結城友奈は勇者であるアフター 優翠の章 作:bakedapple
行ってきますと2人で声を揃え、集落へ一旦別れを告げる。みんなずっと手を振り続けてくれていた。
「友奈さん、すっきりした顔をしていますね。」
「あはは、集落のみんなに幸せについて教えてもらったからかな。」
「私も同じですよ。目が覚めることばかりでした。」
集落で出会った多くの人達。
世界の滅びを知っても愛情を持ち続ける家族。
同じ時期に集落へとやってきて、姉妹のように生きる2人。
老いてなお次の世代の手本であろうと生きる老人。
過去の行いを悔やみながら、償いのために仕事に励むかつての暴徒も見た。
「勇者部と大赦の正しさから巣立ち、みんな自分たちの幸せを探して頑張っています。」
先生の言葉に大きく頷いた。
「勇者部と大赦だけじゃない。みんな自分の速さで前に進もうとしています。」
一方で集落を荒らそうとする連中もうんざりするほどいたし、争いだって起こってばかりだけど。
「みんなの力になりたくて。でも誰かの力になるのって簡単じゃないって何度も思い知って。」
他人は自分とは違う歴史や想いを積み重ねていて。簡単に助けようなんて傲慢だ。安易に伸ばした手なんて振り払われて、やがて自分自身も現実との落差に擦り減ってしまう。理不尽に抗うための暴力が必要な時だってあった。
「まだ助けてを言えずにいる人たちが少しでも安らげるように、わたし達みんなで居場所をつくっていかないと、ですね。」
痛みを知れば優しくなれるほど人間は強くも賢くもなかったけど。
それでも。
間違いだらけの中でも、ヒトの底力を信じてみたくなる、そんな人々がまだこんなにもいる。歴史に残らなくても懸命に生きていてくれている。
傲慢でも矛盾だらけでも、少しでもその一助になりたい。心からそう思う。
壊れた道も果て無く続く。
その中でどれだけ歩いたろうか。折れた標識を見て立ち止まる。長年の風雨に晒されて錆で何も見えなくなった鉄くず。
(わたし達なら、きっと。)
先の道がどれほど荒れ果てても、昔の標が頼りにならなくなっても。この世界の人達なら新たに作っていける。
裸になって自分や相手を知る。そして信じる。それがきっとこれからの最初の標。
自分自身の人生の中で笑って、楽しんで、怒って、泣いて。その積み重ねは必ず足跡となってくれるから。
わたしは共に歩く共犯者へ語りかけた。
「先生。」
「次の集落地を見つけたら、わたしのお願いを聞いてくれませんか。」
「どうぞ。」
「また一緒に千景さんの祠に行って・・・そいであの子守唄を教えてください。」
この狂った世界に産声を上げた勇気を讃えられるように。理不尽を吹き飛ばして自分の人生を萌芽できるように。
安芸は晴れやかに笑って頷いてくれた。青空のようにきれいな笑顔だった。
幸せで終わるお話が多くの人を満足させるけど。その陰でどんなに小さくて泥だらけで気付けなくても、語られていない物語だってたくさんある。
どちらの価値にも差なんてない。
この世界の人たちは今もすれ違ってばかりだけど、誰が欠けても今の自分達はここにいない。光に照らされる大輪の花も水の中で人知れず咲く花も、良いも悪いも無いんだ。
自分たちは生きて、泥だらけで傷だらけの手を誰かに伸ばし続ける。
後の世にどう語られるかはその時に委ねて。それぞれの人生という戦いを続けよう。
それが結城友奈のひとまずの答え。
自分たちが書いた手記をもし読んでくれた人がいたら・・・考えてくれると嬉しいです。
頭がこんがらがりそうな世の中、迷うことばかりの人生。それらの中で違う立場で違う頑張り方をしている人たちがいることを。
どうか優しい頑張り屋が皆報われる未来でありますように。
わたし達はこっそり足跡を残しておきます。この手記が多少なりとも読んでくれた人が幸せを考える種になってくれれば嬉しいです。
それではご達者で。
わたし達とこの手記を読んでくれた人たちの人生が、世界の標となれますように。
拙作をご覧いただき、誠にありがとうございます。
ゆゆゆを好きだった者の区切りとして、改めて書かせていただきました。少しでも楽しんでいただければ幸いです。