SPWの奇妙な研究   作:逆虹凛音

6 / 20
原作キャラが出ます。キャラ崩壊に注意。


杜王町編
杜王町騒然


車は、岬から潮風、トンネル抜け鉄塔へ。鉄塔を超えるとラジオが入るようになる仕様は据え置きのようだ。杜王町Radioが意気揚々と喋っている。

 

「……」

 

気まずい沈黙に、杜王町Radio。その沈黙を生み出した当の本人、リン・カーミラは、知らぬ顔でスマホをいじっている。誰も、何か言い出すことが出来ずに。6人乗りのセダンは、オーグが運転し、助手席にイライジャ。ミリとイオ。荷室の席に、リンが座る。

 

ブロロロロロロ……

 

*

 

車内の空気のギスギスとは対照的に、一体感のある空気だった。双眼鏡、通信機、幽波紋(スタンド)。

 

「No.8より各員『キャロル』設置完了した。作戦開始準備完了。持ち場で待機せよ。オーバー」

「キャロルゥ~そんな堅苦しくしなくったっていいのよ?」

「ンン……」

 

その指摘に、思わずノイズを漏らすNo.8。スタンド名《キャロル》。

 

「シャンソン(No.3)は抜けすぎだろう」

 

No.3、スタンド名《シャンソン》。飛行機を襲撃した犯人でもある。

 

「そうだなァ、そのせいで仕留め損なったわけだしなァ」

「もう、うるさいなぁロンド。」

 

No.6、スタンド名《ロンド》。

 

「確認する。手筈通り、わたしは起爆後No.6のロンドで離脱する。」

「で、交換でイレブンが来るんだよね〜?」

 

SPW財団、仮設杜王町支部。邪悪が台頭した時に、それを感知し、財団のサポートを開始するための斥候所。そこに、シャンソンの爆弾がすでに仕掛けられているというのだ。

 

「……そろそろ時間だ。」

 

No.8は懐中時計をたたむ。カチッと金属が噛み合う音が鳴り、蓋が閉まったそれを懐にしまう。

 

「No.8より各員。これより3カウントの後に、作戦を開始する。繰り返す。3カウントの後に、作戦を開始する!」

 

No.8の手に、スタンドの起爆ボタンが握られる。

 

「3……2……1……」

 

ピーッ

 

「作戦開始。」

 

*

 

つい先程まで粛然としていた杜王町が、一斉に騒ぎ立つ。その爆発音を皮切りとして、野次馬の声や、パトカー、救急車のサイレン。駐留していた財団職員を運んでいく。

 

「これって……まさかッ!」

 

その人混みの中に、広瀬康一。

 

せわしなく鳴り響くサイレン。その中に、何か目を引くパトカーが一台。扉が勢いよく開き、出てきたその警官は、その現場を見渡す。崩れ、炎上した財団斥候所を見渡す、その警官。

 

「グレート、爆発してやがる……」

 

東方仗助。

 

「聞いてないぞ、オーグ」

「言えるはずもないだろ……これは……スタンド使いの襲撃だ」

 

オーグは、ゆっくりと広瀬康一に近づいていく。

 

「見ての通り……邪悪が台頭しています。協力していただけますね、広瀬康一。」

 

康一は無言で頷いた。

 

*

 

「……ちょっと、止まって。」

 

リンを連れたイライジャ。現場へ向かおうとする道中、立ち止まる。

 

眼前に、人。目が合っている。互いに睨み合う。そして直感的に、リンもイライジャも、理解する。こいつ、スタンド使いだ!

 

「何者?」

「フゥム、流石、気づいているなァ、兄弟!」

「……初対面のはずなんだけどなぁ。なんですか、お茶でもします?」

 

そいつが承諾するはずもないことはわかっていたが。

 

「スピードワゴン財団……忌々しい組織だなァ〜、全く!」

「……何がいいたい! 名前を名乗れ。」

 

敵対と判断。語気が荒くなっていく。

 

「我が名はセミフレッド・リフ。聞いたことはあろう。」

「セミフレッド……お前が被験者を誘拐した犯人か。」

 

なるべくの威圧。効かないこともまたわかっていたが。それは、イライジャ自身が雰囲気を作り、スタンドパワーを引き出す自己催眠的な効果もある。

 

「私は勧誘に来たのだ……兄弟! 財団とはスタンド使いを縛りつける鎖に過ぎん……私と共に来い……私はスタンド使いを導くものにあろうぞ!」

「リン、ロータスは使わなくて良いよ。下がってて。」

 

リンは、警戒するような視線をセミフレッドに送りながら、下がる。無言のままで。

 

「兄弟兄弟とうるさいな、それに財団が鎖だなんて! それは傲慢なお前の、勝手な考えにすぎない! 一面的な考えで物を見て!」

「それはァ、お前にも言えることだ!」

「《ザ・ラァァァッシュ!!!》」

 

拳が、一瞬の閃光を掴む拳が放たれる。その拳が……空振る。

 

「なっ……」

「よかろう! 戦いによって善悪を決めることこそォ、力勝負で上下を決める者こそォ! 本来あるべき人間の姿という訳だなァ、兄弟よォッ!!」

「後ろに!?」

 

「《ターンX(クロス)ターン》!!!」

 

その拳が、イライジャを吹き飛ばす。

 

「うわぁッッ!! 」

 

情けない声を上げ、イライジャは地面に転がる。リンが心配そうな目。

 

「なんだ、このパワーは!」

「一撃でェ! そんなものかァ、兄弟よォォォ!!」

 

セミフレッドが走りかかってくる。追撃だ。

 

「《ザ・ラッシュ!!!》」

「ハァァァァッ!」

 

拳と拳、今度はぶつかり合い。近距離パワー型スタンド二つの、ぶつかり合い。衝撃波が飛び、風が吹き荒れる。

 

──ガオンッ

 

その状況を撃ち破る、重苦しい音。

 

「そのくれぇに、しておかねぇとよォ……」

 

現れたその、顔に傷のある男は。セミフレッドをいつのまにか射程範囲内に納め、スタンドで頭を掴んでいた。

 

「な、なにィ……?」

「おれのザ・ハンドが削り取ったモンは……おれにもどこにいっちまったのかわからねぇ……どこかも知れねぇ暗黒空間の中に消えたくなければよォ〜〜…………」

「虹村、億泰……」

 

リンの呟きの通りに。それは、虹村億泰。深くガラガラと嗄(しゃが)れた声。深く、深く響く。

 

「わ、わかった……このくらいにしておくとしよう……」

 

セミフレッドはスタンドを引っ込め、億泰の言う通り攻撃体勢を取りやめる。

 

そして、セミフレッドは、黒い霧のようになって消える。偽物だったということだろうか? それとも、ザ・ラッシュの攻撃を避けたカラクリだろうか。

 

「おれはバカだからわからねぇことは多いけどよォ……『善』と『悪』の区別ってんなら……けっこー自信あんだぜ…………そうだな、怪我ァ、してねぇか」

「……えぇ、このくらいかすり傷です」

「そうかァ──なら良かった……で合ってんのか?」

「僕に訊かれましても……?」

 

その虹村億泰は頭をポリポリと掻く。慣れないことをしたのだろう。その、少し緩んだような空気。虹村億泰は、佇んでいた。

 

「フム、虹村億泰……バカと聞いていたが、侮れん奴だ……早いうちに、仲間に迎え入れんとなァ……」

 

どこか。仄暗いその部屋で、セミフレッドは、さらに強くならんとしていた。スタンド使いとの戦いは殆ど初めて。彼もまた、慣れないことをしていたのだ。

 

セミフレッドを中心とする組織『月光』と、スピードワゴン財団をめぐる戦い。閑静な杜王町を巻き込んで。

スデに、始まっている。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。