杜王町に来るまで、ひいてはオーグ率いる4班が康一のところに来るまでの
初めに、誘拐事件があった。SPW財団の重要な研究対象12名の誘拐。首謀者はセミフレッド。
それに対する財団の対応として、戦闘班が設立される。
SPW財団に戦闘班が設立された建前には、戦争根絶がある。イオたちが所属している4班を除き、他の班は国連のPKO(平和維持軍)へ武力提供を行っているのだ。
そして、本音はセミフレッドの誘拐事件を当面とした、スタンド関連事件のスタンド使いによる解決が目的だ。ジョースター家に頼らないスタンド戦闘力というわけだった。
その動きを察知してか、セミフレッド・リフが活動を再開。戦闘班総合指揮官となるはずだったレドを暗殺した上、研究対象12人の研究計画書を強奪。
それが、ここに至るまでの流れだ。
杜王町に来たのは、ジョセフ・ジョースターの力を借りるため。個人情報保護、人権保護の観点から、ジョセフ・ジョースター含む“伝説級のスタンド使い”との間には「首に輪をかけてはならない」という盟約が結ばれている。通称『ジョースターの血盟』。
その盟約の内容は、大まかに言えば、「SPW財団は対象者に対し如何なる命令も下してはならず、如何なる理由があってもプライバシーを侵害してはならない」という物。
ジョセフ・ジョースターは対象者のため、財団に居住地等の情報は一切入って来ない。ジョセフはすでにSPWを退任しているのだ。どこかで隠匿生活をしている。
その居場所を知るものとして初めに挙げられたのが……東方仗助だった。
杜王町は杜王町で、承太郎の提言によりジョースターの血盟に似た対応がされている。
康一だけは、SPWに所属しているため、呼び出すことも可能なのだが、後のメンバーは、命令はもちろん、連絡手段が無いのだ。
「ここまでの経緯はわかりました。そこで、ジョースターさんの居場所が知りたい……ということなんですよね。」
康一が話を整理。長々つらつらと説明ばかりしてしまったので、しっかりと理解していることが分かる整理は助かる。
「あ……片方だけ戻ってきましたケド……」
康一は、恐れたような、気まずいような顔でオーグ越しに入り口に現れたミリをみた。ミリはゆっくりと、“ちょっとトイレに行ってただけですけど”といった雰囲気で、席に戻ってくる。
「あいつは店先でタバコふかしてます。お見苦しいところを見せてしまい申し訳ございませんでした、広瀬康一。」
ミリは……日本語を話した。
「えぇっ、日本語、すごく上手ですね?」
一瞬、脳裏に康一のイタリア語を褒めた爽やかな少年が浮かぶが……流石に、露伴は無いだろう。自前の物だ、と向き直る。
「名乗っているミリ・ネイトは通称名なんです。本名は「
(初流乃・汐華でジョルノ・ジョバァーナよりもさらにひねった名付けだなぁ〜……)
「広瀬康一。失礼ながら話を戻します。」
「あ、ハイ。仗助くんに連絡……でも、警察の方で別でもう調べ始めてると思うんです。直接会った方が早いんじゃあないかなぁ〜って思うんですけれど……」
会議は続く。結局、仗助が今追っているNo.8とセミフレッドは同じ場所にいる確率が高いとして、財団と杜王第一交番で協力体制を敷くことが目標として定ったのだった。
*
カフェ・ドゥ・マゴを出て、家へ帰ろうと歩み始める。狙ったかのようなタイミングで現れた山岸由花子と合流した。
歩いて家に向かう道。しかし、由花子は急に康一の前に出て、腕を広げる。
「どうしたの、由花子さん?」
「……《ラブ・デラックス》!」
訳も分からないうちに由花子の髪は伸びていく。何もない正面。その髪は、“それ”をつかんだ。
「くっ……私もスタンドの扱いがまだまだってことかしらね……」
つかまれていたそれは、透明化していた人間。
「えぇっ!? これってまさかぁっ! オーグさんが言ってたヤツらの……仲間?!」
ウェーブの効いた長い金髪に、ところどころ独特なセンスの髪飾りがついている。
「さぁ、吐きなさいよ! あんたがどこの誰なのかをよッ!」
「え、えぇ、私は月光のNo.3《シャンソン》……ねぇ、命は取らないんでしょ? ねっ?」
(月光……オーグさんは一言も言ってなかったけどな……)
つい少し考えこみそうになった頭を、由花子が肩に手を置くのでリセットされる。
「康一くん、あれをやりましょう?」
「あっ、うん。」
二人を包むは紫色のオーラ。繰り出すは協力必殺技。
「「《エコーズ ACT3DX》!!」」
ブオォッ……
「キャアアーーッ!!?」
No.3の叫びが続く。それもそのはず。髪は動き出し、彼女を悠々と持ち上げてしまったのだ。そしてッ! 康一と由花子の阿吽のコンビネーションにより、No.3は完膚なきまでに叩きのめされるッ!
ドカァンッ! ドガァンッ!
3FREEZEとラブ・デラックスの組み合わせ! 叩きつけと同時に、重力を強化し、攻撃力を底上げしたッ!
「ギャッ……ッッ…………」
そして、No.3は意識を手放す。
「うわぁ〜……やりすぎちゃったんじゃないかなあ〜ッ……」
「いいえ。透明化なんて卑怯なマネをして、私の康一くんに近づく下劣なクソアバズレには丁度いいわッ!」
少し言い過ぎな暴言と共に、髪の解かれたNo.3は道端に押し除けられる。地面にもたれかかった状態。
「財団の人、呼んだ方がいいのかなあ……?」
そしてそこにッ! 現れる!
「呼ぶ必要はねぇぜ。広瀬康一。俺が来たからな。」
イオ・バーンが!
「ささ、俺ァカップルのいちゃつき見せられんのはごめんだぜ。さっさと行きな。」
イオにしてはカッコ良さげなセリフで、康一と由花子を先に行かせる。
「じゃ、じゃあ!」
歩いて行った2人。見届けて、改めてそこで気を失っているNo.3を眺める。
「っし……スタンド、出しっぱにしてて良かったぜ。こいつ、死んでねぇ。──《ドリーム・ドライブ》 オラァッ!!」
ドゴオッッッ!!
壁を殴ると、轟音が鳴り響き、パラパラと瓦礫が溢れる。
「……な、なんなの…………?」
No.3は目を覚ます。当然。
「ほらな、やっぱり生きてやがった。どんなカラクリだ? テメェ、あいつにスタンドを仕掛けたな。」
「な、なんでわざわざ生かすのよ……財団に連れて行かれたり、トドメを刺されたら終わりだと思ってたのに……」
イオは、ニヤリと口角を上げて、自慢げに答える。
「面白そうだからに決まってんだろ。」
「……はっ?」
「おい、生かしておいた恩返しだと思って答えろ。どんなスタンドだ? あいつらにはこれから何が起こる。」
No.3は、乱れて顔にかかった髪を耳にかける。未だ混乱醒めない頭。しかし認識したのは……してしまったのは。
イオは、味方かもしれないということ。
「え、えぇ。私のスタンドは──」
それを聞いたイオは、さらに口角を上げる。拳を握り締め、喜びを体に巡らせたッ!
「クッソ面白れぇじゃねぇか、なんだそれ!」
イオは、手を差し出す。
ガシッ
No.3は手を取る。そして立ち上がって、瓦礫や小石を払う。
「私は……シャンソン。あなたは?」
「イオ。イオ・バーン。別に好きに呼べばいい。ま、なんだか“坊や”って呼びたさそーな顔してっけどな。」
「そ、そう? ……じゃあ、坊や。」
こうして