TSホビアニ転生:悪のTCG組織で実験体やってたけど、いつの間にか滅んだらしい   作:WhatSoon

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カードバトル要素多めです。


#25 開かれた門

目前で繰り広げられるバトルに、僕は釘付けになっていた。

 

ニーナとセレナさんの戦い。

その勝負……側から見れば、セレナさんが有利だ。

 

セレナさんは、手札の枚数を増やしつつ、コンボパーツを揃え、隙を見てワン・ショット・キルするつもりなのだろう。

対してニーナは、そのセレナさんが繰り出すシステム・クリーチャーに対抗すべく妨害をする。

 

攻めているセレナさんと、受け身のニーナ。

一見、拮抗している勝負。

しかし、状況は芳しくない。

 

セレナさんのデッキは僕のデッキとは異なり、複数の勝ち筋を用意している。

何度止められても、次の勝ち筋へと繋げればいい。

 

そして、ニーナのデッキには妨害用のカードは少ない。

それはハイランダーという性質上仕方のない事だ。

 

使いやすい打ち消し呪文(スペル)が1枚しか入れられない都合上、何かしらの条件付きの使い難い打ち消しまで入っているぐらいだ。

そこまでしても、純粋なカウンター呪文(スペル)を扱うパーミッション・デッキに比べれば枚数が劣る。

 

いつか、破綻する。

緩やかに締め付けられているだけに過ぎない。

 

 

「私は、手札から『デーモンの詐欺師』を召喚する」

>ニーナ:手札4→3

>ニーナ:マナ7→4

────────────────

③デーモンの詐欺師

クリーチャー・カード

種族:デーモン

召喚時:お互いのプレイヤーは、カードを2枚引く。

パワー2/タフネス2

────────────────

 

 

……しかし、何故だろう。

ニーナはこの状況で、耐える事を選んでいるように見える。

クリーチャーを展開して勝負を決めに行かない。

有利を取る為の能動的な動きをしない。

 

今はただ、ドロー効果を持つ『デーモンの詐欺師』を使い回して、手札を補充している。

 

 

「その効果により、互いにカードを2枚引く」

>ニーナ:手札3→5

 

「ええ、私もカードを引きますわ」

>セレナ:手札9→11

 

 

しかし、『デーモンの詐欺師』は相手にもカードを引かせてしまうデメリット効果がある。

 

相手のフィニッシャーを止められる『受け札』を探すためにドローしても、相手に新たなフィニッシャーを引かせてしまっては意味がない。

 

セレナさんの手札枚数……11枚。

これだけあれば、ニーナの受け札を貫通する準備が整うかもしれない。

リソース勝負になれば敗北は免れない。

 

なのに、何故?

耐えても、耐えても、勝ち筋なんてない筈だ。

 

そんな事は僕でも分かる。

そして、僕でも分かる事を彼女は気付いている筈だ。

 

いったい、何を……どうやって、勝つつもりなんだ?

 

僕は手に汗を握りながら、試合を眺めていた。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

目の前にいるニーナから、手元の手札に視線を落としますわ。

11枚……これだけあれば、『豪風の天使』によるワン・ショット・キルは容易ですわ。

 

 

「そして、私は手札から呪文(スペル)『愚者の選択』を発動する」

>ニーナ:手札5→4

>ニーナ:マナ4→0

 

 

ふむ、さらに呪文(スペル)を?

 

 

「その効果は2つ。まず1つ、相手は手札を選んで捨てる」

 

 

……セルフ・ハンデス。

手札破壊(ハンデス)には大きく分けて3種類ありますわ。

 

相手の手札を覗いて捨てさせる、ピーピング・ハンデス。

無作為に選んで捨てさせる、ランダム・ハンデス。

相手が自分で選んで捨てる、セルフ・ハンデス。

 

前者に行くほど強力であり、後者にいくほど効力が落ちますわ。

理由は簡単。

 

ピーピングならば手札の有力なカードを抜かれる可能性が高く、ランダムならば運次第で抜かれてしまう……そして、セルフならば要らないカードを捨てればいいだけのこと。

 

ここは……そうですわね、手札は十分ですし──

 

 

「私は手札を1枚捨てますわ」

>セレナ:手札11→10

 

 

手札から捨てたのは『奇跡の祈り手』。

手札の枚数は十分、もうドロー効果を持つシステム・クリーチャーは不要ですわ。

 

 

「『愚者の選択』の追加効果。相手の手札が6枚以上の場合、マナを4つ回復する」

>ニーナ:マナ0→4

────────────────

④愚者の選択

呪文カード

相手プレイヤーは手札からカードを1枚、選んで破棄させる。

その後、相手プレイヤーの手札枚数が6枚以上の場合、マナを4つ回復する。

────────────────

 

「ふむ……」

 

 

実質マナ消費はなし。

この為に『デーモンの詐欺師』でドローさせた……と考えた方がいいですわね。

 

しかし、あまり有効な使い方とは思えませんわ。

私の手札は11枚……から、1枚捨てて10枚。

ですが、彼女の手札は手札から呪文(スペル)を使った事で5枚から4枚へ。

 

消費は1枚、破棄させたのも1枚。

しかし、この1枚の重みは全く異なりますわ。

 

手札の枚数は、手数……プレイングの選択肢に直結しますわ。

5つの選択肢から4つになるのと、11の選択肢が10になるのとでは『重み』が違う。

 

……苦し紛れの一手。

そう考えれば良いのでしょう……か。

 

 

「私はこれでターンを終了する」

 

「……私のターンですわ。カードを引いて、1枚マナへ」

>セレナ:ターン7

>セレナ:手札10→10

>セレナ:マナゾーン6→7

 

 

手札に視線を落とす。

プレイ数に応じて攻撃力(パワー)が上昇する速攻クリーチャー『豪風の天使』が3枚。

呪文(スペル)のコストを減少させるシステムクリーチャー『大天使 リコリス』が1枚。

 

場には呪文(スペル)を扱う度にカードを引ける『奇跡の祈り手』。

 

『大天使 リコリス』によるコスト軽減+『豪風の天使』による高打点速攻。

これでフィニッシュしたいですわね。

しかし、『豪風の天使』1枚で20点を削るのは難しいですわ。

19枚カードをプレイしなければなりませんもの。

 

ならば2枚……『豪風の天使』を2回通さなければなりませんわ。

 

しかし、『大天使 リコリス』は4コスト、そこに3コストである『豪風の天使』が2枚となれば……必要なマナは10。

マナが起き上がる『小回復』を組み合わせるとしても、9マナは必要ですわ。

 

ならば、早くてもリーサルは2ターン後。

……そこまで、彼女を好き勝手にさせるのは怖い。

得体の知れなさがありますもの……可能な限り、早く息の根を止めたいですわ。

 

ならばここは、妨害されても後続がある『豪風の天使』をプレイし、この7ターン目に十分削り……8ターン目に追撃して削り切るのが得策。

 

ワンショットキルではなく、分割リーサル。

ええ、これを狙うのが一番良いですわ。

幸いにも『豪風の天使』は3枚ありますもの……妨害されたって構いませんわ。

 

 

「私は手札から『豪風の天使』を召喚しますわ!」

>セレナ:手札10→9

>セレナ:マナ7→4

────────────────

③豪風の天使

クリーチャー・カード

種族:セイクリッド

速攻(「速攻」を持つクリーチャーは、場に出たターンから攻撃できる)

呪文カードがプレイされた時:+1/+0の修正を受ける。

パワー1/タフネス2

────────────────

 

 

まずは一撃──

 

 

「その瞬間、私は手札から高速(クイック)呪文(スペル)『蛮行・すり替え』を発動する」

>ニーナ:手札4→3

>ニーナ:マナ4→0

 

 

っ、やはり妨害用の高速(クイック)呪文(スペル)を握っていたようですわね。

平然なまま、彼女へ視線を向けますわ。

 

 

「その効果は、自分の場のクリーチャーを破壊し、そのコスト以下のクリーチャーを蘇生(リアニメイト)する効果。破壊する対象は……『デーモンの詐欺師』」

────────────────

④蛮行・すり替え

高速呪文カード

自分の場に存在するクリーチャー1体を破壊する。

その後、破壊したクリーチャー以下のコストを持つ、墓場に存在するクリーチャー1体を場に戻す。

────────────────

 

 

場に存在するメガネをかけた悪魔が砕けた。

 

 

「あら……?」

 

 

打ち消しではなく、蘇生(リアニメイト)呪文(スペル)……ですわね?

 

 

「そして、私が蘇生(リアニメイト)するのは──

 

 

しかし、それなら問題はありませんわ。

3コストである『デーモンの詐欺師』を自壊させても、出てくるのは3コスト……彼女の墓場(トラッシュ)にそれほど有能なクリーチャーはいませんわ。

 

 

「セレナの墓場(トラッシュ)に存在する『奇跡の祈り手』。それを場に戻す」

 

「なっ……何を考えてますの!?」

 

 

蘇生(リアニメイト)にも種類がある。

墓場(トラッシュ)のクリーチャーを自身の場に戻す蘇生(リアニメイト)……そして、墓場(トラッシュ)のクリーチャーを持ち主の場に戻す蘇生(リアニメイト)

 

『蛮行・すり替え』は後者!

『奇跡の祈り手』は私のクリーチャー!

 

ならば、その効果処理は──

 

 

私の場に『奇跡の祈り手』が蘇りますわ。

その効果処理に不可解さを感じながら、彼女へと視線を向ける。

 

 

「敵に塩を贈るつもりですの……!?」

 

「塩……まぁ、確かに塩かな。うん、そうだね」

 

 

どういう意図で……!?

 

これで私の場に『奇跡の祈り手』が2体!

その効果は呪文(スペル)をプレイする度にカードを引く効果……それが重複しますわ。

どんな呪文(スペル)も1枚が2枚になるのなら……莫大な手札アドバンテージが得られますわ!

 

何のためにこんな事を!

まさか既に敗北を確信して、こんな──

 

 

視線が、私を貫く。

彼女の目が。

 

 

正気のある、闘争心に満ち溢れた目。

敗北する気なんて少しも考えてない目ですわ。

 

 

では、何故?

どうして、私に盤面と手札アドバンテージを与えるような真似を──

 

 

 

手札を……。

 

手札を?

 

 

手札が増えるという事は……つまり、それだけ、カードを引いているということ。

 

どこから?

 

それは勿論、デッキからですわ。

 

デッキからカードを引く……引けば、どうなる?

 

 

 

 

デッキの枚数が、減りますわ。

 

 

 

 

では、私のデッキ……残りの、枚数は?

最初は50枚……初期手札で45枚……毎ターンカードを引いて43……32……20、18……そして、先ほどのターン開始時で──

 

 

17枚。

それが、私のデッキに残されたカードの枚数。

 

 

背筋が冷える。

点と点が線で繋がる感覚。

 

互いにカードを引かせるクリーチャーの効果も、互いのデッキトップを破棄させるクリーチャーの効果も……盤面に存在する『奇跡の祈り手』を除去しないプレイングも。

 

全てが、この、勝ち筋のために……!

 

 

 

今、理解しましたわ。

 

彼女が狙っている事……それは、つまり──

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

WoM(ワールドオブマジック)』において、主な敗北条件は2つである。

 

1つ、ライフを0にされる。

最もオーソドックスな敗北条件だ。

クリーチャーでのビートダウンか、カード効果によるバーンか。

殆どのデッキの勝ち筋は、この『ライフを0にする』となっている。

 

そして、もう1つ。

私はその敗北条件をセレナへ満たさせるために、行動していた。

 

 

即ち、『ライブラリ・アウト』。

デッキ切れによる敗北だ。

 

 

WoM(ワールドオブマジック)』において、カードを引く時にデッキの残り枚数が0枚だった場合、敗北となるルールが存在している。

殆どのTCGで採用されているルールと同様だ。

 

そして、『WoM(ワールドオブマジック)』のデッキ枚数は50枚……初期手札枚数を考慮して、46回カードを引いてしまえば、敗北となるのだ。

 

その為に私は行動していた。

気付かれないように、ゆっくりと……そう『塩を贈る』とはよく言ったものだ。

カードをドローさせるなんて、普通は相手プレイヤーの利益にしかならない。

 

しかし、『塩』を過剰に接種してしまえば……身体に害を為す『毒』となる。

 

 

彼女の場には呪文(スペル)を使用する度にカードを引く『奇跡の祈り手』が2体。

その効果は強制効果……プレイヤーの意図とは関係なく、呪文(スペル)を使えばドローしてしまう。

 

即ち、彼女は1つ呪文(スペル)を撃てば2ドローが確定してしまう。

彼女のデッキの残り枚数は17。

つまり、9回呪文(スペル)を使えばデッキ切れによって敗北する事となる。

 

彼女の持つフィニッシャー『豪風の天使』の打点上昇は呪文(スペル)の使用回数につき+1。

つまり、最大でも8点までしか上昇できない。

2体『豪風の天使』を並べても、本来の攻撃力(パワー)1と、強化(バフ)8で9点。

2体並べて、2倍で18点。

 

場に残った『奇跡の祈り手』による打点で確かに20点は取れるだろう。

 

だがしかし、それは私が全く妨害しなかった場合に限る。

 

勿論、私は妨害を行う。

高速(クイック)呪文(スペル)や、防衛持ちのクリーチャーで。

 

 

さぁ、ここからが読み合いだ。

デッキの残り枚数に怯えるセレナ。

その打点を受け流して見せよう。

 

 

「っ……!私は『奇跡の祈り手』と『豪風の天使』で、相手プレイヤーへ直接攻撃しますわ!」

>奇跡の祈り手 (1/3)

>豪風の天使(1/2)

 

 

 

どうやら、気付いたようだ。

ここは余計にデッキを削らずに、次ターンへ繋ぐ……その判断は正しい。

 

 

「…………」

>ニーナ:ライフ19→17

 

「……これで私はターンを終了しますわ」

 

 

残り、17点。

しかし、余裕はない。

 

場の『奇跡の祈り手』2体で2点余分にあると考えれば……15点の余裕しかない。

であれば、呪文(スペル)7枚……しかし、何らかの強化(バフ)呪文(スペル)があれば更に少ない枚数で削り切れる。

 

彼女のデッキの残り枚数は17枚……つまり、次ターンのドローを考慮しても8回は呪文(スペル)を使用できる。

 

彼女ならば、それが出来る。

今、このタイミングで……手遅れになる寸前に、私の意図に気づけた彼女ならば。

 

そう、確信できる。

 

 

「……ふっ」

 

 

楽しくなってきた。

これぞカードバトル、これぞ真剣勝負だ。

 

 

「……っ、何が、何がおかしいですの!」

 

 

直後、セレナが私を睨んだ。

 

 

「バカにしてる訳じゃない。ただ、この戦いが楽しいだけ」

 

「それが……それがバカにしてっ……!」

 

「セレナは楽しくないの?」

 

「……ふ、ふざけた事を……ペラペラと!」

 

 

不思議に思う。

これだけ、カードバトルが上手いのだ。

 

どれだけの研鑽を積んだのか。

どれだけの実践を積んだのか。

 

それは、カードが好きでなければ出来ない筈だ。

 

 

「否定しないのは、少なからず楽しんでいるから……違う?つまらないなら、つまらないって言えばいい」

 

「っ……ほんっとうにムカつく奴ですわね!」

 

 

……どうやら怒らせてしまったらしい。

だが、それでも彼女は否定しなかった。

 

 

さぁ、ここからが正念場だ。

私も、彼女のプレイに全力で応えよう。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

このカードバトルが楽しいか……なんて!

そんなのっ……!

 

WoM(ワールドオブマジック)』は!

カードバトルは!

 

欲しいものを手に入れるための力!

手段にしか過ぎない!

 

なのに、この女は……!

 

私は安東院 セレナ!

安東院家の跡取り娘!

 

勝つべくして、勝つべく者として生まれた女!

欲しいものを全て手に入れるために、強く生まれて、強く生きてきましたの!

 

欲しいものは……!

すべてっ……!

 

 

この、手で…………!!

 

 

「私のターン。カードを引いて、1枚をマナへ」

>ニーナ:ターン8

>ニーナ:手札3→3

>ニーナ:マナゾーン7→8

 

 

その為にも、この女は邪魔!

確実に屠らなければなりませんわ!

 

心の奥底から真っ黒な、コールタールのような何かが……満ちていく。

それはほんの少しの不快感と共に、強烈な闘争心と全能感に変わっていく。

 

少しずつ、昂っていた感情が冷めていく。

しかし、それは怒りが収まった訳ではありませんわ。

 

激情は冷徹へと変わっていく。

本能的な怒りは、理性的な殺意へと。

 

 

「私は手札から『病魔のドレイク』を召喚する」

>ニーナ:手札3→2

>ニーナ:マナ8→2

 

 

場に黒い靄……疫病を振り撒く風を纏ったドラゴンが現れた。

────────────────

⑥病魔のドレイク

クリーチャー・カード

種族:テラー・ドラゴン

防衛(「防衛」がフィールドに存在する場合、相手は防衛を持たないキャラクターに攻撃できない)

召喚時:場のクリーチャー1体に3ダメージ。

パワー3/タフネス6

────────────────

 

 

キーワード『防衛』を持つクリーチャー……!

私の速攻クリーチャーを受け止めるつもりですわね!

 

 

「その効果により、『豪風の天使』に3ダメージを与える」

>豪風の天使 (1/2)→(1/0)

 

 

『豪風の天使』は処理されてしまいましたか……しかし!

 

 

「そして、私はターンを終了する」

 

「では、私のターンですわね!カードを引いて、1枚をマナへ!」

>セレナ:ターン8

>セレナ:手札9→9

>セレナ:マナゾーン7→8

 

 

ですが、それは失策ですわ!

『病魔のドレイク』の攻撃力(パワー)は3点!

 

つまり!

 

 

「『奇跡の祈り手』で『病魔のドレイク』を攻撃しますわ!」

>奇跡の祈り手 (1/3)

 

 

この私を縛ろうとする『奇跡の祈り手』が、自壊できるということ!

 

これで使用可能な呪文(スペル)の枚数に猶予が──

 

 

「その瞬間、私は手札から高速(クイック)呪文(スペル)『理力の変換』を発動」

>ニーナ:手札2→1

>ニーナ:マナ2→0

 

「なっ……!」

 

 

この瞬間に、高速(クイック)呪文(スペル)を!?

 

 

「その効果は、場のクリーチャー1体の攻撃力(パワー)を5減少させて、その持ち主にカードを引かせる効果」

────────────────

②理力の変換

高速呪文カード

場のクリーチャー1体は、ターン終了時まで-5/+0の修正を受ける。

その後、対象としたクリーチャーの持ち主はカードを1枚引く。

────────────────

 

しまっ──

 

 

「対象は『病魔のドレイク』。対象の攻撃力(パワー)をー5して、私はカードを1枚引く」

>病魔のドレイク(3/6)→(0/6)

>ニーナ:手札1→2

 

 

『病魔のドレイク』と『奇跡の祈り手』が衝突する。

しかし、『奇跡の祈り手』は無傷のままだ。

>奇跡の祈り手 (1/3)→(1/3)

>病魔のドレイク(0/6)→(0→5)

 

 

攻撃力(パワー)を減少させる事で『奇跡の祈り手』の自壊を防ぎましたの……!?

 

 

 

 

 

場を見渡す。

 

彼女の場には、攻撃力(パワー)0……しかし、体力値(タフネス)5の『防衛』クリーチャーである『病魔のドレイク』が1体。

 

私の場には、呪文使用時にカードを引いてしまう、『奇跡の祈り手』が2体。

その内、1体は攻撃済み。

 

そして、残りのデッキ枚数は……16。

 

 

「……そんな……」

 

 

まだ、私のデッキに眠っている切り札(レジェンド)クリーチャー……『天使長 セラ』。

その効果は、手札コストの減少、呪文(スペル)プレイ時にダメージを飛ばしながら回復する……フィニッシャー。

────────────────

⑥天使長 セラ

レジェンド・クリーチャー・カード

種族:セイクリッド

召喚時:ターン終了時まで、自分の手札に存在するカードのコストはー1される。

呪文カードがプレイされた時:相手プレイヤーに1ダメージ、自分プレイヤーを1回復。

その後、+1/+1の修正を受ける。

パワー5/タフネス5

────────────────

 

 

これから引きに行った所で……この、残りのデッキ枚数では解決できない。

効果を発揮して、相手を削り切る前に……私のデッキが底をつく。

 

 

詰み……ですの?

私の、負け……?

 

 

「…………ぁ」

 

 

口の中が乾く。

 

私は彼女に『負けた方が勝った方の命令を1つ聞く』という賭けをしかけた。

その賭けは私からしかけたもの。

それを反故にする事は出来ない。

 

何を言われるか。

 

私は……私は、嫌われている自覚はありますわ。

ええ、そうでしょうとも。

 

このクラス対抗戦、決して私は……褒められる立ち回りではありませんでしたわ。

 

だからきっと……嫌われて、いる……。

 

嫌ですわ。

嫌ですわ、嫌ですわ!

 

こんな所で、失いたくない!

負けたら全てを失ってしまう!

 

勝たなければ、勝たなければ!

そして、この女を排除しなければ!

 

 

どんな手を使っても……!

 

 

疼く。

疼く、疼く、疼く。

 

身体の一部のように感じられる、バトルディスクが疼く。

バトルディスクにセットされた、私のデッキが……まるで、生き物のように疼く。

 

カードを引けと、そう、言っている。

 

 

「……………」

 

 

引いても何も解決しない。

それどころか、敗北へと自ら足を進めるだけ。

 

その筈なのに……。

 

 

なのに。

 

 

私には分かりますわ。

この『カード』を引けば『彼女に勝てる』と。

 

 

「……私は、手札から『真言』を発動しますわ。対象は『奇跡の祈り手』」

>セレナ:手札9→8

>セレナ:マナ8→8

>奇跡の祈り手 (1/3)→(1/5)

────────────────

⓪真言

高速呪文カード

場のクリーチャー1体は、+0/+2の修正を受ける。

────────────────

 

 

「…………?」

 

 

目の前の、彼女は困惑した目を向けていますわ。

ええ、そうでしょうとも。

 

ですが、私には確信がありますの。

 

 

「そして『奇跡の祈り手』の効果により、私はカードを2枚引きますわ」

 

 

指をデッキに乗せる。

 

まずは1枚──

>セレナ:手札8→9

 

引いたカードは……『新緑の回廊』。

今、最も不要なカードですわね。

────────────────

①新緑の回廊

呪文カード

カードを1枚引く。

────────────────

 

 

そして、もう1枚──

>セレナ:手札9→10

 

 

それは……決定的な『何か』。

私の中にある黒く、歪んだ……『何か』。

 

それが形を成した『カード』となって、私の手に握られていた。

 

 

こんなカード……デッキに入れた覚えはない。

そもそも、見た事すらない。

 

その効果すらも……。

 

しかし、使い方は分かっている。

 

 

だから、私は──

 

 

 

「私は手札から置物(オーナメント)混沌の門(カオス・ゲート)』を置きますわ」

>セレナ:手札10→9

>セレナ:マナ8→1

 

 

躊躇いなく、その『カード』をプレイした。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

セレナの場に、巨大な……赤黒い『何か』で作られた門が現れた。

 

大型の置物(オーナメント)……?

セレナのデッキは小型の呪文(スペル)を連打する奇跡(ミラクル)の筈……。

 

 

いや、そんな事よりも──

 

 

何だ、この気色悪い感触は?

 

何だ、この不快感は?

 

空気が軋む。

強烈な威圧感。

肌を舐められるかのような、不快感。

 

それらが全て、あの巨大な門から放たれている。

 

 

「『混沌の門(カオス・ゲート)』の効果。自分の場のクリーチャー全てを、同一コストの『カオス』クリーチャーへと進化させますわ」

 

 

っ……!?

 

私は、自身のバトルディスクへ目を向けた。

そこには彼女が発動したカードの情報が表示されている。

 

 

────────────────

混沌の門(カオス・ゲート)

レジェンド・オーナメント・カード

場に出た時:自分の場のクリーチャー全てを、コストが同一の「カオス」クリーチャーへ、エクストラ・ゾーンから重ねて進化する。

自分がクリーチャーを召喚した時:そのクリーチャーを、コストが同一の「カオス」クリーチャーへ、エクストラ・ゾーンから重ねて進化する。

────────────────

 

 

……なんだ、このカードは?

レジェンドカード……?

これが彼女の……?

デッキタイプと相反するこんなカードが……?

 

 

「私の場に存在する2体の『奇跡の祈り手』を進化させますわ……!」

 

 

彼女の場に存在する『奇跡の祈り手』……それらの胸元から、赤い宝石のような棘が生えた。

それはクリーチャーを内部から貫き、異形へと姿を変える。

 

 

「『混沌の従者(カオス・サーヴァント)』へ進化!」

 

 

可憐な少女達の姿はもうない。

そこにあるのは……赤黒い宝石の鎧……いや、鎧のような結晶に身を包んだ騎士だった。

────────────────

混沌の従者(カオス・サーヴァント)

エクストラ・クリーチャー・カード

種族:カオス

進化元:種族「カオス」以外のクリーチャー

突撃(「突撃」を持つクリーチャーは、場に出たターンからクリーチャーに攻撃できる)

死亡時:このクリーチャーを自身のエクストラ・ゾーンに戻す。

パワー5/タフネス5

────────────────

 

 

目を見開く。

 

5/5の突撃クリーチャー……!

デッキ切れを起こす利敵クリーチャーを、強力な高能力値(スタッツ)クリーチャーに変換した……!?

 

 

「『混沌の従者(カオス・サーヴァント)』で、『病魔のドレイク』を攻撃ですわ!」

混沌の従者(カオス・サーヴァント) (5/5)

 

 

っ、しまった!

『病魔のドレイク』の攻撃力(パワー)を下げたのが、裏目に出てしまう!

 

 

赤い宝石の騎士が、私の『病魔のドレイク』を貫いた。

混沌の従者(カオス・サーヴァント) (5/5)→(5/5)

>病魔のドレイク (0/5)→(0/0)

 

 

瞬間、激痛が腕に走った。

 

 

「く、ぅっ……!」

 

 

衝撃がフィードバックして、私は一歩、後退る。

……おかしい。

 

今の……反動、変だ。

自身の手に目を向ける。

 

……痺れるような感触。

確かに、本当の痛みを感じていた。

 

バトルディスクのフィードバック機能……ではない?

じゃあ、これはいったい……何の?

 

 

「ふふ、ふふふっ!いい気味ですわね……!これで私はターンを終了しますわ!」

 

 

視線を、対戦相手であるセレナへ目を向ける。

 

様子がおかしい。

確証は持てないが、何かがおかしい。

 

確かに感じている違和感。

そして感じている不快感。

 

だが、それだけではない。

 

 

 

 

どこかで感じている……この、感覚。

 

私はこの感覚を知っている?

この威圧感も、不快感も……知っている?

 

 

 

 

息を深く、深く吐いた。

そして、拳を握りしめる。

 

手の痺れはもうない。

 

……今、このカードバトルを中断してはならない。

何故か、そう確信できる。

 

そして、この勝負に負ければ……私は、決定的な何かを失うという事も。

 

 

 

ならば──

 

負けられない。

 

 

 

 

 

「ふ……」

 

 

……ふと、笑みを浮かべた。

負けられないのは最初っからそうだ。

勝たなければらないのも最初っからそうだ。

 

このカードバトルに何を付与されたとしても、私のやるべき事は変わらない。

 

 

「……私のターン!」

 

 

戦って、勝つ。

ただ、それだけだ。

 

 

 

私はカードを、デッキから引いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────────────────────

WoM(ワールドオブマジック)のバトル・バランス調整班からのお知らせです。

本日、我々が下した決断についてと、その反省についてお伝えしなければならない事があります。

 

『既視の予知』は、デザインに失敗しました。

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①既視の予知

呪文カード

自身の墓場に同名カードが存在する呪文カードを1枚、手札に戻す。

────────────────

 

こちらのカードは、複数の呪文カードを連打する事で大きくアドバンテージを得るデッキで採用される予定のカードでした。

 

多くは呪文カードを主軸としたウィザード・デッキが火力呪文を回収する為に採用したり、打ち消しを複数採用したパーミッション・デッキで妨害札を増やす為に採用されていました。

それは我々、バトル・バランス調整班でも想定された使用用途でした。

 

しかし、皆さんもご存知の通り前回のチャンピオン・バトル・カップによって想定外の使用をされてしまいました。

 

それは『既視の予知』が墓場に2枚存在する状態で、手札からプレイした場合、『既視の予知』で『既視の予知』を回収できるというループでした。

こちらのループに関して、バトル・バランス調整班は当初から想定していましたが、成功率の低さ、安定感の低さから問題なしとしていました。

 

しかし、デッキから呪文を手札に加えるカードを大量に採用することで安定感を増し、『大天使 リコリス』といったコスト軽減カードにより早期に再現できる事が発覚しました。

────────────────

④大天使 リコリス

クリーチャー・カード

種族:セイクリッド

自分の手札に存在する呪文カードは、コストがー1される。

パワー3/タフネス3

────────────────

 

 

『既視の予知』を無限回数ループし、呪文(スペル)の使用回数によってダメージを与える『マスカット弾』を使用することで20点のダメージを与える『既知OTK』というデッキが流行しました。

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②マスカット弾

呪文カード

相手プレイヤーにXダメージ(Xはこのターン、自分がプレイした呪文カードの枚数に等しい)

────────────────

 

 

チャンピオン・バトル・カップでは上位8名の内、6名がこの『既知OTK』を使用していました。

 

このデッキの問題点は対策が難しい事、そして何より、手番が揃えば5マナで20点のダメージを出せる事になります。

下準備の間は相手プレイヤーと干渉しない時間が続くため、楽しくもなく、対策も難しいため過剰なストレスとなりえます。

 

プロシーンでの高い勝率、そして今後のカードプールに影響を及ぼし、プレイヤーを不快にさせてしまうこの『既視の予知』はデザインに失敗したと言っていいでしょう。

 

これらの理由より『既視の予知』は禁止カードとさせていただきます。

大変、申し訳ありませんでした。

カードバトル要素を

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  • このままでいい
  • 減らして欲しい
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