっそ……ふぅ、一旦落ち着きましょう」

 

「あ、釣れた!」

 

「お、やるじゃん、お姉ちゃんよりも妹ちゃんのほうが上手だったねぇ」

 

 5度目のチャレンジにて成功させた壊理を褒めた言葉、だがそれがレイミィ・バートリーと言う負けず嫌い吸血姫の逆鱗に触れたのは言うまでもないだろう。

 

 煽りか? 良いぞ、そっちがそのつもりなら私はこの挑戦で成功させてやるからなお前、そう言わんばかりに14回目の釣り糸に集中する。いいか、もう次はないぞお前と己に言い聞かせながら水風船を釣ろうとするその姿に店主は思わず

 

「……お姉ちゃん、面白い人だね」

 

「頑張れ、お姉ちゃん!」

 

「あ、うん、お姉ちゃんっ子って良いよね」

 

 店主、なんだかツッコむのも野暮かなと色々と放棄、まぁ楽しんでるし実を言えばこの通りは割りと暇だったので悪くないしというのもあったりする。

 

 そう、暇なのだここは。全く人が来ないというわけではないのだがやはり他と比べるとただの縁日という事で言ってしまえば地味であり、他の科のような賑わいはほとんど無い。

 

 だがこのままでいいというわけではないしそのつもりはないというのが雄英の生徒だろう、店主の彼女は風船釣りに集中している二人にスマホを取り出しながら

 

「ところでさ、SNSでこの光景を宣伝して良い? 集客に協力して欲しいなって」

 

「……ん? 別に好きにしていいわ、まぁ壊理が良いって言えばだけど」

 

「写真を取るの?」

 

「一枚だけ、ね。駄目かなぁ?」

 

 反応的にもしかして写真とか嫌いなのかなと不安になるも少しの間を置いて壊理は大丈夫だと頷いた。

 

 と言うよりもレイミィと一緒なら問題ないというのが彼女の気持ちだろう、ともかく許可を貰えたのならばと丁度、壊理が二個目の水風船を釣り上げたタイミングを撮影し、それを一言付けてSNSに投稿。

 

 なお、笑顔の壊理の隣には釣り上げるタイミングを未だに見極めようとしている真剣な表情のレイミィが写っており、SNSに流れたということは何気なく眺めていた雄英生徒達、もっと正確に言えばA組女子の一人である芦戸の目に止まったというのも必然の流れだったのかもしれない。

 

「ん? ねぇ、これってレミィじゃね?」

 

「え、あ、本当だ。壊理ちゃんも居るから間違いないね、つか何してるの?」

 

「風船釣りと投稿には書かれてますわね。風船釣りとは?」

 

「えっと、風船釣りっていうのは縁日とかである水風船を釣り上げる屋台なんだけど、壊理ちゃんがやってるの?」

 

「壊理ちゃんもだけど、レイミィちゃんもやってるっぽい」

 

 へぇと投稿に添付されている写真を見れば確かにやっている姿を見て意外と楽しむんだと感想を抱こうとしたとき、耳郎は気付いた。

 

 あれ、なんか百円玉が積まれてないかと。しかもどう少なく見積もっても1000円分は見えるなこれと、いやいやまさかと耳郎はその場の全員に聞いてみるが返ってきたのは上鳴の言葉が全てだった。

 

「いや、どう見ても百円玉積んで連コンの構えだろこれ。風船釣りで!?」

 

「なぁもしかしてなんだが、こんだけ積んで一度も取れてないとかありえないか? バートリーの性格考えれば一個でも釣れてれば満足なんだろうし」

 

 瀬呂の言葉にいやまさかそんなと何度目か分からない感情になる耳郎達、だが投稿されている写真に写っているレイミィは物凄く真剣な表情してたし、隣の壊理は満面の笑みだったなと思い出せば。

 

「……バートリー、あんたこれ拡散されたけど良いの?」

 

「絶対にその考えまで行ってないと思うんよ、オイラ」

 

「どう考えても意地で釣ってやるって感じだよなぁこれ」

 

 峰田に正論言われちゃもう駄目だわと口にしたのは誰だったか、そしてそれを聞き峰田自身がオイラの扱いってどうなってんだとなったのは余談なので置いておく。

 

 何より今も数字として現れているその写真の反応の数々に耳郎は思う、これが便利屋の所長だって言っても誰も信じないよとも、それくらいに真剣なのだ、風船釣りに。

 

「あ、また投稿され……あ、うん、釣れたんだ良かったねレミィ」

 

「めっちゃ笑顔やん……」

 

 耳郎がそんな事を思った直後、同じアカウントが別の写真を投稿したのだがそこに写っていたのは輝かしい笑顔のレイミィと拍手している壊理、そこに添えられた一言は〝15回目のトライにて成功!〟

 

「見なさい、取れたわよ! はぁ、ボウズは避けたわね」

 

「やったね、お姉ちゃん!」

 

「いやぁ見事見事、まさか釣り上げるとはねぇ」

 

「本当よ、壊理のよりも遥かに脆い釣り糸で釣れて本当に良かったわ」

 

 刹那、店主の少女の顔があれ、バレてる~と引き攣った。見ればレイミィの表情も笑っているが目は欠片も笑ってないではないか、つまり割りと初めの方でそのことの気付いていたのである。

 

 気付いた上で彼女はやってやろうじゃねぇかと意地になって今に至る。どうしよう、少女は後ろにいるクラスメイトに目線を送るも返ってきたのはだから止めれば良かったのにと言う無慈悲な一言。

 

「あ、あはは、ごめんなさい」

 

「別に怒っちゃいないわよ、そもそも分かって乗ったのは私だし。寧ろ楽しかったわよ」

 

「でもどうしよう、3つも手に持てないよ?」

 

「……考えてなかったわ」

 

 意地になりすぎてその後を考えてなかったレイミィ。さてどうするかと考えた時、救世主と言えるかはさておき久し振りな声が彼女の耳に入ることになった。

 

「あ、本当に居た」

 

「本当に風船釣りやってたのかよ、姉ちゃん」

 

「む?」

 

 声の方を向けば居たのはとマンダレイと出水洸汰、二人を見てレイミィはポンッと手を叩いた。




こう、関わったキャラがちょいちょい出てくるとなんか終盤って感じがしますよね(するだけ)

便利屋メモ
風船釣りに使ったのは1500円なり
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