三時の鐘が鳴ると、私の一日は紅く彩られる。毎日同じことを繰り返す日々に、小さな灯りがともる。
さて、今日はどうしようか。ストレートでも、ミルクティーでも。ホットでも、アイスでも。私の今日に色をつけるなら、何色だろうか。そんなことを考えながら、茶葉を一つ一つ、じっくりと見つめる。
「紅茶なんてどれも同じ、飲めればなんでもいい。」
そんな意見もあるだろう。実際、私も専門分野外のことに関しては、違いなんて何一つもわからない。しかし、だからこそ、紅茶には拘りたいのだ。
「……決めたっ。」
少し赤みがかった茶色の茶葉を手に取りながら、そう呟く。今日は、ローズヒップティーにしよう。あの透き通ったルビーのような真紅に、私の一日を染め上げよう。
そうと決まれば、まずは準備から。ティーポットとカップにお湯を注ぎ、人肌くらいまで温める。カップから手へ、じんわりと伝わる熱が、私の心の内の炎をさらに昂らせる。ちょうどいいくらいに温まったら、一旦お湯を流す。
次に、茶葉をティースプーンで掬おう。このティータイムのためだけに、自分で選んだ特別なもの。薔薇の綺麗な装飾のついた、今日にぴったりなスプーンで。ゆっくりとさじを入れ、持ち上げる。それをティーポットへと入れる。この一連の動作で、少しも茶葉を溢さなくなったのは、長く続けた証なのだろうか。
茶葉を入れたティーポットに、お湯を注ぎ込む。一気に流し込むのではなく、少しずつ、慎重に。焦ってもいいことがないのは、全てに通ずるのかもしれない。時計を確認し、五分待つ。カチ、カチと時計の針が一歩ずつ進んでいく。時が経つのをもどかしく感じるのは、テーマパークと今くらいだろう。
きっかりと五分が経つ。ただ時が過ぎ去るだけなのに、これほど嬉しいことはない。ティーポットから沸き立つ芳醇な香りが、部屋の窓から飛び立っていく。この赤も夕焼けの一部に加わるのだろうか、なんて詩的になってしまうくらい、私にとっては喜ばしいことなのだ。
ティーポットを軽く揺らし、濃度を均す。ティーカップにポットの口をつけ、とく、とく、と注ぐ。吟じる暇などなく、ただ濁り一つなき美しい赤に溺れてしまいたい。さぁ、早く飲もう。カップの持ち手に指を通し、持ち上げ、口をつけ────。
「ただいまー!」
「帰ったぞー!おやつも買ってきたからなー!」
……「私」の静寂のティータイムは破られ、「家族」の虹色のおやつタイムが始まった。