ケイエスミラクルがトレセン学園を卒業してから久しぶりにトレーナーにあって、色々と思い悩むお話です。

恋愛要素あります。苦手な方はご注意を。

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おれの名を呼ぶ声を捉えた耳は、ピクリと跳ね、同時に心臓も、跳ね上がった。
最初は、聞こえなかったふりをしようとした。
けれど、横目で見ると、貴方はもう此方に駆けてきていて、おれは、向き合わざるを得なくなったんだ。 



ケイエスミラクルの想い人

 

ある日のこと。昼食を終えた私は、休憩がてらトレセン学園内を散歩していた。

学園の敷地は広いから腹ごなしには丁度良い。

中庭の辺りを歩いていると、目の前に見える渡り廊下を歩く一人のウマ娘が目に止まった。

もうここにはいる筈のない、私の最初の担当ウマ娘、ケイエスミラクルが水色の美しい髪を揺らしながら、歩いていたから。

 

「ミラクル!」

 

私は、そう声をかけながら駆け寄る。

彼女は、記憶にある、あの優しく柔和な笑みを浮かべて此方へと振り返った。

 

「久しぶりだね!」

「お久しぶりです。トレーナーさん」

 

丁寧にお辞儀するミラクルに、私も礼を返す。

 

「それにしても、どうして学園に?」

「今日の午後からあるケガ防止や、リハビリに関する講習、おれのいる病院に依頼が来たんですよ」

「ああ。それでか」

 

言われて、彼女の服装がケーシー型白衣であることに気が付いた。

理学療法士の着ている白衣はケーシー型白衣というらしいと卒業前から勉強していたミラクルから聞いた覚えがある。

 

「ってことは、ミラクルが私の先生になるんだね」

「あれ、トレーナーさんはもう受けたことあるんじゃないですか?」

 

そう、今日の講演は基本的には新人トレーナー向けのものなのだ。

 

「受けたの何年も前だからねえ~。忘れてることとかあるだろうし、重要なことだからね。常に最新の知識を入れておきたいから」

「さすが。トレーナーさんは、変わらないですね」

 

心なしか嬉しそうな彼女に言われ、何だか私も嬉しくなっていた。

 

「ウマ娘の人生預かってるからね。講習、楽しみにしてるよ」

「はい。絶対に良いものにしてみせます」

「ふふっ。ミラクルが自信たっぷりに誇る程か。俄然楽しみね」

「沢山の人が準備してきましたから」

 

ミラクルが自分の関わる何かを誇るなんて随分、自信もついて変わったなと一瞬思ったが、どうやらそこは変わらないままらしい。

他の誰かが協力してたり関わることは決して卑下しないし、自信を持つ。

そんな彼女の性格はやはり、あの頃のままのようだった。

 

「そっか。じゃ、後でね!」

「はい。また後で」

 

丁寧なミラクルのお辞儀に、私もついつい深いお辞儀で返すのだった。

 

そうして、講習の時間となった。

 

「基本的に余程重いケガでない限り、学園に通いながらのリハビリが多くなるかと思います。そうした際に、気を付けるべきことや、ある程度スポーツ医学やリハビリテーションの知識もあるトレーナーの皆さんであれば可能なリハビリについてのお話をさせて頂きます」

 

講堂に集まった新人トレーナーを中心とした参加者を前にしても、ミラクルは緊張した様子もなく、微笑を湛えながら心地の良いスピードで講義を進めていく。

 

「━━また、トレーニングに復帰出来るまでになっても、いきなりケガ前のようなトレーニングは避けるべきです。慣らし運転のようなトレーニングが必要となってきます。しかし、やはりウマ娘本人が焦り等から効果の薄いトレーニングだけでは満足しない場合があります」 

 

実際、彼女の講義、いや、彼女だけでなく、今日の講義はためになるものばかりで、自分の把握していた知識が古びているものもあると知れた。

実りのある講習となるだろう。

ミラクルの見せた自信も頷ける。

だから、大きな満足感を覚えていた。

 

「そうした場合、宥め、落ち着かせるメンタルケアは勿論必要ですが、出来る限り担当の娘に寄り添う選択肢、を今回は提供出来たらなと思います。つまり、身体への負担を最小限に、その中でも可能な限り多くの効果が見込まれるトレーニングについてです。━━私の経験も含め、お話させて頂きますね」

 

自らの胸に手を置き、ニコリとミラクルは微笑んだ。

 

私は、ミラクルが、元気に、楽しそうに、そして立派に多くの人を前にして話す姿が、とても頼もしく見えて、思わず彼女に見惚れてしまっていた。

 

「...?」

 

違和感。

僅かに感じた感覚。

我が子の成長を見て嬉しく感じる、親の様な感覚を感じているのだと思ってた。

でも、それとは別の何かもミラクルの笑みを見た瞬間に感じた気がした。

 

「━━━此方のトレーニング方法ですと、従来の━━」

「あ、やば」

 

話を少し聞き逃してしまっていることに気が付き、私はそれ以上深くは考えず、再び彼女の声に耳を向け、集中するのだった。

 

「よし。後はトレーナー室で学んだ情報の整理だな」

 

講義は終わり、三々五々参加していたトレーナー達も退出していっている中、私もノートを閉じ、立ち上がろうとした時だった。

丁度、講堂の出口辺りにいるミラクルの姿が目に入った。

 

「ミラクル~」

 

手を振ると、彼女も気付いたようで、ニッコリと笑い、手を振り替えしてくれた。

 

「ミラクル。お疲れ様!」

「ありがとうございます。講習、どうでしたか?」

 

小走りで駆け寄ると、ミラクルにそう、感想を尋ねられた。

 

「すっごく参考になったよ!やっぱり古くなってる知識もあったし、聞けて良かった」

「本当ですか?良かった。皆で頑張ったかいがありました」

「それに、ミラクルが皆の前で話してる姿、とってもかっこよかったよ!」

 

私は、感じたことをそのまま、何の気なしに口に出した。

 

「大人びて見えた..ってもう大人だよねミラクルも。ごめんごめん」

 

そう笑いながら彼女の顔を見ると━━。

 

「ミラクル?」

 

薄く明るい青の髪と対照的に彼女は頬を、真っ赤に染めていた。

 

「あ、えーと。ありがとうございます。嬉しいです」 

「そんなに照れること~?」

 

はにかんだ様子のミラクルに、また妙な感覚を覚えた私はそう茶々を入れて誤魔化した。

 

「あはは。急に褒められたから、驚いちゃいました」

「うふふ。ごめんごめん。でも本当に、ああ、ミラクルはもう大人なんだなあって当たり前なんだけど実感したよ」

「トレーナーさんが担当してくれてたの、もう何年も前ですものね」

「そうだねえ..。あ、ミラクルはさ、今日はこの後病院に戻るの?時間あるなら、近況とか色々聞きたいな」

「あ、片付けが終わったら戻る予定なんです。ごめんなさい」

 

申し訳なさそうにミラクルは言う。

こういうところは本当に変わっていない。

 

「いやいやミラクルが謝ることじゃないよ!私が勝手に思ってただけなんだから。━━また今度、お話しようね」

 

私まで謝ってしまったら恐縮の連鎖になることは分かっていたので、提案によって落とし所を作ることとした。

 

だが。

 

「あら。ケイちゃんのトレーナーさん。お久しぶりです」

 

ミラクルの主治医だった先生も来ていたようだ。

 

「お久しぶりです。先生」

「トレーナーさんも受講を?」

「はい。大変良い勉強になりました」

「良かった。ケイちゃんも凄く頑張ってくれましたし、良いものに出来たようで安心しました」 

「ッ..先生..」

 

ミラクルは若干、照れたような声色を出し、おれは全然、と謙遜した。

 

「照れなくても良いのに。...あ、そうだケイちゃん。折角だしトレーナーさんとお話してきたら?」

「え、でも..」

「気にしなくて良いわよ。大した大仕事じゃないんだし。貴方は準備と講習で頑張ってくれたんだから、片付け位裏方に任せなさい」「えと....」

「積もる話もあるでしょう。小一時間位はかかるからゆっくりしてきなさいな」

「━━はい。ありがとうございます」

 

終始、先生のペースで話が進み、ミラクルが頷くのを確認すると、先生は私に挨拶をして去っていくのだった。

 

「無理しなくて良いんだよ?」 

「へ?」

 

私の言葉に、ミラクルは驚いたようだった。

でも。

 

「あんまり乗り気じゃないみたいだったから」

 

ミラクルが他の人達が働いている中で自分だけ休むようなことはしたくないだろうことは分かっている。

しかし、先生の申し出を断ろうとするミラクルの様子は、それだけじゃないように思えたのだ。

 

「無理は、してません」

「そう?」

「本当ですよ。トレーナーさんと話すのが嫌な訳ないじゃないですか」

 

慌てたように首を振るミラクルに何だか焦っているような感じを覚えたが、追及はしないことにする。

 

「じゃ、トレーナー室、行こうか。座りながら話せるしね」 

 

そう言うと、ミラクルは小さく頷き、私の後ろに付いて、歩き出した。

 

 

 

トレーナーさんの後をついて歩きながら軽く雑談を交わしていたが、おれの胸中は、絡まって、ほつれた糸のようになってしまっていた。

 

まだ、おれがトレセン生だった頃。

最初は、気のせいかと思っていたんだ。

トレーナーさんと話していると、胸がポカポカしたり、バレンタインに貴方からチョコを受け取った時、一際大きな温もりを感じたり。

貴方が特別な人だってことは、分かっていた。

でもそれは、指導者としてのトレーナーさんを、何処までも優しい貴方を、信頼しているからだと思っていた。

でも、段々そうじゃないって思い始めた。

 

きっかけはささいなことだった。

ヘリオスがパーマーと一緒になっておれのトレーナーさんと楽しそうに話しているのを見た時に、ほんの少し、本当に少しだけ、胸にチクリと針が指した気がしたんだ。

おれの友達と大切なトレーナーさんが仲の良いことは、嬉しいことの筈なのに。

 

その時は、それの正体なんて分からなかった。

でも、違和感は感じていた。

トレーナーさんが他の娘と話している時に感じるものだけじゃなく、トレーナーさんから貰うモノは一際大きく感じる原因。

この感情の元は何なんだろうって、悶々としていた。

 

そして、おれは気付いてしまったんだ。

いつの間にか貴方を目で追っている自分に。

貴方の声を数日聞けないだけで、ソワソワしてしまうおれに。

貴方が時折見せる可愛らしい仕草に見惚れていることに。

貴方に褒められる度に、高鳴る胸に。

 

恋。

自分には無縁なモノだと思ってた。

一生縁のないモノだと。

恩返し以外のことなんてあの時まで、考えることなんて無かったから。

他ならぬトレーナーさんの、そして、皆のおかげで、おれは未来を考えることが出来るようになった。

そして、おれは、貴方に特別な感情を抱いてしまっていたみたいだ。

 

分かっていた。

トレーナーさんがおれに色々してくれたのは、優しいから...あくまで、担当のウマ娘として大切にしてくれているだけだって。

トレーナーさんはおれの走りを見初めてくれて、優しさでトレーニングを見てくれて、担当になってくれた。

そして、とても、とても大切にしてくれて、沢山迷惑をかけたのに、ずっとおれのためになってくれた。

 

それに下心なんてなかったことは、おれが一番分かっていることだ。

 

それに、万が一にも、この思いは成就しないことも、確定していた。

 

だって、トレーナーさん言っていたから。

いつだったか、トレーナー室で休憩している時に。

 

「彼氏欲しい~~」

「どうしたんですか急に」

「大学からの友達がさ~私以外皆結婚してるか付き合ってる人いるんだよ~。さっき最後の一人から初恋人出来たって連絡来てさー。...私を置いてくな~!」

 

そんな会話をしたことを、よく、覚えていた。

 

その時はまだ、自分の気持ちがはっきり理解出来ていなかったから、机に溶けるトレーナーさんを可愛いなと思いながら見ていた。

後になって、自分の想いに気付いた時、同時にこの記憶が絶望を持ってきたんだ。

 

これは、絶対に叶うことのない想いなんだって。

 

おれが男ならって考えたこともあった。

でも、それだとおれは貴方に出会えなかっただろう。

貴方を好きにはならなかった。

 

いっそ、この想いに気付けぬままに、壊れていたらなんて、過る日もあった。

でもそれは、トレーナーさんの全てを壊すことになっていた。

 

トレーナーさんのことは大人として信頼していると、好きの形を変えようとした。

でも、貴方の声に、仕草に、優しさに、胸を貫かれるばかりで、変えるどころか誤魔化すことさえ出来なかった。

 

この気持ちを伝えてしまおうかと何度も考えた。

伝えてしまえば、壊れてしまう。

そう思うと、怖くて出来なかった。

 

おれは、無垢に笑う貴方の笑顔が好きだから、もうこれ以上、困らせたくなかった。

 

そうしておれは、この気持ちを閉まったままにして、三年目のクリスマスを迎えた。

貴方は、おれが別れを決意する前に、約束してくれた。

また会おうって。

 

嬉しかった。

卒業しても貴方に会えることが。

貴方が会いたいって思ってくれていたことが。

 

そして、もっと怖くなってしまった。

トレーナーさんのその気持ちを裏切ることになってしまうんじゃないかって。

 

だからおれは、胸にしまったままにして、卒業をしたんだ。

 

その後は、トレーナーさんに会いに行くことはなかった。

約束をしたけれど。

この気持ちを忘れなきゃと、そう思っていたから。 

離れれば忘れられると思った。

実際、理学療法士となって、忙しくしている時は、忘れていられた。

患者さんに向き合って、リハビリをして、思い悩むこともなくなっていった。

だから、大丈夫だと思ったんだ。

病院がトレセン学園で講習をすることになった時、講師として参加すると手を挙げたのも、もう気持ちに、整理はついていると思ったからだった。

 

学園に到着してからも、変な気持ちは起きなかった。

だから、もう本当に大丈夫だと、そう、思い込んでいたんだ。

 

でも━━。 

 

「ミラクル!」

 

貴方の声を聞いた瞬間、全ては思い込みで、何も変わってなどいなかった現実を、跳び跳ねた胸に叩き付けられた。

 

本当は、学園に到着した時に、気付くべきだったんだ。

だって、おれは、貴方に会わないように、トレーナー室のある近くには立ち入らないように動いていたから。

 

そんな風に逃げていたのに、自分は大丈夫だと思い込んでいた、そんなおれに無理矢理現実は突き付けてきた。

"忘れてなどいないじゃないか"と。

 

おれは、動揺を悟られたくなくて、心の準備も出来ていなくて。

だから、聞こえなかったふりをして、通り過ぎようかと一瞬考えた。

 

でも、貴方はあの頃みたいに笑って此方に駆けてきていて。

 

そこでは他愛もない話だけで終わったから、どうにかおれは、持ちこたえれた。

それに、ここまで準備を重ねてきて、多くの人が関わっている今日の講習を、おれの感情だけで、台無しにするわけにはいかなかったから。

だから、レースに挑んでいた時のように、精神を集中することで、どうにか切り替え、講習を終えることが出来た。

なのに━━。

 

「かっこよかったよ!」

 

貴方の言葉で、純真な笑顔で、おれはいとも簡単に、取り繕ったものを崩してしまった。

そんなに照れることかと貴方は笑ってくれたけれど、困らせてしまう所だった。

きっと、おれの気持ちを知ってしまえば、トレーナーさんは、優しいから、無下にはしないだろう。

これからも会いに来て、とすら言ってくれるかもしれない。

トレーナーさんは、応えようとしてくれる。

でも、応えることは出来ない。

だって、トレーナーさんは、男の人が好きな筈だから。

だから、絶対に困らせてしまう。

だから、言えない。

困らせたくないから。

そして、壊したくないから。

 

「どうしたのミラクル、難しい顔して」

 

いつの間にかトレーナー室には着いていて、トレーナーさんに呼ばれて我に帰った。

 

「ごめんなさい。ちょっとボーッとしちゃってました」

「あはは。講習終わって疲れが出ちゃったのかな?無理はしなくて良いんだよ?」

「あ、いえ!大丈夫です。本当に」

「ならいいけど。とりあえず座って」

「はい。失礼します」

 

おれがソファに腰かけると、トレーナーさんも向かい側に席った。

 

「お仕事はどう?」

「楽しい、と言っていいのかは分からないですけど、皆さん優しくて、良くしてもらっています。それに、夢だった理学療法士として、誰かのリハビリを手助け出来るのは、嬉しいです」

「ミラクルらしいね。貴方の夢が叶って、本当に良かった」

 

そう、優しく笑うトレーナーさんに、また胸が高鳴ってしまう。

 

「...トレーナーさんはどうですか?今、担当している娘とか..」

「フフフ..実はね、今度NHKマイルCに出走するの」

「G1ですか。凄い」

「ええ、前走のフェアリーステークスでは一着。きっともっと強くなるわ」

「やっぱりトレーナーさんは凄いですね」

「貴方のおかげよ。ミラクル」

「え?」

「ミラクルの活躍を知ってる娘達なの、貴方が卒業後してから私に見て欲しいって来た娘は、皆」

「おれだって、トレーナーさんがいなければ、あれだけ走ることは出来ませんでしたから、やっぱりトレーナーさんが..」

 

そこまで言った所で、彼女に言葉を被せられる。

 

「それに、あの娘達を見れてるのは、貴方のワガママがあったからだよ。ミラクル」

「あ...」

 

そう、おれは三年目の終わりに、トレーナーさんに言った。

 

「おれを最後にしないでください」と。

おれが最初で最後の担当でも良い、と言いきってくれたけれど、おれは、貴方に、続けて欲しかったから。

 

「だから、ミラクルのおかげだよ」

「━━━」

 

この人の言葉は、紡がれる度におれの心を揺らがせる。

 

「そうだ。お友達はまだ遊んだりするの?ヘリオスとか..ルビーとか」

「今でもよく連絡していますよ。ルビーは、あんまり予定が合わないけれど、ヘリオスやゼファーとは良く一緒に食事に行ったりしてます」

「そっかあ。良い娘達だもんね」

「はい。皆と一緒にいれて楽しいんです」

「━━!」

 

何だか、トレーナーさんの顔がとても嬉しそうな様子に見えた。

 

「どうしたんですか?」

「ああ、ごめん。嬉しくってさ。そっか。そっか!楽しいんだ」

「嬉しい?」

「うん。嬉しいの」 

 

トレーナーさんが何を喜んでいるのかは良く分からなかったけれど、おれのことで我が事のように喜んでくれていることは分かった。

もう元教え子でしかないのに、それでもこうして、おれのことで喜んでくれる。

 

ああ。やっぱり怖い。

 

「あ、そうそうミラクル。━━」

 

この関係が、貴方からの信頼が壊れてしまうのが、怖い。

 

「━━それでね、この前担当の娘が━━」 

 

後、30分程で一時間は経ってしまう。

談笑が続く。

他愛もない話。

 

貴方との関係が壊れてしまうのが怖い。

それでも、貴方の笑顔が見られるのが、嬉しくて。

貴方と話すのが楽しくて。

貴方の声に、優しさに、胸をときめかせる。

まるで、学生の頃みたいな。

そんな、触れれば壊れてしまう、シャボン玉のような関係を、貴方といられる、この時を、壊さぬように噛み締めて。

おれは、笑っていつづけたんだ。

 

 

 






読んでいただきありがとうございます。

一応続きはある程度考えているのですが、続きは書かないかもしれません。
書きたい想いはありますが、ここで終わらせるのもアリかなと思ってしまっているので、続きはあまり期待せずにお待ち頂ければ幸いです。

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