東方探偵目録 ー第1章・現実異変編ー   作:りんごジュース

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Ⅳ 殺す理由と奴の影

 

 

「蓮次とは何を話してたんだ?」

 

「私の世界の事を……まあ、あなたに言っても信じてもらえるかは分かりませんが」

 

「仕事上俺なら他の奴より君の事を信じると思うぞ?……ちなみに蓮次は何て言ってたんだ?」

 

「色々説明したら信じてくれましたよ。最初はずっと変な奴でも見てるような目をしてましたけど……」

 

「そうか……変に首を突っ込まなければ良いが……」

 

 

―――――車内の空気が気まずい。

私、射命丸文はこの榊という人の車という物に乗って移動中です。

詳しく話をしたいと言った志木神という人が私を連れてくるようにこの榊さんを使いにだしたらしい。

……何でわざわざ場所を変える必要があるのでしょうか?考えられるとしたら蓮次さんには聞かれたくない……とかですかね? 

 

 

「あっそう言えば君が持っていたあの銃みたいな奴は志木神さんに預けてあるからね?やけに気になってたみたいだけど……なんなんだあれは?」

 

「あれは私がこちらに来る時に渡された物です。何に使うかは私にも分かりませんがちゃんと返してくださいね?」

 

「分かってるさ。ほら、もうちょっとで着くぞ」

 

 

そう言って柳さんは車を止めた。辿り着いたのは先ほどまで私たちが居たビルという建物だった。

何でまたここに?先ほど見た人達はもう居なくなっているみたいですが……外ももう暗いですしね。

私達は車を降りるとビルの方へと歩いた。すると、ビルのある道の手前辺りに志木神さんが立っていた。

 

 

「連れてきましたよ志木神さん!!蓮次にはちゃんと家から出ないよう言っておきましたし」

 

「ありがとう榊、もう知っていると思うが俺の名前は志木神俊哉だ。君の目線から言わせて貰えばこちらの世界の怪奇事件を解決するために探偵をしている」

 

「えっ……はっはい!!私は射命丸文と申します!!その……雰囲気が全然違いますね……」

 

「ん?何がだ?」

 

「蓮次さんが居た時とはまるで別人すぎて……もっと物腰の柔らかい方だと思っていたのでつい……」

 

「まあ変に思うだろうが気にするな、俺なりの区別であり決別でもあるんだよ」

 

 

目の前に居る人は本当にあの時話しかけてきた人物と同じ人間なのだろうかと疑ってしまうほどですね…… 

まるで別人、今だと殺気や戦いの風格を纏っているように見えてしまいます。二人称も‘お嬢さん’から‘君’になってるし。 

 

 

「早速だが君には聞きたいことが山ほどある……だが時間があまり無いから手短に済ますぞ?」

 

「はっはい!!」

 

「まず1つ、君は確か幻想郷と呼ばれている場所から来ている場所から来たと言っていたね?そこがどう言う世界なのかを教えてくれないか?」

 

「えっと幻想郷はですね……」

 

 

私は先ほど蓮次さんに説明した事を手短に再び説明した。

同じ事を何回も言わなきゃいけないのは正直気が引けますがしかたありません。 

私が一通り説明すると志木神さんは納得したように次の質問をしてきた。

 

 

「うん……分かった。じゃあ次の質問、君がこちらの世界に来た目的は?」

 

「先ほど言った幻想郷の最高権力者で幻想郷を作った1人と言われる人の力がこちら側の何者かに妨害を喰らっているからです。その場に偶然居た私は仕方なく……仕方なくこちらの世界の調査に来たんですよ!!」

 

「やけに‘仕方なく’を連呼するんだな……でも志木神さん、これはもしかして本当に……」

 

「あぁ……因みにこの銃はその最高権力者とやらから受け取ったのか?」

 

「えぇ、‘境界を操る程度の能力’を持っている八雲紫という妖怪から受け取りました」

 

 

私がそう言うと志木神さんは少し驚いた顔をして少し考え初めてしまった。

何か気になる事でもあったのでしょうか?しばらくするといきなり顔を上げて……

 

 

「これは何かの偶然か何かなのか……?まあ、今では分からない事だがな……」

 

「志木神さん?」

 

「あぁすまない。それじゃ最後の質問、今までも何度かこう言う事は起こっていたのか?」

 

「いえ……もしかしたらこんなケースは幻想郷が出来てから初かもしれません……」

 

「よし、とりあえず君の事情は大体は分かった。まだ確定的では無いがその幻想郷の異変を解決できるかもしれない」

 

「ほっ本当ですか!?」

 

「あぁ、俺が長年追っていた人物こそが君たちの世界に妨害を加えている人物である可能性が高い……だが……」

 

 

そこまで言うと志木神さんは言葉を詰まらせてしまった。 

そして苦い顔をしながら再び同じ質問を私に聞いてくる。 

 

 

「もう一度聞くが今までこちらの世界から妨害を受けるということは無かったんだよな?」

 

「はい、間違いないです!!私はこれでも新聞屋をやっているんで!!」

 

「なら……もしかしたらすでにアイツは‘力を安定させた’可能性があるな……」

 

「力を安定?」

 

「君に話すと少し長くなってしまうからね……とにかく今は多少危険でもその俺が追っていたそいつを殺す事ができれば万事解決しそうだな」

 

「殺すって……本気ですか志木神さん?蓮次の事だってあるのにそんな事を……」

 

「分かってるさ、でも俺の人生はアイツを始末する事が一番大事なんだ……大丈夫、蓮次君も充分成長してくれたよ」

 

 

そういう志木神さんの目は一瞬だけ蓮次さんに向けていた優しい目になっていた。

そして一回目を瞑りしばらくして再び目を開けると、そこには覚悟を決めた先ほどまでの志木神さんが立っていた。 

 

 

「君にも1つ言っておかなくちゃいけない事がある。これから先は命に関わる、だから無理について来いとは言わない。だがおそらくその八雲という妖怪から能力を奪った人物がここに居る。確かめたいのなら着いてくるほうが良いと思うが……」

 

「前置きが長いですよ志木神さん、私はこの目で今回の異変の原因を見てこの手で懲らしめると約束したのですから行きますよ!!それに、危険と戦いには慣れていますしね!!」

 

「そうか……ならそろそろ行こう。おそらくこの時間なら奴に合えるはずだ」

 

「えっ……でもここは今日私が倒れていたビルですよね?確か中はちゃんと調べたって……」

 

「俺は今から会う奴の目的を知っている。そしてその為には君が先ほど言っていた、‘境界を操る程度の能力’というのがどうしても必要になってくるんだよ」

 

「はぁ……だから紫さんから能力を盗んだという事ですか?」

 

「そうだろうな。そしてその力を使えばこんな事が出来るんじゃないか?……、‘今自分がいるビルの境界を操って現実の世界と少し切り離す’という事が。これと似た能力を良く知っているから分かるんだ」

 

「でっでは!!」

 

「そうだな、ここで不自然な死に方をしていたのはおそらく奴に殺されたんだろう。そしてその事が警察にバレないように一時だけビルと現実世界の境界を切り離したんだ。そして奴はおそらくここから逃げるためにその切り離した境界を戻すはずだ」

 

「それが今から……という訳ですか?」

 

「警察が居なくなって人通りが少なくなる夜しかチャンスは無いはずだ。そこを狙って奴を殺す」

 

「あの……失礼ですけど先ほどから志木神さんが言っているこの異変の元凶の、‘奴’とか、‘アイツ’とか呼ばれている人は志木神さんとは一体どのような関係なのですか?ずっと追っていたと言ってましたけど……」

 

 

私がそう聞くと、志木神さんは一度俯き静かに怒りを込めた顔で私にその人物の名前を教えてくれた。

……これから何回も聞く事になるであろうその名前を。

 

 

「……奴の名前は、‘不知火(シラヌイ) 神士(シンシ)’。この世界で最も殺さなければならない男の名だ」

 

 

 

 





次の話は事務所に残された蓮次サイドに移ります。
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