今回も3000文字になりました
天空の野菜畑、ベシタブルスカイに行ってきたというトリコと小松は、美味い野菜を沢山食べてきたようだ。
ベシタブルスカイのオゾン草も手に入れてきたトリコと小松だったが、オゾン草を取り出すには苦労したと言っていた2人。
詳しく話を聞いてみると、完全に葉が閉じていたオゾン草の葉を、同時に開いていかなければならず、それに失敗して何個もオゾン草を腐らせてしまったらしい。
どうやらトリコのことをあまり受け入れてはいなかったオゾン草という食材。
小松だけだったら簡単に取れていたかもしれないが、1人だけでは取れない食材があるとトリコが知れたのは、悪いことではないのだろう。
それはそれとして、俺の弟である千優の畑が「地上の楽園」と言われていることも知ったトリコと小松は、弟の畑の野菜も食べてみたいと思ったみたいだ。
市場に流れた千優の野菜は直ぐに売り切れてしまう為、センチュリースープの具材として使われた野菜の味は知っていても、直接畑の野菜を食べたことはないトリコと小松。
試しに千優の畑から収穫した野菜をトリコと小松に食べさせてみた。
「サッパリシャクシャクでありながら、どんどん旨味が溢れ出てくる大根だ!たまらねぇ!」
「新鮮で爽快な味わいのきゅうりですね!噛む度に快音が鳴りますよ!」
まずは最初に大根を食べているトリコと、きゅうりを食べていた小松。
「ずっしりと中身が詰まったトマトは、まるでフルーツみたいに甘いぞ!かなりの糖度だ!」
「こっちのトウモロコシも凄く甘いですよトリコさん!それでいてくどさは全くなくてトウモロコシの美味しい甘みが口いっぱいに広がります!」
夢中になって野菜を食べ続けているトリコと小松の2人。
しばらく野菜を食べ続けている2人は、とても旺盛な食欲を持っている。
ありとあらゆる野菜を食べていき、この「地上の楽園」の野菜を味わっていくトリコと小松は、ベシタブルスカイの野菜よりも美味しい野菜に感動していたことは確かだ。
「ああ、美味かった」
「とっても美味しかったですねトリコさん」
様々な野菜を食べ終えたトリコと小松は、腹一杯野菜を食べて満足そうな顔をしていた。
「千優の畑の野菜は、どうだった?」
「めちゃくちゃ美味かったな。ベシタブルスカイの野菜よりも美味い野菜が地上で食べれるとは、流石「地上の楽園」と言われる畑だ」
「物凄く美味しい野菜でしたよ千利さん。弟の千優さんに感謝したいんですが、千優さんご本人は今何処に?」
「千優は料理店に野菜を提供しに行ってるよ。今日はダマラスカレーだったかな」
「世界料理人ランク4位のダマラスカイ13世さんのカレー店じゃないですか!凄い店に野菜を提供しているんですね!」
そんな会話をしていた最中、食べた野菜で腹を膨らませていたトリコと小松の消化が終わり、トイレめがけて走っていった2人。
スッキリした顔で戻ってきたトリコと小松は、顔がツヤツヤしていて、身体中の老廃物が全て出たようだったな。
それから上機嫌で去っていったトリコと小松は「地上の楽園」の野菜を食べることができて満足したらしい。
弟の畑の野菜で食べ頃な野菜を収穫していると現れたのは、見知らぬ男性。
「人間界に、これほどの旨味に満ちた肥沃な土地があるとはな」
そんなことを言っていた男性は両目の目元に傷があり、明らかに俺よりも強い相手ではあったが、何処か寂しそうで、とても腹を空かせているように見えた。
「収穫も終わったんで俺はこれから飯にするが、あんたも一緒に食べないか?」
「何故、私を誘う」
「あんたが腹を空かせているように見えたからだな」
「確かに腹は減っているな」
名前も知らない男性を連れて調理場のある家に行き、手早く料理を開始して用意した食事。
半径1メートルのちゃぶ台の上に、載せていった料理の数々。
炊きたてのご飯、生姜豚のロースの生姜焼き、ストライプサーモンの焼き鮭、畑の野菜をたっぷり入れた味噌汁、きゅうりの浅漬け、羽衣レタスとネオトマトのサラダ。
大層なごちそうという訳ではない、普段通りの料理ではあったが、食べる相手のことを考えながら丁寧に拵えた料理。
「いただきます」
料理を食べる前に両手を合わせた俺の前で、いただきますとは言わなかったが両手を合わせた名前も知らない男性。
箸を手に取り、料理を食べていく男性は、少しずつ噛み締めるように食事をしていて、大切なものを思い出したかのように涙を流しながら料理を食べていく。
何度も何度も咀嚼をして、味わって食事をしている男性は、半径1メートルの食卓から離れることはない。
流す涙を止めることなく食事を続けていた男性の茶碗が空になったところで、ご飯のおかわりをよそった俺は、目の前の相手には腹一杯になるまで食べてもらおうと考えていた。
流していた涙がようやく止まった男性の顔には、穏やかな笑みが浮かんでいて、空になった椀を此方に差し出して「おかわりだ」と言ってくるようになる。
味噌汁とオカズのおかわりも用意して、続けていった男性との食事。
俺が作った食事を食べ終えて、ようやく満たされた顔をしていた男性。
「人間界の食材も侮れんな。料理人の腕にもよるのだろうが」
そう言って笑っていた男性は、グルメ界の食材を食べたことがあるみたいだ。
食後のお茶も出しておき、ちゃぶ台の対面に座っている男性へ「それで、態々畑までやって来たご用件は?」と聞いてみると「人間界に「地上の楽園」があると聞いてな。少し興味があった」と答えた男性の言葉には嘘がなかった。
「そうか、それで「地上の楽園」を見てみてどうだった?」
「人間界にあるとは思えんほどに栄養が溢れた土地だとは感じた」
「まあ、栄養満点な土がある土地だからな」
「人間界で自然にできた土地ではないのだろうが、悪くはない」
「弟の畑が褒められるのは嬉しいもんだ」
「だがその楽園の美しさが霞むほどに、お前の料理は私に大切な思い出の味を、より明確に思い出させた」
穏やかな顔をして僅かに笑んだ男性にとって、その思い出の味は、とても大切な記憶だったのかもしれない。
「大切な思い出の味か、それは忘れられない味だ」
「ああ、初めて食べたあのスープの味は、死んだって忘れないだろう」
「その思い出は、あんたにとって大事な宝物なのかもしれねぇな」
「そうだな、かけがえのない私の宝だ」
そう言い切った男性なら、思い出の味を永遠に忘れることはなさそうだ。
その後、立ち去ろうとしていた男性が「コンビとなる美食屋は居るのか?」と聞いてきたが「居ないな。食材は自分で手に入れてるよ」と答えた俺に「なら、遠慮は要らんな」と笑っていた男性。
「先に予約をしておくとしよう。いずれ私がGODを手に入れた時、それを調理するコンビの料理人が必要なのでな」
「名前も知らない相手はコンビにはできねぇぞ、俺の名前は千利だ」
「三虎、それが私の名だ。また会おう千利」
最後に名前を名乗り、再会を約束して立ち去っていった三虎。
「三虎ね」
美食會のボスがそんな名前だったような気がしたが、偶然の一致なんて訳がないんで、本人なんだろうな。
コンビの予約をされてしまったが、腹を空かせた子どもみたいに見えた三虎が飯を食いたいと言い出したら、また食事を用意してしまうかもしれない。
腹を空かせている相手に料理を用意してやるのが、料理人の役目だと俺は思っている。
まあ、三虎なら今日みたいに満腹になるまで食わせてやれば、素直に帰ってくれそうだ。
本作主人公が用意した食事を食べた三虎は、家族で囲んだ半径1メートルの食卓と、初めてフローゼが食べさせてくれたスープの味を思い出して涙を流しました
大切な思い出の味を思い出させた本作主人公をいずれコンビにしようと三虎は考えたようです
今回は予約だけで帰っていきましたね