キャラ崩壊や解釈違いにご注意ください。
「スモーキー・ブラウン……って、そうだ、ジョージア初の黒人市長になったひとだ!」
「あぁ、それは父ですよ。」
「確認します。親子で同じ名前なんですね?」
「はい。名前というものには不思議な力があります。父から子へ名前を一部でも受け継ぐことで、その魂さえも受け継ぐことができる……そう考えられています。皆さんがよく知る例では……」
スモーキーは、優しく微笑みながらその名を口にする。
「“ジョジョ”とか。」
「ジョジョ……」
ジョースターの血統。ジョジョという名前と共に受け継がれる運命。財団の歴史書でそれを知るリンは、すこし複雑。だが、このスモーキーはそんなこと知った上で、覚悟を持って受け入れたのだ。同姓同名なんて世界にはありふれているんだから、血縁だとしてもそれすら切り捨てて
「質問します。我々の任務にはそのジョジョの1人であるジョセフ・ジョースター様が必要なのですが、居ないとはどういうことでしょうか?」
「残念ながら、回答できかねます。」
「そうですか。では、ブラウンさん。あなたが〈隠者の紫〉に相当する何かを提供してくださるのでしょうか?」
「えぇ。もちろん。我々は情報網を提供します。イタリア内なら財団よりも多く、そして信頼に足る情報をもたらす最強の情報源……財団と合併ではなく協力関係を結んだ唯一の組織。」
「それって……まさか。」
「ええ。予想の通りでしょう。」
スモーキーは、その名前を口にする。
「『パッショーネ』ですよ。」
そのギャングの名を。
*
「お茶でございます。」
給仕係だろうか。表情のえらく硬い女性が、机に人数分の紅茶を置いて立ち去る。
「あの、聞いても良い?……ですか。」
「どうぞ、楽になさってください。財団からの客人となれば、ある意味対等な関係、ということになります。それに、無理になれない敬語を使おうとして、結果としてむしろ相手に不快感を与えるというのは……『無駄』と言うほかない。」
言っている内容は優しい。だが、どうも気が立っているように感じる。ジョルノ・ジョバァーナ。最近表舞台にも姿を現し始めた、イタリアを拠点に活動するギャング組織『パッショーネ』の……ボスだ。
「で、質問だったな。どうしたんだ、嬢ちゃん。」
グイード・ミスタ。組織のNo.3。ジョルノとは対照的に、明るくて親しみやすい調子の男。だが……目が死んでいる。敵対は絶対にしたくない男だ。
「あの……失礼かも……なんだけど。このお茶って……お茶、だよね。」
リンの質問は、側から見れば意味がわからない。だが……リンは読んでいる。『ジョジョ』と呼ばれる彼らの数奇な冒険の物語を。そしてジョルノは経験している。彼女が質問をした意味となる、その出来事を。
「……はは、懐かしいですね。えぇ、紛れもないお茶ですよ。もし信じていただけないのであれば、コーヒーもありますが。」
「おいおい、まさか例の漫画ってぇのはよぉ、アバッキオの『アレ』まで描かれてんのかよォ……?」
「英雄譚の登場人物の『アレ』……についても気になるところではございますが、我々はブラウン氏のお取次ぎで『月光』についての情報を求めてきたのですが。」
「ああ、そうでしたね。良いアイスブレイクになりましたが本題に入りましょうか。」
月光。広瀬康一が得たその名はすでに共有されている。
「最近ここイタリアで、スタンド使いによるものとしか思えない事件が相次いでいます。内容は──」
*
「ここが……現場ですね。」
とある路地裏。煉瓦造りの壁に、スプレー缶でグラフィティが落書きされたりなんかしている、典型的な路地裏。
そのグラフィティに混ざって異彩を放つ一つの人物画。
「こういうの……キュビズム……だっけ。」
「立体派絵画、キュビズム。複数の画角の情報を平面に収める画風、代表はピカソ……ですが、話によれば。」
ただでさえ独特な画風で描かれたその絵画は、人物の表情が切って貼ったようでも恐怖に歪んでいることがわかることで、その奇妙さを膨れ上がらせている。その理由が、これがスタンドによる犯行であると断言できる理由。
「この方が……ルネさん。そしてマルテさん、メルコさん……この壁には
そのスタンドの能力として推察されているものが……
「人を絵にする能力……。」
行方不明者リストと、絵にされている人が共通していて、その上目撃情報まである。
「ジョバァーナさんが言っていたことが本当なら、この絵には生命反応が認められている……確実にスタンドの仕業でしょうね。」
そして……足音が近づいてくる。
「リンさん、待ってください。何か足音が。……リンさん?」
恐る恐る、床に目を向ける。リンが居たはずの場所には、キュビズム絵画が──
「〈クロス・ゲーム〉ーーッ!!!!!」
そして、ミリまでもが、絵画に変えられてしまう。
「……私の美しい絵画を……芸術を……ロマンを……汚そうとするものを許してはならない……」
革靴がレンガのタイルを踏む。足音が路地裏に響く。
足音は一定のリズムを刻む。乾いた音が、路地裏に響く──
──そのリズムに、休符が打たれる。
「……なんのつもりだ……私の絵の上に手袋を投げ捨てるとは……私に対する宣戦布告か……?」
To be continued