スライディン・ゴーが極秘裏に捕縛されてから3日後の夕方。レイミィは午前の授業が終わると同時に居なくなりまだ帰ってきてないがもうクラスメイトからすれば慣れた光景であり、男子組が暇つぶしにとテレビを付けたのだが。
「ん? なんかどこも特番じゃね?」
「緊急速報だってさ、なになに? えっと、デトネラット社が自社の最新鋭サポートアイテムを意図的に闇市に流出……!?」
「え、しかもアイテムを一部のヒーローが回収して破棄って、おいおいおい」
「大スキャンダルじゃん、ってまだ他にもニュースあるみたいだよ」
テレビの雰囲気を感じるにどうやら昨日今日辺りに入ったニュースらしく読み上げているキャスターにも若干の動揺を隠しきれていない。
と言うか、クラスメイトも驚きを隠せなかったりしている。それほどまでにデトネラット社は有名だし、まさかそんなことをしているとは思わなかったというのが本音だ。
けれど彼らの驚きはまだ続くことになる、耳郎が言ったように続けて速報がとキャスターが告げてから
「大手IT企業『Feel Good Inc.』が顧客情報を企業幹部が不当に横流しが発覚、曰く取締役からの指示だったと」
「『集瑛社』の上層部が売上金の一部を脱税が発覚、またそれらは反社組織に横流しって、なんかここ数日で急に湧いて出たみたいな事件ばっかじゃね?」
何処も有名どころから出てきた不祥事としか言えない事件の速報に切島がそんなことを呟く。まるで証拠が急に湧いて出て、それを元に警察などが動き出したみたいだと。
そこまで考えて、ある可能性が彼らの脳裏を過った。と言うかこれしか考えられないとも言えた、そういや急にレイミィが忙しくなりだしたのってここ最近だったということを。
「こんにちわ~ってうわぁい、もうニュースになってますよ」
「あ、渡我さん。あのこれってもしかして……」
玄関が開かれ入ってきたのはレイミィと血染以外の便利屋の面々、どうやら仕事を終えたあとのようでニュースの内容を見ればなるほどなるほどと圧紘が頷く。
因みに壊理もリカバリーガールのところでの勉強を終えて一緒に戻ってきている、ここ最近ではレイミィが居ない日が多くなっており言葉にはしてないが若干寂しいなとか思ってたり、まぁ今は置いておく。
「今回はマスコミも早かったね、まぁとくに隠してないから当然と言えば当然なんけど」
「寧ろそのつもりですしって事です」
言葉にせずとも今ので伝わり、あぁやっぱりという空気になるし、それを感じ燈矢は一言。
「信頼されてんなぁ、所長ちゃん」
「信頼、でいいんだろうかこの反応」
多分、そういうのじゃない、明らかにこうなにか別ベクトルのものを感じる仁だったが彼自身も似たようなものをレイミィに感じているのでそれ以上は口にしなかった。
ともかく犯人というべきか、今回の騒動の大本は彼らも理解できたが次に浮かんだのは攻め方というべきだろうか、瀬呂がふとそんなことを呟いた。
「にしてもバートリーならあれじゃね、犯人を一気に詰められると思うんだが、どのニュースも罪状はハッキリしてんのに主犯に関しては大雑把っていうかこれから更に調査しますって感じなんだ?」
考えがないとは思ってないが意図が読み切れないという感じの瀬呂に爆豪が答える。どうせ、デカい組織を相手してるんだろうからいきなり大将狙いじゃ逃げられるだろと。
「それにあのコウモリ女のことだ、どうせ今テレビに流れてる連中は本命じゃねぇだろ」
「って言うと?」
「はぁ、ありゃ囮だってことだ分かりやがれ」
だとしたら本命は? となるが便利屋としてはかなりの精度でレイミィの動きを理解している爆豪に驚きと感心していたのだが、そこでニュースを見てみた八百万と天哉が声を漏らす。
言うなれば想定外と言うべきだろうか、或いはまさかこの人がと言うのが正しいかもしれない。そして便利屋の面々もテロップを見てから被身子が一言。
「あれですよ、将を射んと欲すれば……えっと」
「先ず馬を射よ、じゃなかった被身子お姉ちゃん」
「そうそれです、賢いですね壊理ちゃん!」
「即座に出て来なかった被身子になんて言うべきなんだろうな、と言うかあってるのかそれ?」
厳密に言えば違うかもしれないがまぁ大体合ってるんじゃないとは便利屋の誰の言葉だったか、そんな事はさておき彼らが驚いた内容というのはとある人物の任意同行。
事は少し時間を遡ることになる。場面はとある事務所、何時も通り職員たちが働いている最中、玄関が突如開かれそこから現れた複数人のスーツの集団に場は騒然となる。
「あ、あの、突然……」
「こちら心求党党首『花畑 孔腔』さんの事務所でよろしいですね?」
「え、あ、は、はいそうで……」
「では皆さん、これより何も触れないで下さい。書類からパソコンまで全てです」
「一体何の騒ぎですか?」
有無も言わさぬ勢いで押し入ってきた集団に職員が動揺してる最中、一人の男性が声とともに現れる。等と書いたがこの場面で出てくるのは一人しか居ないだろう、この事務所の主であり【心求党】の党首である『花畑 孔腔』である。
どういうつもりなのだと言葉にしなくても分かる表情で押し入ってきた彼らを睨むが、集団の先頭に立っている女性は怯むこと無く一歩前に出てから一枚の書類を出しながら淡々と告げる、彼にとって衝撃的な言葉を。
「花畑孔腔、貴方に政治資金横領等の容疑で任意同行をお願いします。また事務所の家宅捜査も令状が出ていますので」
「政治資金横領……? 一体何の証拠が……」
その言葉を待っていたとばかりに女性はスマホを取り出し動画を流す、そこに映っていたのは彼と何人かが集まって密談しているという様子、そこの会話内容は確かに横領を決定付ける内容でしか無かった。
また顔もはっきりと写っており言い逃れも難しいという代物、これを見て花畑の表情にはっきりと焦りが浮かび上がる。
「こ、これは、いや、何かの間違いではないでしょうか?」
「ボイスレコーダーにもはっきりと音声が残っていますが?」
手元の機器から流されるさらなる証拠に事務所内が騒然としていく、まさかそんなという職員の言葉が聴こえるがボイスレコーダーから流れている党首の声が彼らの言葉を否定する。
対し花畑は状況を把握し損ねていた。いや、出来てはいるが理解が追いつかないが正しいかもしれないがどちらでも大差はないだろう。
どちらにせよ、自身が追い詰められていることにはかわりないのだから。寧ろどうして今のタイミングにと言う混乱すらしている、だがそこは今日まで党首として政界を生きてきた経験だろうか、即座に冷静を取り戻してから咳払いを一つし
「皆さん落ち着いて下さい、これから彼らと話をして事態を確認しますので」
「は、はい」
このまま事務所で事を進められれば、築いてきたものが全て崩れると判断した花畑。ならば、彼らの任意同行に付き添い向こうで話をし状況を把握するべきだと考え職員たちにはそう伝え、女性に同行しますと応える。
場を離れさえすれば後はどうとでもなると花畑は思ったのだろう。普通であれば間違いとは言わない選択だ、しかし相手が悪いとしか言えなかった。
「さて、一体どういうつもりなのか聞かせてもらえますか?」
車に乗ったと同時に花畑が告げるが穏やかな声と表情で隠しているが内心では苛立っている。あの動画の出処は何処なのか、これがもし出任せや合成映像ならばと言う圧を込めたいのを堪えているというのが本心である。
だがそれも助手席に座った女性が彼の質問に答える時には消えている感情である。彼女が振り向こうとした時、花畑は紅いコウモリが顔を横切ったのに気付いた。
「どうもこうもないわ、だって全部分かってことだもの」
助手席から顔を覗かせた彼女の姿は先程までの女性ではなく一人の少女、いや、花畑は彼女を知っていた。異能解放軍でもここ最近は度々警戒するようにという話が出てきたのだから知らないはずがない。
「便利屋……!?」
しまったと思うが今から逃げられるはずもなく、女性に劣化変身で姿を変えていたレイミィの目が妖しく紅く光る姿が花畑の最後に見た光景だった。
時間を戻し、このような形で異能解放軍の幹部及びリーダーが捕縛、或いは身動きが取れなくなりしかも解放戦士たちもまた築いてきた立場や信頼が瓦解していく最中、与えられた拠点でテレビを見ていた死柄木が一言。
「詰んでね、これ」
「……」
「どうりで外が騒がしいわけね」
「つか、俺達の立場的にヤバくないっすか?」
「我々は動いていないので問題ないでしょう」
「いや、問題しかないだろ。どうすんだよこれ、便利屋に好き勝手に動かれた結果じゃねぇか」
赤霧組、緊急会議が開かれることになったのは言うまでもないだろう。
バレなきゃ犯罪じゃないんですよのバレなきゃを無理やり表に出してくる連中、それが便利屋