──人間の記憶ってのは断片的だよな。そういうもんだと俺は割り切ってる。大切な記憶でも、一言一句たがわず何があって誰がどうしたか、全く鮮明に思い出せるなんて才能だろ。だよな?
覚えている限りでは、俺の家族は全員死んだ。いつだったかも覚えてねぇけど、D・Dを使った時に見えるのはその時の記憶の断片だ。それは間違いねぇ。
財団に俺が配属された時、俺は……“恩赦”を受けた。罪が帳消しになって、俺はSPW財団の戦闘班に配属された。
そう、俺は死刑囚だった。
ある日……俺は血まみれのナイフを持った状態で、死んだ家族の前に立ってた。
……俺が殺した。それがヤツらの下した結論だ。んなわけねぇのにな。
俺は死刑囚として
そこからまた記憶は飛ぶ。ムショの中での暮らしなんて、全然覚えてねぇ。あぁ、でもなんか……1回だけ脱獄騒ぎがあってよ、そん時は看守共が大慌てで面白かったぜ。
次に思い出せんのは死刑執行の少し前……看守の格好をした、知らねぇやつが俺の部屋の前に来た。新人の看守かと思ったがそいつは……俺に、ボウガンを向けてきた。銃じゃなくて、ボウガンだったんだ。間違いなく看守じゃあねぇ。
そして俺はそいつに撃たれて……どうなったんだったかな。矢に打たれたら普通は死ぬか、生きてりゃ医療房棟送りだ。
次の断片。
俺は死刑執行の日を迎えた。
そこで俺は確かに電気椅子に乗せられ……死んだ。死んだんだ。
死んだんだぞ?
でも俺は、次の断片では牢屋に居た。
そして……移送が決まった。
SPW財団に拾われたんだ。んで、戦闘班に所属させられた……
どうしてだろうな?
俺が知っている限り……その時SPW財団は誰彼構わずスタンド使いをスカウトしてたらしい。
……D・Dをもっと使えば、もっと思い出すかもしれねぇが……大抵、同じ断片だ。見る度に口からクソするみてぇな気分になっからよ……使いたくねぇ。
「それで全てですか?」
壁が開く。壁が、開く。地響きを立てて。
「あぁそうだ。マジにこれで信頼できんのか?」
「腹を割って話すということは、人を信頼する上で最も手っ取り早い手段です。貴方のことは
「……そうかい、宣教師さま。」
No.7、コラール。この月光っつー組織の中じゃセラピスト……あぁ、さっき俺がいいこと言ったな。宣教師、神父さまだ。こいつはセミフレッドを信仰してる。まぁ、あいつを信仰するっつーのも共感できるもんだぜ。
「良いのか……コラール……。我々と違って彼は……番号を持たぬ者……」
「えぇ。ただ単に、私は信用すると申し上げたのみですから……キャロルさん、あなたが信用するかどうかは、あなたに一任されるべきです。主も、そう申しておられます……」
「ケヒッ……オーバーチュアを殺したおめぇに、あのお仲間共を裏切るっつー
……なんか……何か知らんが……人数のおかげか? オーグのクソ野郎んとこより……断然面白いじゃあねぇか。
「なかなか笑えるじゃなぁい? オーバーチュアくんを殺したヤツがぁ、あたしらの仲間になるってぇ?」
No.2、スケルツォ。常に半笑いの喋り方が鼻につく。だが、嫌な奴とも思えない。
「皆さん、お待ちください。彼はオーグ・ディムに操られていたのです。つまりオーバーチュアさんを殺したのはSPW財団のオーグ・ディムです。」
コラールがそんな詭弁を語った途端、歓迎ムードは一気に静まりかえる。正確には、財団という単語が出た途端にだ。それから数秒と経たずに……壁を殴る音。No.5、パッション。そいつが手にしていた瓶が割れる音。
「財団ッ!!!」
……あ? おい、このアジト空調壊れてんのか? 暑いな。さっきまでちゃんと効いてたのによ……まぁ、無理もねぇか。稼ぐ手段とかねぇだろしな。
「パッションさん、抑えてください……イオ・バーンさん。私たち月光は財団を決して許すことはありません。あなたは財団のチームを裏切ってここに来た……しかし、妙なんです。財団がそう簡単に裏切らせるでしょうか?」
「俺は泳がされてるっつーことか……そうだろうな。」
名札はドブに捨てたが、消息の途絶えたスタンド使いを探さねぇほど財団がバカじゃないのは自明の理だ。追っ手が来るっつーわけだ。ミリの野郎か、オーグのスタンドが来るか……ま、空条承太郎が来ることはねぇだろうな。
「ケヒヒッ、逆に好都合じゃあねぇか……迎え撃ってやる、覚悟しろ!」
他方、アジトの端でしきりに誰かに電話をかけている奴もいた。
「……ダメ。出ない。」
「そっか〜……じゃあ、悔しいけど、認めざるを得ないのかな……」
シャンソンがそいつの横を離れる。
「聞いて。バルカローラがやられた。」
「!」
視線はシャンソンに集まる。財団への憎しみに歪んだ顔が集まる。
「ウソだろ……仲間思いの……良い奴だったのになァ……!」
「クソっ……許せねぇ……!!!」
これ……泣いた方がいいやつか?
いや、面識ねぇやつが死んでも普通は泣かねぇか……
「イオ・バーンさん。」
「うおっ」
肩に手を置かれる。コラール、こいついつ後ろに……??
「主の敬虔な補佐となり、月光を勝利に導くのは……あなたです」
「な……あ……?」
……暖かい言葉だ……あれ? どうして……涙?
俺……俺、俺の居場所……ここだったんだ……
「我々はあなたを必要とします……イオ・バーン、あなたを……そしてあなたの力を……あなたが過去どんな罪を犯していたとしても……何をしていたとしても……主は全てを赦すでしょう…………月光よ、輝かん。」
「……輝かん。」
*
「イオが裏切った。」
豪快な音を立てて、霧のようにコーヒーが吹かれる。そして咳。
「え、ま、ほんとぉ?? うそぉ〜……若いがすぎるよ、イオくん……」
波紋の力で若く見えるイライジャが、お手本のようなおじさんくさい反応を返す。対照的にミリは落ち着き払い、リンは聞いてすらいないようにも見える。
「いつかやると思ってましたけどね。」
「ちょっと、ミリくん、そんな言い方は……」
「なんですか? あんな野郎が裏切って不思議に思うほうがどうかしてるんじゃあないですか。」
首を傾げたミリに、イライジャが焦った顔。
「……見て。」
リンは、手にしていたスマホの画面を明るくしたまま机の上に置く。
「これ、あいつだ。」
表示されているのはニュースサイトだ。“フロリダ州在住 イオ・バーン氏、両親と姉殺害で有罪判決”とのニュース。
「あいつ、スタンド使いたくない理由、『家族が死んだ情景が浮かぶ』とか言ってた。でもあいつ、自分で殺してたんだよ。」
「へぇ、納得できますね。」
「な、納得しちゃうんだ? 若いね……?」
「まぁ、彼なら殺してても別に。どうせスタンドを使う度に頭を抑えるのも演技でしょう。」
「え、えぇ〜……で、でもさ、ほら、だったら、どうして財団に? 財団の偉い人が……ほら、無罪って思ったから迎え入れたとかじゃ……」
自然と、オーグに期待が集まる。
「……聞いていない!」
To Be Continued