東方探偵目録 ー第1章・現実異変編ー   作:りんごジュース

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Ⅲ 信じることから始めよう

 

事務所に入って俺達はとりあえず接客用のソファに座った。 

射命丸は入った瞬間やけにキョロキョロしていたが探偵事務所に来た事がないのだろう。 

俺はとりあえず先ほどの移動中で質問したかった事を聞き始める。 

 

 

「えっとさ……早速で悪いんだけど射命丸がこっちの世界に来たって言う目的を教えてくれない?」

 

「そうですね、先ほども言いましたが幻想郷には人、妖怪、妖精などこちらの世界ではおそらく考えられない存在が生活しています」

 

「ああ、言ってたな」

 

「その中で幻想郷最強にして最高権力者1人と言ってもいい妖怪の能力がこちら側の人間によって使用できなくなった……あるいは盗まれた可能性があるのです」

 

「最高権力者って……因みにその妖怪の能力ってのは何なの?」

 

「‘境界を操る程度の能力’と呼ばれています。その能力で幻想郷は出来たんです」

 

「境界を操る?いまいちどんな事ができるのか想像できないな」

 

「あらゆる境界を操れるんですよ。例えば……あなたと私の距離の境界、生と死の境界、年齢の境界、そして何より……」

 

「何より?」

 

「‘こちらの世界と幻想郷の境界’を操る事もできます。その力で彼女自身はこちらの世界に頻繁に来ていたのですよ」

 

「なっ……何のために?」

 

「多分聞かない方が良いですよ。話を戻しますと、彼女の力が無くなるということは幻想郷にとってその世界の存在を揺るがすほどの大問題なのですよ!!」

 

「なるほど……するとお前はその調査の為にその妖怪の力を使ってこっちの世界に来たのか?」

 

「はい、私がこちらの世界に来る時には場所や世界を移動する時に使う‘スキマ’と呼ばれるものがおかしくなっていたのですでに能力を使えなくなった可能性が高いです」

 

 

なるほど、確かにコイツの言っている事はちゃんとしている。 

それに本当だとしたら妖怪や妖精の存在が認められる事になる。 

……だが、証拠が無い以上まだ信じられない。結局はここまで全部妄想というのも十分ありえるのだから。 

 

 

「……あれ?そういえばお前は何であのビルの中から出てきたんだ?少し離れた場所に居たから正確には聞こえてないけど、あそこに居た警官の話だと確か……」

 

 

『柳さん!!はい、先ほどビルを捜索したときは確かに誰も居なかったのですが先ほど中から……』

 

 

「とか言ってたよな……警察が捜査を手抜きするとは考えられないし、お前がどこかに隠れていたのか?」

 

「隠れるも何も私はこの世界来て外に出た瞬間あの人たちに囲まれたんですよ!?本当失礼な話だと思いませんか!?」

 

「あの時にこっちに来たって事か!?……因みにあそこで起きた殺人事件かもしれない事件ってお前と関係してるのか?」

 

「殺人って……この世界だと人間が人間を当たり前のように殺すんですか!?」

 

「あっ当たり前なわけ無いだろ!!でもその反応だとお前はあそこで人が死んでいた事すら知らないのか……」

 

 

焦るな、落ち着いて考察に集中するんだ。

あの時の警官の言葉と射命丸の言っている事は矛盾して無い。警察官達がビルの中を調べ終わった後射命丸が境界を操る程度の能力とやらで来たのならいきなり現れるのも納得できる。

それに、ここに来るまでの経緯でコイツは一回も矛盾した事を言っていない。これがコイツの演技だとしたらバレる危険を冒して探偵事務所まで来るのもおかしい……

 

 

「……分かった。射命丸の話を俺は信じてみるよ」

 

「えっ……信じてくれるんですか!?」

 

「一応な一応!!納得できる理由と証拠もあったし、これで全部お前の演技ならハリウッド狙えるってぞってぐらい本気で話してたしさ。ただの大学生だから何も出来ないかもしれないけど協力はするよ!!」

 

「あっ……ありがとうございます蓮次さん!!私の話を信じてくれる人が居るだけでも心強いです!!」

 

「おやっさんも何か知ってる感じだったし……とりあえず帰ってきたら話を聞くとして、折角だからそれまで俺に幻想郷の事を教えてくれよ」

 

「そうですね、では最初に……」

 

 

 

 

 

―――――――3時間後。

 

 

「へ~……じゃあ幻想郷にはこっちの世界で忘れられたものが流れ着くのか」

 

「そうですね、ですから幻想郷とこちらの世界はかなり複雑な関係に置かれてるんですよ」

 

 

この3時間で俺は射命丸に幻想郷の事を出来る限り教えてもらった。

無闇に殺し合いが起きないようにする戦闘ルールと攻撃方法‘弾幕勝負’のこと。

幻想郷に流れ着く物の法則や博霊の巫女と呼ばれる人のこと。

妖怪と人が共存してるのに平和すぎて暇でちょくちょく異変というものが発生する事。そして……今回の異変はシャレになっていない事。 

 

 

「言ってもその弾幕っていうのも攻撃手段の1つなんだろ?当たり所が悪かったら死んだりするのか?」

 

「まあ殺す気で撃った弾幕に当たればもちろん……今まで誰かが死んだというのは聞いてませんけどね!!ただ、妖怪や神が死ぬ事は絶対無いです」

 

「ん?何で?」

 

「妖怪や神が消えるのは‘その存在が別の事柄によって証明されてしまったとき’のみ。要するにその神様の信仰とかが無くなってしまう時ですね」

 

「へぇ……結構難しいんだな……」

 

「まあそうなった方々を受け入れるのが幻想郷と呼ばれる場所なんですけどね!!」

 

「なるほどねー……あっ悪い、電話だ」

 

「でんわ……はたてが使ってる物とはちょっと違うようすが……」

 

 

射命丸は不思議そうに俺のケータイをみている。あの反応だと思い当たるふしがあるのだろうか?。

電話の相手は……柳さん?あっちから俺に掛けてくるなんて珍しいな。

 

 

「はい、もしもし?」

 

「蓮次か、俺だ」

 

「珍しいですね、柳さんから電話してくるなんて」

 

「急用なんでな、今俺はお前の事務所に向かっている所なんだが先ほどの少女にすぐに事務所を出られるよう準備をするように言っておいてくれないか?」

 

「事務所を出る?おやっさんがここに連れて来いって言ってたんですよ?」

 

「事情が変わった。とにかくすぐに出られる準備をさせといてくれ!!」

 

「分かりました、俺も準備しときます!!」

 

「いや、志木神さんはお前を連れてこないようにと言っていた。だから蓮次、お前を連れて行く気は無い」

 

「えっ……何でですか!?」

 

「これはお前が思っているより危険な事件なんだ、志木神さんはお前を巻き込みたくないと思っている」

 

「……その危険な事件に俺は駄目で初対面の女性は連れて行くんですか?」

 

「蓮次……志木神さんはお前の為を思って!!」

 

「分かってる!!……分かってますから、射命丸には出る準備をさせます」

 

「ああ……よろしく頼む」

 

 

榊さんは電話を切った。 

俺はやりきれない気持ちで一杯だった。今回ばっかりは俺も関わっていると思っていたのに……結局はまだ俺は足手まといなんだ。クソッ!! 

 

 

「ちっ……クソ……」

 

「えっと……大丈夫ですか蓮次さん?見た所誰かと話しているように見えましたが……」

 

「あぁ、これは遠くの人と話せる機会だよ。それでさっき射命丸を助けてくれた人から連絡が来たよ、お前は出る準備をしろって」

 

「えっと……蓮次さんは?」

 

「俺は足手まといだから来るなってさ……結局また誰の役に立つことも出来ない」

 

「蓮次さん……」

 

「幻想郷の事ちゃんとおやっさんに説明しろよ?俺よりも何か有力な事を教えてくれるし、あの人に任せればそっちの世界の大事件とやらもすぐに解決するさ!!」

 

「……私は蓮次さんに聞いてもらえて凄く安心したし助かりました!!だからその……」

 

「なっなんだよいきなり?」

 

「あまり自分を悲観視しないでください。きっと志木神さんだって心配だからあなたを外しているだけでしょうし……」

 

 

……まさか初対面の女の子に慰められるとはな。

まったく情けねえ……せめて俺に出来る事をしよう、おそらくこいつ会うのはここが最後。

短い時間だったけどすごく貴重な話を聞かせてもらえたんだ、笑顔で送り出してやらないとな!!

 

 

「分かってるよ……ほら、もう外で柳さんの車が止まってるぞ!!車って分かるか?」

 

「先ほどここに来る途中で何個も見ましたから……それではお元気で……」

 

「そんな顔するなって!!俺はお前と会えてよかったよ、早くあっちの世界に帰れると良いな!!」

 

「蓮次さん……ええ!!色々とお世話になりました!!」

 

 

射命丸はそう言って俺に一礼し、玄関から飛び出して言ってしまった。

そして、外に居た柳さんが射命丸をリードして車に乗せて、俺に電話を掛けてきたようだ。

 

 

「……もしもし」

 

「彼女を預かってくれてありがとう蓮次。おかげで彼女の顔を少し明るいようだ」

 

「それは何よりですね」

 

「それと、本題なのだが……「蓮次君はもう今日家からでないで、今日はオッサンの帰りは遅くなりそうだけど心配しないでね!!」と志木神さんからの伝言だ」

 

「伝言?何で直接電話をしないんですか?それに家から出るなって……一体どういう!!」

 

「とりあえず伝えたぞ?それじゃあ急いでるから俺はそろそろ行かせてもらう、じゃあな」

 

「あぁ、ちょっと!!」

 

 

柳さんは一方的に電話を切ってしまった。 

そして同時に外に居た車は走り出す。俺を置いて。

 

 

「くそ……なにがどうなってんだ……こんなモヤモヤした状況で俺はじっとしてなきゃいけないのかよ!?」

 

 

いや違う……今までなら言われたとおり例えどんなに遅くてもおやっさんを家で待っていただろう。

でも今回は違う。というか心ではすでに決まっている。もうこの事件に少し関わっている。なら俺にも捜査をする権利ぐらいはあるはずだ!! 

 

 

「よし……準備が出来たら出発だ」

 

 

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