しいねちゃんが世界一の魔法使いになるIf

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世界一の経緯は彩花先生から”答え”を出されてしまったけど(「りぼんむすび」で見られます)、
これはこれでまあまあ上手くまとまったと思うので、よかったらどうぞ。
ブラッシュアップ足りないけど、”答え”がある分これ以上時間をかけても仕方がないかな、と(逃げ)


世界一の弟子

 セラヴィーが魔界に連れていかれて2週間。どろしーが彼の居ない生活を満喫するのに飽きかけた頃、

「おめでとうどろしーさん、あなたが世界一の魔法使いでーす」

「……は?」

 突然、マジカルチャンピオン審判員のシンちゃんに世界一の証明書を渡されて、どろしーは間抜けな声を上げる。

「どういうこと? セラヴィーは??」

「チャンピオンが死亡したか本人がその称号を放棄した場合、前のチャンピオンに権利が戻るんです」

「セラヴィーが世界一を放棄したっての……?」

「先日セラヴィーさんの行方を教えてもらったでしょう。

魔法連合組合としてもチャンピオンが手出しし辛い場所に居て世界一の座が宙に浮いた状態のままなのも困ります。本人にどうするか聞いたら『そんなものどうでもいいです』だそうです」

「……どうでもいい」

「というわけで、どろしーさんが世界一の魔法使いだよーん」

「お、おめでとうございます、お師匠様!」

 周りの子供たちも呆然としていたが、我に返って拍手する。

「よかったね、どろしーちゃん」

「あんたは師匠が世界一じゃなくなってもいいの?」

 共に喜んでくれるチャチャはセラヴィーの弟子だ。

「でもどろしーちゃんがずっと欲しかったものでしょう」

「ずっと欲しかった……そう、なのよね」

 どろしーは噛みしめるように言う。

「お祝いなのだ! ごちそうなのだ!」

「お前はごちそうが食べたいだけだろ」

 戸惑ったままのどろしーを、ポピィは静かに見つめていた。

 

 それからにわかに忙しくなった。

 新しく魔女がマジカルチャンピオンになったというニュースが駆け抜け、”あのセラヴィー”ならともかく、自分にもチャンスがあるのではないかと世界一を目指す挑戦者が次から次へと現れた。

 加えてセラヴィーが居なくなってから男性のアプローチが増えていたが、世界一になってからはなお一層増えている。

 

 

「どろしー、ここはいいから休め」

 夕食後、ぼーっと宙を見つめていたどろしーはポピィに言われて立ち上がる。

「お師匠様、”食後の運動”はほどほどにしてくださいよ」

「わ、わかってるわよ」

 どろしーは疲れているというのにサンドバックを殴る日課をかかさなかった。ストレスが溜まりに溜まっているらしい。

「チャチャも戻っていいぞ。片付けはオレたちがやるから」

「うん、ありがとう」

 女性ふたりは家に戻る。

 セラヴィーが居なくなってからチャチャはどろしーの家に部屋を移していた。年頃の女の子が男女一緒に住むのも良くない、というのもあるがチャチャとリーヤが婚約し、失恋したしいねが一緒にいるのは辛いというのもあってにゃんこハウスは男3人で住んでいた。

 挑戦者が昼夜やってくる今となっては、チャチャがどろしーのそばに居てくれたのは幸いだった。

 もちろんどろしーは腐っても世界一だ。セラヴィーには敵わなくてもそばで繰り返し対決している内にその辺の魔法使いには軽く勝てる実力を付けていた。しかし次から次へと来る刺客を片付けるだけで精一杯になっている。

 子供たちも秘密裏に片付けていたがそれでも裁ききれずに、全員が疲弊してきていた。

 

「リーヤ、ポピィ君、相談があります」

「俺もそろそろなんとかしようと思っていた」

「なになに、なんなのだ?」

 

***

 

 うりずり山に呼び出されたどろしーは、目を丸くする。

 子供たちがズラリと並び、その横には審判員のシンちゃんが居る。

「これは一体なんなの?」

「お師匠様、僕と世界一の座をかけて戦ってください」

 シンちゃんが居るので、もしや、とは思ったがその言葉を聞いてショックを受ける。

「しいねちゃんと戦うなんてできないわ」

 

『どろしーちゃんと戦うなんて僕にはできません』

 

 いつか聞いた言葉が浮かぶ。自分が”愛しいどろしーちゃん”というだけで勝負することさえ出来なかったことを思い出す。

 軽く頭を振って弟子を見ると真剣な顔でこちらを見ていた。

「……わかったわ。本気でかかってきなさい」

 

「世界一の魔法使い、どろしーさんvs挑戦者しいね君!! 勝敗はシンちやんが見てるよーん!」

 始まりが告げられると、しいねは両手を振り上げる。

「行きます!」

 大きな刃がどろしーに降りかかる。しかしアッサリとよけられた。

「威力は大きいけど、大振りすぎるわ」

「じゃあ、これならどうですか」

 風の刃が右から左から襲ってくる。

「ふふっ、なかなか悪くないわね」

 次から次へと攻撃の手は止まらないが、どろしーは防御するばかりだった。

「お師匠様、これは稽古じゃなくて世界一をかけた戦いですよ」

「じゃあ行くわ。雷よ!」

 激しい閃光と同時にドコォォォォ、と地響きがした。観客の悲鳴も上がる。

 光に目くらましされた視界が戻ってくると、しいねは真っすぐから受け止めて立っていた。

「やるわね、しいねちゃん」

 

(──強い)

 師の実力を侮っていたわけではないが、たまに忘れそうになる。(元)世界一と(現)世界一が日常に戦っていたことを。──見た目には他愛もない追いかけっこのようではあったが。

「ほら、行くわよ」

 続いて威力は小さいものの、連続で雷が落ちてくる。しいねはバリアで身を守りながらよける。と、正面から氷の槍が飛んできたのをギリギリでかわした。

「そう、攻撃はひとつじゃないから気をつけなさい」

 なおも師の言葉は「指導」だった。

「ほらほら、防御ばかりじゃ勝てないわよ」

 互いの攻防は休みなく繰り広げられる。

 

「しいねちゃんもどろしーちゃんもガンバレー!」

 他は応援することしか出来なかった。

「しいねちゃんガンバレ! オレも特訓付き合ってやったんだからな!」

「えー私にナイショでそんなことしてたの?」

「お前はすぐに顔に出るからな」

「それもそうね」

 あはは、と笑う。

「でも、本当にすごいわ。しいねちゃんってこんなに強かったのね」

「どろしーをねらう刺客とも戦ってたからな。ずっと修行してたようなもんだろ」

「そっか、私は相変わらず失敗ばっかりだったけど」

「でも変な物出したおかげで、相手をひるませてたのだ」

「おっ、どろしーが押されているぞ」

 

 いつの間にか形勢はしいねに傾いていた。魔力の矢が次々と襲い、どろしーは防御一辺倒になっている。

「くっ、いつの間にかこんな技も覚えてたのね」

 威力こそ小さいがその矢は鋭く、ひとつひとつを確実に防がないとバリアを突き破ってきた。加えて手数が多く、今は防ぐだけで手一杯だ。

「ふふっ」

 身体を守りながらも自然と笑みがこぼれる。弟子がこれだけの実力をつけていることに、焦りながらも嬉しさの方が優った。

「防御ばかりじゃ勝てませんよ」

 先ほどの師の言葉を使って煽る。

 どろしーはニヤリと笑うと、全てのバリアを解いた。

「お師匠様!?」

「甘いっ!」

 魔法の矢を身体にかすめながら両手を前に出すと巨大な魔法弾があらわれた。

「!?」

 威力の大きな魔法弾は魔法の矢をなぎ払い、しいねを襲う。

 すんでの所でかわしたが、その風圧で吹き飛ばされた。

「もらったわ!」

 地面に転がった弟子めがけて右手を振り下ろそうとした時、同時にしいねが映像を師の前に映し出した。

「!?」

 どろしーの目の前に人の姿が浮かび上がる。

 一瞬ひるんだスキに首筋に大きな刃が当たった。

「チェックメイトです、お師匠様」

 どろしーは息を吐き、小さく両手を上げた。

「参りました。降参よ、しいねちゃん」

 

「おめでとうしいね君、今から君が世界一の魔法使いです」

 シンちゃんから証明書を渡される。

「すごいすごい! しいねちゃん!」

「ごちそうだ! お祝いだ!」

「お前そればっかりだな」

 ふぁさ、っとトンガリ帽子がかけられる。

「おめでとう、しいねちゃん」

「……これは?」

 師匠を見上げると優しい目をして笑う。

「独り立ちした時に渡そうと思っていた帽子よ。まさかマジカルチャンピオンのお祝いになるとは思ってなかったけど」

「ありがとうございますお師匠様。大事にします」

 握手を求められた弟子はうつむく。

「……すいません、卑怯なマネをして」

 どろしーの前に浮かび上がったのはセラヴィーの映像だった。

 弟子の手を取ってギュッと握り微笑む。

「ううん、戦略も必要なことよ。それにアレがなくても勝敗はわからなかったわ。強くなったわね、しいねちゃん」

 弟子の大きくなった姿を見ると涙がこみ上げて、ぐっとこらえる。

「でもひとつだけ言っておくけど、甘すぎるわ。相手を傷つけたくないのはわかるけど、最後はもっと自由を奪うまでやらないと反撃されるわよ。あいつなら……」

 一瞬、思い出しかけた顔を振り払う。

「ううん、余計なアドバイスだったわね。しいねちゃんはしいねちゃんなりの魔法使いになってちょうだい」

 

 

「……お師匠様、お願いがあります」

 帽子を脱いで姿勢を正す。

「なあに、しいねちゃんのお願いならなんでも聞くわよ」

 帽子を持った手にグッと力を入れて見上げる。

「どうか、自分の気持ちに素直になってください」

「自分の、気持ち……」

 痛いほどまっすぐな視線から逃れようと顔をそらすと、チャチャもリーヤもポピィも彼女を見つめていた。

 どろしーがいつも視線の先に誰かを探しているのは、ここに居る誰もが気付いていた。

 どろしー自身もさっきの映像に思いのほか心を乱されていたことに気づく。あの姿にいら立ったのは、映像を出した弟子にでもセラヴィーにでもなく、動揺した自分自身にだった。

 目をつむると気の抜けた笑顔の男が浮かぶ。

「……そうね、魔界に行くわよ」

「お師匠様……!」

 ホッとしたのも束の間、

「セラヴィーを一発ぶん殴ってやらなきゃ」

「……はい?」

「それもこれも、ぜーんぶあいつのせいよ。アッサリと称号を放棄して私たちがどんなに苦労したと思ってんの。自分で勝ち取ったものならそれでも良かったけど、はいどうぞ、と言われてなにが嬉しいもんですか! 勝ち逃げよ!!」

 どんどんヒートアップしてくる。

「あーもう、考えたらムチャクチャ腹が立ってきた! 魔界に乗り込むわよ!」

「おー!」

「やったあ!」

 喜ぶチャチャにポピィが眉をひそめる。

「お前、師匠が殴られてもいいのかよ」

「だって、どろしーちゃんがセラヴィー先生を追いかけ回してないと、なんか落ち着かないんだもん」

「……まあな」

 ワイワイと賑やかな中で、ぽかん、と立ったままのしいねをリーヤが振り返る。

「ほら、行くぞ!」

「………ふ、ふふふ、あーはっは!」

 突然笑い出したしいねを奇妙なものを見るようにする。

「大丈夫か、しいねちゃん」

「やっぱりお師匠様はこうでなくちゃ」

 うんうん、とうなずく。

「僕たちも迷惑かけられた分、一発ぐらい殴ってもいいよね」

「よっしゃ、オレもガツーンとやってやる!」

「……お前はデコピンぐらいにしとけ」




正直、化け物(セラヴィー)に勝てる未来が見つからなくてこんな感じになってしまったけど、彩花先生の回答にはさすが創造主wwと。

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