「イライジャッ!」
その名前。読めないはずのその名前が、億泰の口から飛び出す。
「えっ、どうして!?」
億泰はイライジャと肩を組み続ける。
「おれたちのよぉ、魂が通じ合ったんだぜ、イライジャ! 合わせるぜェッ!」
もはや、言葉はいらない。その億泰の熱い魂は一方的な物ではないのだ。作戦の説明すら、不要。
「フイヤッ、フイヤッ」
「海の波とはァ……予想のつかんよなァ〜〜……」
No.11が語り始める。精神力の高まりに、小舟が増えて行く。同時に、イライジャの精神も高まっていく。億泰は一歩下がる。
「…………コォォォォォォォッ」
小舟の数などどうだって良い。いまイライジャがやるべきことはただ一つ。明鏡止水に至り、凪いだ水面のごとき精神で波紋をただ練り、地面の波を荒らす。
「ォォォォォォォッ!」
かくして、イライジャの足元を中心として、No.11の経験したことのない荒波が起こる。ありえない形の
「フイヤッ!! ヤア!?」
「な、波がァ……読めないッ!!」
「ようやっとぉ……仕返しができるぞ──ダボがァーッ!!」
「まずいっ! 一等航海士ィィィ!!」
──ドガァッ
快音が響く。打ち消されずに、ついにその拳はNo.11にクリーンヒットする。
「──」
「まだ……殴りたりねぇぞッ!」
ガオンッ ドガァッ 繰り返し。
空間を削り取り──引き寄せ──その勢いのまま殴る。その繰り返し。そして、その繰り返しのサイクルはどんどんと速くなっていく。
「ゲバァーーーッ」
断末魔。No.11の断末魔が聞こえる。なおも、繰り返し。
「これで……トドメだぜッ!! オラァッ!!!」
ひときわ力の込められた拳が、No.11の腹部に叩き込まれる。口から液を吹き出しながら吹き飛び、地面に叩きつけられ、弾み、転がる。もうすでに、波も起こらなくなっている。
「……財団の
イライジャがスマホを取り出そうとすると、億泰は近づいてきていて、イライジャの背中を叩く。
「おれたちで勝利だぜぇ──ッ! イライジャッ!!」
「あ……あぁ、そうだな!」
スマホを片手間に取り出し、クリアチームへ電話をかける。
なぜ億泰にここまで言葉が通じるのか、イライジャには全くわからないのだが。
「もしもし、イライジャです。オーグチームの……はい、戦闘になりまして、鎮圧済なんでお仕事しに来てくださいな。はい。お願いします──」
その電話を切り、ポケットにスマホをしまおうとする。しかし、意識はうめき声をあげるNo,11へ向かう。
「わ……わたし……は……わたしの名前は……エイハブ……だ……私の船に……私は……あ……私……が……鯨を……」
うわごとのように呟き始める。ボロ雑巾のようなNo,11に、歩み寄ってしゃがんで近づく。
「エイハブだの鯨だのさぁ〜それって、メルヴィルの『白鯨』の丸パクリじゃんか。お前なぁーっ、死ぬ前に思い出すことってもっと他にないわけ?」
「きお……く……消され……た……残ったの……白鯨……それ…………だけ……だから──」
ピー
電子音。
「イライジャァッ!!」
ガオンッ
続いて、空間を削り取る音。イライジャはNo.11から大きく引き離され、億泰の元まで戻される。
そして、次に響いたのはNo,11が爆ぜる音だった。
「《ザ・ラァァァァァッシュ!!!》」
反射的にスタンド。爆風と伴う破片やらなんかを拳で吹き飛ばす。
そして、放心。静寂が生まれる。時が止まったかにも思えるほどの空気感。
「うそだろ……あいつ、No.1の時とは違って自爆じゃあねぇッ……!」
「ちっ! なんだかわかんねぇけどよォーッ、胸糞ワリーって気がするぜ……」
しゃがんだ状態で引き寄せられ、転んだように座り込むイライジャ。立ち上がり、ズボンの砂を払い。
「まぁ、ありがとな」
「おうよ!」
パッとしない、達成感とは少し違う感情──もやもや。
(記憶……消された? 確かこいつらは財団の研究対象……名前が番号で呼ばれていることを鑑みるに、12人全員が何者かによって記憶を消されているのか……? それに、No.1は「研究所には戻らない」といって自爆した……SPWでなんの研究がされてたんだ?)
(案内するとは言ったけどよぉ~~……あれェーーッ、こっちであってたっけぇーー?)
二人はカフェ・ドゥ・マゴへと向かった。
To be continued