「先鋒としてアイツを行かせたのには訳がある……本部とスタンド研究チームでは『殻割れ』と呼んでいる現象がある。それがオーバーチュアに起きる予想を立ててアイツを行かせた。」
オーグが説明する。概ね予想通りの展開であると、財団の威信をかけて。
「予想が的中したわけですね。」
「ふーん、やるねぇ。」
「殻割れを起こしたスタンドには『新たな能力』と『能力の向上』が起きる!」
自分自身の精神の殻が破れることによって発生する殻割れ。イオと睨み合っているNo.1にそれが起きたと言うことだ。
「つまりはどんな能力が来るかわからん。総員、警戒を緩めるな。」
ドドドド……
「ハァッ!」「──オラァッ!」
拳と拳がぶつかりあう。ドリーム・ドライブの右手から繰り出される拳は棍のように重く、ぶつかり合ったオーバーチュアは圧倒され、No.1が転がる。
「パワーではドリーム・ドライブがァ、
「発動、能力。《オーバーチュア》」
No.1はスタンドを発動する。
「来るぞ!」
瓦礫が、浮かび上がる。その瓦礫に鎖がつながっている。スタンドによる鎖。一本に、繋がっている!
「ハァァァッ!!」
その一本の瓦礫の鎖が、大きな音と地響きを立てて地面に叩きつけられる。イライジャが腕を広げて、メンバーを守るそぶりを見せる。
「圧倒的な物量だね……!」
土煙に、イオの姿も見えなくなる。
「死にましたか。」
「──オラァァァァ!!!」
その土煙が勢い良く動いて、ドリーム・ドライブの拳はNo.1を吹き飛ばす。戦いを追って、4人も土煙を払いながら進む。
先では、No.1が壁の残骸に打ちのめされていた。
「さすが、若いねぇ。あの破壊力。」
「……もうツッコみませんよ。」
「あぁ、うん。」
「すごい……」
リンが小さく一言ぽつりと呟く。
「死にたくない……私は!」
「イオ・バーン! 出来れば捕獲のほうが望ましい。あのダメージなら聞き入れるだろう。交渉しろ。」
「……報酬に変更は?」
イオの言葉に、総員ぎょっとする。
「おいおいおい、本当かい」
「人の心を置いてきたようですね……軽蔑します。」
「わかった、手当は出す! なるべく殺すな、これからも!」
生活費の負担があり、そのうえ給与もほぼ変わらないというのに、なぜ手当を求めるのだろう? イオの脳裏には、どんな思いが相手の命との天秤にかけられているのだろうか。
「おい、聞いたか。投降しろ!」
ドリームドライブの刃が、No.1の首元にかけられる。
「……戻らない、あの牢獄には!」
その啖呵とともに、鎖と瓦礫が再び持ち上がり、襲い掛かる。
「切り刻め! ドリーム・ドライブ!」
左腕は振るわれ、瓦礫を切り刻む。
一直線に、線を引くように振るわれたのみの左腕の刃。しかしそれは、瓦礫を無数に切り刻む。襲い掛かる瓦礫と鎖に、次は右腕が叩き込まれる。
「──オラァッ!!!!」
バコォッ!
線の通りに割れ、砕け散った瓦礫の欠片が、4人にまで襲い掛かる。
「守る!」
イライジャのスタンドが顕現し、ラッシュによって欠片を退ける。
「ラァァァッシュ!!」
4人には、怪我一つない。
「っ……感謝する。おい、No.1! これでもう懲りたろう、投降しろ!」
「潮時か、ここらが!」
続いてNo.1は、ポケットから何か取り出す。
「生き続ける……私は……志となって!……《キャロル》!」
カチッ
ドォォォッ……
No.1が、爆発する。キャロル……スタンドによって、爆発する。自爆。
「チィッ!」
各々スタンドによって、爆風の緊急的な防御を行う。おかげでそこまでのダメージは受けなかった。しかし、セミフレッドについての情報は一切失われてしまった。
「……おい、俺は悪くねぇからな。」
イオがそんな言い訳というかをする。誰も責める気などないが。
「ちくしょう……」
オーグはそんなことは聞いていない。オーグの胸にあったのは、失われた情報、命への哀悼。
「……後片づけは、戦闘班の仕事ではないですよね。」
「そうだな。」
ミリは冷静だ。すでに、財団の他部署が片づけに派遣されている。戦闘班としての仕事はすでに終わった。
「……杜王町へ向かいましょう。それが任務のはずでしょう?」
リンが足早にその場を離れる。それに続いて、オーグたちも。イオも。
──そしてその光景を眺める、被験者No.4。
「エフフ……いいもの見たぜ……オーバーチュア! お前のおかげだ……!」
*
スタンドパラメータ
スタンド名-『ドリーム・ドライブ』
本体-『イオ・バーン』
【破壊力 - A / スピード - A / 射程距離 - C / 持続力 - A / 精密動作性 - C / 成長性 - A】
①:自身の状態を『
②:本体の死亡により発動した場合、復活時にドリーム・ドライブが人型の近接パワー型スタンドとなって追従する。人型状態は本体の戦闘終了の判断に応じて解除される。
③:人型のドリーム・ドライブは右手が鉄のような重さの塊、左手が斧のような形の巨大な刃になっている。刃はひと振りで多くの斬撃を放つことが出来る。
オーグの評価:極端にパワー型に偏っているため、搦手には弱いだろうが、単純な戦闘では無類の強さを発揮するだろう。能力①の効果は先鋒・人柱として捧げるのにもってこいだ。本体は性格に問題こそあるが、カネやタバコを引き合いに出せば命令自体は聞くという点に限っては良い。
*
「諸君! 我らの目指す世界のために、巨大な1歩を踏み出すことが出来た! 我らの大切な仲間であるNo.1は死んだ。何故か!」
セミフレッドが、被験者たちや幹部を集め、熱く演説する。
「スピードワゴン財団はスタンド使いを縛り付ける腐った牢獄である! 我々は、腐ったその者共を、粛清する!」
鬨の声と拍手。セミフレッドを賛美するものばかり。
「そのためには諸君らの気高い覚悟が必要不可欠である!」
仄めかしい隠れ家。沸き起こる歓声。
「幾年待った夢が叶う……我らが世の春が来たァァッ!!!」