タイトルのままです。

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水族館デート

「…優兄、そこの席、一つ空いたから座って…ううん、私は立ってるから」

 

「電車、だいぶ混んでるね…うん。休日だし、みんな考えることは一緒なのかな」

 

「…そうだね…あと八駅くらいかな…いや、交代はしなくていいよ。普段からバレー部で鍛えてるから、立ってることくらいなんてことないし」

 

「…お兄さんだからって言っても、たった二つしか違わないじゃん。それに、どちらかといえば優兄のほうが子供っぽいんだし…いや、今日の洋服は確かにお兄さんって感じだけど、童顔なことも相まって、なんか背伸びしてる中学生くらいみたい」

 

「…ふふっ…悪かったって、怒らないでよ…はいはい、優兄は綺麗な大学生のお兄さんです」

 

「…それで、どう?大学のほうは。」

 

「…だろうね、優兄は人懐っこいっていうか、誰とでも話せるイメージだから、友達はたくさんできると思ってたよ…

 

(…それにかっこいいし…)

 

「…いや、なんでもない」

 

「美術館巡りサークルと国際交流サークルだっけ、優兄が入ったのは…一応聞くけど、前に言った、男が入ったら危ないって噂のあるサークルには入ってないよね?」

 

「…うん、よかった。そこに入ってるなんて言われたらどうしようかと…まぁ、そんなこと言われたら何が何でも絶対やめさせるけど」

 

「…それで、その二つのサークルはどんな感じ?」

 

「…ふーん、みんな淑女的でいい人ばかりで楽しい。女男比はだいたい6:4くらいね…優兄、誰とでも距離近いから、どうせサークル内でもきっと誰かを知らず知らずに惚れさせるんだろうな…」

 

「まぁ、それならいいけど…」

 

(どうだか…大学生の女なんて考えてることは誰もかれも同じだろ…私の目の届かないところで私の優兄に悪戯するような女が現れないとも限らないし…あーあ…こっちの気も知らずに、楽しそうな顔しちゃって…)

 

(…いけないな、ついネガティブな考えになっちゃう…今日は優兄に楽しんでもらうって決めてたのに…しっかりしろ、私…)

 

「いや、優兄が楽しいならよかった。勉強は…優兄なら心配ないか。高校のときから変わらずだもんね」

 

「油断しなければ大丈夫、か…流石だね、結構課題とか難しいって聞くのに」

 

「…私の勉強はって?…あぁ、受験勉強のことか。」

 

「まあ、こっちも油断しなければ大丈夫かな、高校入ってからコツコツ頑張ってきたのが功をなしたね。」

 

「…それに、現役で合格できなくて、優兄ともう一年離れ離れになるなんて、絶対我慢できないしね」

 

「…うん、優兄に寂しい思いをさせないためにも、頑張るよ」

 

「だから、こうして二人で出掛けるのも、当分お預けになるかな…優兄と私の高校受験のときもそうだったけど、この時ばかりはなんで私がもっと早く生まれてこなかったんだろうって、恨めしくなるね…」

 

「…あぁ、ついしんみりとした話しちゃったね…そうだ、これ、今日行く水族館のQRチケット。

スマホで表示してかざすタイプだから、先に共有しておこうと思って」

 

「…はい、画面出して」

 

「うん、これでオッケー」

 

「…いや、なんでもない。これなら無くしものが多い優兄でも大丈夫かなって思っただけだよ」

 

(少しだけ画面が見えたけど、ホーム画面に映ったやつ、私の知らない女からの連絡だな。それも何通も。高校の女連中が連絡とってないのは確認してるから、十中八九大学で知り合ったヤツだろうし…んー…今指摘するのは得策じゃないだろうけど、やっぱり放置してたらマズイか。」

 

「ねぇ、優兄、今度優兄の大学、見学にいかせてよ)

 

「…うん、私も受けるし。高校の友達とも行くけど、やっぱり前もって優兄に案内してもらっておいたほうが確実だし」

 

「それに…優兄の友達とか、紹介してもらいたいなって思って」

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「優兄、起きて、もうすぐ着くよ」

 

(ふふ…乗り物に乗るとすぐ眠たくなる癖、なかなか治らないね…)

 

「はい、立って。鞄は私が持ってるから、スマホとか忘れ物してないかどうか確認して」

 

「大丈夫だね、それじゃあ行こうか…」

 

「優兄、この時間ホームに人が多いから離れないでね」

 

「うん、このエスカレーター。はい、前乗って。」

 

(優兄、今日の服装、ちょっと下半身のラインが出てるんだよな…かわいいけど、エスカレーターに一人で乗せようもんなら、後ろから視姦されるに決まってる…)

 

「あぁ、優兄、こっちこっち」

 

「この駅広いもんね…何度来ても道を間違えそうになるよ」

 

「だから、はい、手。はぐれたらいけないからね」

 

「懐かしいね…この水族館、まだ優兄のほうが背が高かったころに、優兄の両親と私の家族できたよね」

 

「…そりゃあ覚えてるよ。優兄が迷子になって、みんなで探したんだもん」

 

「そのときの優兄ったら、ぽろぽろ涙を流しながら泣いちゃって、可愛かったなぁ。多分アルバムにその時の写真が入ってると思うから、帰ったら見てみようか」

 

「…嘘じゃないって。きちんと撮ってあるよ」

 

「…はは。さて、入口で長話をするのもなんだし、続きは入ってからにしようか」

 

「ここ、少し前に改修されて前よりだいぶ広くなったって聞いたから、楽しみだね。お昼は新しくできた館内のレストランを予約してあるから、一日中見て回れるよ」

 

(はぁ…水族館で大はしゃぎする優兄可愛い…喜び方とかあのころから全く変わってないし…)

 

「…あぁ、うん、そうだね…イルカショーは時間的に午後の部を見に行ったほうがいいかな。ここからだと少し歩くから、来た道を戻ることになるし…午前中は展示のほうを先に見よっか。」

 

「回り切れなくても閉館まではだいぶ時間あるから…落ち着いて全部見ればいいよ。」

 

「このチケット、ナイトショーまで有効なやつだから。」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「…はい、二人で予約していた…はい、そうです」

 

「…優兄、ほら、こっち座って」

 

「ここいいよね…色とりどりの熱帯魚を観賞できるアクアリウムレストラン…雰囲気も落ち着いていて、価格も高すぎないし、まぁ、カップルとか、ファミリー層がメインだから、それはそうだろうけど」

 

「優兄も気に入ってくれた?…よかった」

 

「…うん、そうだね」

 

「…ふふ、あぁ。…ペンギンが水に飛び込んでいくところが見られるなんて、ラッキーだったよ」

 

「…うん。写真はたくさん撮ったから、あとで優兄にも送るね」

 

「…いやぁ、全部はちょっと。流石に撮った枚数が多すぎるから、良く撮れたやつだけ送るよ」

 

 

 

 

「…ん?なんでニマニマしているのかって?」

 

「だって、優兄がすごく楽しそうに話すんだもん。こんなに可愛い彼氏がいてくれて幸せだなって思って」

 

「いや…からかってないって。そっちから言って来たんじゃん…そんな横暴なぁ…」

 

「…私も楽しかったかって?もちろん。…まぁ、水族館自体も楽しかったけど…優兄と一緒に出掛けられたから、楽しかったのかな」

 

「…んーどうだろうね…私が優兄みたいにいろんなことに素直に感動できるタイプじゃないからかも…」

 

「でも、優兄がいたから私も楽しかった。一番大事なのはそれじゃないかな」

 

「…うん…ああ。…じゃあ午後は、優兄にお兄さんらしく水族館をエスコートしてもらおうかな」

 

(…水族館で目一杯楽しめることがお兄さんらしいかは疑問だけど。…これは口にしないでいたほうが得策だろうな)

 

「あぁ…料理が来たみたいだよ」

 

「…はい。そっちが私です。…あれ?待って。優兄、お子様ランチプレートなんて頼んだ?…」

 

「あのー…恐らく、テーブルをお間違えではないでしょうか?」

 

「…はい…こちらの注文とは違うのですが…」

 

 

「…どうやら隣のご家族の注文と間違えられていたみたいだね」

 

「…すぅー…い…いや?…笑って…笑ってない…よ?」

 

「…た、たまたま、テーブルの番号を間違えただけだと思うし…そんな…優兄に似合ってるなんて…思ってないし…」

 

「…いっいたっ、痛いって。テーブルの下で足をガシガシするのは、反則!」

 

「ごめんごめん。謝るって…あ、ほら、今度は頼んだ料理が来たみたいだよ」

 

「…えぇ、ありがとうございます。いや、なんでもありません。大丈夫です」

 

「…ほら、店員さんに心配させちゃったから。このくらいにして、冷めないうちに料理を頂くとしようか」

 

 

「…優兄、ハンバーグおいしい?」

 

「それはよかった」

 

「…ねぇ優兄、私もハンバーグ一口食べたいな」

 

「あぁいや、切り分ける必要はないよ」

 

「…優兄が、あーんって、してくれればね」

 

「…そんなに赤くなることかな…まあ、確かに、ここは少し人目があるといえばそうだけど…」

 

「でも、ほら。あのカップルとか、あーんどころかさっきこっそりキスしてたよ」

 

「だからそんなに赤くなられても…優兄、さっき見たカクレクマノミみたいになってるよ?」

 

「だからほら、ちょーだい?」

 

 

「…ん…おいしい。」

 

「ありがと…じゃあ、はい。私のパスタ。」

 

「…うん。おいしい?よかった」

 

(優兄お口小さい…可愛い…ていうか、あんなんキス待ち顔じゃん…反則過ぎる…)

 

 

 

 

「…ふう…おいしかった。ごちそうさまでした。だいぶお腹いっぱいになったね」

 

「このあとは…そうだね、14時からイルカショーがあるから、今からいったら丁度いい時間くらいじゃないかな」

 

「うん…じゃあそうしようか」

 

「…それじゃあ優兄、先に出てて」

 

「…いや、まって、会計は私にさせてよ。」

 

「…まぁ、確かに…そりゃあ優兄の塾講師のバイトのほうが時給がいいだろうけど…私も結構バイトしてるし、そこまで負担じゃないよ…それにほら、こういうときは女に恰好つけさせてほしいな」

 

「…あぁ!…もう、先に出したもん勝ちって…」

 

「あ、はい、ごめんなさいお待たせして…一回外出ようか」

 

 

「…いや、なんか悔しくってさ」

 

「優兄がお兄さんぶってるのは見てて微笑ましいから好きなんだけど、優兄に年下扱いされるのは嫌っていうか…」

 

「優兄に子どもみたいに見られるのは納得いかないんだよね」

 

「…だからさ…ねぇ、優兄、こっち向いて」

 

「顔、もうちょっと上に向けて」

 

「そうそう、そんな感じ」

 

「それじゃあ…」

 

 

『…ん…ちゅっ…ちゅる…』

 

「…ん…」

 

『…んはぁ…はあ…ふぅ…』

 

 

「…ん、これで満足」

 

「…え?いや、まぁ、ちょうど人がいなかったし、今ならいいかな~って」

 

「食事してる時からちょっと我慢してたんだよね…小さいころからご飯の後はお口を綺麗にする習慣をつけなさいーって、お父さんたちに言われてたけど、こんな時に役に立つなんてね」

 

(…あ、これ…優兄、突然のことでびっくりしすぎて固まっちゃったな…)

 

「ほら、優兄、ぽけーって呆けてないで。イルカショーを見に行くんでしょ?早くいかないといい席埋まっちゃうかもよ?」

 

「…あ、戻った」

 

「…えぇ、人目があるかもしれないところはダメ?いきなりも?」

 

「でも、そういう素振りを見せる優兄も悪いと思うんだよね…」

 

「じゃあ次は、ふたりっきりの時にするね」

 

「…あぁ、言い忘れるところだったよ」

 

「…優ーにぃ、ごちそーさまでした」

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

「へぇ…イルカショーってこうなってるんだ…だいぶ広い会場だね」

 

「開園まであと15分ってとこかな…ぼちぼち人も入ってきてる…」

 

「あの大きいパネルがあるから、遠くからでも楽しめるようになってるんだろうけど…」

 

「そうだね、優兄の言う通り、せっかくだから前で楽しもうか。ちょうどあのあたりの席が空いてるよ」

 

「…うん、この辺にしよっか」

 

「…優兄…今から興奮しててもしょうがないよ…ちょっと落ち着いて」

 

「ちょっと飲み物を自販機で買ってくるね。優兄は何にする?」

 

「んー、いや、優兄はここで荷物見てて。結構人が入ってきたから、今離れたら席なくなっちゃうかも」

 

「…うん。了解。それじゃあちょっと待っててね」

 

 

 

「…思ったより自販機が遠かったな…さて、優兄はと…」

 

「…は?」

 

「ねえ、ちょっと」

 

「お姉さんたち、この子に何か用ですか?」

 

「…優兄、この手の輩はきっぱりと突き放さないとって私言ったよね?」

 

「…え?違う?」

 

「…はぁ、この人たちは大学で知り合った新しい友達…たまたま見かけたから挨拶してくれた…」

 

(…何も違わないじゃないか…どうやら偶然っていうのは本当らしいな…ナンパ目的で遊びに来たところをたまたま遭遇したってとこかな…)

 

「優兄、ちょっと席変わって」

 

「こんにちは。…といいます。優くんの彼女です。」

 

「…えぇ、そうです。今日は二人で遊びに。」

 

(…優兄と顔見知りな手前追い返しづらいな…しかも彼女持ちだってわかっても引こうとしないのか…)

 

「…ぇえ、ええ。いいですよ。ご友人の方々がいいなら。一緒に見ましょうか」

 

「…いや、優兄はそのまま通路側の席にいて。私この人と話したいことあるし」

 

 

「…うん。凄いね。イルカの上に乗ってあんなに移動できるんだ…」

 

「…うん…」

 

「…あぁ、そうだね…」

 

「…ふぅー…で、お姉さん?どういうつもりですか?」

 

「…あぁ、優くんならイルカショーに没頭してるから、小声で話しても彼の耳には入らないと思いますよ」

 

「で、私が言ったこと、わかりますよね?」

 

「…何で彼女持ちだって分かっても引こうとしねぇんだよ」

 

「お前もしかしたらワンチャンあるとか、サブパートナーならいけるとか思ってんじゃねぇだろうな?」

 

「さっきまで見てたけど、優くんの隣に座った時だけ胸元開けすぎだし、あからさまに猫なで声になっててキモイ。優くんが嫌がってるのにも関わらずに手とか肩とかベタベタ触りやがって」

 

「言っとくけど、優くんとその周りの動向は私が全部チェックしてるから。どこに行って、誰とあってるか、学食で何食べてどの授業に出ていつ電車に乗って家に帰ってるのか、どの学部にどのくらいの友達がいて、その友達がどこ出身でどのバ先でなにやってんのか全部わかってんだからな?」

 

「あぁ…例えば、君と一緒に来ていた友人のうちの一人…そうそう、あの灰色のカーディガンの女。あの子最近彼氏に振られたんだっけ。それで今度はその彼氏よりもイケメン捕まえてやるなんて息巻いて、月曜と木曜の英語の授業が一緒なのをいいことに優くんにアプローチしてるんだろ?」

 

「まだあるよ。そっちのジーンズはいた女は、こないだ学食で優くんが男友達とご飯を食べていた時に会話に無理やり入ってきて、あんまりいい顔されていなかったね。私が言うのもなんだけど、友人は選んだほうがいいよ?」

 

「…ははっそんなに怖がらないでくれよ。もちろん君のことも知っているさ。でも、もう言うまでもないだろ?」

 

「…あぁ、別に優くんになんて言ってもらっても構わないよ?だって」

 

「私は優くんの絶対的な信頼を得ているからね」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「んん~楽しかった。凄いフィナーレだったね。しぶきがこっちまで飛んできたよ」

 

「ふふ…優兄ったら、横の席の人が立ち去るのもわからないくらい集中していたんだね」

 

「…あぁ、すごく面白かった。イルカのダイナミックな動きに、思わず見とれてしまったよ」

 

「…え?もう一回みたいくらいだって?」

 

「…ちょうどよかった。私もそれを言おうと思ってたんだよね」

 

「…うん。また来るっていうのもいいんだけど、私が言ってるのは今日の話」

 

「このイルカショー、実は夜にもう一度やってて。ナイターのほうがライトの演出が凄いって評判なんだって」

 

「…うん。帰りは遅くなっちゃうね。でも、明日は日曜で、私も優兄も学校は休みだろう?」

 

「…あぁ、確かに、私の家の最寄りの電車がなくなってしまうだろうね」

 

 

「…じゃあさ、優兄の家に泊めてよ」

 

「優兄が一人暮らししてるアパートだったら、ナイトショーを見た後でも十分帰れる距離にあるし…なにより、」

 

「…私、今日は最後まで、優兄と一緒にいたいな」

 

 

「…いいの?ありがと」

 

「それじゃああとは、回り切れなかった水槽を見て回って、お土産とか、買っておかなくちゃいけないものとかをみに行こうか」

 

「…今日はまだまだ長いよ?優兄」

 

 

 

 

 


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