東方探偵目録 ー第1章・現実異変編ー   作:りんごジュース

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当分はプロローグが続きます。
現実サイドの主人公は蓮次達で、幻想郷サイドの主人公は紫と霊夢の予定です。



プロローグⅡ 少女の夢は始まりの鐘

 

 

 

『あなた達を……信じて待ってるから……』

 

『……けんな……ざけんなよおおおおおおおっ!!』

 

『…ィー……行かないでえええええっ!!』

 

少女は懐かしい夢を見ていた。

これが自分の夢だという事も昔の記憶だという事も理解している。

だが妙な気分だった。これは遠い遠い昔の記憶。もう自分でもかすかにしか覚えていない親友達との記憶。それでも……この夢はとても鮮明にその記憶を掘り起こしていた。

やがて少女の意識はその夢から離れていく。目を覚ますのか……久々に気持ちのいい朝を迎えられそうだ、と思いながら少女は目を覚ます。 

 

 

「りさま……紫様!!」

 

「んっ……んん……」

 

「もう朝ですよ!!冬眠の時期はとっくに過ぎたんですから早く起きてください!!」

 

「……藍?」

 

目の前には大量のモフモフとした尻尾。 

少女は九尾の式神である八雲藍の姿をみて夢から覚めた事を自覚した。 

 

「そっか……まあ夢でしょうね……自覚もしてたんだし」

 

「紫様?」

 

「ちょっと、昔の事を夢で思い出したの。あんなに鮮明に思い出すなんて……どういう事なんでしょうね……」

 

「昔の事ですか?」

 

「思い出したといってもある一部分のシーンだけなんだけどね、なんだかちょっと気分がいいわ」

 

そう言い放つと八雲紫は立ち上がった。

そして目の前に手をかざすとそこには異様な空間が広がった。

彼女の能力『境界を操る程度の能力』で作ったスキマ空間である。これを使い彼女は現実世界に行って物資を運んだり、幻想郷内を移動する事ができるのだ。

 

「……やっぱりおかしいですか?」

 

「えぇ……スキマ空間に歪みが生じているとでも言った所かしら……やっぱりまだあっちの世界にも行けない見たいね」

 

数日前からだ、彼女のスキマ空間に異常が発生したのは。

最初は思うようにスキマを別の場所へ繋ぐ事が出来ないレベルだったのだが、今では現実世界に行く事ができず幻想郷内を移動する事も難しいようだ。

それどころかスキマを目の前に作り出す事ですら難儀になってきたらしい。

 

「この感じだと、誰かが意図的に私のスキマに……というより能力に介入してきているみたいね。良い度胸してるわ」

 

「でも一体どういう事なんでしょうね……紫様のスキマにちょっかい出来そうなのって幻想郷には居ないと思いますけど?」

 

「そもそも私の能力に介入するなんて普通じゃありえない事よ?この能力は私だけの者だしスキマ空間だって私の許可が無い限り出入りは出来ないはず…」

 

蘭と紫が頭を悩ませていると、ふと紫は思い出したかのように顔を明るくした。

 

「そういえば確か……」

 

「紫様?」

 

紫は不安定なスキマ空間に手を突っ込み、しばらく何かを探すように物を掻き分けた。

―――――しばらくすると。

 

「……あっ!! あったあったわ!!」

 

「何を見つけたんですか紫様?」

 

「今日昔の事を思い出したって言ったでしょう?これはその思い出した記憶と何か関係がある物なんだけれど……」

 

「えっと……なんですかコレは?」

 

「私の大切な人が使っていた……それだけは覚えているわ……もうどんな人だったのか思い出せないけれどもね」

 

「紫様の過去って……一体どれくらい昔の……」

 

紫は『それ』を大事そうに両手で抱えた。

どれほど昔の事なのかも思い出せない過去……それでも心に訴えるものがある。

――――――そしてその光景を珍しそうにシャッターに収めている鴉天狗の姿が見えるのも時間の問題だった。

 

「……んっ?さっきからそこで嗅ぎまわっているのは誰だ!!橙っ!!」

 

「はい、藍さま!!」

 

「あっあやや!?」

 

外から写真を撮っていた射命丸文はいきなり自分の後ろに現れた橙によってあっさりと捕まってしまった。

部屋に連れて来られると射命丸は身動きが取れないように三人に囲まれてしまう。

 

「それで……あなたはどこからどこまでを盗み聞きしていたのかしら?」

 

「嫌ですね~私は盗み聞きなんてしてませんよ~!!ただ紫さんが何を持っているのか気になっただけですって!!」

 

「……本当ですかね藍さま?」

 

「私にも判断しがたいな……」

 

2人の式神がため息混じりに黙ってしまった。

紫は少し考えた後、何かを閃いたように顔を上げると射命丸にある提案をする。

 

「いっそ貴女をスキマで地霊殿の主の所まで連れて行ってもいいのよ?あそこの主は性格悪いし心は読めるし最悪だと思うけど?」

 

「嫌ですね~!! 紫さんはそれが出来ないから困ってたんじゃないですか~!!」

 

「ここまで盛大に引っ掛かるとわざとやっているように見えるわね」

 

最初から全部聞かれていたみたいね、と紫は悟った。

そして恐らく今自分の言葉にわざと引っ掛かったのはもっと情報が欲しいからであろうという事も読み取れた。

 

「……分かっていると思うけど私の能力が不安定になったという事は新聞に載せないようにね?あなたなら理由は言わなくても分かるだろうけど」

 

「分かってますって!!……問題はどうしてこのような事態になったかですね」

 

天狗の目は営業スマイルの笑顔から真剣な目にシフトした。

 

「この世界には貴女に匹敵するほどの……ましてや能力に介入するような神や妖怪が居るとはあまり考えられません。となると……」

 

「えぇ……おそらく外の世界で妖怪か何者かが私の力に介入しているわ。まるで暗示しているかのように昔の夢も見たのだし」

 

「でもだとしたらどうするのですか紫様?スキマが使えないなら現実世界に行って解決する事が出来ないんじゃ……」

 

「博麗神社……あそこなら一応行き来は可能なはずよ。ただちょっと条件が難しいだけでね」

 

「なら早速霊夢に会いに行きましょう!!一刻も早くこの問題を解決しないと幻想郷が大変な事になります!!」

 

「なら私が一足先に行ってきますよ!! 博麗の巫女とは仲がいいですし、それに一応私は幻想郷で最速ですから!!」

 

「そうね、それじゃあ貴女は先に行って霊夢に事情を……」

 

射命丸がその場を立ち上がり、紫が話している途中だった。

――――――異変というのは突然訪れる。いや、誰も想像が出来ないタイミングからこそ異変なのかもしれないが。 

 

ジッジ……ジジッ……

 

「……えっ?」

 

出した後放っておいたスキマ空間から聞こえた確かな歪な音。

まるで電撃と電撃がお互いを反発しあっているかのような音。

それは普段のスキマなら絶対に鳴るわけが無い音。 

 

ジッジ……ジイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイィィィィィッ!!

 

そしてその音はショートしたかのように鳴り響き、スキマ空間から青白い雷光が生まれる。

まるでスキマの中に吸い込むように風のような磁力のような力が働いて紫たちは吸い込まれそうになってしまう。

 

「なっなに!?」

 

「くっ……紫様!!橙!!」

 

「藍さま~!!紫さま~!!」

 

「あやややややや!?一体何なんですかこれえええええ!?」

 

4人はスキマに吸い込まれないようにその場で何かにしがみつく事ぐらいしか出来なかった。

その中、スキマと真正面の位置に居た紫はそのスキマの状態をを見てあることに気がついた。

 

「っ!? ……まさか……この感じは外の世界に繋がっているの!?」

 

紫がスキマから感じたのは、普段自分が外の世界に行く時に感じるスキマの感覚だった。

紫は確信した。自分の能力に干渉しているのは外の世界の者だということを。

 

「紫さん!! 今外の世界に繋がっているとか言ってませんでしたか!?」

 

「えぇ!! 今このスキマは確かに外の世界に繋がっているわ!!そして恐らくこの異変の原因も外の世界に居るはずよ!!」

 

そこまで言って紫はある事を思いついた。そして不幸にもそれを察するように射命丸もある事が思いついてしまった。

 

「……ねえ射命丸、貴女に1つお願いがあるのだけど?」

 

「出来れば私が思いついたことじゃありませんように……」

 

「貴女試しにこの中に吸い込まれてみない? それで運良く外の世界に行けたら異変の元凶を見つけ出してて叩きのめして欲しいのだけど?」

 

「ですよねー!! この状況でお願いがあるとしたらそれくらいしかないですよねー!!」

 

射命丸は予想通りの提案にからげんき状態だった。

だが、ここでいきなり紫の声のトーンが変わる。

 

「……もしかしたら外の世界にいける可能性は今しかないかもしれないの。となるとこの中であっちの世界に行っても一番情報収集できそうなのは貴女以外には居ないのよ!!」

 

「今しか可能性が無いって……一体どういうことですか!?」

 

「よく分からないけど……私の能力の主導権みたいなものを持っていかれたような感覚がして……」

 

そう、このスキマの謎の現象が起こってから紫には謎の感覚があった。

今まで使ってきたスキマの感覚が無くなっていく感じ……今までの出来事から言ってこれは気のせいではないと紫は確信していた。

 

 

「はあ……こうなっては仕方ありませんね……どうやらこれは幻想郷の危々みたいですし、そうすることがこの状況では一番の最善策のようですから」

 

 

射命丸は覚悟を決めて力を抜く。

そしてそのままスキマの吸い込みに逆らうことなく飛んでいった。

 

 

「任せたわよ……私にちょっかいを出した愚か者にガツンとお願いね!!」

 

「はいはい分かってますって!! ……ちゃんと迎えに来てくださいよ?」

 

 

射命丸は最後に信頼の笑みを紫に向けて吸い込まれていった。

それを見て少し緊張がゆるんだせいか、紫は先ほどまで両手で抱えていた『思い出の品』を手放してしまった。

 

 

「あっしまっ……」

 

「えっ……はいぃっ!?」

 

そしてそれは必然的に今現在吸い込まれている射命丸の所まで飛んでいく。

スキマの入り口付近でいきなり後方から謎の物体が飛んできた時射命丸は、あっこれは多分紫さんが私に向けて投げた物だ!!っと勝手に自己解釈してキャッチした。

 

「これが何なのか分かりませんけど確かに受け取りましたよ紫さーん!!」

 

「ちょっそれは違う……っ!!」

 

ジジジッ……ジッ……ジュウゥゥン……

 

紫が言い終わる前にスキマは不快な音をたてながら一瞬にして消えてしまった。

部屋にはまるで嫌がらせの様に先ほどとは真逆の静寂が広がった。

 

「だっ大丈夫ですか……紫様?」

 

「えぇ無事よ……でも問題は……」

 

紫は早速いつものように手をかざす。

だがそこにスキマが生まれることは無かった。先ほどまで考えていた最悪の展開にただ呆然とするしかない。

だがすぐに我を取り戻して今しなければいけないことを導き出す。それが八雲紫という最上位の妖怪なのだ。

 

「……博麗神社にいくわよ。私の力が消えた事で幻想郷の結界に支障が出るかもしれないわ」

 

「えっ!?では本当に力が……」

 

「えぇ……あの時射命丸を送ったのが吉と出たわね。あっちの事は彼女に任せて私達は幻想郷に異変が起きてないか調べるわよ」

 

「はっはい紫様!!」

 

力を失った妖怪と2人の式神は博麗神社へと出発する。

いまだ類を見ない異変の手がかりを見つけるために。

 

そして、射命丸は混沌と満ちた現実世界へと足を踏み入れる事となった。

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