会議室のような場所。集められていた、5人。
イオ・バーン。招集した本人でもあるオーグ・ディム。名乗りを上げ、次の3人。
「イライジャ・ワッケロー。よろしくね。」
背の高い、フランクそうな男性、イライジャ。物腰柔らかというか、なんというかいい人そう。
「ミリ・ネイトです。よろしくお願いします。」
性別……は、中間と言ったところか。ミリ。打ち解けるには少し時間がかかりそうな雰囲気が少し感じられる。
「……リン・カーミラ。」
だが、このリンに比べればミリは比較的関わりやすそうな方だ。このガキ、リンは明らかに心を閉じてやがる。
「私は本部との連絡役を兼任する。」
オーグが発言。オーグがこの中で最も本部との結び付きが強い。集会の時に天幕の下にいたのだから。
「連絡、大事だな。それより気になるのは……」
目を見合わせる。初対面同士。
「全員……スタンド使い。」
空気が少しピリつく。
「財団本部では君たちの能力が既に把握出来ている。必要と思わなければ、私としては自己紹介の必要は無いとだけ言っておく。」
能力を明かすか、明かさないか。表情を伺う。
「……頭が回らねぇな。」
イオが席を立ち、足早に出ていこうとする。
「おい、イオ・バーン、どこへ行く。」
「お前、自分で言ったこと忘れたか? そこにガキだって居るし、ここ火気厳禁だろ。」
「チッ……」
オーグの舌打ちが会議室内に。
*
「やってられん。どういうことだ、自己紹介をして……奴らの所在が分かるまで待機か?」
喫煙所で、そんな不満がたまたま言葉になって漏れる。その不満が、先にいた男に聞こえてしまったらしい。茶色いタバコ──リトル・シガーを吹かしながら、本を読んでいる。
「どうしたんだ、イライラとして。そんな気分では、幸せが逃げてしまうな。」
「……見た顔だな。……確か──グリッター。アルビン・グリッターだ。」
「珍しい。私をあまり知らないのか。いや、新鮮な気分にさせてくれてありがとう。」
アルビンは読んでいた本を閉じる。翼 李箱作品集。そう書かれていた。李箱……読み方がイマイチ分からない。
「
「オガムド? 知らないな。」
「結構。私も、知っているとは言えない。読んだことがあるだけだからね。」
奇妙な、雰囲気。
「あんた確か……スタンド使いだったな。」
「いかにも。」
「他人に……能力って言えるか?」
アルビンは少し口角を上げる。
「言えるとも。私の能力は戦闘向きではない。『進むべき道を切り開く能力』なんて格好つけさせてもらってるが……実際にはナビをセットする手間が省けるだけさ。」
ベンチから、立ち上がる。本を手持ちのカバンに仕舞う。高そうなリトル・シガーが、喫煙所の灰皿のポットの中に消える。
「君が背負う任務は、世界の命運をも握る大切な任務だ。無論、命のかかった危険な任務になるだろう。」
「……あんた、何を知ってる?」
喫煙所の前に、マネージャーらしき男が腕時計とアルビンへ交互に視線を向けている。焦った顔だ。
「もう1本分話さないか?」
「君は、何に命を託す?」
喫煙所の扉が押し開けられる。何故か知らないが、外の空気が少しきらびやかに感じる。喫煙所が煙たいのか? 否。
「期待しているよ。」
全くなぜかは分からないが、イオは、爽やかな気分だった。
*
「目的地が決定した。」
オーグの再度の招集により、集められたイオ達。
「日本だ。杜王町に向かう。」
「杜王町ですか、楽しみですね。」
「そうだね、僕も楽しみさ。牛タンが美味しいって聞くよね。料理には、自信があるよ!」
まだ打ち解けていない。楽しい雰囲気を演出し、チームの仲を深めようとする、自然な流れ。
「任務だぞ……遊びに行くんじゃないんだ、浮かれてどうする。」
「……若いね。バーン君。」
「同世代だろ。チッ。」
一気に冷え込んだ空気。それに続き……
ジリリリリリリ……
「なんだ!?」
警報音。非常ベルの音。爆発音。
「なァ〜、財団はよォ、ザル警備がすぎるだろうが!!」
「現場に急行しろ!」
*
悲鳴が沸き起こる現場だった。
「あれは!」
1人の少年が、その渦の目で立っていた。……スタンド使い。
「被験者No.1《オーバーチュア》だな。任務の再確認をする。対象の捕獲または抹殺。わかってるな?」
「質問があります。」
ミリが挙手をする。
「被験者のスタンド能力は把握していますか。」
「あぁ。スタンド名《オーバーチュア》本体名
「能力無し、ねぇ。」
「さて、財団さんよ。この中で誰があいつの捕獲──抹殺に向いていると判断する?」
戦場で、またも、互いの顔を伺い始める。
「……戦場には常に予想外が付きまとう。最もリスクが低いのは、イオ・バーン。お前だ。」
イオが指名され、他の4人が1歩引く。
「チッ……そうかよ」
イオの脳裏に、喫煙所で会っただけのアルビンの言葉がこびりついていた。
『君は、何に命を託す?』
「戦う理由……命を賭ける理由……思いつかねぇな。」
イオは、手指を鳴らしながらNo.1の方へ向かっていく。
「カネは研究員としての給与でも充分貰っている。スタンド使いとしての特別な手当も出ていたことだしな。タバコだって、困っちゃいねぇよ。」
うわ言のように呟く。周りの悲鳴がだんだんと聞こえなくなっていく。
「俺は何のために戦う?」
疑問。疑問の果てに、答えが出るより先に。No.1と、目が合う。
「お前、
「……」
沈黙。
「セミフレッド……とか言ったな。俺はあの時ヤツを見て……『楽しそうだ』って思ったんだ。──思っちまったんだ。笑えるよな。」
「……」
沈黙。沈黙。
「ヤツだけ楽しんでんのはムカつくよな。だから──せっかくだから俺も、楽しませてもらうぜ。それが俺の、戦う理由……かもな。」
「……《オーバーチュア》」
マネキンのような、のっぺらぼう、白一色の、スタンド。
「遅いッ!」
それが繰り出した拳は、イオに軽々と受け止められる。
「オラァ!!」
ドゴッ
蹴り。単純な蹴り。スタンドも使わない。だが、No.1に命中し、よろけさせ、オーバーチュアが引っ込む。
「ようようと前に出されたがよォ〜、このスタンド使うのは嫌いなんだよな……」
息を吸い込む。
『イオ! お前だけでも生き残れ……!』
『父さん! 父さぁぁぁん!! うぐっ!?』
あの日、矢に刺された感覚。忘れることは無い。両親を殺した男に、矢を刺された、あの感覚。そのスタンドを使う度に、フラッシュバックする。
「──アァァァァァァ!!!《ドリーム・ドライブ》ッ!!!」
イオの体から、紫色のモヤが出る。それが、ひとつの場所に吸い込まれるように集まって……
「
赤色のひとつの繭を形成する。
「オラァッ!!」
No.1に飛びかかり、拳。肉弾戦。連続で拳、蹴りを繰り出して、蹂躙する。
「ハハハ、アァハハハハ!! オラァッ!!」
「アイツ……多分、いつか裏切りますよ。」
「気持ち悪い……」
ミリとリンがその姿にドン引く。
「若いね……」
「……彼と同年代ですよね?」
「はは、そうだね。」
「オラオラオラオラッッ、ギヤァハハハハ!!!!」
オーバーチュアの攻撃をものともしない。というか、もはや見ていない。本体を殴り倒すことしか考えていない。破壊力Cなど、放置して問題ないという判断なのだ。
「これでッ、終わりだ──ン!?」
マネキンに、オーバーチュアにヒビが入る。
「へへ、先にスタンドが悲鳴を上げたか! ならこのまま──」
ヒビの中から、光が漏れ出す。
「イオ! 離れろ!! 繭に入れ!!!」
「へ?」
イオが、オーグの方をむく。敵に、背を向けて。
「あグッ」
イオは、首根っこを掴まれた。スタンドに。マネキンの姿ではもはや無い。その、スタンドに。
ドドドドドドド……
「殴りやがって、好き勝手。」
「て、テメ……」
「復讐タイムだ、今から。」
イオの首が折られる。
「死んじゃった……?!」
「──《ドリーム・ドライブ》」
繭が割れると、中から何か液体にまみれたイオが飛び出す。
「生き返った……?」
「あれが彼のスタンドということですね。それより今は──」
No.1が、言葉を発する。スタンド《オーバーチュア》はもはや、同じスタンドなのかどうか疑わしい。
「ぶっ殺すよ、マジで。」
イオの纏う液体が綺麗に分離し、ひとつの人型を形成する。それは、果てしなく赤い。目を引くのは、左手に当たる部分の大きな刃。腕の先に、手の代わりに巨大な斧のような刃が付いている。──戦闘欲を表したようなスタンドビジョン。
「両方……財団では把握できていないスタンドだ……」
「え?」
ドドドドドド……
風が吹く。情報の出揃ったスタンドバトルから一転して、未確認スタンド2体。
戦いは、今始まった。