異能解放軍、レイミィたちの今回の敵であり赤霧達も潜伏に利用している組織。その詳細は前回でも少し触れたが敵連合や死穢八斎會、便利屋が今まで相対しては潰してきた組織とは比べ物にならないほどの巨大組織。
かく言うレイミィも公安から話こそ聞いたことがあったが当時は特にぶつかることもなければ、依頼で名前が出てくることもなかったということで積極的に探ろうとはしなかった。
なので明確に敵として相手取るということになり長らく埃が被っていたホークスとの機密通話なども使って一日で可能な限り情報を集めてみたのだが出てきた言葉は……
「分かっちゃいたけど、マジでデカいわね此処」
「表面を完璧に被ったうえで裏でシンパを増やし続けた連中だ、今までの相手とは文字通り格が違うな」
「ホント、私が血から記憶が読み取れなきゃどう手を出したものか悩み続けることになってたわね」
反則としか言いようがない手札を持ってたから楽々と情報収集が出来たが、もしコレがなかったと考えたレイミィはうげぇっという表情を晒す。
どうやっても尻尾を掴みきれない状況にしかならない、はっきり言って厄介な敵でしか無いと思いつつタラレバ話はコレ以上は止めておくかと思考を切り上げる。
「ま、私たちには何も関係ないってのは本当に助かる話よね」
「全く持って酷い話だとは思うがな。にしてもデトネラット社の社長が頭か、分かってたとしても手を出せないのが難しいな」
「大企業の代表取締役社長っていう肩書持ちとなると記憶から証拠を集めても速攻でとならないのよねぇ……しかも私らが何回かやってるから向こうだって知ってるでしょうし」
下手な詰め方をしても逃げられるだけに留まらず、逆に便利屋が追い込まれる危険性もある。だからこそ本来であれば時間を掛けたくなるのだが今回はそうも行かない。
ならばどうするか、答えは前回の根津との会話が全て。相手は企業じゃなく組織、ならば末端から一気に抉っていくしかなく、その手始めとして彼女たちが目を付けたのは。
「にしてもまさかプロヒーローにも異能解放軍の手先が混ざっているとはな……【スライディン・ゴー】か、市街地中心で活動しているヒーロー、俺自身もそこまでの情報しか集めてなかったが……」
「裏じゃ、デトネラットが闇市に流したサポートアイテムの回収と処理を任されてるわ。とりあえず、そこから攻めていくのが良いかもって思ったんだけど」
「回収と処理などと重要なことを任されてるんだ、ヤツ自身も情報はそれなりに持ってるだろう」
仮にそこまで情報を持ってなかったとしても獅子身中の虫を放って置く理由もないという訳であり、二人がフル装備でこの場に居る理由でもある。
さて、此処で二人が今居る所を説明すると彼らは路地裏にて会話してるので万が一誰かに見られたりすれば血染が通報されること待ったなしであり、ふとレイミィがそんなことを呟けば
「唐突に何を馬鹿なことを……」
「思い付いただけよ、さてとそろそろスライディン・ゴーが来るかしらね」
「コイツが持ってたサポートアイテムを回収となれば、そろそろだろうな。俺は配置につく、気をつけろよバートリー」
「はいはい、分かってるわよ」
無論、油断などするつもりはないが正直な所を言えば問題ないだろうとレイミィは思っている。なんたって相手は自分たちを何も気づいていないと思い込んでいるから、赤霧が話していなければ誰も思わないだろう血から記憶を読み取れるなんてとんでも話は。
数分後、路地裏に一人の男と勿体振る必要もないだろうか、スライディン・ゴーが現れる。彼は直ぐに目的の品を探すために路地裏に踏み込み周囲を探るがそこで気付く
(ない……?)
だが発信機の反応は此処なのは間違いない。だと言うのにどういうことだと警戒していると丁度、影になってた箇所からフッと一人の少女ことレイミィが現れ彼女は手にサポートアイテムを持ちながら
「お探しものはこれかしら、スライディン・ゴー?」
「むむ? おぉそれだともって君は……便利屋の所長さんだったかな?」
現れた彼女に言葉を交わすスライディン・ゴーだったがそこで何故、
だが深くは考えず、あり得るとすれば仕事終わりというところだろうかと結論付けそれよりもと彼はレイミィが手に持っているのを指差し告げる、それをこちらに渡してもらえないかと。
言ったその内容は誰が聞いても違和感も何もない言葉。ヒーローとして証拠品を回収するということ以上の意味合いはないだろうと誰もが渡すだろう、だがそれを聞いたレイミィは笑った、まるでおかしなことを聞いたと言わんばかりの反応にスライディン・ゴーは怪訝な表情に変えて。
「ふむ、笑われる理由が見つからないのだが?」
「ごめんなさい、あまりにも予想通りな言葉過ぎて笑っちゃっただけよ」
模範解答にしても問題ないくらいに当然すぎる言葉を聞いて笑ってしまっただけだと。だがその返事にスライディン・ゴーは違和感というべきようなものを覚える、そもそもにして自分が行っているのはプロヒーローとして当たり前のことだ。
しかし彼女の言葉だと自分がそれを行うのが可笑しいと言っているようではないか、故に警戒を強めた。そしてそれがレイミィに記憶に間違いはなかったと確信させる行動だった。
「これ、デトラネットの最新鋭サポートアイテムよね? 闇市に流れるにしてもちょっとおかしいわよね?」
サポートアイテムを手で遊びながら告げる。質問口調ではあるが声としては確認に近い、ともすれば自分の立場は既にバレていると見るべきかもしれないとスライディン・ゴーは思考を巡らせる。
なにもバレないと思い込んだことはない、寧ろいずれは必ずバレるとすら考えていた。同時にバレた相手が便利屋の彼女だということには安堵を覚えてもいた。
ヒーローではなくグレーの便利屋、彼女たちならば異能解放軍の信念を理解しこちらに引き込めるかもしれないと。しかし焦ってそれを口にしてはいけない、もしかしたらバレておらずカマをかけられているだけかもしれないのだから。
「……はぁ、止めましょう意味がないわ」
「っとと、急な態度の変わりようだね」
「私もそう思ってるわ、それでこれを回収してどう廃棄するつもりだったのか聞いていいかしら〝解放戦士〟さん?」
やはりバレていたかと口に出てしまったがスライディン・ゴーはそれをしまったと思うことはない。寧ろ予想通りであり落ち着いたまま、彼はレイミィに向け
「君相手に誤魔化しても無駄だろう、私は確かに異能解放軍の解放戦士さ。それで君たちに提案をしたい」
「提案、ねぇ。いいわ、聞くだけ聞いてあげる」
「ありがたい。異能解放軍について君のことだから知ってると思う、そしてその行動意義も」
知ってるか知らないかで言えばレイミィも知っている、端的に言えば〝個性〟こと異能の自由行使は当然の権利という内容。スライディン・ゴーとしては便利屋も同じではないかと続けてから
「君たちの能力は我々としても評価に値するし、リーダーも認めてくれるだろうさ」
「……長い話は嫌いよ」
「おっとすまない、では単刀直入に。我々の同士とならないか、便利屋チェイテ」
正直に言えばその誘い文句が出てくることはレイミィは薄々勘付いていた、と言うか今まで来なかったのが不思議なくらいだとすら思っている。
自分たちの活動を考えれば異能解放軍としても無視はできないだろうし、などと考えつつも自分たち便利屋はリスクを考えてあまり派手に動いてなかったので無理もないかとも思う。
と言うか、これ多分スライディン・ゴーの独断だろうとすら彼女は思っておりだからだろうか、無意識の内にため息を吐き出していた。
「そうね、ま、貴方が私たちをどう見てるかはよく分かったし異能解放軍もこの手の情報収集できる遊撃部隊みたいなのは居ないってところなのかしら」
「居ないわけではないがね、だが多いほうが助かるのは確かな話だ」
「それはそう。で、私からの答えだけど、寝言は……」
「寝て言え、ヒーロー崩れ」
「っ!?」
スライディン・ゴーが血染の声に気付くが時既に遅し、スタンロッドに近い電撃と共に彼の意識は闇へと沈むことになり身体は抵抗もなく地面に沈む。
それを成した血染は彼を軽蔑するかのような目で睨む、そんな副所長を怖い顔してるわよと思いながらレイミィは血から記憶を読み取り、そして告げる。
「思ったよりも情報の質は良くないわね、まぁ許容範囲内ではあるんだけど」
「予定変更か? それともコイツを泳がすか?」
「いえ、当初の計画でいいわ。良くないって言ってもさっきも言ったけど許容範囲内だし、これを利用すればそうね」
3日か4日もあれば異能解放軍をそれなり以上には崩せるんじゃないかしら。気負うこと無く告げられた言葉通り、3日後、異能解放軍は人材、物資、資金の面で加速的に窮地に陥れられ、指揮系統にすらダメージを貰い始めることになる。
異能解放軍解体RTAはっじまっるよー(最速とは言ってない