-クワット攻略艦隊司令官 べフェロ・パーロ提督-
-共和国領 クワット星系 第一防衛線-
最初に連合軍を発見したのは偵察網を構築していたIGV-54監視船によるものだった。
IGV-54はゴザンティ級クルーザーを改造したもので長距離通信、長距離索敵を得意としていた。
またゴザンティ級が本来持ち合わせている艦載能力も持ち合わせており、基本的に偵察能力を高める為にARC-170が4機艦載される。
IGV-54は後々に出てくるIGV-55監視船よりも多少性能は劣るが優秀な長距離索敵能力と諜報能力を持っていることは間違いない。
「艦長、これを」
センサー士官に呼ばれ、IGV-54“サーベイⅥ”艦長のホレル・ランディ大尉はモニターの画面を確認した。
「センサーに反応多数、クワットに接近しつつあります」
「…数は」
既にこの時点で連合軍の攻撃が始まったと言える。
ランディ大尉は目を細め、コムリンクを手に取った。
「数は……180……!敵の1個機動群です」
「ついに来たか…!“サーベイⅥ”より司令部へ、連合艦隊の移動を確認。数は180、繰り返す、“サーベイⅥ”より司令部へ、連合艦隊の移動を確認。数は180隻」
司令部への連絡を終えたランディ大尉は今度は自分の艦への命令を出した。
「本艦はこれより直ちに現領域を離脱しポイントシェンで索敵活動を続ける」
“サーベイⅥ”単体の戦闘能力はかなり低い。
それにこの物量では単冠の能力がいくら高くとも対処は難しい。
身を隠し、情報を伝え続けるのが“サーベイⅥ”の使命だ。
迫り来る敵艦隊を殲滅するのはまた別の者達の使命である。
ランディ大尉の報告はクワット方面軍司令部と最前線の第一防衛線司令部に伝達された。
最前線への情報伝達は早い方がいいという考えの下であり前線の部隊は余裕を持って対応に当たる事が出来る。
既に発見から数分後には前線の部隊が動き出していた。
指定のポイントに各艦が展開し、30分も経たない内に全艦の戦闘配置が完了した。
旗艦マンデイターⅡ級“フォートレス・オブ・ジュディシアル”のブリッジには司令官のスクリード中将を始め、多数の参謀が詰め掛けている。
「連合艦隊は既にポイントウェスクを通過、間も無く接敵します」
「敵艦隊は密集隊形の突撃陣のまま移動しています」
「では包囲陣のまま敵艦隊の最前列に艦砲を叩き込め」
第一防衛線は敵を待ち構えた。
既に偏向シールドと重ターボレーザー砲のエネルギーチャージは完了しており後はぶつけるだけだ。
連合軍は突撃陣形のまま前進し一気にクワットを目指す予定でいる。
彼らは事前に多くの偵察機を送った、しかしその偵察機の情報が正しいとは限らない。
何機かの偵察機は一旦機能停止にさせられ、ドロイド脳に偽の情報を叩き込まれてそのまま送り返された。
その為前方の連合軍は敵艦隊の妨害はあってもそこまで大規模なものと認識していなかった。
だから接敵するその瞬間まで第一防衛線の存在に気づく事が遅れた。
「敵艦隊確認、モニターに出します!」
センサー士官によってブリッジのモニターに敵艦隊の映像が映し出された。
連合艦隊の先鋒を務める第2機動群は群司令官のジェロ・パーレ少将に率いられクワットへの強襲を目指した。
プロヴィデンス級らの主力艦を取り囲むようにレキューザント級やミュニファスント級フリゲートが配置されている。
尤も艦隊を構成しているのはそれだけではない。
艦艇の数が180隻といっても実際の内訳では1,000メートルを超えない艦船が大半であった。
ルプス級ミサイル・フリゲートやウェーブクレスト級フリゲート、コーマス・ギルド・コルベットと言った多種多様な勢力の艦艇も複数紛れ込んでいる。
これこそ連合宇宙軍と言ったところだろう。
共和国宇宙軍のような統一された宇宙軍ではない連合艦隊。
だがその特色は時として弱点にもなり得た。
「全艦、砲撃用意」
参謀や通信士官達が各艦にスクリード中将の命令を伝える。
ヴェネター級やヴィクトリー級、ドレッドノート級重クルーザーやアークワイテンズ級の砲塔が敵艦隊の方向へ回転する。
各艦の中で緊張が走り、ある者はひたいの冷や汗を拭い、ある者は最後の祈りを捧げた。
「敵艦隊更に接近、後15秒で敵艦隊のセンサー範囲圏内に入ります」
「中将、攻撃命令を」
参謀の1人に急かされたがスクリード中将はまだ攻撃命令を出さなかった。
もう少し引き付けて火力を叩き込んだ方が奇襲の効力が上がる。
たった15秒の忍耐、されどその15秒の忍耐のタイミングをどう扱うかで将としての器が理解出来る。
スクリード中将はこの時的確なタイミングで攻撃の判断を下した。
各艦への伝達も含めて全てが完璧なタイミングだった。
「全艦、撃ち方始め」
スクリード中将の一言がクワットにおける決戦の開戦の合図となった。
第一防衛線の何百隻もの艦船から放たれる艦砲射撃が連合軍の艦船を襲う。
青白いレーザー弾が敵艦艇へ着弾するとほぼ同時に眩い爆炎が一斉に湧き上がった。
「初弾命中、敵艦炎上中!」
「続けて撃て、連中の艦隊を殲滅するまで攻撃を止めるな」
突然の一斉砲撃を喰らった連合艦隊は一時的に混乱状態に陥った。
被弾から即座に応射する艦艇もあればいつまでも司令部の命令を待って発砲しない艦艇もあった。
最初の砲撃が繰り出されてから1分もしないうちに何隻かのフリゲート艦やコルベット艦が轟沈した。
特に前方の艦は集中的に砲撃を受けプロヴィデンス級やレキューザント級といった主力艦でも損傷が激しかった。
「“アドミラル・オナーシ”の機動部隊を前に出して前衛のテクター級の援護につけろ」
第一防衛線の最前線にはテクター級スター・デストロイヤーと呼ばれる何隻かのプロトタイプ艦を配置していた。
テクター級はヴェネター級やヴィクトリー級のような艦載能力はないものの単純装甲と偏向シールド、火力の面でヴェネター級らに勝っていた。
本来は友軍艦隊の火力と防御力を支える為に建造されたが初陣で不遇の敗北を遂げ、能力が軽んじられていた。
しかしスクリード中将は防衛線強化の為にこのテクター級を敢えて前面に押し出し戦線維持に用いた。
テクター級はスクリード中将の期待に応え火力と防御の面で敵艦隊を圧倒している。
「敵艦隊前衛損耗率が間も無く15%を超えます」
「閣下、前衛の崩壊はもう間も無くです。艦隊の後方への火力集中を始めましょう」
「そうだな、両翼の各艦は火力を敵艦隊後方へ展開。中央各艦は本艦の射線上より退避し引き続き前衛への砲撃に専念せよ」
“フォートレス・オブ・ジュディシアル”の前面にいたヴェネター級やアークワイテンズ級が射線外へと散らばった。
基本的にドレッドノートなど大型艦船は艦隊の中央に配置されることが多い。
敵の正面を打ち破る為、最大火力を敵の前面に叩きつけるため。
“フォートレス・オブ・ジュディシアル”の砲撃が開始した。
ヴェネター級どころかプロキュレーター級とですら比較にならないほどの砲撃の雨が連合艦隊に降り注いだ。
小型艦は偏向シールドの限界と共に呆気なく撃沈し大型主力艦ですら無傷ではいられないほどの損傷を負って戦列を離れた。
8キロ越えの船体から叩き出される何百発もの砲撃は敵対する者全ての繊維を挫いたであろう。
辛うじてまだ戦える艦が最後の抵抗と言わんばかりに反撃しターボレーザー砲を放つが全て“フォートレス・オブ・ジュディシアル”の偏向シールドによって阻まれた。
マンデイターⅡ級の大出力ターボレーザーと偏向シールドがこの時代最強の攻守に優れたドレッドノートを生み出した。
だがマンデイターⅡ級とて艦船開発史に残る一隻の“
特に後々現れるスター・ドレッドノートのことを考えれば尚更だ。
「敵艦隊が前衛を交代させ中衛の主力艦を中心に突撃を開始しました」
「恐らく中央突破を敢行するつもりでしょう」
“フォートレス・オブ・ジュディシアル”の火力投射の為に一時的に艦隊を散開させた為突破の隙が生まれた。
流石のマンデイターⅡ級といえど100隻を超える敵艦の突撃を喰らえば突破を許してしまう。
「艦隊を再び密集させ封鎖、その間に両翼艦隊で側面を更に突け」
“フォートレス・オブ・ジュディシアル”の一斉射撃が落ち着き、中央の各艦が元いた地点に戻った。
更に左翼、右翼の側面攻撃が功を奏し次第に戦闘不能になる艦艇が増えていった。
連合軍はスターファイター隊による浸透攻撃もアークワイテンズ級と艦載機の共和国軍スターファイター隊の活躍によって阻まれて上手くはいかなった。
そして遂に連合軍にとって最初の悲劇が訪れた。
防衛線右翼に位置するあるヴェネター級が放った重ターボレーザー砲がプロヴィデンス級のブリッジに被弾しそのままブリッジを破壊した。
僚艦のヴィクトリー級やドレッドノート級の支援砲撃で船体へのダメージが蓄積しそのまま撃沈した。
「敵プロヴィデンス級撃沈、僚艦ミュニファスント級2隻大破!」
撃沈したプロヴィデンス級に見覚えがあった1人の参謀が共和国のデータベースを調べた。
すると撃沈したプロヴィデンス級はある艦と特徴が一致した。
「閣下、先ほど撃沈したプロヴィデンス級はどうやら敵分艦隊旗艦“イーストポート”のようです」
“イーストポート”は惑星ミンバンでの軌道上の戦いに参加し後に連合側のスパイから入手した情報で艦との相合が取れた。
乗艦していたクオレンのマファ・ゲバリス准将はブリッジに砲弾が直撃した時点で戦死、この戦いで最初に戦死した将官となった。
「では連中の片翼を直接指揮する者はいなくなった訳だな。右翼各艦へ伝達、突撃して横合いを殴りつけろ、側面から総崩れだ」
スクリード中将の読みは正しかった。
“イーストポート”とゲバリス准将を失った連合艦隊は混乱し指揮系統が乱れていた。
そこに統制の取れた共和国艦隊が突撃してくる。
側面のカバーが間に合わず連合艦隊は更なる被害を出した。
またその間にもう1人、将官が戦死した。
前衛の分艦隊を率いていたスカコアンのベジ・ジェルバー准将の乗艦、“アークティック”が撃沈した。
“フォートレス・オブ・ジュディシアル”の一斉砲撃とヴェネター級やヴィクトリー級による集中砲火を喰らい戦隊の耐久値が限界に達した。
しかも不運なことに重ターボレーザー弾が“アークティック”の弾薬庫に引火し他ことにより被害が拡大しジェルバー准将も離脱出来ず戦死した。
2人の将官を失ったことにより第2機動群の混乱は更に広まった。
ここで第2機動群の撤退が始まった。
まず司令官が戦死した両分艦隊の指揮系統を立て直し優先して戦線から離脱させた。
「敵艦隊、後退していきます」
「ポイントゼシュまで追撃し連中に出血を強要する。独立機動群を先行させろ」
スクリード中将の合図で後方で待機していた独立機動群の艦隊が展開された。
当然その中にはハイマンの“デタミネーション”もいる。
“デタミネーション”は僚艦の“オークランド”、“フリント”と共に敵艦隊に回り込んだ。
「主砲、一番から三番は前方のレキューザント級、次にミュニファスント級を狙え。四番及び副砲群は周囲の小型艦に集中攻撃」
砲撃を掻い潜りながらハイマンは敵艦に狙いを定めた。
“デタミネーション”の接近に気づいた敵艦が“デタミネーション”を攻撃するも偏向シールドで全て阻まれた。
既に砲塔が何基も破壊され艦の火力が低下しているのだ。
「撃ち方始め!」
撃たれた分のお返しと言わんばかりに“デタミネーション”の全砲塔から砲弾が放たれた。
共和国軍特有の青いレーザー弾が敵艦の船体に命中し装甲を打ち破る。
コルベットやルプス級のような艦艇はすぐに撃破され手負いのレキューザント級やミュニファスント級も更に被害が拡大した。
船体の爆発が広がり、レキューザント級からは脱出ポッドが放たれる。
「レキューザント級大破、乗組員は艦を放棄した模様」
「奴らには構うな、ミュニファスント級を潰せ」
レキューザント級の次はミュニファスント級に火砲の嵐が向けられた。
レキューザント級よりも125メートルほど小さいミュニファスント級がヴェネター級の集中火力を喰らえばどうなるかは目に見えている。
もう一隻いた僚艦のミュニファスント級は別の艦艇の砲撃を喰らっており既に大破し掛かっていた。
そこへ追い打ちを掛けるように“オークランド”と“フリント”から放たれた振盪ミサイルが全弾命中しそのまま撃沈した。
「“オークランド”、“フリント”、敵ミュニファスント級1隻撃沈!」
マーファント大尉の声はいつにも増して震えていた。
周りの将校や下士官兵達も皆いつもと顔つきや表情が違う。
ベテランのジョルダーノ上等兵曹ですら緊張の面持ちが薄らと感じられた。
それもそのはず、これは演習でもなんでもない本当の戦場だ。
しくじって連合艦隊の集中砲撃を受ければヴェネター級なんて呆気なく沈む。
「敵ミュニファスント級撃沈!」
もう1隻のミュニファスント級を沈め、“デタミネーション”は次の標的を探した。
今の所共和国軍が優勢とはいえまだこれは初戦に過ぎない。
ハイマンにとって片時も気を抜くことが出来ない日々が始まった。
連合軍による第一次クワット攻勢は失敗に終わった。
第一防衛線の存在を察知出来なかった第2機動群は艦隊の集中砲火を受け大打撃を被った。
辛うじて第2機動群はニモーディアまで後退したが生きて帰れた戦力は2/3程度でしかなかった。
また同時期に連合軍は迂回して少数の部隊をクワットへ突入させようとしたもののこちらの迂回攻撃も失敗した。
迂回しクワットに直行した結果宇宙ステーションを基幹とした要塞群に突入し壊滅的な被害を被った。
結果としてクワットへの攻撃は無意味に艦船を失うだけで終わった。
この結果を受けてパーロ提督はクワットの戦力は想像以上だと報告し作戦の失敗と撤退を軍司令部に要求した。
しかし連合軍最高司令部は『現状受けた戦力の被害は全体から鑑みれば軽微』とし、作戦の続行を言い渡した。
少なくともクワット攻略艦隊の戦力はまだ攻略不可能と判断されるほど減ってはいなかった。
しかしこのままニモーディアから進撃してクワットまで突破は難しいと考えたパーロ提督は作戦の再構築の為大規模な周辺偵察を実行した。
作戦実行前から大規模な偵察活動は通常偵察、威力偵察共に行なっていたがこのような結果になると事前偵察は失敗と言わざるを得ない。
パーロ提督は一旦総攻撃を取りやめ、再び敵の状態を探ることに専念した。
可変翼自動推進式偵察バトル・ドロイド・マークⅠ、通称偵察ヴァルチャーがクワット星系に放たれた。
偵察ヴァルチャーは従来のヴァルチャー級スターファイターを偵察モデルに改造した機体であり、通常機より航行可能時間が長かった。
また一部の機体にはプローブ・ドロイドの母機として機能していた。
偵察ヴァルチャーは容易く領域内に侵入し偵察活動を行なった。
当然これを黙って見ている共和国軍ではない。
既に侵入した偵察機にはそれ相応の対処法があった。
「こちら“サーベイⅥ”、指定ポイントに到着。指示を待つ」
最前線で敵の偵察活動を行なっていたIGV-54“サーベイⅥ”は一旦後方へと下げられまた別の任務を与えられた。
これは長距離通信と長距離レーダーを保有するIGV-54だからこそ出来る仕事だ。
「艦長、各機配置につきました」
航空士官の報告を受けランディ大尉は「あの装置は本当に上手く稼働するんだろうな」と疑問を呟いた。
今回の任務の為に与えられた通信装置はARC-170の後部ツイン・ブラスター砲を丸々潰して取り付けられた。
『“サーベイⅥ”、こちらで対ドロイド電波を流す。回線を指定した通りにセットせよ』
宇宙ステーションから通信が届き“サーベイⅥ”に回線の指定書が送られた。
通信士官が回線をセットし展開したARC-170隊に繋げる。
「通信回線のセット完了、いつでもいける」
ランディ大尉の報告から数十秒経ってステーションから『準備は完了した』と報告が入った。
『電波を発信する、各隊念の為自軍ドロイドに気を配れ』
宇宙ステーションから放たれた電波はやがて配置されたIGV-54を中継してさらに広範囲に放たれ、展開中のARC-170から更に遠くまで広がった。
対ドロイド電波を受けた偵察ヴァルチャーやプローブ・ドロイドは機体内のドロイド脳に対してダメージを与える代物だ。
人体や機体本体にはこれと言ったダメージは無いがドロイド脳のプログラムが改竄され機能停止に陥る。
広範囲に放たれた電波の影響で偵察ヴァルチャーがどこにいようとプローブ・ドロイドを展開して偵察範囲を広げようと全て無意味となった。
連合軍が展開した偵察ヴァルチャーの帰還率は1割にも満たなかった。
このような結果では偵察は再び失敗したと言うしか無いだろう。
連合軍は再び情報の乏しいまま戦地へと向かわざるを得なくなった。
連合軍の第二次攻勢は徹底した正面の防御線の迂回を以て行われた。
まず連合軍は艦隊を3つに分け三方向からの同時攻撃を実行した。
艦隊司令部を含めた第1機動群は大きく迂回して防衛線の後ろ側からの突破を試みた。
確認されただけでニモーディア方面には2つ以上の防衛線が構築されている。
その為防衛線の裏側の防衛線は薄いのではないか。
こうした考えの下、攻撃を仕掛ける部隊では最も多い艦艇を突入させた。
一方第3機動群、第4機動群は両翼の宇宙ステーションが防衛する方面へ突撃した。
宇宙ステーションを基幹とした防衛線はあくまで少数の艦艇を突入させたのが問題であったと司令部は認識し、より大部隊を投入すれば突破出来るだろうという考えの下2個機動群が投入された。
損害を受けた第2機動群は戦力の回復と予備兵力に専念し後方での待機を命じられた。
しかし連合軍は偵察の失敗もあってか共和国軍がクワットに展開した戦力を大きく見誤っていた。
共和国クワット方面軍は後方にも第四防衛線として第一防衛線、第二防衛線とほぼ同等の戦力を配置している。
しかも距離的に言えばクワット本国を守る第三防衛線が即座に援軍を展開出来る距離にあった。
また宇宙ステーション群による要塞防御線の過小評価も連合軍にとって大きな痛手となった。
大きく迂回した第1機動群はタイミングを揃えての同時攻勢出会った為他の機動群とほぼ同じタイミングで敵艦隊と遭遇した。
第四防衛線のテナント中将は「我々にも戦場の天運が巡ってきたようだな」と嬉々として迎え撃つよう命令した。
連合軍は再びスター・デストロイヤーとドレッドノートで構成される火力の壁に阻まれた。
これでも“
同じ頃に第3機動群と第4機動群も戦闘状態に陥った。
この2つの機動群は防衛線が突破出来ないというよりも突破しても次々と新たな敵が現れ損耗を強いられているといった状態だった。
複数箇所に展開されているステーションと機動部隊が展開してきた敵艦隊を更に襲いかかった。
突破しても新たな敵が現れ、ターボレーザーの嵐を浴びせかけられ、奥に行けば行くほど損耗していた。
しかし連合軍はそれでもなんとか奥地への浸透に成功していた。
大部隊を投入すれば辛うじて突破出来るという司令部の考えは半ば間違いではなかった。
共和国軍は優勢ではあるがそれでもこのままではいずれ浸透されるという認識であった。
『要塞群の損耗は軽微だがこのままでは浸透される可能性が高い』
第1ステーション要塞群司令官のワーツ提督は状況をそう報告した。
第2ステーション要塞群司令官のウィーラー提督もそれに同意した。
『まだ突破された訳ではない為、今からでも阻止線を再展開することも出来るが』
「それは第三防衛線の戦力で行おう。君達は敵艦隊の殲滅に専念してくれ」
既に連合軍は度重なる戦闘でクワットに辿り着く前に損耗し切っている。
第三防衛線と予備兵力で構築した仮の阻止線でも艦隊はそれ以上先へは進めなくなるだろう。
『我が第四防衛線は難なく防衛に成功している。連中の艦隊はだいぶ受け身になってきた』
「よくやったニルス、そのまま抑えておいてくれ。まずは要塞群に群がる連合軍の対処が先だ」
両翼の連合軍を撃退すればことと次第によっては第四防衛線の敵艦隊は孤立する。
そうなった場合、予備兵力と要塞群の戦力を用いて包囲を形成すれば後は好きなように出来るという訳だ。
『私の艦隊からそれぞれに増援を送ろう。こちらはまだ余力がある』
「それと第一と第二の独立機動群を動かして各要塞の機動援護に回らせろ。潰乱した敵部隊を相当させる」
前線の各司令官は了承し隣に控えている参謀達にすぐ部隊を動かすよう指示を出し始めた。
「提督、阻止線の司令官は誰に任命いたしますか?」
会議に参加しているランパート准将はターキン提督に尋ねた。
直接司令部が指揮を下すのか、それとも阻止線に臨時の司令官を置くのか。
ターキン提督は後者を選んだ。
「第三防衛線にオクタヴィアン・グラントとオスヴァルド・テシックという名の准将がいたはずだ。彼らをそれぞれの阻止線の司令官に任命する」
ランパート准将は頷き、早速調整を始めた。
ターキン提督は後ろで腕を組み、戦況図を睨みつけながら呟いた。
「連合艦隊にはここで壊滅してもらわねばならん。共和国の星を脅かした末路としてな」
既に初戦で防衛に成功したターキン提督はクワットの防衛から連合軍の撃滅に思考を切り替えていた。
-共和国領 クワット星系 第1宇宙ステーション要塞群-
司令官達の会議が終了したのと同時に独立機動群には正式に移動命令が下された。
所属する艦船が第一防衛線を離れ要塞群へと向かった。
ハイマンの“デタミネーション”は第1宇宙ステーション要塞群の機動援護へと向かった。
“デタミネーション”の乗組員達は初戦での連合軍撃退を受けて士気が高揚していた。
このまま無傷で帰れるはずだ、このままなら負けるはずはない。
ここまでの楽観的思想を持ち合わせているのは全員が新兵でデノンの戦いの時からいる乗組員達はそうは思えなかった。
勝利にはしゃぎ過ぎず、高揚を上げ過ぎずという塩梅だったのでジョルダーノ上等兵曹もハイマンも特に咎めることはしなかった。
人間、戦う時には精神面での支えが必要になってくる。
ジェダイはそれをフォースで補うらしいがハイマンはそこまで熱狂的な信徒ではない。
だからこそ勝利や戦果の高揚で少しでも心の支えになればと願っていた。
「総員、本艦はこれより友軍ステーションの救援に向かい、再び連合艦隊と対峙する。前とは違い僚艦との3隻行動が増えるだろうが訓練を思い出し如何なる時も冷静に対処して貰いたい」
コムリンクで乗組員達に激励を送り、最後に「諸君らの奮闘と全員の生還を期待する」と言葉を締め括った。
最後の最後にハイマンの本音が漏れ出てしまったが差して士気を下げることはないだろう。
最後の言葉が叶わないことだとは分かっていてもハイマンは願わずにはいられなかった。
「間も無く敵艦隊と接敵します」
ハイマンは軍帽を深く被り、コムリンクを手に持って戦闘中の宇宙ステーションに通信を繋いだ。
「こちらVeSD“デタミネーション”、ステーション聞こえるか。そちらの救援に駆けつけた」
『こちらステーション・オスカー、救援を感謝する。現在我が隊は連合軍の機動部隊と交戦中』
「すぐそちらに着く、耐えてくれ」
最大船速で移動していた“デタミネーション”だが一旦速力を落として偏向シールドの強化と砲塔のチャージにエネルギーを割いた。
「敵艦隊及び友軍ステーション部隊を発見!」
ハイマンはエレクトロバイノキュラーでビューポートから敵艦隊の戦力を確認した。
「敵艦は……レキューザント1、ミュニファスント3、ルプス5、コーマス・ギルド・コルベット4か」
「コルベット艦の方は来る前にだいぶ狩られていたようですね」
へメッツ大尉は周囲に散らばる艦艇の残骸から戦闘状況を予測した。
一方で友軍の戦力はヴェネター級3隻、アークワイテンズ級6隻、ドレッドノート級4隻、宇宙ステーション1基。
今の所友軍の優勢ではあるがそれでも助けに入らない理由にはならない。
「プロトン魚雷と主砲の全門をレキューザント級とミュニファスント級らに向けろ。優先して主力艦を潰す」
「了解、主砲一番から四番全てレキューザント、ミュニファスントに集中砲火」
バクラン大尉から砲塔に指令が伝達され砲口が敵艦隊の方へと向く。
砲塔内では砲手達が攻撃準備を終えて命令を待っていた。
「冷却器問題ありません」
「システム問題ありません、対艦モード起動中」
「照準よし、いつでも撃てます」
3人の新兵はもう既に初陣は経験したばかりであるがそれでも激しい緊張と冷や汗が止まらなかった。
ハモック三等兵曹は3人を宥めつつ自身も冷静でいようと努めた。
「艦長、重ターボレーザー砲の有効射程距離に入りました」
「主砲、及び魚雷発射管、撃て!」
“デタミネーション”は重ターボレーザー砲とプロトン魚雷を放ち敵艦にダメージを与える。
後方の攻撃を想定していなかった敵部隊はもろに被弾しエンジンが吹き飛ぶ艦もあった。
“デタミネーション”に対処しようと後方へ回頭しようとした艦艇はなおも悲惨な目に遭った。
前面のヴェネター級3隻と後方のヴェネター級1隻の砲撃をまともに喰らい呆気なく轟沈した。
「ミュニファスント1隻撃沈!」
「ルプス級2隻撃沈!」
「ミュニファスント、エンジン大破!」
「距離を取りつつ現在の火力を維持、敵が回頭して接近するようなら後退して距離を維持」
敵が手負いの艦艇とはいえ油断する事は出来ない。
レキューザント級であるならば1対1の戦闘でレキューザント級が勝つ可能性もある。
ミュニファスント級は3隻で立ち向かえばヴェネター級ですら敗北するケースもあった。
そして今、敵部隊にはレキューザント級1隻、ミュニファスント級2隻がいる。
例え相手が中破、大破しようと脅威度は変わらなかった。
「艦長、敵艦より通信です」
「何…?攻撃中止、攻撃中止だ」
このタイミングで敵が通信を求めてくるというのは当然やることは1つだろう。
ハイマンはへメッツ大尉と共にホロテーブルに向かった。
ホロテーブルでホログラムを起動した。
『司令官のリュメル大佐だ……我々は降伏の申し入れをしたい。これ以上我々は戦えない……降伏する…!』
やはり通信の目的は共和国軍への投降だったようだ。
リュメル大佐も額から血を流し、腕を抑えている。
『ステーション司令官のディーンヴィス大佐である。貴官らの降伏を私は受け入れようと思う。他の艦長達はどうだ』
『意義なし』
『同じく』
『私も同意見です』
3人のヴェネター級艦長はディーンヴィス大佐に賛同した。
ハイマンも3人と同じく降伏の許可に賛同した。
「私も構いません」
『では直ちに武装解除し我がステーションに入港せよ。負傷者は可能な限り手当しよう』
『助かる……』
もし相手の指揮官が生身の人間ではなくタクティカル・ドロイドだたら今のような選択はしないだろう。
これが人間の弱みなのかもしれないが、故に人は絶滅することなくやがて一旦闘いに区切りをつけられる。
『艦長、助かった。君の救援がなければ我々ももう少し損害を覚悟しなければならなかった』
「いえ、これも我々の使命です。では本艦は他のステーションの救援へ向かいます」
ディーンヴィス大佐は意外にもその報告に顔を顰めた。
それから暫くしてハイマンにある情報を伝えた。
『実は……数十分前に帰投した爆撃機隊の報告によるとこの周辺領域に手負いのプロヴィデンス級がいるらしい……爆撃機隊が残弾を叩き込んだから少なくともダメージは入ったらしいが』
「了解しました……警戒しておきます」
『こちらでも直ちに攻撃隊を再度送る。それまで艦長と“デタミネーション”が無事に航行出来ることを祈る』
ディーンヴィス大佐はハイマンに敬礼しホログラムは閉じられた。
“デタミネーション”は反転し前線に近いステーションへと向かった。
例え航行中でも艦内には張り詰めた空気感が充満している。
それもそのはず、ここは例え何もなくとも戦場だ。
どこからともなく飛んできたターボレーザー弾が運悪く着弾し何かしらの損害になるかも知れない。
そうでなくともこの領域内にはプロヴィデンス級がいるのだ。
センサー士官達はモニターを凝視し敵影を監視し続けた。
「艦長、突出した敵艦隊の一部が阻止線と衝突した模様。現状的艦隊が劣勢ととのことですが」
「このまま突破されますかな?」
司令部からの報告を受け取ったへメッツ大尉はハイマン達に報告した。
ジョルダーノ上等兵曹は最悪のケースを口にしたがハイマンは「その可能性は限りなく低いだろう」と否定した。
「連中の艦隊は度重なるステーション戦で相当疲弊している上に数も減っているだろう。もうこの時点で阻止線を突破する能力は残っていないはずだ」
しかも先ほどのステーションの状況から考えるに共和国軍の損害は軽微で全体的に優勢である。
適度な損害を与えつつ後方に敢えて突破させることで連合軍は進みながらも損耗し続けた。
「今頃阻止線にぶつかった部隊は全滅しているだろう」
「では我々には特段影響はないと?」
ジョルダーノ上等兵曹はハイマンに尋ねた。
「後退すれば再びステーションの部隊に阻まれてそれこそ全滅するだろう。我々にとって一番の問題は周辺にいるプロヴィデンス級……」
「艦長!プロヴィデンス級発見!!前方4万2,000メートル付近にプロヴィデンス級1!」
3人は表情を変えビューポートに振り返った。
へメッツ大尉はエレクトロバイノキュラーを持ってビューポートから覗き込み、ハイマンは「モニター出せるか?」と尋ねた。
「荒いですが一応は…」
モニターの一つに前方のプロヴィデンス級が映し出された。
報告通りプロヴィデンス級は既に小破、中破に差し掛かっており船体から爆発の炎が見えた。
プロヴィデンス級は接近する“デタミネーション”に気づいたようでターボレーザー砲を撃ってきた。
当然殆どが外れ着弾しても偏向シールドで阻まれた。
しかしこれでは戦闘を回避することは不可能だ。
「敵艦に気づかれた以上撃破せねば、応戦しましょう艦長!」
へメッツ大尉は真っ先に撃破を進言した。
もはや戦闘は不可避とハイマンも認識しておりすぐに命令を出した。
「ラスボーン、護衛機と全爆撃機中隊を出して対艦攻撃を実行せよ。“オークランド”と“フリント”は接近して直接攻撃」
船体中央のハンガーベイが開きまずZ-95ヘッドハンターが先行する。
ヘッドハンターも対艦攻撃仕様として振盪ミサイル発射装置が両翼に増設されていた。
続いてレイヴン中隊のYウィングが発艦した。
その後方には電子妨害機能を新しく備えたARC-170の1個中隊が発艦した。
“デタミネーション”で用いられる全てのスターファイターが母艦から飛び立つ。
「全機、先行突入して敵の対空砲火を潰す。とにかくRC-170とYウィングを優先して守れ。あとは各自自力でなんとかしろ」
エスコート中隊の中隊長、ブレス・ハーマインド大尉は各機にそう伝達した。
スターファイター隊の後にアークワイテンズ級2隻が続き、更にその後に“デタミネーション”が続いた。
“デタミネーション”の全ての砲塔がプロヴィデンス級に狙いを定め、砲撃命令を待った。
「スターファイター隊及び“オークランド”、“フリント”へ伝達。こちらで火力支援を行いなるべく注意を引き付ける、敵はタフな艦だ、本気でかかれ」
プロヴィデンス級キャリアー/デストロイヤーは自由ダック義勇工兵隊によって建造された大型の主力艦だ。
特徴的なのは大型と小型の二種類があり、今“デタミネーション”が相手にしているのは大型のプロヴィデンス級であった。
「全砲塔照準よし、いつでも撃てます」
バクラン大尉の報告と共にハイマンは腕を振り下ろした。
「全砲門開け!撃て!」
一瞬のうちに青白いレーザー弾が放たれほぼ全弾が命中した。
しかし流石はプロヴィデンス級、あれだけ戦隊が損傷しているにも関わらずまだ偏向シールドは健在だった。
敵艦への被害は少なくまだまだ戦闘可能であった。
接近するに連れてプロヴィデンス級の砲撃も徐々に当たるようになってきた。
まだ偏向シールドが機能している為直接的な被害はないが“デタミネーション”に傷がつくのは時間の問題だった。
「偏向シールドの出力を前面に集中、敵の正面火力をなんとしても防げ!」
“デタミネーション”の前面偏向シールドが強化され船体のもっと手前でレーザー弾が弾けた。
その間に先行したエスコート中隊がプロヴィデンス級の船体に取り付き、砲塔を破壊し始めた。
偏向シールドの内部に入ればスターファイターのレーザー砲や振盪ミサイル、プロトン魚雷でも十分驚異だ。
プロヴィデンス級の船体に再び爆発が増えた。
“デタミネーション”の重ターボレーザー弾も何度も攻撃を叩き込むことによりついに戦隊へ直接被弾した。
「命中、被弾確認!敵艦に爆炎を確認!」
右舷三番砲塔では命中を確認したジェラン一等海士が喜びの声を上げた。
ヴェックス一等海士も砲塔を操作しながらしっかり笑みを浮かべる。
「よし、この調子で当てていけ。冷却も絶やすなよ…!」
「はい!うわっ!」
ストーク一等海士の言葉は大きな揺れによって遮られた。
船体に激しい揺れが襲う。
遂に“デタミネーション”にもこの戦い最初の被弾が訪れた。
「上部右舷、下部左舷に被弾!偏向シールド復帰!」
「ダメージコントロール、隔壁閉鎖!エンジンの出力も偏向シールドに回せ!」
偏向シールドを強化する前にもう1発被弾し“デタミネーション”の損傷箇所は3つになった。
プロヴィデンス級の火力は凄まじくやはり侮り難い敵であった。
しかしハイマンの冷静な判断により即座に隔壁が閉じられ、艦の被害は最小限に抑えられた。
しかもその間にYウィングによる対艦攻撃が開始された。
何発ものプロトン魚雷やイオン魚雷が命中し、投下されたプロトン爆弾によってプロヴィデンス級の被害が増していく。
プロヴィデンス級の艦内では今の爆撃で一部の砲塔にエネルギーが回らなくなった。
偏向シールドも消失し始めプロヴィデンス級はいよいよ艦としての最期を迎えようとしていた。
そんな状況でも諦めずにプロトン魚雷とターボレーザー砲を放つ執念とそれが出来る性能は感嘆に値するだろう。
「敵艦の偏向シールドは弱まっている、一気に畳みかけろ!」
3隻の軍艦による集中砲火を受けてプロヴィデンス級は完全に沈黙した。
最期は重ターボレーザー砲が敵艦の弾薬庫に直撃し、大爆発を起こして撃沈した。
「敵艦の撃沈を確認……!」
「スターファイター隊の収容及び被弾箇所の負傷者の確認急げ。スターファイター隊収容後は直ちに撤退する」
三箇所被弾した程度ではまだ撤退するに早い。
デノンを防衛した時はもっと酷い損傷だったことを覚えているハイマンは即座に戦闘続行の判断を下した。
連合軍が撤退を開始したのはプロヴィデンス級との戦闘より2時間後のことである。
連合軍のクワット攻勢はまたしても失敗となった。
-共和国領 クワット宙域=ニモーディアン・スペース境界線 ヴェネター級“ソヴリン”-
「提督、全艦戦闘配置完了しました」
ヴェネター級スター・デストロイヤー“ソヴリン”の艦長、レヴェン・フォールブス大佐は司令官のターキン提督に報告した。
提督は後ろで腕を組み「よろしい」と艦隊の状況に満足を示した。
“ソヴリン”を旗艦とするこの特別編成艦隊は全て第18宙域軍から引き抜かれた戦力で構成されている。
司令官はターキン提督が務め、表向きの呼称は前線視察部隊とされていた。
「提督、やはり危険です、ここは他の司令官に任せてクワットへお戻り頂く方が……」
「准将、旗艦がたった1隻で艦隊を置いて逃げるようなことは未来永劫存在しないのだよ」
少し焦り気味のランパート准将とは打って変わってターキン提督はいつも通り冷静沈着であった。
ターキン提督はあえて艦隊を率いて最前線の境界線まで進出した。
提督は事前に情報部のランシット少将に命令して『最高司令官のウィルハフ・ターキンが前線視察に来る』という情報を流させた。
司令官を殺害しクワット方面軍に混乱を齎せば勝利の道が開くのではないかという希望を敵軍に持たせる為だ。
だが実際はこれ自体が罠であった。
提督は罠に掛かった敵部隊を自らと自らの一族が鍛えた第18軍の将兵で叩き潰すつもりなのだ。
「嬉しそうだなモッティ中佐」
ターキン提督は後ろに控えさせている自席参謀のコナン・アントニオ・モッティ中佐に声をかけた。
モッティ中佐はターキン提督がこの攻撃案を提示した時から大賛成していた。
「ええ、もちろんですとも閣下。この手で直接分離主義者どもを叩き潰せると思うと感情が抑えきれません」
「冷静であるよう努めろ中佐、指揮官の勤めを果たすのだ」
モッティ中佐は「ハッ!」とアドバイスを受け入れ敬礼した。
彼は本当に生粋のアウター・リムの将校のようだ。
彼はエリアドゥの隣である惑星セスウェナ出身でありターキン家とは親戚の間柄であった。
身内贔屓するつもりはないがこのような場において彼のような人物は頼りになる。
少々性格が過激過ぎる面もあるが有能で役に立つのであれば特段問題はない。
ランパート准将にはランパート准将なりの役立つ場所があるようにモッティ中佐モッティ中佐なりの役立つ場所がある。
例え2人の性格が悪く出世欲に塗れていたとしてもだ。
「閣下、敵艦隊の移動を確認、凡そ1個小艦隊です」
士官の報告を聞き、ターキン提督は艦隊に命令を出した。
「全艦反転、連合軍の背後を突け」
艦隊はゆっくり回転し全速力で敵艦隊を追い始めた。
連合軍の機動部隊は共和国情報部から流された偽情報を元に行動している。
その為本来ターキン提督のいない地点に部隊を動かしていた。
「敵艦隊との接敵まで後5分」
「全艦、速力を落としシールドと武装にエネルギーを回せ。後方の艦は艦載機部隊を展開しスターファイター戦の準備を」
ARC-170やヘッドハンター、Yウィングが発艦し艦隊と速度を合わせて航行する。
「敵艦隊発見!」
センサー士官の報告と共にブリッジに敵小艦隊の存在が映し出された。
ターキン艦隊は見事に小艦隊の背後を取ることに成功した。
しかも小艦隊のセンサー範囲圏外を航行している為、連合軍はまだターキン艦隊に気付いていない。
「敵艦隊速力低下」
「流した情報通りの地点に辿り着いたようですな」
モッティ中佐は邪悪な笑みを浮かべ攻撃の命令を待ち望んでいた。
それは恐らくこの艦隊の誰しもがそうだろう。
闘争の中で生まれ、闘争の中で生きた人々はやがて否が応でも闘争を望むようになる。
ターキン提督はそんな者達に命令を出した。
「
艦隊の集中砲撃が連合軍小艦隊を襲った。
エンジンに被弾し大破する艦もあれば行動不能になった艦に衝突して損傷する艦もあった。
ヴェネター級の砲撃の合間を埋めるようにドレッドノート級やヴィクトリー級が重ターボレーザー砲を放った。
連合軍はなんとかして応戦しようと敵前回頭を進めたがターキン艦隊の火力の前になす術もなくダメージを受けていった。
「敵小艦隊、スターファイター隊を展開。爆撃機も含まれています」
ミュニファスント級やプロヴィデンス級から発艦したヴァルチャー級やハイエナ級ボマーがターキン艦隊を急襲せんと迫った。
機体は全てドロイドだ、仮に撃墜されたとしても足止めになればそれで良かった。
「アークワイテンズ級は僚艦の防御に専念。こちらもスターファイターを用いた対艦攻撃を開始せよ」
アークワイテンズ級の対空防御によってレーザーの弾幕の中に多くのドロイド・スターファイターが消えていった。
ハイエナ級も艦隊に攻撃を展開する前に警備に当たっていたヘッドハンターやARC-170によって全て撃墜された。
逆にドロイド・スターファイターの合間を掻い潜ったYウィングが敵艦隊にプロトン魚雷を放つ。
偏向シールドも度重なる砲撃で弱まっている中でこの爆撃は手痛い一撃だ。
小艦隊の混乱は初手の奇襲に加えてYウィングの爆撃、永続的に行われる艦砲射撃の影響で回復の目処が立たなかった。
「軽機動部隊を突入させ敵艦隊を撹乱させる」
ヴィクトリー級やドレッドノート級を基幹とし補助艦としてアークワイテンズ級やCR90コルベットが付けられた軽機動部隊が次々と敵小艦隊へ突撃する。
宇宙軍の戦闘ドクトリンとしてドレッドノートやバトルクルーザーを主力で用いる大鑑運用論とコルベットやフリゲート、クルーザーなど機動力に優れた小型艦で機動戦を展開する理論の2つに分かれていた。
エリアドゥを含めた辺境域保安軍の創始者、ラヌルフ・ターキンは軍事理論としては後者に位置していた。
彼が最初期に生み出しスターク=ハイパースペース紛争で戦った艦隊は後者の機動戦運用論に基づいたものであった。
その名残というべきか、辺境域保安軍から共和国軍に移った一部の将兵は小型艦による機動戦を得意としていた。
機動力を活かした中、小型艦が懐に入り込み、艦艇にターボレーザー砲を叩き込んだ。
しかも幸いなことに連合軍小艦隊は混乱しており効果的な反撃が出来ずにいた。
軽機動部隊が艦列を食い破っている間に正面艦隊のヴェネター級が重ターボレーザーの雨を集中的に撃ち込んだ。
ヴェネター級は後々のスター・デストロイヤーより火力が低いとはいえこのような場合は主力艦として頼りになった。
「敵小艦隊の損耗率、45%に到達」
「“アドミラル・スベルグ”より報告です、敵将艦隊旗艦、“アドミラル・セムズ”の撃沈に成功したと」
小艦隊旗艦“アドミラル・セムズ”はヴェネター級の集中砲火を喰らい、司令官のデトッズ准将を巻き込んで撃沈した。
艦隊の指揮官を失った残存艦艇は更なる混乱に陥り最早組織的な行動は出来ずにいた。
だからと言ってターキン提督が攻撃を止めるような人ではなかった。
「各艦、徹底的に殲滅せよ」
小艦隊は全滅した。
ターキン艦隊の急襲はまるでかの“マレヴォランス”戦役の復讐のようにも見えた。
この第二次攻勢で再び連合軍は大きなダメージを負った。
『本日、共和国クワット方面軍は分離主義勢力によるクワット侵攻を再び阻止に成功しました』
クワット方面軍報道官を務めるランパート准将は今、ホロネットニュースにて軍の戦果を共和国国民に報告していた。
報道官としてカメラの前に出るランパート准将は階級章の上に略綬章がついており、肩章には准将を示す菱形の1つ星が付けられていた。
『分離主義勢力は三方向からの奇襲攻撃を敢行しましたが、我々クワット方面軍は冷静にこれに対処し敵艦隊の27%を撃滅しました』
ランパート准将は誰しもに分かりやすいように滑舌良く穏やかに話した。
彼は以前にも統合本部報道官を務めていたことがある。
ハイマンは自室のモニターで報道を確認した。
『またこの一連の戦いで敵軍の将官3名の死亡を確認しました』
第一ステーション要塞群突破中に第3機動群司令官のウェム・デトアス少将が戦死した。
第4機動群では分艦隊司令官のストロ・クロージェ准将が戦死。
そしてターキン提督を暗殺すべく艦隊を動かしたデトッズ准将を合わせて3名の将官が戦死した。
これでクワットの戦いで戦死した将官は合わせて5名となった。
『一方クワット方面軍の損害は極めて軽微であり、防衛体制は依然として強固なままです』
ランパート准将が発する言葉は全て嘘ではなかった。
共和国軍は防衛戦で再び勝利した。
しかも損害は軽微で尚且つ連合軍の将官は3人も戦死した。
このまま上手くいってくれるといいのだが。
ハイマンはホロネットを消しながらそう希望的観測を思い浮かべた。
「……っはぁ……いつになったら終わるんだろうな、この戦争は」
ハイマンは誰もいない自室で1人呟いた。
もしこんな戦争が始まると知っていたら態々将校などになっただろうか。
父は確かに軍人であったが無理にハイマンに軍に入ることを勧めるような人ではなかった。
しかしハイマン自身は父も同じ職業だったし軍に入れば安定はすると考え将校になった。
実際戦争が始まるまでは自分の考えは当たっていたと思っていた。
しかし戦争は始まり、大学校にいたハイマンは即座に全線に駆り出され佐官として艦長になった。
戦場では数多くの仲間の死と自身の死の恐怖を経験した。
軍人であるからそうなっても仕方がない、それは理屈で分かる。
しかし内心のどこかで納得し切れない感情があった。
ハイマンはいつもそうだった。
同じ感情を感じる度にハイマンは理屈で理解出来たのだからとその理屈に従っていた。
気づけば戦争が始まる前から二階級も死なずに昇進し、艦長として何千人もの若い将兵の指揮官になった。
これで良かったのだろうか。
軍人にならない道が、戦争が起こらない道があったのではないだろうか。
そんなことを思う度にハイマンはどうしようもなく戦争の終わりを望んだ。
しかしそのことを思う度にそんな未来はなく、考えるだけ無駄であるという理屈が思い浮かんだ。
ハイマンは再び理屈の方を選び、悩むことを辞めた。
『艦長、艦の修復が完了しました。いつでも出航出来ます』
ジョルダーノ上等兵曹が艦長室まで報告しに来た。
ハイマンは「ブリッジに今から行く」とだけ伝えた。
襟のホックを付け直し、軍帽を深く被り直す。
艦長室のドアが開きジョルダーノ上等兵曹はハイマンに敬礼した。
「上等兵曹、新兵たちの様子はどうだ」
「一部は疲れて休んでますが士気は上々ですよ。艦の損傷が軽微なのと勝ったことが大きいんでしょうね」
ハイマンが危惧していたような新兵達の混乱や精神病の発症というのはまだ数が少なかった。
少なくとも艦の損傷を理由に一時的に休むことが出来た。
もう少し新兵達への休息を取らせてやりたかったが仕方ない。
他の艦だって一杯一杯だろう。
「では1時間後に艦を出す。乗組員はもう少し休ませたい」
「分かりました」
「君も少し休んでおけ上等兵曹」
ジョルダーノ上等兵曹は「お気遣いどうも」と軽く敬礼した。
ここでハイマンが部下達に休息を取らせておいたのは正しかった。
これから僅か数日後、クワット最大の戦いである攻勢がスタートする。
今度こそ“デタミネーション”も無傷ではいられない大激戦が始まるのだ。
-共和国領 クワット星系 第一防衛線-
二度目の攻勢失敗を受けてパーロ提督は再び作戦の失敗と艦隊の撤退を訴えた。
しかし連合軍最高司令部と企業組が断固として反対した。
クワットが失陥しなければ連合軍は最終的に敗北する、クワットを堕として接収すれば有益な資産となる。
理由は様々であったがクワット攻略を中止するとは誰も言えなかった。
連合軍は惑星オッサス防衛艦隊の一部を補充としてクワット攻略艦隊に充てた。
しかしパーロ提督はクワットがもう突破不可能な艦隊による要塞であることを十分に思い知っていた。
少しでも防衛線を押せば他所の防衛線から増援が現れる。
しかも今迂回しようにも更なる増援艦隊が後方に展開しておりどちらにせよ突破は不可能だ。
クワットには単純に兵力がいるだけではなく、即座に阻止線を張れるほど戦力の展開と調整が得意なのだ。
そしてこれ以上少数の戦力で敵部隊に突入すればあっという間に確固撃破されるだろう。
であれば一か八かの賭けに出るしかない。
第三次クワット攻勢の為に集められた連合艦隊は総戦力全てを投入し総攻撃を敢行した。
当然この動きを察知していない共和国軍ではない。
第一防衛線には予備兵力の艦隊も投入し防衛に当たった。
事前に敵の進路に機雷を撒き、可能な限り侵攻を妨害した。
しかし連合軍はこの機雷群を無人艦を用いて突破した。
敢えて無人艦を機雷に突入させ爆発させることで穴を開け戦力の即時投入に成功した。
連合軍は再び第一防衛線の艦隊と接敵した。
しかも今度ばかりは連合軍の方が数的優勢であった。
「“ターサス・ヴァローラム”大破!“レメディ”中破!」
「右翼正面の部隊がこのままでは突破されます!」
「中央の艦隊を右翼に展開して再構築、中央はこの艦の火力でなんとか持たせるぞ」
スクリード中将の命令通り防衛線の中央に位置していたヴェネター級や一部の艦艇が右翼へと移動した。
その間に“フォートレス・オブ・ジュディシアル”は砲火力を最大まで上げて敵艦隊を砲撃した。
当然砲撃を受けた艦艇は無傷では済まない。
しかし連合艦隊が止まることは決してなかった。
後方の無傷の艦が前進し前衛の艦と入れ替わる。
このままでは幾ら敵艦を沈めてもキリがなかった。
「スターファイターの対艦攻撃でエンジンを破壊して足を止めろ。連中とて動けない味方を前に無理には突撃出来ないはずだ」
爆撃機の進路を切り開く為に対空砲火が強力なミュニファスント級に砲火が集中した。
何隻かが撃沈し後退した後でYウィングの対艦攻撃部隊が突撃した。
イオン魚雷をまず投下しその後にプロトン魚雷を放った。
プロトン魚雷を喰らった敵艦のエンジンは爆散し航行不能に陥った。
しかし連合軍の進撃は止まらない。
合間に小型艦を突撃させて前線の共和国艦を怯ませる。
その後にミュニファスント級やレキューザント級が突撃した。
「敵艦隊、なおも進撃中!」
「落ち着いて出て来たところを叩け!」
ルプス級のミサイル集中攻撃はアークワイテンズ級やヴェネター級の対空防御を持ってしても完全に防ぎ切ることは出来なかった。
被弾した艦艇の爆炎が光となって宇宙に瞬く。
その瞬きの中に人の生命が消えていった。
「このままでは押し切られるな……」
スクリード中将ですらこの状況で突破や後退の選択肢が出て来た。
敵の損耗率でこのまま第二防衛線を抜いてクワット本星へ攻撃を加えることは難しいだろう。
しかしこのままでは間違いなく第一防衛線は突破されるだろう。
そうなる前に艦隊を後退させて防衛線を再構築するか、それとも敢えて突破させて対応出来る敵を撃滅するか。
どちらにせよこのまま戦線を維持することはもう出来ない。
「各艦に伝達、後衛は援護射撃を行いつつ前衛、中衛は後退を…」
「閣下、後方より友軍艦隊接近!」
後方からの艦砲射撃が突出した連合艦に直撃し一時的に動きを止めた。
1個小艦隊と2個機動部隊が到着しそのまま第一防衛線に合流した。
『中将、援軍に参りました』
「タラッツ少将、君は第二防衛線担当のはずでは」
タラッツ少将麾下の艦隊は第二防衛線中央前衛を担っていた。
そこから戦力を引き抜くということは通常ではあり得ないことである。
『私がジャージャロッド提督に艦隊を送るよう指示したのだ』
「ターキン提督!」
スクリード中将はホログラムで出現したターキン提督に敬礼した。
提督は直立不動の姿勢と変わらない表情で命令を出した。
『正面の全戦力を用いて連合軍の主力艦隊をここで叩く。君の防衛戦には後1時間、いや40分持たせて貰いたい』
『そうすれば第三防衛線と第二防衛線の主力艦隊が到着し、両脇から連合艦隊を叩けます』
接敵した連合軍の戦力が敵の主力だと考えたクワット方面軍司令部はここで連合軍の主力を徹底的に叩くことを決意した。
まず第二防衛線の一部を第一防衛線の維持として展開し、後方の第三防衛線と第二防衛線の主力を投入して両翼からの包囲殲滅を実行した。
タラッツ少将の増援は第一防衛線の補強でありこの作戦で最も重要なのは第一防衛線が突破されずに粘ることであった。
敵艦隊が同じ位置に固定されればほぼ確実に集中攻撃で連合軍を撃破出来る。
『君の踏ん張りに期待しているぞ、スクリード中将』
「…分かりました、ご期待に応えて見せましょう」
無論ターキン提督は彼らが防衛線を維持してくれると見込んでの采配である。
ここで破れるようではクローン戦争の序盤に既に皆死んでいる。
艦列に混じって砲撃を繰り出す“デタミネーション”の乗組員がそうであったように。
「各艦へ伝達、我が艦隊は友軍の到着までここを死守する。前衛の艦隊のみ後方へ下がり、中衛の艦隊で前線を支えよ。いいか、40分持たせれば時期にターキン提督麾下の主力艦隊が到着する。我々の勝利はもう目前だ、諸君らの最後の一働きを見せてくれ」
“フォートレス・オブ・ジュディシアル”から放たれたその一言は各艦の乗組員達を大いに勇気づけた。
劣勢でありつつも艦隊の陣形を維持し、組織的な抵抗を続けている。
連合軍も戦力差では俄然優勢であるがそれでも先程までに突破することは出来なくなっていた。
「中将の言葉を聞いたな!総員、自身の持ち場を墓穴と思って敵を討て!これ以上クワットに、我々故郷の未来に足を踏み入れさせるな!」
ハイマンは砲撃を受けて揺れるブリッジの中で乗組員達を鼓舞した。
既に“デタミネーション”は度重なる砲撃を受けて何箇所も被弾し損傷していた。
独立機動群を機動運用することはこの状況において難しく他の艦隊同様に砲火の壁となって敵艦を防ぐ他なかった。
「偏向シールドの出力30%低下、シールドの再展開が一部追い付いていません!」
「エンジンの出力をシールドに回せ、展開範囲も調節してなるべく保たせろ」
「了解…!」
「艦長!エリア4-37に新たな敵艦隊、ミュニファスント2、ルプス4、ウェーブクレスト3」
新手の軽機動部隊が突っ込んできた。
これに対し命令を出すよりも先にレイヴン中隊のYウィング隊が対処した。
「各機、我々の母艦をやらせるな!最悪体当たりしてでも止めろ!」
オーレフ大尉の下Yウィング部隊の爆撃が開始された。
投下されたプロトン爆弾がミュニファスント級の対空砲火を掻い潜り目標に命中した。
10機による同時爆撃はミュニファスント級といえど耐え切れず撃沈、僚艦のウェーブクレスト級スター・フリゲートも1隻撃沈した。
しかし撃沈する寸前まで放たれたレーザー砲が1機のYウィングに直撃した。
『オーレフ隊長!』
「レイヴン7!」
被弾したYウィングはそのまま近くのルプス級に墜落し大爆発を起こした。
また1機、戦友を堕とされた。
既に2機の右軍機が撃墜されオーレフ大尉はその度にこれ以上やられるなよと部下に念を押した。
優秀な爆撃機乗りといえど目の前で何度も部下を失うのは辛いものがあった。
「クソッ!分離主義者どもめ!」
オーレフ大尉は腹いせに2機のヴァルチャー級を撃墜した。
レイヴン7が墜落したルプス級はダメージコントロールが間に合わずそのまま沈み始めた。
残す戦力はミュニファスント級1隻、ルプス級3隻、ウェーブクレスト級2隻である。
“デタミネーション”の集中砲火を喰らい既に1隻のルプス級が中破、2隻のウェーブクレスト級が大破した。
『こちら“アドミラル・クロナラ”、SPHA-T重ターボレーザーによる砲撃支援を開始する』
ヴェネター級“アドミラル・クロナラ”の機動部隊から放たれた重ターボレーザー砲は一撃で接近しつつあったミュニファスント級を撃沈し後方のレキューザント級にもダメージを与えた。
これはあるジェダイの将軍が考案したヴェネター級の火力強化プランで共和国グランド・アーミーで使用される
後方のヴェネター級が度々この重ターボレーザー砲を放つことにより何隻もの敵艦艇を葬っていた。
「残りの残存艦艇を薙ぎ払え!」
“デタミネーション”や周囲の艦艇の砲撃を受けて残りの敵艦は全て撃沈した。
しかし撃沈際にルプス級が放った対艦ミサイルが何発か“デタミネーション”に被弾し爆発を起こした。
「左舷に被弾!一部区画で火災発生!」
船体が揺れる中ブリッジの士官が懸命に報告する。
「隔壁閉鎖!隔壁内に消化班を向かわせろ」
「艦長、二時の方向より新手です!プロヴィデンス級2隻接近!」
マーファント大尉の声はいつにも増して震えていた。
ハイマンも顔を顰めこの最悪な状況を呪う。
「全砲塔の再チャージ急げ、目標はまず左側のプロヴィデンス級だ。もう片方は他の連中に任せておけばいい」
“デタミネーション”は最大火力を投射する為に角度を変え、プロヴィデンス級に狙いを定めた。
プロヴィデンス級も攻撃を受ける訳にはいかない為“デタミネーション”へ砲撃を開始した。
何度も放たれるターボレーザーの衝撃が艦を揺らす。
「チャージ完了!いつでも最大出力で撃てます!」
バグラン大尉の報告から数秒も経たずにハイマンは命令を下した。
「撃て!」
“デタミネーション”から放たれたターボレーザー弾がプロヴィデンス級に全弾命中する。
2発、3発と砲弾が直撃しようやくプロヴィデンス級の船体に直接被弾した。
しかし“デタミネーション”も同じだけ敵艦からの攻撃を喰らっていた。
「右舷前方に被弾、左舷ブロック1-932管理室応答なし!」
「艦の損耗率が33%を超えました、このままではすぐに中破します」
ブリッジでは戦果の報告よりも被害報告の方が多かった。
艦内では警報アラートが鳴り響き、負傷者達が近くの医療室まで運ばれていった。
一部では既に死者も出始めていた。
「戦闘能力の維持と沈まないことを最優先に、応答がない場合は即座に隔壁を閉鎖せよ…!」
ハイマンは眼前の敵を打ち破る為に救えたかもしれない乗組員の命を切り捨てる選択をした。
実際彼の選択は正しかった。
“デタミネーション”は自身より上位の存在であるプロヴィデンス級と対峙しているのにも関わらずまだ戦闘を続けられていた。
大型タイプ、しかも以前とは違い無傷のプロヴィデンス級と連戦中のヴェネター級では圧倒的にヴェネター級の方が不利だ。
「“オークランド”、“フリント”、中破!これ以上僚艦が持ちません!」
「後退の援護を!プロヴィデンス級の注意をもっとこちらにっ!」
ブリッジからでも見えるほどの爆発が発生した。
丁度右舷側の方向だ。
「主砲塔三番に被弾!大破!」
「何!?」
「三番砲塔応答せよ!繰り返す三番砲塔応答せよっ!」
バクラン大尉の声かけに辛うじて反応が返された。
「こちら三番砲塔……ハモック三等兵曹……こちらの被害は甚大……!」
辛うじて傷が浅かったのはハモック三等兵曹とジェラン一等海士だった。
他の2人は腕や背中に破片が刺さり気絶していた。
『直ちに砲塔から退避せよ。負傷者がいるならば可能な限り連れて行け!』
「了解…退避を開始する……ジェラン、ストークを担げるか」
「はいっ…!」
このような時の為にも訓練を行ってきた。
2人は気絶した2人を担ぎ、砲塔を離れた。
またこうなるのかとハモック三等兵曹は苦虫を噛み潰しながら持ち場を後にした。
“デタミネーション”はついに重ターボレーザー砲を1門失った。
これは大きな損失だ。
「プロヴィデンス級、こちらに接近してきます!」
プロヴィデンス級はこの状況を好奇だと考えたのか“デタミネーション”に接近してトドメを刺しにきた。
乗組員達は不安な表情を浮かべている。
このままでは確実に“デタミネーション”は撃沈してしまう。
ハイマンは思考を巡らせた。
どうすればこの状況を対処出来るのか。
そこで彼は殆ど博打のような選択肢を選んだ。
「こちらもプロヴィデンス級に接近して至近距離で砲弾を叩き込む!偏向シールドを左舷側へ展開!全速力で敵艦に突っ込むぞ!」
乗組員達はその選択に驚きながらもすぐに受け入れた。
特に古参の乗組員達は早かった。
デノンの戦いだって艦長の判断に従って生き残ることが出来た。
であれば今回だって生き残ることが出来るはずだと。
“デタミネーション”は全速力でプロヴィデンス級に接近しその間も砲撃を絶やすことはなかった。
この時幸いだったのはプロヴィデンス級の判断が遅れたことと“デタミネーション”の支援としてヴェネター級“アラクリティ”がプロヴィデンス級を攻撃していた。
演習で共に戦ったイェーペンカール艦長の艦が巡り巡って助けてくれたのだ。
“デタミネーション”は思いっきりプロヴィデンス級の船体に体当たりし、船体を擦り付けながら重ターボレーザー砲を撃ち放った。
ここからは単純な火力の殴り合いだ。
「撃ち続けろ!!」
互いの偏向シールドと装甲が簡単に突破され船体に幾つもの爆発が巻き起こる。
激しい2隻の撃ち合いの末、激戦を制したのは“デタミネーション”であった。
プロヴィデンス級のブリッジに砲弾が直撃し、指揮機能が麻痺しているところに重ターボレーザーの手痛い砲撃が何度も降りかかる。
ダメージコントロールに失敗したプロヴィデンス級はそのままゆっくりと沈んだ。
「プロヴィデンス級大破!各システム沈黙していきます!」
その報告はブリッジの乗組員全員を沸き立たせた。
危機的な状況だったがなんとか切り抜けることが出来た、艦長の選択は正しかった。
しかしこの後ブリッジは一気に静まり返った。
「敵艦レーザー砲、ブリッジに直撃コースです!」
一瞬だけブリッジの全体が紅い光で包まれた。
艦長と呼ばれ始めたのは一体何時頃だっただろうか。
艦長として最初に乗り込んだ軍艦は確かドレッドノート級重クルーザーだったはずだ。
あの頃はまだ戦場というものを正しく出来ていない所詮青二才だった。
それから度重なる激戦で否が応でも成長しヴェネター級スター・デストロイヤーの艦長という立場に就いた。
余りにも早すぎる昇進、急速な軍の拡大は若手の将校達にチャンスを恵んだと同時に地獄を見せた。
もし仮に、共和国軍が以前から存在してスクリード中将の言うような安全保障体制が確立していれば自分はこんなことになっていなかったのではないか。
自分の判断の末に死んだ幾百、幾千人の者達も死なずに済んだのではないか。
いや、それはどうだか分からない。
ただ一つ言えることは、幾百、幾千人が死んだ要因は自分にある。
責任から逃れることは出来ない。
仮に共和国が安全保障面でまともだったとしてもそれは自分のいる世界の共和国ではない。
自分は自分のいる場所にしかいられない。
そしてそこで成し遂げた、或いはしでかした責任は全て自分にある。
ならばその責任を果たさねばならない。
赤い深淵に溶けたハイマンの意識はゆっくりと回復していった。
「……っおい!担架早く持ってこい!後痛み止めとバクタありったけだ!」
「重傷者から優先して運び出せ!負傷者はその場で手当して持ち場に戻らせろ!」
目が覚めた瞬間、大きな警報音と人々の怒声に似た声が聞こえた。
最初ハイマンは呻き声を上げながら目を開けたつもりだった。
しかしどう頑張っても“
「艦長…?艦長が目を覚ましたぞ!」
「デンフォルド艦長、痛み止めを打ったので当分痛むことはありませんが一応安静にしてください」
どう言うことか分からなかったハイマンは目の見えない左目の周りを触った。
すると左目の辺りには包帯が巻かれており、若干血が滲んでいるような気がした。
しかし全く感覚がない。
「戦術長、一体何があった」
ハイマンはへメッツ大尉に尋ねた。
「敵艦のレーザー砲の直撃を喰らいました。対空砲だったので損傷は軽微でしたが破片が艦長の左目に直撃して……」
ふとまだ見える右目で見るとブリッジの一部に簡易修復材が塗られ、空気の流出を防いでいた。
痛み止めが効いているせいかハイマンは片目を失った実感があまりなかった。
「状況は……」
「プロヴィデンス級は撃沈しました、艦長が意識を失っていた間はラスボーン少佐が指揮を引き継がれ戦闘を続行中」
「それで……我々は今絶体絶命の最中にいると」
ビューポートに映る連合軍の艦艇の数々を目にしながらハイマンは自嘲気味に呟いた。
いよいよダメになる日が来た、戦争中の軍人として必ず訪れる末路の日だ。
覚悟を決めていたはずだがやはり心の底で納得し切れない面があった。
まだやれたのではないか、まだ何か出来ることがあったはずだと。
しかしもう終わりだ。
ハイマンが「皆すまない」と言いかけたところへメッツ大尉が訂正した。
「いいえ艦長、絶体絶命ではありません。我々の“
「何?」
刹那、ハイパースペースから出現したと思われる何十、何百隻もの軍艦が姿を現した。
出現する艦はヴェネター級、ヴィクトリー級、ドレッドノート級、アークワイテンズ級それだけではない。
プロキュレーター級のような大型艦もいればCR90コルベットやカンセラー級、ゴザンティ級のような小型艦も存在していた。
そして一斉に砲撃を開始した。
青いレーザー弾が宇宙空間を埋め尽くしその全てが赤い爆発の光に変わった。
正にそれは圧倒的な力の象徴であり勝利の瞬間であった。
「全艦ジャンプアウト完了、なんとか間に合ったようですね」
「ああ、タイミングも合わせられたようだ。全艦、1隻も生かして返すなよ!」
新造マンデイターⅡ級“フォートレス・オブ・リパブリック”のブリッジでジャージャロッド提督は意気揚々と指示を出した。
“フォートレス・オブ・リパブリック”も全砲門を敵艦隊へ向けて撃ち放った。
たった数秒の間に何隻もの軍艦が大破しやがて撃沈していった。
ジャージャロッド提督の麾下艦隊が右翼方面を押し上げている間に左翼方面に到着したターキン提督の麾下艦隊も連合軍に対して一斉攻撃を開始した。
クワット方面軍総旗艦マンデイターⅡ級“フォートレス・オブ・クワット”の一斉砲撃と共に艦隊が突撃する。
ここまで優勢を保っていた連合軍であったが最後の希望が潰えた。
左右両翼からドレッドノートの集中砲火を浴び、スター・デストロイヤーの突撃を喰らって無事でいられる宇宙軍などどこにもいない。
このまま中央突破を図り無理やり押し切るという手もあった。
しかし増援に湧く第一防衛線の将兵達は士気を取り戻し逆に最後の力を振り絞って押し返し始めていた。
「敵分艦隊旗艦、“アドミラル・ブキャナン”撃沈!」
「敵艦隊の損耗率65%を超えました」
「“アドミラル・スベルグ”、“アドミラル・バンジャール”、敵艦隊の突破に成功。間も無く艦隊が分断されます」
“フォートレス・オブ・クワット”には次々と連合軍撃破の報告が入ってきた。
その全てを把握し的確に指示を出すのが司令官の務めだ。
「ジャージャロッド提督の艦隊と合流したならば“アドミラル・バンジャール”艦隊は包囲下の連合軍の殲滅に取り掛かれ。残りは全て敵艦隊の主力へ攻撃を強めよ」
連合軍はこんな状況でも辛うじて指揮系統を維持し組織的な抵抗を見せていた。
されどいくら指揮系統が生きていようとこの状況を覆すことはもう無理であった。
パーロ提督は作戦の失敗を判断し撤退を決断した。
旗艦ルクレハルク級バトルシップ、“ヴェルホーフ”とその護衛艦隊が殿となり、友軍艦隊の撤退を指揮した。
その後パーロ提督がどのタイミングで戦死したは分からない。
旗艦“ヴェルホーフ”は残存艦艇が全て撤退した直後に爆沈した。
「戦術長、“デタミネーション”はまだ戦えるか」
ハイマンはふとへメッツ大尉に尋ねた。
大尉は「戦闘は可能ですがもう大勢は」と言葉を濁した。
「だからこそだ、ここで我々だけ置いてけぼりは少々後が悪い。新兵達に……戦死した戦友の分も勝ち馬に乗りにいこうではないか」
「…はい!“デタミネーション”戦闘準備。目標、前方の連合艦隊!」
“デタミネーション”は再び戦場へと向かった。
あれだけの戦闘をしてもなお戦い続ける姿は他の友軍艦に感動と武者震いを与え更に士気を挙げた。
この一連の戦闘が終結したのは“デタミネーション”の突撃から1時間後のことである。
連合軍は参加艦艇の7割以上を失い、パーロ提督を含めた生身の将官の大多数を失った。
このことは後々の戦況に大きな影響を及ぼすことになる。
一方で共和国軍はこの戦いで活躍したターキン提督、ジャージャロッド提督、スクリード中将、テナント中将らの名声が大いに上がり、この瞬間に非ジェダイの軍部の存在が確立した。
共和国軍がクワットの防衛に成功したことにより、共和国軍は依然として連合軍は共和国軍の潤沢な兵器戦力に悩まされ続けることとなる。
共和国は勝利し、連合は大敗した。
このようにクワットの戦いは終結したのである。
-クワット宙域 クワット星系 惑星クワット-
クローン戦争は連合の敗北とジェダイの反乱によって終結した。
その後銀河系は大きな動乱期に突入した。
そしてクワットの戦いから40年後、戦場跡地であるクワットではクワット戦祝勝40周年ということで大々的な催し物が開催されていた。
あの戦いに参戦し生き延びた退役軍人らが集められ、観艦式と軍事パレードが行われた。
「あの戦いで共和国軍が決死の防衛戦を行わなければ我々の今日の繁栄はあり得なかったでしょう。我々は20年前この地で戦った兵士達に感謝の念を捧げ、今日までの繁栄を喜びましょう」
式典に参加するクワット・ドライブ・ヤード社の重役がスピーチの中で参加者達にそう投げかけた。
「それではここで40年前、クワット宙域でスター・デストロイヤーの艦長として戦った1人の英雄の話をお聞きしましょう」
重役はここで別の人物とバトンタッチする為に会話を繋げた。
人々の期待が高まる中重役は次にスピーチを話す人物の名を挙げた。
「ハイマン・デンフォルド退役提督です!ではデンフォルド様、どうぞこちらへ!」
重役は壇上の席を譲り、後ろに置かれた椅子に座った。
その老人はとても60の後半とは思えない姿勢の良さで壇上へに立った。
老人は左目に義眼をつけており、バクタでも治り切らなかった傷がまだ残っていた。
老人の軍歴はクローン戦争終結では終わらなかった。
その後帝国宇宙軍に在籍し提督になるまで軍人として活動し続けた。
老人は数年前に行われたとある大戦を最後に退役し余生を過ごし始めた。
その中で今回のクワット戦祝勝40周年の式典に呼ばれたのだ。
老人は壇上に立ち、自身のスピーチを聞く者達の顔を見つめた。
中には自身が艦長を務めている時に乗組員だった者もいた。
老人は緊張をほぐす為に一息吐き、マイクに手を当てた。
「この戦いに参戦した時、私はまだ中佐でした」
老人は話を続けた。
老人が壇上でどんなことを話したかは分からない。
しかし彼は決して自身の心の内を話すことはしなかっただろう。
艦長とは常に孤高な存在だ。
仮に退役し老いた老人となったとしてもだ。
ハイマン・デンフォルドは永遠に“デタミネーション”の艦長であった。
おわり