これはとある幼き二人の少女がおりなす、友情の奇跡。

「誰もがきっと辿り着く、無垢な想いの果ての果て……」

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本作は「七つの海」という漫画作品を大いに参考にして書いた作品です。
それを念頭に置いて楽しんで頂くよう、よろしくお願い致します。


アイとスキの道しるべ

 昔から引っ込み思案で大人かった私。けれどそんな私にも親友はいた。

その子とは昔からこんな話をしていたのを、私は今でも思い出せる。

 

「私はね、沢山の人に私を好きになってもらいたいの!それこそ世界中の人たちにも!沢山!沢山!たくさ~ん!」

そう笑った親友の顔は、まるで太陽のようだった。

 

「雛だってそう思うでしょ?」

「い、いや…私はそんな大きな事は考えられないよ…。私は自分が好きだと思った人をずっと好きでいられればそれだけで…」

「ふーん。じゃあ雛の夢はもう叶っている訳だ」

夢は叶っている?私は思わず目の前の親友に聞き返した。

 

「だって、私は雛の事大好きだし。雛も私の事大好きだもんね!!」

「つーちゃん…」

彼女の言葉は私の心に優しく溶け込んでいった。

 

『多くの人に愛されたいと思った』そんな私の親友つーちゃん。空条つばさちゃん。

『自分が想い続けた人を深く愛したいと思った』そんな私の名前は高槻雛。

 

 

 

お互いに正反対の二人だったけど、あの時の私たちは好きな気持ちを求めているという、同じ気持ちで繋がっていたんだ。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~

『エメラーダ姫。どうか私と一緒になってくれませんか』

クリス王子は目の前のエメラーダ姫にそう言いました。美しく整った顔立ちで、時には女性にも見間違えるようなクリス王子でしたが、その時の顔は何とも男らしさで溢れていました。

姫はそれを聞いて胸が幸せで一杯になりました。しかし姫は言いました。

「いけません…私たちは敵国同士で争っている身…その国に身を納める者が共にいる事など、許される訳がありません」

そう、二人の国は戦争中でした。その国同士の王子と王女が一緒になろうなど地面がひっくり返ってもあり得ない事なのです。

しかし、王子は言いました。

「争っているからなんだというのです。貴方は私の事をずっと想い続けてくれました。そして私もその愛に打たれました。愛と言う絆よりも強い物がこの世にあるとは私には到底思えません」

「王子…」王女は目を潤ませて王子の言葉を聞いています。

「申し出、受けて頂けますね?」

「…はい。ずっとお慕い申しておりました」

こうしてエメラード姫とクリス王子は互いにキスを交わしました。彼らの頭上には二人を祝福しているように輝いておりました。

~~~~~~~~~~~~~~

 

「やっぱりいいなぁ…『エメラード姫の愛の行く先』…」

 

私は何回読んだか分からない絵本を読んで、何度目か分からない同じ感想をつぶやいた。

しつこいって言われてもそう思っちゃうんだから仕方ないよね。

小さい頃、表紙のお姫様の可愛さに惹かれてお母さんに頼んで買ってもらった本だけど、何年たっても1日1回は読んでしまう私にとっての日課になっちゃった。おかげで文章も暗記できているし。

 

「さて、もう一度初めから読み直そう…」

私は初めのページを開き直そうとした。そうしようとしたんだけど…

 

「雛!今何時だと思っているの!早く朝ごはん食べないと遅刻するわよ!」

いきなり部屋に入ってきたママの大声にびっくりして、私は本を勢いよく閉じてしまった。本が痛んじゃったらどうしよう。ママにもびっくりしたけど私はそれが心配だよ。

 

「わかったよ、今行くよ…」

私は絵本を机の上に置き、渋々台所がある1階に下りて行くことにした。

 

「何?あんた、またこの絵本読んでいるの?」

ママが机の上に置いてある絵本を手に取って、階段を降りようとした私に話しかけた。

 

「別にいいでしょ。好きなんだから」

そうだよ、人の好きな物にケチをつけるなんてひどいよ。

「けどねぇ。アンタも半年もしたら中学生になるんだから。こういうのは卒業しないと…」

「うるさいなぁ。早くしないと朝ごはん冷めちゃうでしょ」

全く、自分で急かして癖に呼び止めるなんてどうかしてるよ。

「…アンタふてくされているの?」

「そんなことないよ。ただ学校に行くより本を読んだりイラスト描いたりしている方がずっと楽しいって思っているだけだよ」

ママが変なこと聞いているから正直に答えた。実際友達もほとんどいないから一人でいる方が気が楽だもん。

 

「な~に黄昏たこと言ってんのよ!そんなんじゃくーちゃんに愛想尽かされちゃうわよ!」

ママはそう言って私の背中をバシッと勢いよくはたいて、豪快に笑った。痛いよママ。

 

「けどまぁ本はせめて本棚にしまいなさい。本が可哀想よ」

「帰ったらすぐ表紙が見たいからこれでいいの」

ママとそんな話をしながら、いつものように私は台所に降りて行った。

 

 

「行ってきます」

ママにそう言って私は家を出た。空は青く、太陽がサンサンと照らされているけど風は強い。私の住んでいる所は海辺が近いから潮風が強いんだ。気を付けないと髪が痛んじゃうよ。

 

「それにしても今日はついてないなぁ…良い所でママに止められちゃったから」

今朝の一幕を思い出して、私の心は一層落ち込んだ。今日の天気はいいのになんかもったいよね。

 

「けれどママもひどいよ、私の好きな物を馬鹿にするなんてさ」

そうだよ。今の時代多種多様性が叫ばれているんだから、誰かの好きな物にケチをつけるなんてナンセンスだよ。私はそう思った。

 

私が『エメラード姫の愛の行く先』を気に入っているのは、そのストーリが感動するのは勿論なんだけど、エメラード姫が私にどこか似ているからなんだ。

勿論私は姫様の様に美人じゃない。けれど長い茶髪を前髪で切りそろえている姫様の姿はどこか私に重なるんだ。私の髪の毛は色が薄いから時々茶髪に見える事があるし。

 

それに…誰か一人をずっと想い続けて、最後には結ばれるなんてとっても素敵だと思う。私は数が少なくても、深く誰かを好きになりたいって思っているタイプだから。

 

「私の前にも、クリス王子が現れてくれないかな…」

 そうつぶやいた私の後ろから、大きな声がかけられた。

「おっはよー!雛」

声をかけた女の子、幼馴染のつーちゃんは私の背中をバシッと叩く。痛いよう…今朝はママに叩かれたばかりなのに…

 

「おはよう、つーちゃん」

「なんかテンション低いね~。寝不足?」

「そんなんじゃないよ。ただ朝から絵本読んでたら母親に早く起きろって言われて…」

「絵本ってエメラード姫の奴、雛まだあれ読んでるんだね?」

 

ひーちゃんが不思議そうに聞いてきた。私があの絵本を好きなのは昔から知っているはずなのに。

「そりゃね。読むのは私の日課みたいなものだから」

私はそう答えた。そう、私のバイブルみたいなものなんだ。

 

「ふーんそっか。あっ!いけない、今日は早く学校行かなきゃいけないから先に行くね!」

「早くって…なんかクラス係の仕事とか入っているの?」

「そうじゃないよ。ただクラスのイケてる女子と学校でroktok撮ろって話があってさ!先生が少ないうちじゃないと撮れないんだよ!」

 

つーちゃんは威勢よく話始めた。つーちゃんが言っているのは短時間の動画をインターネット上で投稿するアプリの事だ。学校でもクラスの目立ちたがり屋の子を中心に密かに流行っている。

 

「つーちゃん…roktokとか好きだったんだ」

「別に好きって訳じゃないけどさ、私を誘ってくれた子がいたから乗らない訳にはいかないじゃん?それだけでもありがたい事だって私は思っているから!じゃあね!」

 

目指せ!いいね千回超えー!そんなことを叫びながらつーちゃんは学校へ走っていった。

その姿を見た私は昔から変わらないな、私はそう思った。

 

昔からつーちゃんは活発でみんなをグイグイ引っ張ってきたリーダータイプの女の子だった。服装も男の子っぽくて殆どがジーンズ、スカートなんか数えるほどしか見ないくらいだった。

 それに対して私は、地味な色合いのロングスカートが好きだったし、ズボンはほとんど持っていなかった。昔からそんなんだから人より前へ前へと出れないタイプだったし友達も少なかったんだ。つーちゃんは例外だったけど。

 私もつーちゃんも昔から変わない。きっとこれからもずっとそうなんだね。それは分かり切った事なんだと思う

 

 

「けど、最近つーちゃんと一緒に学校に行く日、少なくなっちゃったな…」

私のつぶやきは誰にも聞こえることなく、海が波打つ音にかき消されてしまった。

 

 

~~~~~~~~

 

「それでは、今日1日の授業はここまでにする。ちゃんと宿題やってくるんだぞ~!」

 

はーい、そう元気な声が教室に響いた。朝から色々あったけど、今日の授業はこれで終わりだ。

 (今日は放課後残って、少しイラスト描いていこう。家とママがうるさいから」

私は、ランドセルから筆箱、色鉛筆を出してイラスト帳を広げた。そしてペンをスラスラ走らせた。

 

「あぁ高槻。お前まだ残るつもりなら、この生徒日誌と宿題のノート、職員室の先生の机の上まで持って行ってくれないか」

イラストを描き始めて10分くらい経った頃だろうか、教室の片づけを終えた担任の先生が声をかけてきた。

 

「え…先生。持って来いって言ってもこれ大分量があるんですけど…60冊はありますよ」

「この後先生は、視聴覚室でPTA会議のセッティングをしなきゃいけないんだ。時間が切羽詰まっているからやってくれないかなぁ」

私のせめてもの訴えは無情にも突っ込まれた。どうしよう…私生徒の中でも力が無いのに。

 

「何か言われたら先生のせいにしていいから!それじゃあ頼むな!」

あ…行っちゃった。先生が授業に使う机の上にはノートがこんまりと置かれたままだった。これ運ぶの、嫌だなぁ…。

 

 

嫌だなぁと運ぶ前に感じた気持ちは運んだ時もサッパリ変わらなかった。

「重い…それに前が見えないよう…」

山盛りになったノートを運びながら私は思わず弱音を吐いた。みっともないかもしれないけど、文句を言うくらいなら許されるよね。

 

 「こんなんだったら、何回かに分けて持って行けばよかったなぁ…」

 早く終わらせたいからいっぺんに運ぼうとした私もバカだった。私はチビだからこんなにノートを運んだら前が見えなくなるのは分かり切っていた事なのに。

 

 「大体何で職員室が最上階にあるの…階段上らないと行けないなんてひどいよぅ…痛ッ!」

 集中して運んでいなかった為か、私は誰かにぶつかってしまった。その衝撃でノートが廊下のあちこちにばらまかれる。

 

 「ご、ごめんなさい!私、前が見えてなくて!」

私は反射的に謝った。乱暴な男子や怖い先生にぶつかっていたらどうしよう。それこそ不幸の何物でもないよ。

 

「あぁ、先生は大丈夫だぞ。高槻」

私の前から透き通った大人の男の人の声が聞こえてきた。この声は…

 

「し、進藤先生!」

その声の主は体育担当の進藤先生だった。進藤先生はかがみこんで私に視線を合わせて、にっこりと微笑んでこういった。

「何か困っているのなら手伝うぞ」

 

 

話しをしたところ、先生が日誌とノートを持つ事を手伝ってくれた。

最初は自分が全部持って行くと言ってくれたのだが、それは申し訳無いと思ったから、一緒に運ぶことにした。それでも先生の方がずっと量が多いんだけどね。

 

「ははっ、そうか高槻も付いていなかったな」

「笑い事じゃないですよ。先生」

先生は、私の気持ちを察しないように豪快に笑った。けど全然嫌な気持ちはしない。先生の笑っている所はとても爽やかで明るいから大好きなんだ。

 

「おおっと、悪い悪い。けど寺山先生の横着な所は、先生も時々苦労するよ。先生もこの間何て帰ろうとしたのに、視聴覚室にプロジェクターを返しに行ってくれとかで餌食に…おっと高槻。先生がそう言ってたのは内緒な」

慌てたように、先生は人差し指を自分の唇の前に立てて「お願いだから黙っていて」のポーズをした。まったく、本当にお茶目なんだから。

 

「ふふ、分かりました。先生」

私もついつい笑ってそう言わざるを得なかった。 

すると先生が私の顔を覗き込むように、顔を近づけてきた。

 

「あ、あの!先生。どうしましたか!」

びっくりした、思わず声が裏返っちゃったよ。

すると先生は私に向かって二カっと笑いかけてくれたんだ。

 

「うん、やっと高槻元気になってくれたな」

え?私はそう思わず聞き返してしまった。

「お前は最近体育の授業でも元気が無かったからな。先生どうした物か心配していたんだが。こうして笑ってくれているのを見ると先生一安心だ」

 

先生は、裏表がない表情で私にそう話しかけてくれた。

ズルいよ先生。先生にそう言う事言われたら、私ますます先生の事好きになっちゃうよ。

 

 

そう、私は進藤先生の事が好きなんだ。

いつでも明るくて、どんな生徒でも平等に熱い気持ちでぶつかってくれる先生。元々引っ込み思案の私にとって、進藤先生は憧れの人なんだ。

 

(それに…似てるんだ。クリス王子に)

髪の毛は短いけどさらさらしていて、運動が得意なのに筋肉モリモリと言う訳でもない。男の人特有の逞しさが満載だけど、どこか女の人のようなきれいな所も見られる。まさしくエメラード姫が恋したクリス王子にそっくりなんだ。

 

(私もこの気持ちを持ち続けて居れば、いつかは先生も私の事を好きになってくれるかな…)

「高槻?」

「ひゃい!」

そんな考え事をしていた最中に、急に先生に呼び止められた。また変な声出しちゃったよ。恥ずかしい…

「着いたぞ、職員室」

気が付いたら、もう目的の場所までついたらしい。

 

「後は先生がやって置くから、高槻はもう帰りなさい。車に気をつけるんだぞ」

そういって先生は私がもっているノートを優しく手に取ってくれた。

「あ、先生ありがとうございました…」

「うん、また明日な」

 

先生は、そう言って職員室の中に入っていった。

私は先生の話した言葉を少しでも耳に焼き付けようとしたのか、その場にずっと立ち尽くしていた。

 

 

 

「進藤先生、やっぱりカッコいいよね…」

家に帰って夕ご飯を食べ終えた私は、机を前にして今日の放課後の事に対して想いを募らせていた。

ママが言うにはご飯を食べている時もポロポロこぼしてボーっとしていたらしいけど、憧れの人とあれだけ話せたのならそうなっちゃうのも仕方ないよね。と自分で自分を納得させた。お気入りの服に沢山ご飯粒が付いちゃったのは残念だったけど。

 

ふと机の上に目をおろすと、広げてあるノートが目に入った。

「私ぼーっとしたまま宿題でもやっていたのかな…ん?」

そこにあったのは本日出された漢字練習の宿題などではなく、『進藤先生、大好き』とかかれた文字の羅列であった。

 

「ッ!!」

私は、思わず反射的にノートを閉じた。危ない危ない、こんなの流石に人に見せられっこないよ。なんか見開き2ページにわたって書かれてたし。

 

「私も大分重傷だなぁ…ね、シルフィ」

そう言いながら私は、ランドセルに付けてある小さなぬいぐるみに声をかけた。

その子の名前はシルフィ。『エメラード姫の愛の行く先』に登場する妖精だ。

 心優しい姫様は人ではない存在にも心を開くことができ、シルフィはその姫様の相棒なんだ。大人しい姫様と正反対な元気で前向きなシルフィとのやり取りは、絵本の中で私が好きなシーンの一つなんだよね。

あまりにも好きだったから、1年生の時にママに無理を言ってハンドメイドで作ってもらった、私の宝物の一つだ。

 

「夜も遅いし早く寝よう…今日はいい夢が見れそうだな」

私は、もぞもぞとベッドに入り、電気を消して目を閉じた。心の中で先生にお休みを言いながら。

 

 

 

「……な…」

どこからか私を呼ぶ声がする。うーんまだ眠いのに、誰なんだろ…

「…て…ひな…」

というか部屋に来てまで私を呼ぶ人なんかいないか。ママとも違う声みたいだし。

「…きて…ひな…」

さ、そうと決まったら2度寝しちゃおう。今日は学校お休みだし。

 

「起きて!雛!」

「ひゃいぃぃ!!」

耳元で大きく叫ばれたせいか、思わず変な声を上げて飛び起きてしまった。い、いったいなんなんだろ…

 

「あぁ良かった、やっと起きた!全く起きないから心配だったよ」

私は寝ぼけ眼をこすり、声をかけた主を見つめた。

何とそれは、私は夜に話しかけていた妖精のシルフィのぬいぐるみだった。

 

「え…ええぇ!!!あなた、シルフィ!?な、何で話せるの?」

「まぁそれは話すと複雑なんだけどね、それにしても酷いよ。ずっとカバンに括りつけちゃってさ。おかげでそこから抜け出すのに苦労したよ」

そう言いながらシルフィはお尻を向けてきた。紐が付いていた場所の布地が破れている。おそらく無理やり引っ張ってきたんだろう。

 

…ってこんな事を冷静に考えてる場合じゃないよね。

「私、夢でも見ているのかな…」

寝起きの事もあってか目の前の光景に頭が上手く働かない。そんな最中に下からドタドタと階段を上ってくる音が聞こえた。

 

「ひな!どうしたの!こんな朝早くから大声出して。何かあったの?」

その人は凄く慌てた剣幕でやってきた。ママだ。不味い!シルフィが話している姿なんか見られたら大変な事になる!

慌てて私はシルフィを布団に押し付け声が出ないようにした。

 

「な、何でもないよ…ママ。たまたま虫が出たからびっくりしただけ。もう追い払ったから大丈夫だよ」

なんて下手ないい訳なんだろう。シルフィの方からは苦しそうなうめき声のような物も聞こえるが、気のせいだよね。そうに決まっているよね。

 

とにかくここにいるとまずい。誰もいない場所に行かないと。

「私ちょっと外に出てくるね!最近早朝ランニングに興味があるんだ!」

シルフィを掴み、勢いよくベッドから飛び出した私は一目散に階段を降り、靴を履き替え外に駆け出した。

 

ふとリビングの時計が見えたけど、まだ朝の5時半だった。もっと寝ていたかったなぁ…

 

 

 

 

そうして私は児童公園のベンチに座っていた。

ここは子供以外はほとんど来ない場所だし、休日の時間帯なら人の往来何てほとんどない。密かな話をするにはうってつけだった。

 

「ひどいじゃないか!雛!危うく窒息するところだったぞ!!」

ベンチに座ったらすぐに、シルフィがぷんすか怒っていた。やっぱり苦しそうな声をしていたのは本当だったのか。ごめんね。

「ご、ゴメン…けどあなたのようなぬいぐるみが喋るなんてのはこの世界じゃ不自然だから…」

「…まぁ、そこら辺の事情は僕だって理解しているけどさ」

渋々だが、納得してくれたらしい。良かった。

 

「ところで…あなたはどういう存在なの?まさか本当に絵本の世界からやってきたおとぎ話の妖精なの?」

ようやく本当に聞きたい事を口に出せた。まさか自分の好きな絵本の妖精が目の前に現れるなんて信じられないよ。

けど、シルフィは歯切れが悪いようにように答えを返してきた。

「う~ん。僕はそう簡単に説明できる訳じゃないんだよなぁ。別に絵本の世界からやってきた訳でも無いし。まぁおとぎ話からやってきたと言われればそうなんだけど…」

どうにも訳が分からない…私は国語が苦手なのに…

 

「まぁ分かりやすく言うと。雛の『深層心理』が意思を持ったってやつかな!」

「シンソウシンリ?自分でも気が付いていない本当の気持ちだっけ…」

確か以前テレビでやっていたような気がする。

 

「そう、そんな感じ。雛はさ。放課後や家で事ある毎に僕に話しかけてくれただろ?誰誰ちゃんと仲良くなりたいとか、誰誰君が素敵とかさ。」

…たしかに、色々と話しかけていた。なんだか私は急に恥ずかしくなってきた。

 

「そういう雛の、誰かを好きになりたい。ずっとそうでいたいっていう強い気持ちが、話しかけられた僕にずっと積もってきたんだ。そして昨日の先生の話。あれがトドメだったな~。気持ちが強すぎてオーバーフロー。思わずこうして意思を持つようになっちゃった」

私はボンっと音がするかのように顔が赤くなっていたと思う。まさか先生の気持ちがそこまで強かっただなんて…

 

「まっ、僕は雛の心の奥にあるもう一つの姿ってところかな。だがら妖精って訳じゃない。実際姿はぬいぐるみのままだし、口が開いて喋っている訳じゃないだろ?」

確かに、シルフィはぬいぐるみから声が聞こえるだけだ。黙っていればただのぬいぐるみにしか見えない。

 

「そんな訳で、僕は雛の分身と言ってもいいかな。けど分身だからって君の事をなんでも知っている訳じゃないんだ。話に聞いているだけでこっちは何も分からない事も多い」

なんだろう。すごい嫌な予感がする…

 

「だからさ。せっかくこうして表に出てこられたんだ。君が一番よく話してくれた親友のつばさちゃん。彼女に合わせてよ」

えぇ!?つーちゃんに会わせる?

「い、いや。貴方を急に見せたらつーちゃんビックリして倒れちゃうよ。それにこんな朝早くに起きている訳が…」

私はそう言ってシルフィをなだめようとした。だけどシルフィは

「大丈夫、陰で黙って見ているだけにするからさ。君が会わせないって言うなら僕一人でも行くから」

そう言って跳ね上がり、ぴょんぴょんと移動しようとした。

 

「待って~!!分かったつーちゃんの家に行くから!お願いだから動かないでー!!」

動いているぬいぐるみ何て、誰かに見られたら一大センセーションだよ。ただでさえこの町は狭いんだから。

 

「やりぃ!じゃあよろしくね。雛」

シルフィは能天気な感じで、黙って私のポケットの中に納まった。

「はぁ…大変な事になっちゃったな…」

そもそもこんな時間につーちゃん起きてるのかな?まだ朝の7時前なのに。

 

 

 

「来ちゃった…」

児童公園から歩いて10分。私はつーちゃんの家の前についた。

つーちゃんの家と公園からは距離が近いから、公園で遊び疲れた後は、よく家の中にお邪魔してたっけ。

そんなことを考えながら、私は玄関の前に立ちすくんでいた。

 

「ここが親友のつばさちゃんの家か~早く会わせてくれよ!」

シルフィはこっちの気も知らないで、おねだりをしてくる。

「しっ!大きな声出さないで!誰かに聞こえちゃったら大変だよ…」

 

そもそも、ここからどうしたらいいんだろう。休日のこんな朝早くに尋ねるなんて非常識だ。けど一目でも姿を見せないと、シルフィはどうするか分からないし、かといってこのまま玄関の前にいるのも不審者の様だし…

私は、鬼ごっこで四方八方行く手を遮られてしまったような感覚に陥っていた。

 

(やっぱり呼び鈴を鳴らすしかないのかな…ごめんなさい!)

私は意を決して玄関の前に置いてあるチャイムを押そうと、指を近づけた。

 

しかしその寸前の所、玄関の扉が急に開いた。

「わっ!びっくりしたー!!」

驚きながら出てきたのは私と同じ年位の女の子。会いたかった親友のつーちゃんだった。つーちゃんは扉を閉めて、私に向かい合った。

 

「ってよく見たら雛じゃん。こんな朝早くにどうしたの?なんか用事でもあった?」

つーちゃんは私に尋ねてきた。そうだよね。こんな朝早くに玄関の前にいたらびっくりするよね。

「い、いや~。最近朝のジョギングにハマっててさ…児童公園の方まで走っていたら家の前を通りかかったから何となくと…」

起きた時もそうだが、私は嘘が下手だ。本は好きだけど作家にはとてもなれそうにない。

 

「運動嫌いの雛がジョギング?なんかおかしいね」

つーちゃんはそう言いながら笑った。ゴメン、その笑いは今の私に刺さっちゃう。

けどよく考えたら、つーちゃんもこんな朝早くに出てきたのは不思議に思った。

 

「つーちゃんこそどうしたの?こんな朝早くにどっか出かけるの?」

つーちゃんは昔の部屋着に使っていたラフなジャージではなく、白い清潔感のある長袖のTシャツにジーンズをはいている。つーちゃんらしい余所行きのファッションだ。

 

「うん、隣のクラスの篠崎さんとのグループと映画を見にね。街からは遠いし、最初の上映でみるから早くないと間に合わないんだ」

篠崎さんは同級生の中にも派手なグループに所属している女子だ。私はどちらかと言うと苦手な女子に入る。

 

「つーちゃん。篠崎さんと仲良かったんだ」

私は気になった。つーちゃんはどちらかと言うと穏やかな性格だから、篠崎さんと気が合うとは思えなった。

「うーん。たまたま合同で体育の授業やった時に声をかけられてね~。親しくしてくれるって言うならありがたい限りだし」

つーちゃんはあっけらかんと答えた。

 

「けど…いくら何でも早すぎじゃないの。別に映画見るならお昼過ぎでもよかったんじゃ…」

「だって向こうがその時間じゃないとダメだって言うんだもん。私が出てきたのは駅から近い私の家の前だから、流石にチャイムを鳴らされると親に迷惑かかるから外で待機って訳」

つーちゃんは私の疑問に次々と答えてくれた。

「なんというか、大変なんだね…」

「ホントだよ~誰かに好かれるには、自分が我慢できるところはしなければならないし。本当に苦労するよ~」

つーちゃんはそういって笑った。けどなんだかその笑顔はとても疲れているようにも見えた。私はそんなつーちゃんを見て何も物が言えなかった。

 

「あ!ひょっとして最近付き合いが悪いの気にしてた?だって雛って篠崎さんみたいなタイプ苦手だと思ったからさ。無理に私に突き合わしても悪いと思って…」

「い、いや…別に気にしてないよ。大丈夫」

 慌てたつーちゃんに、私はなだめるように返事を返した。それを聞いたつーちゃんは「そっか」と言ってホッとした様であった。

 

 

「けどさ、私に比べると雛はホント気楽でいいよ」

そんな矢先につーちゃんが急に話題を振ってきた。なんだろう?

 

「だってさ。私は他の人に好かれたいと思っているからこう言う事も時にはしなくちゃいけないけど。雛の方は自分が好きでいられればそれでいいとか昔から言ってたじゃん。それって凄い楽だなって思って」

つーちゃんが急にしゃべりだした。

 

「雛が好きなエメラード姫なんかさ。ずっと好きだって思い続けていたら最後は王子様と結ばれたじゃん?何もしないで想いが通じ合えるなんてすごいなーって」

つーちゃんの話はまだ終わらない。

 

「前から思っていたけどさ、雛はエメラード姫なんだよね。誰かを思い続けていればそれだけで幸せなタイプ。最後はそうして幸せを掴むんだろうなって考えたらなんかズルいなーって。結構姿も似ているしさ」

何だか嫌な空気になってきた。なんでだろう。つーちゃんと話してこんな変な気持ちになりたくなかった。

 

「私は、雛のようなお姫様にはなれない。誰かに好かれるためならどんな事だってして見せるから」

「つーちゃん…」

口調こそ明るかったが、その言葉には何処か棘があるように感じた。

 

「空条さーん」

遠くからつーちゃんを呼ぶ声が聞こえる。おそらく篠崎さんだろう。

「来たから、私はもう行くね。それじゃあ」

そう言ってつーちゃんは声の主の元に走っていった。私は再び一人で取り残された。

 

「な~んか感じ悪い子だったね~。僕が想像していたのはちょっと違ったな」

シルフィが胸ポケットから話しかけてきた。そうだ、シルフィもいたんだった。

 

「本当にあの子が君の親友なの?やたら攻撃的だったように聞こえたけど」

「最近つーちゃんとは距離が離れてきたから…元々つーちゃんは活発なタイプだったし、大人しい私とは違うんだよ」

少なくとも私はつーちゃんのようなバイタリティはないんだよね。

 

「私は、一生あんな感じに離れそうにないな」

ついつい自分の内気な性格を思い返してしまい、ネガティブになってしまう。

そんな中、シルフィが胸ポケットから生き良い良く飛び出し、私の頭の上に乗っかってきた。

 

「ひゃあ!いきなりどうしたの?」

「なーに落ち込んでいるのさ!」

シルフィーが元気よくしゃべり始めた。

 

「雛はさ、自信が無さ過ぎなんだよ!もっと行くときはグイグイ行かなきゃ。やってやろうって気にならなきゃ!」

さらにまくし立ててきた。

「僕個人としてはあの子はどうにも気に食わないよ。けどあの子の積極性は見習うべきところがある。自分がこうなりたいからこうしたいっていうのはとても大切だと思うよ!」

シルフィ、もしかして励ましてくれているのかな?

 

「自信を持つ…こうなる為にこうしたい…」

「そう、その心があればなんだって叶うさ!例え自分がどんなにできないって思っていた事だってね!僕はそう思うよ!!」

そう言いながらも、シルフィはぬいぐるみのまま表情を変える事は無い。けれど私には何とも爽やかで晴れやかな顔が浮かんでいた。

 

シルフィの声の大きさを気に留めないほど、私は彼の言葉に耳を傾けていた。

「想いを行動に移せば…何でもできる…」

私は頭の中でその言葉を繰り返していた。

 

 

 

 

…とそう思ったのは良いんだけど、流石にこれはハードルが高すぎだよ…

鉄棒にぶら下がりながら私は昨日の事を思い出していた。

 

「高槻―後はお前が出来れば、クラスのみんな懸垂の課題コンプリートだぞー」

「雛ちゃーん!頑張ってー!」

 

そんなクラスのみんなの声援や茶化しが痛い。頑張ればできるって言っても流石に苦手な体育の授業じゃそんな簡単にいくわけないよ。そもそもこれまで一回もできていないんだから。

 

困ったように前を見ると、進藤先生が真剣な顔つきでこっちを見ている。そうだ、進藤先生はこういう時には厳しいんだった。けどその顔には「お前はできる」と言ってくれているようにも聞こえた。

「そうだ、先生が見ているんだから頑張らないと」

私は意を決してチャレンジすることにした。

(えっと、確か腕の筋肉だけじゃなくて、背中の筋肉を意識して上がるようにだっけ…)

そう自分に言い聞かせながら、腕と背中に力を入れる。すると自分の体が少し持ち上がった。

 

「おっ!高槻、今日は行けるんじゃないか?」

「今までは全く動きもしなかったもんな!」

クラスのみんなも驚いている様だ。期待されても困るけど、もしかしたら勢いに乗っていけるかもしれない。私はそのまま力を籠め始めた、徐々にだが段々と顔が鉄棒に近づいていく。けど私の体力ももう限界だ。

 

「雛ちゃん!あと少しだよ!」

「ファイト―!」

 そうだ、頑張らないと。その想いがあればできない事なんて無いんだ。何だってできるんだ。

 

 

…あ…

 

 

 

 

 

「大丈夫か?高槻?」

私は保健室で、進藤先生に手当を受けていた。

結局懸垂はあと一歩のところで敵わず、私が手を放してしまって落ちてしまったんだ。

 

「大丈夫です。ちょっとタンコブが出来てしまいましたけど…」

頭から落ちたからちょっとした騒ぎになったんだけど、ケガはコブやちょっとした擦り傷くらいで大したことない。

けど先生はすごい剣幕で心配してくれて、大急ぎで保健室まで連れて行ってくれた。因みにお姫様抱っこの形だったからとても恥ずかしかった。とても嬉しくもあったけど。

 

「それにしてもこんな時に保健の先生がいないなんてな」

先生は消毒液や絆創膏を探しながら、そんな事を言っていた。

 

「あ、ひょっとして先生の手当てが不安なのか~。大丈夫だぞ、先生は体育担当の先生だから保健の授業もできるからな。応急手当ならお手の物だ」

「そう言えば先生は保険の授業もやる事がありましたよね。そんなに授業の回数が多かった訳じゃないですけど」

「小学生の内はまだな。中学になったらもっと増えるようになるぞ」

先生とはそんな話をしていた。中学生か。あんまり実感わかないな。

 

「中学と言えば、高槻たちの学年も後半年で卒業だな。先生が学校に来て2年位の一緒にいたから、寂しいな」

私は先生のその言葉に、はっとした。そうだ私はもうすぐ卒業するんだ。そうすると先生にはもう会えなくなるんだ。

 ずっと憧れだった先生と離れる。そんな未来に私の意識はまだ追い付いていなかった。

 

「そ、そうですね。けど私が進学する中学は結構この小学校とも交流がありますし。卒業してもたまには顔出す機会があると思いますよ!」

 しどろもどろになりながら、私は言った。先生の事だから「はは、そうだよな」と軽く笑って流してくれると思ったんだ。

けどそんなことは無く、先生の顔はどこか真剣な様子だった。

「うん、お前たちが卒業するっていうのもあるんだけどな…」

 

 

 

 

進藤先生は、保健の先生を呼びに出て行った。やっぱり一回しっかり見てもらわないと不安だから。先生はそう言っていた。

 私は保健室のベッドに腰かけながら、さっきまでの先生の話を思い出していた。

 

「先生な、高槻たちが卒業したら。この学校辞めるんだ」

先生は真剣にそう話した。

「結婚して、彼女の故郷に引っ越すんだ。そっちで新しく先生を始めるつもりだ」

話しは続く。

「島根県。北陸のこことは大分離れるから帰ってくる機会も少なくなるかもしれないな」

私はその話をどこか夢心地のような形で聞いていた。先生が結婚?引っ越してしまう?あまりにも急な話で理解が追いつかなかった。

 

「…高槻?大丈夫か?ボートっしている様だけど」

私は先生に尋ねられて、ハッとした。やっと正気に戻れたって感じだった。

「あ、はい…大丈夫です。結婚するんですね。おめでとうございます」

 

とりあえず私はそれだけ言うのが精一杯だった。

 

「おいおい、そんな暗い顔するなよ。お前たちが卒業するまでは、先生どこにもいかないんだからな」

どうやら私は言葉を言うのに精いっぱいだったらしい。沈んだ表情は隠せていなかった

ようだ。

 

「けどな。こうして卒業の事を考えると、改めて高槻は凄かったなって先生は思うぞ」

え?私が凄い?こんな内気で自己主張が苦手な私が?私は先生の言っている事がさっぱり分からなかった。

 

「だってさ、高槻は誰も水をやらないクラスの花壇に水を上げたり、飼育係でもないのに動物たちに餌をあげたりしているじゃないか。ああいうのって誰でもできる者じゃないんだぞ?」

先生が言っているのは私にとってホント些細な事だった。先生はそんなことを凄いと思ってくれていたんだ。

 

「そんな。別に自分が気になっちゃうから好きにやっているだけで。別に凄いなんて言われる事なんて無いです」

「それを当たり前って言えることが、お前の凄い所なんだよ」

先生は私の目を見据えて話し続ける。

 

「それにな、苦手な体育の授業だって。いつも頑張っているじゃないか。先生は嫌な事からすぐ逃にげちゃうタイプだからな。高槻のそういう姿は本当に尊敬できる」

先生、それは先生が担任だったからです。

 

 

「大人としては情けない話なんだけどな。学校の先生をやっていると子供たちに教えられる事は沢山あるんだ。だから先生もお前たちの前では頼れる大人でいたいと思っている」

まだまだ、至らないところは沢山あるんだけどな。そう照れくさそうに言いながら先生は頭を掻いていた。

 

 

「けどな。高槻なら先生みたいな大人じゃなくて、もっと頼れる大人になってるんだと思う。細かい所にも気を配れて、辛くても何かの為に全力で頑張れる大人にな」

「先生…」

思えばこんなに沢山先生と話したのは初めてだったような気がする。

 

 

「高槻。先生よりも立派な、素敵な大人になるんだぞ」

先生は私の目を見つめてそういった。

 

「それにしても、保健の先生遅いな。ちょっと呼びに行ってくる」

体育は6限目の授業だから、終わったらそのまま帰りなさい。そう言って先生は保健室から出ようと扉に手をかけた。

 

「あ、あの。進藤先生!」

私は部屋を出ようとした先生に反射的に声をかけた。

「どうした、高槻?」

先生は私に尋ねる、しかし私の口からは続きの言葉は出ない。

言わなきゃ。ここで言わなきゃ私は絶対に後悔する。けど何を言えばいいの?私にはそれが分からなかった。

「あ、あの…」

私の目が泳ぐ。伝えたい想いは確かにあった。けれどそれを伝える方法は今の私には無かったんだ。

 

 

「先生!さようなら!今日はありがとうございました!」

私は、そう言いながら頭を下げた。それを見た進藤先生はにっこり笑いながら言った。

「おう、また明日な」

先生は、そう言って保健室から出て行った。

 

 

これが、先生が保健室を出ていくまでの顛末だ。私はベッドに座ってうなだれながらこの事をずっと思い出していた。

 

 先生が結婚して、ここからいなくなる。胸に穴がぽっかり開いてしまったような気持だった。そしてそれ以上に先生のある言葉が私の心を離さなかった。

 

 

(高槻のそういう姿は本当に尊敬できる)

違うんです。私はそんな人間じゃない。

 

 

(高槻なら先生みたいな大人じゃなくて、もっと頼れる大人になってるんだと思う)

そんな事言わないでください。先生は素敵です。

 

 

(先生よりも立派な、素敵な大人になるんだぞ)

気持ちを伝えられない私なんかよりも、いつも真正面からぶつかってくれる先生の方が、もっともっと素敵な人間です。

 

 

私は先生にそんなことを想われる資格なんて無かった。思っているだけで何一つ行動できなかった私みたいな人間に。

(そう言えば、先生に「さようなら」って言ったのも始めてだったな…)

今までは帰る時も「また明日」って言っていた。何でかは分からないけど、おそらくさよならを言いたくなかったんだと思う。

 けれど今日初めてさよならを言ってしまった。それは何でかは分からなかったけど、おそらくそう言う事なんだろうな。そんな矛盾した事を考えていた。

 

 

ふと私の頭にエメラード姫の絵本の一節が思い浮かんだ。

 

『いけません…私たちは敵国同士で争っている身…その国に身を納める者が共にいる事など、許される訳がありません』

『争っているからなんだというのです。貴方は私の事をずっと想い続けてくれました。そして私もその愛に打たれました。愛と言う絆よりも強い物がこの世にあるとは私には到底思えません』

 

 

私が好きなエメラード姫は、一途に相手を想い続けて好きな相手と結ばれた。

私もそう信じていた。想い続ければいつかは相手がそれに応えてくれるって。私はずっとお姫様に自分を重ね合わせていたから、私もそうなるだろうって思っていた。

けれど、今の自分を考えてたら、私はこう思うしかなかった。

 

 

「あぁ。私はエメラード姫じゃなかったんだな…」

その言葉をつぶやいた瞬間。自分の中でとんでも無く寂しい気持ちに包まれた。

 

 

「ごめんごめん。保健室登校を考えている児童の保護者との面談があって遅くなっちゃって…」

 保健室の先生が戻ってきた。その刺激がトドメだったと思う。私はボロボロと大粒の涙を流してしゃっくりを上げた。

 

「ど、どうしたの高槻さん!どこか悪いの?大丈夫」

先生は心配そうに私に駆け寄る。先生、迷惑かけてごめんなさい。けど今の私にはこの気持ちを抑える事はできません。

 

「ち…違うんです…ッ!どこも痛くありません…ッ!ただ、胸の中がとても寂しい気持ちで一杯なんです…!」

私は先生に縋りついて泣き続けた。先生はそれに対して何も言わず、胸の中で抱き留めてくれた。

 

 

 

 

 

あの日から3日は経ったろうか。私は早朝につーちゃんの家の前にいた。

 

因みに、あの日は保健の先生が来るまで家まで送ってくれた。どこも怪我をした訳でも無いのに申し訳無かった。

 流石にママとパパにも心配されたけど、「好きな人に振られた」といったらそれ以上何も言わずにいてくれた。とてもありがたかった。

 

 それからも普通に学校には行っていたけど、ザルで水をすくような気分でどこか手ごたえが無かった。

 そんな日々を過ごして迎えた初めての休日。私の足は自然とつーちゃんの所に向かっていったんだ。

 

 

「つーちゃんとは…本当に最近遊んでないな…」

私はつーちゃんの事が気にかかっていた。あの日つーちゃんと話してからいろんなことがあったし、何よりつーちゃんの顔はどこか暗かった。きっと私の知らないところで何かあるんじゃないかと思った。

 

「まぁ彼女は色々人付き合いが激しいみたいだし。色々物入りなんじゃないの?」

シルフィが私に気楽な感じで話しかけてきた。何となく彼のこういった空気は今の私にはありがたかった。

 

「色々考えてもさ。それは彼女が選んだ道なんだから。こっちからどうこうできないよ」

「それは、そうなんだけど…」

 そんなことを話していると、私に声をかけてきた人がいた。

 

「あら!雛ちゃんじゃないの!久しぶりね~」

その人はつーちゃんの家のお隣さんのおばさんだった。小さい頃はつーちゃんの家でよく遊んでいたから、私とも顔なじみだ。

「あ、おばさん。お久しぶりです」

「懐かしーわね。かれこれ2年ぶり位かしら?」

「そうですね…高学年になってからあまり遊ばなくなりましたから」

久々に会ったけど、どうも歯切れの悪い話になっちゃう。するとおばさんが急に渋い顔をしてきた。

 

「そうね…その位になってから、つばさちゃん、どうもあまり良くないお付き合いしているみたいだし…」

良くないお付き合い?この間の篠崎さんの事かな?

 

「どういうことですか?」

「いやね。最近つばさちゃんの所に遊びに来ている子ね。自分の我がままばっかり言って、つばさちゃんがそれに付き合っているみたいな関係なのよ。この間もつばさちゃん朝から一時間も家の前で待ちぼうけ食らってたり」

確かに、あの日もつばさちゃんは朝早くから玄関から出て行った。そんな事もあったんだ…

 

「それにね。この今日だって『私お金持ってるからみんなにおごるよー』ってその子たちにつばさちゃんが言っていたのよ。それをみんな当然のように受け取るって感じで。なんか感じ悪いな…って思ってたの。私家が隣だからさ。そう言うの分かっちゃうのよ」

 

お金で…せまる…。私にはその光景が信じられなかった。あの明るくて私を引っ張ってくれたつーちゃんが、お金を出してまで誰かと仲良くしたいって考えている事が。

 

「空条さんちの家は両親が共働きでいない事が多いから、多めのお小遣い渡しているって聞いてたけど、それでもね…」

おばさんは寂しそうに呟いた。

 

「つーちゃん、どこに行ったか分かりますか?」

「映画の事を話していたから、おそらくバイパス沿いのショッピングモールだと思うわ。

もし雛ちゃんがつばさちゃんと今でも友達なら、色々話を聞いてあげて欲しいわ。あの子最近疲れている様だから」

おばさんは私にそう言い残して、庭の中に入っていった。

 

つーちゃんが…そんなことまでしてる。あのつーちゃんが…

私の心臓はドキドキが止まらなかった。

 

「雛。彼女の子と放っておいていいの」

シルフィが言った。

「親友なんでしょ?」

私の方を向いてそう言った。

 

「だって、私が行ってもどうにもならないよ…」

つーちゃんの事は心配だ。何とかしたい。けどどうしたらいいか分からなった。

 

「想いがあればなんだってできるんだよ!彼女は親友なんだろ!!」

 

そんな私にシルフィが力強く叫んだ。私はハッとして目を開いた。

周りの人たちが何かざわめいている。けれど今の私にとってはどうでもよい事だった。

 

(そうだ。想うだけで何もできないのはもう嫌なの!)

私は駅のバス停に向かって走り出した。

 

 

付いた先のショッピングモールは、この町で一番大きいデパートだ。休日という事もあってか、お客も沢山いる。

 私は混んでいる場所は苦手だけど、今はそんな事を言っている場合じゃない。私は人混みを避けながら必死でシネコンの場所を目指した。

 そこに行けば会えるという保証はない。けれど私は会えるという予感がしていた。

 

「な、何かこんな沢山の人がいる所、僕初めてだよ…」

「少し頑張ってシルフィ!もう少しで映画館の場所につくから!」

気持ち悪そうに声を出しているシルフィをなだめながら、私はシネコンのコーナーにたどり着いた。

 

「つーちゃんいるかな…朝早くから映画館に行ったなら、そろそろ上映が終わって出てくる時間帯だけど…」

 キョロキョロしながら探していると、物販のコーナーで声がした。私と同じ年くらいの女の子達の声だ。

 

(いた!)

間違いなくつーちゃんと篠崎さんのグループだ。近づくとこんな会話が聞こえてきた。

 

「ねぇ篠崎さん。ちょっとだけお金貸してよ~。今回の限定グッズ、買い逃すと手に入らないんだから」

「いや~今月のお小遣い厳しくてさ。映画のチケットだけで精一杯っていうか…」

「生活費は別にもらっているって言ってたでしょ?少しくらい使っても良いじゃない」

「いや、それは…」

「私たち友達でしょ?友達なら助け合おうよ」

 

 

おばさんの言ってた通りだった。今のつーちゃんの姿はたかられている女の子だった。

心臓が高鳴る。足が震える。けどそれ以上に今のつーちゃんの姿を見るのは辛い。

(想いがあれば、何だって!)私は前に飛び出した。

 

 

「つーちゃん!」

私は叫んだ。彼女たちはいっせいに私に振り返えった。つーちゃんは驚いたような顔。篠崎さんたちは変な物を見たような顔をしていた。

 その視線に思わず後ずさりしそうになる、けれど私は言葉を続けた。

 

「つーちゃん…話は全部聞いたよ。何でこんなことまでして誰かと仲良くなろうとするの?」

「そんな真剣にならないでよ~雛には関係無いんだからさ」

「関係あるよ…私はつーちゃんの友達だもん…」

つーちゃんはどこかあっけらかんとしていた。それでも友達だと言ったら少し目が緩んだ気がした。

 

「誰かに好きになってもらえるために沢山努力できるつーちゃんはずっと凄いって思っていたよ。けど、こんなやり方は間違っているよ…」

「…私はこうでもしないと、皆に好かれないから」

つーちゃんは面と向かってそういった。

 

「雛は昔から、自分が好きでいられれば幸せって言ってたけどさ。それじゃ満足できない。自分が傷ついても人に好かれていたい。私は雛みたいなお姫様には一生なれないんだから」

「違う!違うよ!そんなこと言って自分の気持ちをごまかさないで!」

私は叫んだ。

 

 

「私は授業中手も上げられない引っ込み思案で!懸垂もクラスでただ一人できなくて!好きな人には気持ちも伝えられずに振られた惨めな女の子だよ!好きな気持ちを想い続けただけでハッピーエンドを迎えられた、エメラード姫なんかじゃないよ!」

 

「何言っているのこの子?」

「1クラスの高槻って子でしょ?一人で絵ばっかり描いている陰キャ」

「フーン。空条さん。そんな子ほっておいて早くお土産買おうよ」

「あ…」

篠崎さんたちがつーちゃんを連れて行こうとする。

「ダメだよ!行っちゃだめだよ!お金で繋がってる友達なんか嘘っぱちだよ!しっかりしてよ、つーちゃん!!」

 

私の言葉を聞いて、篠崎さんが近づいてくる。

「あのさ~いい加減にしてくれない?早く買わないとグッズ売り切れちゃうんだけど」

篠崎さんが私を見下ろしていってくる。怖い、けどつーちゃんを放っておけない。

私は涙目で震える声で絞り出した。

 

「お、お願い…つーちゃんを困らせるのは止めてさい…」

「うるさいんだけど」

「つーちゃんはとっても素敵な子だから…お金だけで見るのは止めて…心から好きになってあげて…」

「うるさいって言ってんのよ!!」

 

篠崎さんが私の頬に平手を張った。その勢いに私は尻もちをついた。

痛い、私は殴られた。こんなところで泣きたくない。けど嫌でも涙が出てくる。どうしよう、どうしよう。

 私の頭はパニック状態になっており、まともに物を考える事が出来なくなった。

 

 

そんな中、私はパァン!と乾いた音を聞いた。ここは人がごった返していているんだけど、私は確かにその音を聞いた。

 ふと顔を上げると、つーちゃんが篠崎さんの頬を張っていたんだ。

 

「雛の事をイジメるな!雛に何かあったらビンタ一発じゃ済まさないから!」

つーちゃんは凛とした表情で、篠崎さんと向かい合っていた。篠崎さんは何が起こったから分からない様子だった。

 

 

「何あれ?けんか?」

「警備員読んだ方が良いんじゃないの?」

周りの人がそんなことを話している。篠崎さんたちは居心地が悪そうにしていた。

 

「…しらけちゃった。アンタなんか二度と誘わないから」

篠崎さんはそう言って私たちの前から去っていった。

私はその光景を、ほおを抑えながら床にへたり込んで見つめていた。

 

 

 

 

 

私は通路のベンチに座っていた。

 つーちゃんはあの後、周りの人たちにお騒がせして申し訳ない、大したことないから大人を呼ぶのは勘弁してほしいとしきりに周りの人に謝っていた。

 そして私にはここで待っていてと言われベンチに座らされている。こういった気配りができるがつーちゃんの魅力なんだ。お金じゃないんだ。私はそう思った。

 

「はい」

戻ってきたつーちゃんは私にオレンジジュースを渡してきた。

「いいの?今月厳しいんじゃないの?」

「缶ジュース奢れないほど、切羽詰まってる訳じゃないよ。迷惑もかけたからそのお詫び」

そう言ってつーちゃんは私の隣に座った。因みにつーちゃんが手に持っているのは缶コーヒーだ。

私たちはお互いに黙って目の前の飲み物をちびちび飲んでいた。しかしそれも終わってお互いの中身が空になった。

 改めて私たちの間に沈黙がやってくた。その沈黙を破ったのはつーちゃんだった。

 

「ごめんね、私雛の事甘く見ていたんだ」

私の事を甘く見ていた?どういうことだろう?

「私はさ、ずっと周りから好かれたいと思っていたでしょ。だから雛の自分が好きでいたい、好かれる好かれないはその後でいいって考えが嫌だった。自分ばっかり損してバカじゃないのって思ってた。」

「はは…確かに馬鹿だよね…」

私は渇いた笑いを浮かべるしかなかった。

 

「私はそれでも雛の事好きだったから、雛の夢は叶っていた訳でしょ。そっちだけズルいなって」

昔の話だ。つーちゃんはまだ覚えていたんだ

「だから、どんな手を使っても多くの人に好かれようって、そう思ったんだ」

つーちゃんはまだ中身が残っている事を惜しむかのように、コーヒーの巻を口元に傾けて、また元に戻した。

 

 

「けどさ、やっぱり辛かったんだよね。確かに自分が我慢して周りに合わせたり、お願いを聞いていたら、皆が笑顔で友達だって言ってくれた。けどその反面自分の心が何処か荒んでいくのが良く分かったよ」

今まで正面を向いていたつーちゃんが、私の目を見てきた。

 

「そんな毎日を過ごしていたら、時々雛の事思い出してたんだよね。飾らないで友達でいた雛の事。好かれるより好きでいる事に尊さを感じていた雛の事を」

「つーちゃん…」

「そう思ったらさ。雛の事を馬鹿にしていた自分がとても情けなく思えたよ。ゴメン…」

つーちゃんはそう言って私に頭を下げた。けど私はそれを聞いて謝って欲しいなんて思わなかった。

 

 

「私も、つーちゃんの事が羨ましかったよ」

「私の事を?」

「うん、つーちゃんは好きでいたい私の事を良く思ってくれてたみたいだけど、私は自分で想うだけで何もできなかったから。だからどんな形でも相手に好かれる努力をしているつーちゃんは凄いと思った」

「雛…」

「流石に、お金をたかられいるって聞いた時は気が気じゃなかったけどね」

私はそう言って笑ってしまった。酷いなぁとつーちゃんは言っていたけど、これくらいなら許してくれるよね。

 

「つーちゃんの好かれたいって想いを知らなかったら私は想いを胸にしまっただけの臆病者のままだったと思うんだ」

「好かれたいだけでもだめ…好きでいただけでもダメ…か」

私たちはお互いに言葉を交わす。

 

「たぶん私たちの好きな形はお互いに間違っていたんだね」

「じゃあこれからどうしたらいいのかな?」

「また新しい好きを見つけようよ。少なくとも私はつーちゃんとそれを見つけていきたい!」

「私でいいの…」

「つーちゃんじゃないとダメなの!」

 

私はつーちゃんににっこりと笑いかけた。そしてつーちゃんは私に飛びつき、腕を首に回して抱き着いてきた。私はそれをそっと優しく抱き返した。

 あぁ、やっぱり私にとってつーちゃんは素敵だな。私は改めてそう実感した。

 

『良かったね…雛…』

私の耳元でシルフィがささやいた声が聞こえた。それは小さかったけれど、確かに私の耳に残った。

 

 

 

あれから一週間が経った。

つーちゃんの事は心配だったけど、篠崎さんからは特に何もないらしい。やっぱり人前で殴られた事が恥ずかしいだろうし、私の事を想わず殴った事に負い目を感じているのもあったのかもね。

 そんなことを考えながら、私は自分の部屋で学校に行くための服を着替え終えてた。

 

「雛!早くしなさい!遅刻するわよ」

「今行くよ」

私は絵本を本棚にしまい、シルフィのぬいぐるみを机の上に置き直しながら返事をした。

 

あの日から私は絵本を本棚にしまうことにした、やっぱりずっと空想の世界に自分を重ねるのは良く無いって思ったから、

 けれどこの本は大切だ。きっと私の一生の宝物になるんだろう。その想いだけは変わらなかった。

 

シルフィはあの日から話す事が無くなった。私の深層心理と言うものが変わったからかもしれない。短い間だったけど彼の声が聞こえないのは寂しい。けどこれで良かったんじゃないかと思っている。

 

 

 

「行ってきます」

 

 

愛や好きと言う気持ちは不思議だ。幸せに感じることもあれば苦しめられる事もある。

 

 

「おはよう雛!」

「おはよう、つーちゃん!」

 

 

時には苦しめるだけじゃなくて、相手を傷つけることだってある。私はそれを知った。

 

 

「早くいかないと!今日は一限目から体育だよ」

「うん」

 

 

私のその気持ちは、まだまだ未熟だったんだと思う。そして、その気持ちはこれからどんどん形を変えて私の前に現れてくるんだろう。

 

 

「よし、この前のリベンジだ!高槻!いけるな!」

「はい」

 

 

私がもっと大人になった時、私の好きは誰かを幸せにして、その誰かを心を温める事が出来るような。もっと素敵な物になれるのかな?

 

 

「あと少しだぞ!」

「雛ちゃん!ガンバ!」

 

 

けど一つだけ確かな事がある。

 

 

「おいやったぞ!すぐにしりもち付いたけど…」

「うん、これって立派な成功だよ!」

「高槻!よくやったぞ」

 

 

あの時の私の「好き」という気持ちは、未熟だけれど確かに存在して、私を新しい世界に連れて行ってくれた。

 

 

(つーちゃん…)

 

 

それは私が望んだ世界では無かったけど。

 

 

「やったじゃん!カッコよかったよ、雛!」

 

 

 

その先の世界のドキドキで、私の心は胸がいっぱいになる。




前書きにも書きましたが、この作品は私が大好きな「七つの海」という読み切り漫画の空気感、世界観を大いに参考にし、自分なりに咀嚼して書いた作品です。

その為、本作には意図的に上の原作と展開を似通らせた部分があります。

もしも本作を読んで興味を持った方がいれば、是非ともお読みいただければ一ファンとして嬉しいです。
本作をこの世に送り出してくれた、岩泉舞先生に深い感謝を捧げます。

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