東方探偵目録 ー第1章・現実異変編ー   作:りんごジュース

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Ⅴ 心理少女は過ぎ去り行く

「おやっさん達はIT時代を舐めすぎなんだよなぁ……」

 

 

すでに柳さんの車が事務所から出発してから30分は経とうとしていたが、俺は何も焦ってはいなかった。

最新型の携帯電話のタッチパネルに写っているのは東朝日市近辺のマップ画面。そして目的地の矢印が立っているのはおやっさんの携帯がある場所だ。

 

 

「あの年輩者に無理言って携帯持たせておいて良かったよ全く……この機能が着いているのは内緒だけど仕方ないさ……」

 

 

なにせこの機能の名目上の目的は‘迷子になった年寄りを見つける’という物だからだ。

いくら次世代機器におやっさんが疎いからってこんな機能着けたなんて聞いたらどんな顔をする事やら。

蓮次くんおっさんまだ40代だよ!?いくらなんでも老人用は酷いんじゃないの!?……なんて言ってな。

 

 

「しかし射命丸が言ってた事が本当なら、おやっさん達はその最高権力者から力を盗んだ奴に会いに行くはずだよな……危険はないと思うけど……」

 

 

あのすっ呆けているおやっさんがいつも妖怪とか神なんかが関わってる事件に直接首を突っ込んで殺し合いをしているなんて考えられんしな。

許せても幽霊とかが起こしている悪戯レベルの怪奇事件ぐらいまでだ。

というか、俺っておやっさんが普段どんな事をしてるのか全く知らないな……怪奇事件ってそもそもなんだよ?

 

 

「うわ、何を今さら感が半端ないこと考えてんだよ俺!!とにかく今はおやっさん達の所まで行かないと!!場所は……って……はい?」

 

 

パネルが指し示しているのは今朝おやっさん達が捜査をしていて、射命丸が気がついたら居たと言っていたあのビルだった。

もう夜遅いのになんでわざわざあの場所に居るんだ? 

 

 

「ここから少しも動かないって事は携帯を車に入れっぱなしだろ……まあでも、とりあえず向かおう!!」

 

 

俺は事務所を出発した。 

昼間に一度行った場所へと夜の道を進んでいく。途中ですれ違うのは帰宅途中のサラリーマン、買い物帰りの主婦、道中の家の中を覗いて見れば家族で食卓を囲んでいる。

そんな日常的で平和な夜の道を進んでいると、先ほどまで話されていた事が急に嘘みたいに思ってしまう。‘境界を操る程度の能力’……程度ってなんだよ程度って。

 

 

「……おっ、柳さんの車発見。やっぱりあのビルの近くに泊めてあったな」

 

 

くだらない事を考えていたらあっと言う間にビルの近くまで着いてしまった。

そしてその対面側には人気の全く無い道では浮いて見えてしまうパトカーが駐車されていた。おそらくあの中におやっさんの携帯が入っているのだろう。

 

 

「しかし夜に来るとこのビル結構不気味だな……人気も全く無いし、これなら妖怪なんかが出てきても納得できる……訳が無いか」

 

 

わざわざこんな場所に来てるんだからビルの中に居るって事だろ。

とりあえず敷地内に入るか……そう思って俺はビルの敷地内に脚を踏み入れた。

 

 

「えっ……なっ……んだ……」

 

 

―――――――何   だ   これ     は?

俺は脚を踏み入れただけのはずだ。なのに何だこの感じ……同じ景色、同じ空気、同じビル、同じ場所……なのに何かがガラッと変わって俺だけが取り残されたかのような孤独感?うまく言葉に出来ない感覚は…… 

 

 

「何も変わってないよな……一瞬変な感覚がした気が……」

 

 

気のせいだろ……いや違う。俺はバカか。気のせいなんかじゃない。今俺が足を踏み入れているのは怪奇事件の一種。

ならどんな事が起きても不思議ではない。現に幻想郷なんてものもあるみたいだしな。

さっきの感覚で何かが起こったはずだ。今段階じゃ何も分からないけどここには何かある気が……

 

 

ボゴオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!

 

 

「っ!?ぐあっ……」

 

――――――――爆音。

それ以外は考えられない、耳が痛い、頭が真っ白に……耳鳴りが…… 

かろうじて上を見上げてみると、ビルの一番上の階の壁が破壊されているのが見えた。 

 

 

「爆……発……一番上の階からか?」

 

 

耳鳴りがやっと治まり現状の把握に余力が出来てきた。

どうやら一番上の階が爆発したらしい……って、は? 

 

 

「……って、爆発だとっ!?うわあぶねっ!?回り瓦礫だらけじゃん!?」

 

 

俺が爆音にひるんでいる間に瓦礫が落ちてきていたらしい。運が悪ければ死んでいたな……

というか何でこんな場所で爆発なんか……中におやっさんが居るとしたら大変な事になっているんじゃ!?

 

 

「どうするどうする!?とりあえず警察と救急車に連絡?入れとくか!?……いやいや落ち着け、こんなに大きな爆音が鳴ったんだから流石に気がつくだろ!!」

 

 

とっとりあえず奇想天外なことに出くわしても落ち着け俺!!

これほどの音を出したんだから救急と警察は連絡しなくても来るはず!!なら俺がやるべき事は上で何があったのかを見に行く事だ……多分。

 

 

「おやっさん達が危ない可能性がある……急ごう!!」

 

 

俺は走ってビルの中に入っていった。

入った時の第一印象は小さな受付ホール。床も壁も見た感じはキレイだ。

射命丸の話ならアイツはここに倒れていて、この自動ドアを通って外に出たら警官に摑まったって事か。

 

 

「どうせエレベーターは使え無さそうだし時間がかかる……どっかに階段があるはず……って探すまでも無かったな」

 

 

エレベーターの隣にはマンションのような大き目の階段があった。

俺はとりあえずエレベーターの方へと行き、このビルが何階建てなのかを確認する。 

 

 

「八階建てか……結構最上階まで長いけど仕方ない!!うらあああああああああああああああ!!」

 

 

階段を全速力で走るなんて何年ぶりかな……高校生の時以来だから大して昔じゃないけど8階まで登るとなると結構疲れそうだな。

まだ4階なのに息が切れてきたし……

 

 

「はぁ……はぁ……まだ四階……このビル一階一階の感覚がやけに広くないか!?」

 

 

一階一階の間隔は確かに広い感じがする。でもそこまで大きなビルのような感じはしなかった気が……

そして俺がちょうど6階辺りに到着した時、暗闇から何者かが俺にぶつかった。

 

 

ドンッ……ドスッ 

 

 

「えっ……きゃ!?」

 

「……いてて……大丈夫か?ってなんでこんな場所に人が居るんだ?」

 

 

俺はちょうど6階の踊り場で人とぶつかったみたいだ。

……というか人とぶつかった?このビルにはおやっさん達以外は居ないはず……

ぶつかった人物を見てみると、そいつは警戒の目をこちらに向けているのが分かる。

 

 

「あなたは……誰?何?」

 

「なっ何って……俺はここに人を探しに来たんだよ。見た感じ君は上から降りてきたみたいだけど君こそ何者なんだ?」

 

「嘘は……ついてないようね。あいつの仲間でも無いみたいだし……」

 

「……はい?」

 

 

そいつは独り言のようにそう言うと急ぎ足で立ち上がった。

立ち上がって分かったのがそいつがかなり小柄な女の子だという事。ピンクとパープルの中間のような髪の色、そして何より目を惹くのが巨大な目のようなアクセサリー。

それは体中に巻きついているようにその目から欠陥のように繋がっている。 

 

 

「……これはアクセサリーじゃないわ」

 

「ん?」

 

「多少失礼な事を考えているようだけど、危険に立ち向かおうとする人の純粋な心をもっているのね」

 

 

おいおいヤバイのに引っ掛かったな。

1人で何か言ってるけどまったく何言ってるのかわからな……

 

 

「やばくて悪かったわね、まああなたに分かってもらおう何て思ってないから安心して」

 

「えっ!?」

 

「私は何故かここに連れてこられてたの。それでここの人間から逃げていたら突然誰かがやって来てその時まで行けなかった道が行けるようになっていた……これで説明は良いかしら?」

 

「おう……ありがとう」

 

「多分あなたの言っていた人って言うのは突然入ってきたさっきの人達の事じゃないかしら?顔は見えなかったから何とも言えないのだけど」

 

 

少女はそう俺に告げると会談の踊り場で俺とすれ違い下の階に小走りで降りていく。

そういえば逃げているとか言っていた気がするし当然だ。だけど何だかさっきから変な感じがする。何か今まで会話で違和感を感じたはずなのに全くそれが何なのか気がつけない。 

 

 

「あなたも気をつけるのよ、邪心を持たない人間にはあまり死んでほしくないわ」

 

「そらどうも……って結局俺の質問には1つも答えないのかよ!!」

 

 

少女は階段を降りていってしまった。こんな時間に事故現場であるこのビルに居るなんて一体何者なんだアイツは?ここに居たって事は何か知ってたかもしれないけど……というかむしろアイツが射名丸が追っていた奴って可能性があるんじゃないか?

 

 

「いやいや、確かに変な奴だったけど逃げてたって言ってたし違うだろ。もしそうならすぐにおやっさん達が追いかけに来るはずだし。今はとりあえず上に……」

 

 

バゴンオオオオオオォォンッ!! 

 

 

「うわっ!!何だこの音……」

 

 

再び耳が再起不能になりそうな轟音。上で何があればこんな音が鳴るのかは謎だが近いのは確かだ。

ひるみそうな足に無理やり力を入れて俺は階段を登る。 

 

「あとちょっとだ……ん?何だあれ?」

 

そして最上階まで着いた俺は目に映った光景に愕然とした。なぜなら階段の踊り場に……

 

 

「待てよ……何で……意味が分からねぇよ!!」

 

 

壁や床が衝撃によって抉れたからか、辺りは塵のようなものが散布していて視界が悪い。

それでも目の前のその人の状態は一目瞭然だった。 

 

 

「榊さん!!おい榊さん!!」

 

 

そこには左手が繋がっていない榊さんが胸から血の海を作りながら倒れていた 

 

 

 

 

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