人通りの少ない裏路地に銃声が響き、火花と共にゼブラファンガイアが弾き飛ばされる
『ぐぅ、うぅ……』
『兄貴!? テメェ────』
ゼブラファンガイアがダメージを受けたのを見たラットファンガイア達は一斉にディエンドへ向けて向かっていくが彼女は踊るように打撃をかわし距離を取る
「へぇ、身体が軽いし気持ち相手の動きも見極めやすい……それに、この力の使い方が頭に流れ込んでくる」
ディエンドの力と使い方を理解したアリスはディエンドライバーをスライドして待機状態にすると、腰のカードホルダーから三枚のカードを取り出し、その全てをディエンドライバーへと装填する
「それじゃ早速、試させて貰おうかな」
〚 KAMEN RIDE 〛
待機状態にしていたディエンドライバーをスライドさせる
〚 BLADES 〛
〚 ZOLDA 〛
〚 CHASER 〛
召喚されたブレイズ、ゾルダ、チェイサーの三人のライダーはそれぞれの武器を構えて、目の前で何が起こっているのか理解できていないファンガイア達と戦闘を始める
『な、なんだコイツら────うわぁっ!?』
『い、一体どこから────ぐぁッ』
困惑した様子のまま召喚されたライダー達に圧倒されるラットファンガイアの様子を眺めていたディエンドだったが、不意を突こうとしたであろうゼブラファンガイアの攻撃を避けると彼の腹部に銃口を押し当て、引き金を引いた
『ぐぁぁぁぁぁぁぁ────ッ!!』
『お頭────あぁっ!?』
ゼブラファンガイアが攻撃を受けたことで意識のそれたラットファンガイア達も召喚されたライダーたちの攻撃を受けて、ゼブラファンガイアの方へと吹き飛ばされる
疲弊したファンガイア達の元へ近づいたディエンドはゼブラファンガイアの頭へと銃口を突きつけた
「それじゃ、大人しく教えて貰おうかな……君たちが誰にアタシを連れて来いって言われたのか」
『そ、それは…………』
ディエンドの言葉にゼブラファンガイアが言い淀みながらも背後でダメージを受けている部下のラットファンガイア達へと視線を向け、人の姿へと戻る
「わ、わかった……俺たちにそれを指示したのは────」
男がそれを伝えようとした直後、複数の足音と共に騎士制服に身を包んだ戦士たちがディエンドと男たちを包囲する
「き、騎士団……だと?」
「あらら、これもしかしなくてもマズい状況?」
「ここで戦闘が行われていると匿名の通報があった。全員、大人しく同行してもらおう」
部下たちにゼブラファンガイアの男とラットファンガイアの男たちを捕縛するよう伝えた隊長格の男は警戒心を露わにしつつ腰にさげた剣の柄に手をかける
「お前も、我々と一緒に来てもらう」
「……別にいいけど、アンタは?」
「私はヴァルセリア王国騎士団、第一小隊隊長のルウガだ」
「ふーん、騎士団の隊長さんねぇ……」
言われてみればそうっぽいなと内心で考えながら、アリスはディエンドへの変身を解除した
「っ! 少女……だと?」
「見かけで判断しないで欲しいんだけど……まぁいいや、それで連れていくなら連れて行けば」
「あ、あぁ……それじゃあ、ついてきてくれ」
騎士団の男────ルウガの後に続くように、アリスも歩き始めた
アリスが戦闘を終え、ルウガ達についていったのと同時刻
自警団の隊舎でクルスと向き合っていた士とルチアの間には、ひたすら無言の時間が流れていた
「……えっと、質問は……ない感じかな?」
「あぁ、いや……あるにはあるんだが、どこから聞いたものかと思ってな」
「成る程。士くんは旅人と言っていたね」
「あぁ。ここで言うのはアレだが俺の出身には人間以外いなかったからな……正直、わかってない事の方が多い」
「人間以外いなかった……か。この国住んでいる身としてはあまり馴染みがない言葉だ」
クルスの表情には彼が心の底から馴染みがないという感情が表れていた
士が横に視線を向けるとクルスほどではないがルチアも同じような表情をしているのをしているの確認し、元々人と他種族が共存しているこの世界の住民である二人にとって、自分の言っている事が馴染みのないことなのだと士は改めて認識をする
「そう言えば、クルスさん。アンタはさっき自分の組織を国公認の自警団って言ってたよな……直属の組織じゃないのか?」
「その事か……直属の組織ならウチとは別に騎士団があるからね」
そう言ったクルスは、部屋の隅に置かれていた黒板を持ってくると中心に大きな丸を書きその中にヴァルセリア王国と書き込む
「この大きい丸が、俺たちの所属してるヴァルセリア王国。それでそのヴァルセリア王国の中に……国直属の王国騎士団と国公認の自警団。俺たち空天守備隊がいる」
「国直属の騎士団があるなら、わざわざ国公認の自警団を作る必要はなくないか?」
「まぁそうなんだよね、実際にヴァルセリア王国が建国してすぐの頃は騎士団しかなかったみたいだし」
「……なら、どうして自警団が出来たんだ?」
士がクルスにそれを聞くと、彼は少しヴァルセリア王国の外に小さい丸を作りその中に市民と書き込んだ
「当時の騎士団は団員を選ぶときにファンガイア族を優先して選んでいたらしいんだ。それで市民の不満が溜まっていったのと……単純にファンガイア族に対する不信だね」
「不信?」
「そう、不信。ファンガイア族が他の種族と融和を進めるようになる前は、自分たちが最も優れた種族だと認識して他の種族を虐げていたらしい。だから、融和を進めてヴァルセリア王国っていう国が完成してからも、そこに移り住んだ人たちの中に残るファンガイア族って種に対する不信感は消せなかったんだ」
種族間の不信。それに関しては士の住んでいる世界でも人種による差別が存在し、他の人種に対する不信感を抱いている人も少なくないためすぐに飲み込み納得の表情を浮かべる
その様子を見たクルスは、さらに黒板へ情報を書き込みながら話を続ける
「俺たちの所属してる自警団が出来た切っ掛けだけど、ファンガイア族に対する不信感を一番持っていた人間が独自に組織を立ち上げたのがきっかけ」
「……人間がファンガイアに一番不信を持ってたのか」
士はこの国の王子であるタイガが人間とファンガイアの混血であったから、てっきり人間とファンガイアが協力しこの国を建てたと思っていたが人間とファンガイアの間にも色々あった事を知り驚きの表情を浮かべる
「ファンガイアにとって人間の持ってるライフエナジーが一番上質なもので、融和前は人間がファンガイアに襲われる事も当たり前だったみたいだからね……当時の人たちが不信を覚えても仕方ないよ」
「……確かに、そういうもんか」
人種やら種族やらの問題が難儀なことは士だって知っている。だからこそそう言うものだと納得をして言葉を返した
「それで、その人とファンガイアの不信ってやつが騎士団とアンタら自警団の二つが別々に存在してる事に繋がってるのか?」
「その通り、当時の人達がファンガイアの多い騎士団に治安維持を任せる事に異を唱えてね、反対運動をした結果、当時の王を筆頭に国の上の人たちが人間を中心にした治安維持部隊として、この空天守備隊を作ったんだ」
「ファンガイアの比率が多い騎士団に対して人間が中心になったのが自警団……なんと言うか、今に至るまで随分と苦労したみたいだな」
「俺たちが……と言うよりは俺たちの何代も前の人たちがだね。今は騎士団も自警団も色んな種族の混成部隊みたいになってるし、そもそも当時よりも圧倒的に混血の割合が多くなったしね」
建国された当時から現在に至るまでの間にあまり実感がわかないレベルの出来事が起こっていた事、今の姿に至るまでどれだけ長い時間がかかっているのかを知った士は素直に感嘆の息を漏らす
そして、ひとまず騎士団と自警団の違いを理解することの出来た彼は、この際だから自分たちが探している存在についてもクルスへ質問してみる事にした
「クルスさん。一つ聞きたいことがあるんだがいいか?」
「俺が知っている事と、言える範囲でだけど構わないよ」
「そんじゃ遠慮なく、”キバ”って戦士について何か知ってる事はないか?」
士がキバについてクルスへ聞いたのと同時刻、王国騎士団のルウガ達に連行されたアリスもまた、キバについてを尋ねていた
「キバについて、教えろだと?」
「そっ、アタシ実はキバを探しててね。知ってる事があったら教えて欲しいんだけど」
「……お前、自分がどういう立場かわかっていないのか?」
呆れたような視線を向けてくるルウガを気にする様子もなく、アリスは軽い足取りで言葉を続ける
「立場はわかってるつもり。人通りが少ないとは言え戦闘行為だからねぇ……けど、アタシ的にはやましい事はないわけだし? あなた達が事情聴取をするにしても歩いて向かうんだから時間はあるでしょ? 軽い雑談だと思って教えてくれてもいいんじゃない」
アリスの言葉を聞いたルウガは深いため息をついてから軽く頭を掻く
「まぁ……暇つぶしにおとぎ話の事を語るくらいは良いか」
「おとぎ話?」
「あぁ、この国じゃガキの頃から聞かされるおとぎ話だ」
士とアリス、異なる場所に居る二人が聞いたのは……同じ物語
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現在から数百年前、この世界は一つの種族によって滅亡の危機に瀕していた
その種族の名は────レジェンドルガ
長い眠りについていたその種族は、長であるアークの目覚めと共にこの世界へと蘇り。レジェンドルガを除く12の種族を次々と襲撃、数を減らすと同時に殺した死体を自らの眷属として使役し、その数を増やし続ける
着実に眷属を増やし、勢力を拡大し続けるレジェンドルガの存在を重く見たファンガイア族はレジェンドルガ打倒のため、他の種族ヘ協力を要請するが、これまで他の種族を虐げたファンガイア族に協力をする種族はおらず、それぞれの種族は、個々の判断でレジェンドルガへと挑み……敗北した
ファンガイア族をはじめとした種族の敗北により、レジェンドルガの種族統一、そして他種族の全滅が刻一刻と近づく中で過去の遺恨を一度は水に流し、最初に協力関係を結んだのは、人間だった
ファンガイア族によって食糧として扱われていた存在が自らを食糧として扱っていた存在と協力関係を結んだ。その事実は他の種族にも衝撃を与え、自らの種を生存させる為にファンガイア族、そして人間族と協力関係を結び対レジェンドルガのための種族間同盟を締結するに至った
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「……と、ここまでが前半戦」
「普通に聞いてたが、レジェンドルガって奴ら強すぎないか?」
ここまでの話を聞いた士がそう尋ねるとクルスは苦笑いを浮かべながら言葉を返す
「俺も始めて聞いた時はそう思ったよ、それとね士くん。これは戦いの物語であると同時に恋の物語でもあるんだよ」
クルスはそういうと、物語の続きを話し始めた
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ファンガイア族、人間族、
レジェンドルガとの闘いで滅んだ
複数の要因によって成された拮抗状態に最も貢献したのはファンガイアの王が身に纏う鎧《キバ》と《サガ》、そして人間が持てる技術の粋を集めて完成させた機械の鎧《イクサ》
種族同盟とレジェンドルガの戦いが激しくなる中で種族同士の繋がりは強くなっていき、種族同士の間にあった禍根は少しずつ解消されていった
そんな中、当時のファンガイア族の第二王子は《イクサ》を身に纏い共に戦場を駆ける人間の女性へと惹かれ、彼女もまた共に戦うファンガイアの王を戦友として、そして一人の男として意識していった
そして時は進み、種族同盟とレジェンドルガとの最終決戦の日。決着の場に現れたのは────《キバ》の鎧を身に纏った第一王子一人だけだった
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「えっ? レジェンドルガとの最終決戦って当時の第一王子だけでやったって事?」
「あぁ、そうらしい」
「……大丈夫だったの、それ」
「現にこうして俺らが生きてんだから大丈夫だったんだろ」
「それもそっか」
ルウガの言葉にアリスが納得をすると、物語を話す事に興が乗ったらしいルウガは物語の続きを話し始めた
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レジェンドルガとの決戦の場に現れた第一王子はキバの鎧を身に纏い単身レジェンドルガの精鋭たちを相手取り、自らの命を顧みない戦闘の果てにレジェンドルガの王やその側近たちを道連れに命を落とした
第一王子から遅れてやってきた第二王子を始めとした種族同盟が決戦の場にやってくると、そこにはレジェンドルガと第一王子の姿はなく荒れ果てた荒野と巨大なクレーターだけが残されているだけだった
第一王子が単身でレジェンドルガとの決戦に赴いた理由、それは第二王子と結ばれた人間の女性が身ごもっていたからだ。彼ら二人の子供が種族の融和と繁栄の切っ掛けになってくれると信じた第一王子は自分の命を引き換えに種族の未来を守り抜いたのだった