SPWの奇妙な研究   作:逆虹凛音

1 / 20
序章
プロローグ


これは、別の時空のSPW財団に設立された『戦闘班』を巡って起きる、ジョースターの血を持たぬ者どもの数奇な物語である。

 

***

 

「本日より、黄金の精神を持つ者のサポートをする栄光ある部署、“戦闘班”に配属された諸君、ごきげんよう。私は戦闘班の司令本部長を務めるガリレオ・レドだ。」

 

偉そうな男が、腕を後ろで組み、せっかく職員が用意したマイクを使わずに腹から出した声で喋る。余裕で聞こえてはいるのだが、マイクを渡されていたことを鑑みるに台本に無い行動らしいな。そんな奴が司令?

 

バァンッ!

 

その轟音に、時が止まる。──否、ザ・ワールドの攻撃ではない。銃撃。スタンドの弾丸なのか、実銃なのか。いや、そんなことはどうでもいい。それよりも撃たれたのは……

「レド司令ィィィィィッ!!!!」

オーバーなリアクションを取って、スタッフがレドに救命措置を行う。頭から流血してるな。治す能力を持ったスタンド使いでも居なきゃ直せない。

 

──そう、この世界にはスタンドと呼ばれる異能力を持った、いわばスタンド使いが存在する。

 

そんなスタンド使いを管理・統率し、世界を悪しきスタンド使いから守る……なんて、少し大袈裟に言いすぎたが。黄金の精神の心強い味方、とか言ったか。それがここ、スピードワゴン財団。

 

俺が入ってもう1年は経ったのか。転属の一覧表に俺の「イオ・バーン」って名前があった時は驚いたがな。戦闘班がどこなのかも分からねぇし。

 

はぁ、イオ・バーン……変な名前だろ? 日本のやつにはよくドラクエって呼ばれる。ゲームのことだろうな。俺はドラクエやってねぇから、単純に語呂とか悪いなって思うよ。イオって名前、聞き取りづらいんだよな。

 

話を今現在に戻そうか。

 

「司令ッ! 司令ィィッ!」

 

暑苦しい男が、撃ち殺されたレドの死体に駆け寄る。みんなもザワついている。あぁそうか、ザワつく所か。一応、司令がいなくなっちまうもんな。いや、副司令がいるし、そんなにザワつくところか?

 

***

 

イオはタバコに火をつける。

 

「外でやんのが悪いんだ」

 

日差しに嫌な顔をして、イオの肺に紫煙。

 

「ンン。ゴホン。4班所属のイオ・バーンだな?」

「……なんか用か。それと、4班所属ってのは間違いだ。4班所属“予定”。」

「その態度、何か知っていそうだな。答えろ。犯人は誰だ。組織犯か。」

 

イオはうるさく聞く男の名札を見る。オーグ・ディム。

 

「あいにくだが、俺は狙撃なんて野暮な真似はしない。そして、誰かと徒党を組むこともない。更には、心を痛めていないように見えるだろうが、こういう面倒ごとは俺も普通に困る。」

「面倒ごと……だと? 貴様、どれだけのことが──」

 

──腹を殴るような衝撃を伴う轟音。何か爆ぜた。

 

「なんだ!」

 

オーグにも無視できない。

 

「……チッ、顔は覚えたぞ。」

「ハァ、面倒なことになりそーだな。」

 

ため息とともに、くゆる紫煙。イオの興味が示す、進むべき道は!

 

「だが爆発……気になるな。」

 

*

 

瓦礫。煙。イオは吸殻をその瓦礫に紛れさせる。どうやら爆弾が爆発した──テロ。SPW財団は、テロに遭っている!

 

「プロジェクト・コンサートはァ! 頂いてゆくぞ!」

 

──ギム・ギンガナムみてぇな声だな。

イオはそう思った。爆発音よりも騒がしいその声に、耳を塞ぎかける。だが、その瞬間に、イオは信じられないものを目にする。人型で……翼が生えたような。

 

「……スタンド使い」

 

その単語を口にした瞬間。肩に手を置かれる。

テロリストは、倒れている民衆を、確かにスタンドで鷲掴みにし、持ち上げている。

それを見たイオの肩に、手を置く。つまりそれは、スタンド使いであるイオに話しかけているのだ。

 

「戦闘班であるお前に任務を言い渡す。」

 

オーグだった。そして、任務を言い渡すのもオーグ。

 

「このSPW財団の貴重な研究対象12名が誘拐された。」

「……誘拐?」

「ああ。あの男……セミフレッド・リフ。そして奴を慕う組織にだ。」

「研究対象って?」

 

オーグは、首を振る。

 

「任務を受け入れないのなら……話すことは出来ない」

「チッ……」

 

イオは一歩離れる。オーグはやはりかと顔をしかめ、イオの所を離れようとする。

 

「タバコ」

 

イオの妄言。妄言だ。

 

「その任務に参加すれば……俺の生活必需品であるタバコはお前らが供給してくれるのか?」

 

オーグは歩みを止める。

 

「はぁ……」

 

そして、大きなため息をつく。

 

「チッ……働き次第だな。」

「ちゃんと働きゃタバコがタダねぇ。へへ、乗ってやる。」

 

そして、イオは2本目のタバコを取り出す。

 

「要るか?」

「殴り殺すぞ……私は嫌煙家だ」

「……気が変わりそうだぜ」

 

ライターに火をつけ、タバコに火がつく。くゆる煙が、天に消えていく。

 

「被験者は全員……スタンド使いだ」

「ほう」

「作戦の目的は12人の捕獲……もしくは抹殺。戦闘データが取れれば問題ないという本部の判断だ。」

「黄金の精神はどこへ行ったよ」

 

煙になのか、イオの発言になのか、オーグの嫌な顔は強くなっていく。

 

「聞いたからには参加してもらうが……こちらからも1つ条件を付けさせてもらうぞ。」

「なんだ?」

「私の目の前でそれを吸うな。」

「……」

 

紫煙の立ちのぼるタバコの先端を握りつぶし、火を消す。そして再び、瓦礫に紛れ込ませる。

 

「やけに素直だな」

「無駄になったなんて思ってねーよ。これからは財団が買ってくれるんだ。」

「……お前を選んだのは失敗だったかもな。」

 

オーグの歩く方へ、イオが着いていく。スタンド使い2人、作戦の渦に巻き込まれていく。

 

銃撃の音。そして、セミフレッドの特徴的で脳裏にこびりつく笑い声を聞きながら。




※この作品はフィクションです。タバコのポイ捨てはやめましょう。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。