杜王町において財団は、伝説のスタンド使いとの交流を基本的に禁じられている。例外は広瀬康一ただ一人。
「ジョースターさんの居場所が分かりました」
その吉報をオーグは待ち望んでいたのだ。残りの警護や後処理は仗助ら警察の仕事だ。オーグチームが杜王町に残る理由はない。オーグはその吉報を持ち帰り、ミリ、イライジャ、リンの元へ戻った。
「ジョセフ・ジョースターの居場所が分かった。イタリアらしい。」
「い、イタリアぁ!?」
「なるほど。質問します。これで杜王町からは出るのでしょうか?」
先述の通り、オーグチームが杜王町に残る理由はない。
イオさえ居なければ。
「イオの位置情報に動きが無くなった。今までにも位置が消えることはあったが……恐らく投棄したのだろう。」
その言葉に、ミリは眉をひそめる。
「まさか、イオ・バーンを見つけてからって言うんですか? 居なくたって困りはしないじゃないですか! 財団には不要な人材です。」
「そうもいかない。ミリが月光と一緒にいるイオを目撃した以上、イオの離反は確定した。そして部下であるイオがスタンドテロへ加担した責任は私へ帰属する。」
「そんな残酷な……」
イライジャも放心のような声を発する。
そこに、思いもよらぬ人物が姿を見せる。
「アンタたちが……なんとか財団……ッスか」
財団内でそのスタンド使いを知らない者はいない。
その髪型を知らない者はいない。
「東方……仗助……様!?」
オーグが、まるで3FREEZEを食らったかのように片膝をつく。
「何してる、お前らも膝を──」
「やめたまえ、オーグ・ディム。」
続いてアルビン。
「彼が萎縮してしまうだろう。」
「で……ですがMr.グリッター、血盟をお忘れでは無いでしょう」
「他でもない彼自身がそうするように言ったんだ。血盟は特別扱いするためのものじゃあない。『普通』を保証するためにあるものだ。履き違えてはいけないよ。」
彼自身が……仗助自身が、血盟は無視するように言ったということだろうか。
「……イオ・バーンの捜索はこっちでやることになったッスよ。康一が命を狙われてたってのに、おれは何も出来なかったからよ……いいとこナシってんじゃあ、この街を守るって決めたのにとんだお笑いだぜ。」
「じゃあ、つまりこの街は?」
イライジャが聞き返す。
「この街……杜王町のことは……あとは、俺たちに任せてくださいッスよ、財団さん!」
偽り無き黄金の精神。財団の尊敬の的。
「オーグ・ディム君。」
名前を呼ばれたオーグが、ゆっくりと立ち上がる。
差し出された仗助の手を恐る恐る握り、握手を交わした。
*
荷物をまとめたオーグたちは、財団の車に乗り込んで行く。オーグが助手席。ミリ、リンが乗り込むと、イライジャが乗り込む……だが、近づいてくる気配にイライジャは立ち止まった。
「イライジャーーーッッ!!!」
それは、虹村億泰。
「なっ、伝説のスタンド使いが、なぜイライジャの名前を呼んでいる! どういうことだ、イライジャ・ワッケロー!」
肩に飛びついた億泰。思わずオーグは目を覆う。伝説のスタンド使いが、こんなにも馴れ馴れしく!
「聞いたぜ、もう行っちまうんだってなァ」
「は、はい、うん、ど、どうして日本語なのに言葉が分かるんだろう???」
「こまけぇことは気にすんなってよォ、おれとおまえの仲なんだぜ」
肩から離れた億泰。
イライジャの背中をバンと大きく叩いて、エールを送る。
「元気でなァ!!!」
「あ、あはは……そちらこそ、心配には及ばないだろうけど……お元気で!」
2人は同時にスタンドを繰り出し、グータッチする。
魂同士のグータッチである。
イライジャも乗せて、チーム全員が乗った車は発つ。億泰に手を振られながら。
「なんというか……奇妙な体験だったなぁ。」
「奇妙で済ませていいものじゃないぞ……虹村億泰様とあんな無礼に!」
「血盟は普通を保護するためのもの……スタンド使いにとってはスタンド使いと引かれ合うことも普通なのかもしれませんね。」
「はぁ……胃が痛む。」
オーグがため息をついた。すこし空気が重くなるなか、リンが問う。
「この後の行き先は、イタリア?」
「私は呼び出されているから、アメリカのSPW本部に向かうが……お前たちだけでいけるか。」
「旅行でなら、行ったことはあります。」
「問題を起こすなと言ったんだ。」
オーグの語気が少し強くなる。
「私たちは問題を起こしません。ですよね。」
「まぁ、うん、上手くやれると僕は信じてるよ……?」
「できる。」
三人ともに、鋭い目を見せる。スゴ味のある目。
「では。一応、名札を通じて連絡は可能だ。イタリアに着いたら連絡するように。」
「わかりました。」
杜王町編 完