SPWの奇妙な研究   作:逆虹凛音

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序曲(オーバーチュア) その①

会議室のような場所。集められていた、5人。

 

イオ・バーン。招集した本人でもあるオーグ・ディム。名乗りを上げ、次の3人。

 

「イライジャ・ワッケロー。よろしくね。」

 

背の高い、フランクそうな男性、イライジャ。物腰柔らかというか、なんというかいい人そう。

 

「ミリ・ネイトです。よろしくお願いします。」

 

性別……は、中間と言ったところか。ミリ。打ち解けるには少し時間がかかりそうな雰囲気が少し感じられる。

 

「……リン・カーミラ。」

 

だが、このリンに比べればミリは比較的関わりやすそうな方だ。このガキ、リンは明らかに心を閉じてやがる。

 

「私は本部との連絡役を兼任する。」

 

オーグが発言。オーグがこの中で最も本部との結び付きが強い。集会の時に天幕の下にいたのだから。

 

「連絡、大事だな。それより気になるのは……」

 

目を見合わせる。初対面同士。

 

「全員……スタンド使い。」

 

空気が少しピリつく。

 

「財団本部では君たちの能力が既に把握出来ている。必要と思わなければ、私としては自己紹介の必要は無いとだけ言っておく。」

 

能力を明かすか、明かさないか。表情を伺う。

 

「……頭が回らねぇな。」

 

イオが席を立ち、足早に出ていこうとする。

 

「おい、イオ・バーン、どこへ行く。」

「お前、自分で言ったこと忘れたか? そこにガキだって居るし、ここ火気厳禁だろ。」

「チッ……」

 

オーグの舌打ちが会議室内に。

 

*

 

「やってられん。どういうことだ、自己紹介をして……奴らの所在が分かるまで待機か?」

 

喫煙所で、そんな不満がたまたま言葉になって漏れる。その不満が、先にいた男に聞こえてしまったらしい。茶色いタバコ──リトル・シガーを吹かしながら、本を読んでいる。

 

「どうしたんだ、イライラとして。そんな気分では、幸せが逃げてしまうな。」

「……見た顔だな。……確か──グリッター。アルビン・グリッターだ。」

「珍しい。私をあまり知らないのか。いや、新鮮な気分にさせてくれてありがとう。」

 

アルビンは読んでいた本を閉じる。翼 李箱作品集。そう書かれていた。李箱……読み方がイマイチ分からない。

 

「烏瞰図(オガムド)を知っているかな?」

「オガムド? 知らないな。」

「結構。私も、知っているとは言えない。読んだことがあるだけだからね。」

 

奇妙な、雰囲気。

 

「あんた確か……スタンド使いだったな。」

「いかにも。」

「他人に……能力って言えるか?」

 

アルビンは少し口角を上げる。

 

「言えるとも。私の能力は戦闘向きではない。『進むべき道を切り開く能力』なんて格好つけさせてもらってるが……実際にはナビをセットする手間が省けるだけさ。」

 

ベンチから、立ち上がる。本を手持ちのカバンに仕舞う。高そうなリトル・シガーが、喫煙所の灰皿のポットの中に消える。

 

「君が背負う任務は、世界の命運をも握る大切な任務だ。無論、命のかかった危険な任務になるだろう。」

「……あんた、何を知ってる?」

 

喫煙所の前に、マネージャーらしき男が腕時計とアルビンへ交互に視線を向けている。焦った顔だ。

 

「もう1本分話さないか?」

「君は、何に命を託す?」

 

喫煙所の扉が押し開けられる。何故か知らないが、外の空気が少しきらびやかに感じる。喫煙所が煙たいのか? 否。

 

「期待しているよ。」

 

全くなぜかは分からないが、イオは、爽やかな気分だった。

 

*

 

「目的地が決定した。」

 

オーグの再度の招集により、集められたイオ達。

 

「日本だ。杜王町に向かう。」

「杜王町ですか、楽しみですね。」

「そうだね、僕も楽しみさ。牛タンが美味しいって聞くよね。料理には、自信があるよ!」

 

まだ打ち解けていない。楽しい雰囲気を演出し、チームの仲を深めようとする、自然な流れ。

 

「任務だぞ……遊びに行くんじゃないんだ、浮かれてどうする。」

「……若いね。バーン君。」

「同世代だろ。チッ。」

 

一気に冷え込んだ空気。それに続き……

 

ジリリリリリリ……

「なんだ!?」

 

警報音。非常ベルの音。爆発音。

 

「なァ〜、財団はよォ、ザル警備がすぎるだろうが!!」

「現場に急行しろ!」

 

*

 

悲鳴が沸き起こる現場だった。

 

「あれは!」

 

1人の少年が、その渦の目で立っていた。……スタンド使い。

 

「被験者No.1《オーバーチュア》だな。任務の再確認をする。対象の捕獲または抹殺。わかってるな?」

「質問があります。」

 

ミリが挙手をする。

 

「被験者のスタンド能力は把握していますか。」

「あぁ。スタンド名《オーバーチュア》本体名No.1(ナンバーワン)。【破壊力 - C / スピード - C / 射程距離 - C / 持続力 - E / 精密動作性 - C / 成長性 - なし】能力無し。」

「能力無し、ねぇ。」

「さて、財団さんよ。この中で誰があいつの捕獲──抹殺に向いていると判断する?」

 

戦場で、またも、互いの顔を伺い始める。

 

「……戦場には常に予想外が付きまとう。最もリスクが低いのは、イオ・バーン。お前だ。」

 

イオが指名され、他の4人が1歩引く。

 

「チッ……そうかよ」

 

イオの脳裏に、喫煙所で会っただけのアルビンの言葉がこびりついていた。

 

『君は、何に命を託す?』

 

「戦う理由……命を賭ける理由……思いつかねぇな。」

 

イオは、手指を鳴らしながらNo.1の方へ向かっていく。

 

「カネは研究員としての給与でも充分貰っている。スタンド使いとしての特別な手当も出ていたことだしな。タバコだって、困っちゃいねぇよ。」

 

うわ言のように呟く。周りの悲鳴がだんだんと聞こえなくなっていく。

 

「俺は何のために戦う?」

 

疑問。疑問の果てに、答えが出るより先に。No.1と、目が合う。

 

「お前、アレ(セミフレッド)の仲間か。」

「……」

 

沈黙。

 

「セミフレッド……とか言ったな。俺はあの時ヤツを見て……『楽しそうだ』って思ったんだ。──思っちまったんだ。笑えるよな。」

「……」

 

沈黙。沈黙。

 

「ヤツだけ楽しんでんのはムカつくよな。だから──せっかくだから俺も、楽しませてもらうぜ。それが俺の、戦う理由……かもな。」

「……《オーバーチュア》」

 

マネキンのような、のっぺらぼう、白一色の、スタンド。

 

「遅いッ!」

 

それが繰り出した拳は、イオに軽々と受け止められる。

 

「オラァ!!」

 

ドゴッ

蹴り。単純な蹴り。スタンドも使わない。だが、No.1に命中し、よろけさせ、オーバーチュアが引っ込む。

 

「ようようと前に出されたがよォ〜、このスタンド使うのは嫌いなんだよな……」

 

息を吸い込む。

 

『イオ! お前だけでも生き残れ……!』

『父さん! 父さぁぁぁん!! うぐっ!?』

 

あの日、矢に刺された感覚。忘れることは無い。両親を殺した男に、矢を刺された、あの感覚。そのスタンドを使う度に、フラッシュバックする。

 

「──アァァァァァァ!!!《ドリーム・ドライブ》ッ!!!」

 

イオの体から、紫色のモヤが出る。それが、ひとつの場所に吸い込まれるように集まって……

 

「繭(まゆ)?」

 

赤色のひとつの繭を形成する。

 

「オラァッ!!」

 

No.1に飛びかかり、拳。肉弾戦。連続で拳、蹴りを繰り出して、蹂躙する。

 

「ハハハ、アァハハハハ!! オラァッ!!」

「アイツ……多分、いつか裏切りますよ。」

「気持ち悪い……」

 

ミリとリンがその姿にドン引く。

 

「若いね……」

「……彼と同年代ですよね?」

「はは、そうだね。」

「オラオラオラオラッッ、ギヤァハハハハ!!!!」

 

オーバーチュアの攻撃をものともしない。というか、もはや見ていない。本体を殴り倒すことしか考えていない。破壊力Cなど、放置して問題ないという判断なのだ。

 

「これでッ、終わりだ──ン!?」

 

マネキンに、オーバーチュアにヒビが入る。

 

「へへ、先にスタンドが悲鳴を上げたか! ならこのまま──」

 

ヒビの中から、光が漏れ出す。

 

「イオ! 離れろ!! 繭に入れ!!!」

「へ?」

 

イオが、オーグの方をむく。敵に、背を向けて。

 

「あグッ」

 

イオは、首根っこを掴まれた。スタンドに。マネキンの姿ではもはや無い。その、スタンドに。

 

ドドドドドドド……

 

「殴りやがって、好き勝手。」

「て、テメ……」

「復讐タイムだ、今から。」

 

イオの首が折られる。

 

「死んじゃった……?!」

「──《ドリーム・ドライブ》」

 

繭が割れると、中から何か液体にまみれたイオが飛び出す。

 

「生き返った……?」

「あれが彼のスタンドということですね。それより今は──」

 

No.1が、言葉を発する。スタンド《オーバーチュア》はもはや、同じスタンドなのかどうか疑わしい。

 

「ぶっ殺すよ、マジで。」

 

イオの纏う液体が綺麗に分離し、ひとつの人型を形成する。それは、果てしなく赤い。目を引くのは、左手に当たる部分の大きな刃。腕の先に、手の代わりに巨大な斧のような刃が付いている。──戦闘欲を表したようなスタンドビジョン。

 

「両方……財団では把握できていないスタンドだ……」

「え?」

 

ドドドドドド……

 

風が吹く。情報の出揃ったスタンドバトルから一転して、未確認スタンド2体。

 

戦いは、今始まった。

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