プロローグ
これは、別の時空のSPW財団に設立された『戦闘班』を巡って起きる、ジョースターの血を持たぬ者どもの数奇な物語である。
***
「本日より、黄金の精神を持つ者のサポートをする栄光ある部署、“戦闘班”に配属された諸君、ごきげんよう。私は戦闘班の司令本部長を務めるガリレオ・レドだ。」
偉そうな男が、腕を後ろで組み、せっかく職員が用意したマイクを使わずに腹から出した声で喋る。余裕で聞こえてはいるのだが、マイクを渡されていたことを鑑みるに台本に無い行動らしいな。そんな奴が司令?
バァンッ!
その轟音に、時が止まる。──否、ザ・ワールドの攻撃ではない。銃撃。スタンドの弾丸なのか、実銃なのか。いや、そんなことはどうでもいい。それよりも撃たれたのは……
「レド司令ィィィィィッ!!!!」
オーバーなリアクションを取って、スタッフがレドに救命措置を行う。頭から流血してるな。治す能力を持ったスタンド使いでも居なきゃ直せない。
──そう、この世界にはスタンドと呼ばれる異能力を持った、いわばスタンド使いが存在する。
そんなスタンド使いを管理・統率し、世界を悪しきスタンド使いから守る……なんて、少し大袈裟に言いすぎたが。黄金の精神の心強い味方、とか言ったか。それがここ、スピードワゴン財団。
俺が入ってもう1年は経ったのか。転属の一覧表に俺の「イオ・バーン」って名前があった時は驚いたがな。戦闘班がどこなのかも分からねぇし。
はぁ、イオ・バーン……変な名前だろ? 日本のやつにはよくドラクエって呼ばれる。ゲームのことだろうな。俺はドラクエやってねぇから、単純に語呂とか悪いなって思うよ。イオって名前、聞き取りづらいんだよな。
話を今現在に戻そうか。
「司令ッ! 司令ィィッ!」
暑苦しい男が、撃ち殺されたレドの死体に駆け寄る。みんなもザワついている。あぁそうか、ザワつく所か。一応、司令がいなくなっちまうもんな。いや、副司令がいるし、そんなにザワつくところか?
***
イオはタバコに火をつける。
「外でやんのが悪いんだ」
日差しに嫌な顔をして、イオの肺に紫煙。
「ンン。ゴホン。4班所属のイオ・バーンだな?」
「……なんか用か。それと、4班所属ってのは間違いだ。4班所属“予定”。」
「その態度、何か知っていそうだな。答えろ。犯人は誰だ。組織犯か。」
イオはうるさく聞く男の名札を見る。オーグ・ディム。
「あいにくだが、俺は狙撃なんて野暮な真似はしない。そして、誰かと徒党を組むこともない。更には、心を痛めていないように見えるだろうが、こういう面倒ごとは俺も普通に困る。」
「面倒ごと……だと? 貴様、どれだけのことが──」
──腹を殴るような衝撃を伴う轟音。何か爆ぜた。
「なんだ!」
オーグにも無視できない。
「……チッ、顔は覚えたぞ。」
「ハァ、面倒なことになりそーだな。」
ため息とともに、くゆる紫煙。イオの興味が示す、進むべき道は!
「だが爆発……気になるな。」
*
瓦礫。煙。イオは吸殻をその瓦礫に紛れさせる。どうやら爆弾が爆発した──テロ。SPW財団は、テロに遭っている!
「プロジェクト・コンサートはァ! 頂いてゆくぞ!」
──ギム・ギンガナムみてぇな声だな。
イオはそう思った。爆発音よりも騒がしいその声に、耳を塞ぎかける。だが、その瞬間に、イオは信じられないものを目にする。人型で……翼が生えたような。
「……スタンド使い」
その単語を口にした瞬間。肩に手を置かれる。
テロリストは、倒れている民衆を、確かにスタンドで鷲掴みにし、持ち上げている。
それを見たイオの肩に、手を置く。つまりそれは、スタンド使いであるイオに話しかけているのだ。
「戦闘班であるお前に任務を言い渡す。」
オーグだった。そして、任務を言い渡すのもオーグ。
「このSPW財団の貴重な研究対象12名が誘拐された。」
「……誘拐?」
「ああ。あの男……セミフレッド・リフ。そして奴を慕う組織にだ。」
「研究対象って?」
オーグは、首を振る。
「任務を受け入れないのなら……話すことは出来ない」
「チッ……」
イオは一歩離れる。オーグはやはりかと顔をしかめ、イオの所を離れようとする。
「タバコ」
イオの妄言。妄言だ。
「その任務に参加すれば……俺の生活必需品であるタバコはお前らが供給してくれるのか?」
オーグは歩みを止める。
「はぁ……」
そして、大きなため息をつく。
「チッ……働き次第だな。」
「ちゃんと働きゃタバコがタダねぇ。へへ、乗ってやる。」
そして、イオは2本目のタバコを取り出す。
「要るか?」
「殴り殺すぞ……私は嫌煙家だ」
「……気が変わりそうだぜ」
ライターに火をつけ、タバコに火がつく。くゆる煙が、天に消えていく。
「被験者は全員……スタンド使いだ」
「ほう」
「作戦の目的は12人の捕獲……もしくは抹殺。戦闘データが取れれば問題ないという本部の判断だ。」
「黄金の精神はどこへ行ったよ」
煙になのか、イオの発言になのか、オーグの嫌な顔は強くなっていく。
「聞いたからには参加してもらうが……こちらからも1つ条件を付けさせてもらうぞ。」
「なんだ?」
「私の目の前でそれを吸うな。」
「……」
紫煙の立ちのぼるタバコの先端を握りつぶし、火を消す。そして再び、瓦礫に紛れ込ませる。
「やけに素直だな」
「無駄になったなんて思ってねーよ。これからは財団が買ってくれるんだ。」
「……お前を選んだのは失敗だったかもな。」
オーグの歩く方へ、イオが着いていく。スタンド使い2人、作戦の渦に巻き込まれていく。
銃撃の音。そして、セミフレッドの特徴的で脳裏にこびりつく笑い声を聞きながら。
※この作品はフィクションです。タバコのポイ捨てはやめましょう。