「財団の推定では……といいますか、ほぼ確実に。あの爆発は、スタンド『キャロル』によるものです。」
現場は解散され、カフェに移動した康一とイオ、オーグ、ミリ。
「おい、あいつら何喋ってっかわかるか。」
康一、オーグの席と、イオ、ミリの席は別になった。それも2人が日本語でコミュニケーションを取るからだ。
「……」
「おい、シカトこいてんじゃあねぇぜ」
ミリはスマホとコーヒーカップを置き、ため息の後に続けた。
「あなたとは話したくありません。」
「……あぁ?」
立ち上がったイオ。机を勢いよく叩く。店内の視線が自然とイオの方へ集まり、一瞬静まり返った後にざわざわとし始める。
「テメェ、表出ろや。」
「ヤニ切れですか? 1人で行ってください。私はまだ、コーヒーが。」
含み笑いを浮かべながら、コーヒーカップを見せつけるように持ち、一口飲む。
イオは拳を握り込む。そして勢いよく振りかぶり……
……止まる。
「いっ!?」
「《マネジメント - フリーズ》……店に迷惑をかけるんじゃあないッ!」
オーグは英語に切り替わる。焦った顔をした康一の、視界にオーグの持つタブレットの画面が入る。うっすらとしか聞き取れない英語よりも、タブレットの画面に興味が惹かれた。
(
「オーグ……テメェ……ッ!」
「《マネジメント - シャラップ》迷惑をかけるなと言った」
「──***?!」
「みなさま申し訳ありません。すぐに連れ出しますから。」
お辞儀。日本式の挨拶。そして。
「ミリ、お前もだ。」
オーグの指示に、ミリは無言のまま、嫌そうな顔をして店を出て行く。
「少々お待ちください。部下の教育をして参ります。」
「あ……なるべく優しくあげてください……なんて……」
何だか安心のできない笑顔を浮かべたオーグ。狐につままれたような顔をした広瀬康一は、ストローに口をつけオレンジジュースを一口飲んだ。
*
マネジメントの効果が解除されたイオは、その場にへたり込む。その効果により、黙ってついていくしかなかったのだ。
「テメッ……それ、テメェのスタンドか! 趣味わりぃスタンドしやがって」
「あぁそうだ。イオ・バーン、ミリ・ネイト。立て。」
座り込んだ状態のイオが、至極嫌そうに、オーグを睨みつけながらゆっくりと立ち上がる。
「ミリ。こいつと『決闘』しろ。」
「は……嫌です──って言っても従わせるんでしょうけど。まぁ、ちょうどストレスも溜まってましたし。いいですよ。」
空気が変わる。スタンドが繰り出される直前の、特有の張りつめた空気。
「スタンド、出さなくて大丈夫ですか。」
「使いたくねぇといつも言ってんだろうが。」
「ああ、そうでしたね。気が変わっても遅いですからね?」
「なんども言わせようとすんじゃあねぇ。」
オーグは席を外し、ミリのスタンドの条件を邪魔しないようにする。
「あなたと話すのは嫌だと言いましたが、条件上、このコミュニケーションは必須なので、やむなく私のスタンドを説明します。」
「あぁ、いちいち嫌な奴だな。そういえば、オーグのドグサレがテメェのスタンドは条件が煩雑だっつってたな。」
「えぇ、ほんとに。私のスタンド『クロス・ゲーム』はあなたと私で一対一の決闘をするスタンドです。《クロス・ゲーム》。」
ミリの手に、手袋。最初からあったかのような、皮手袋。
そしてミリが説明を始める。
1.ミリが
2.
3.スタンドエネルギーによって形成される空間に移動。帯状の長いバトルフィールド。
4.「
5.「
6.どちらかの再起不能か、「
「いいですか、ルールは絶対です。破ろうなんて考えないでくださいね。」
「チッ、わーってるよ。」
ミリは慣れた手つきでその手袋を片方外し、イオに投げつける。イオは投げられた手袋を……知らない顔で無視した。
「……聞いてなかったなんて言わないでくださいよ。早く拾ってください。」
イオはポケットからタバコを取り出し、火をつける。
「……あの。」
「フゥ〜〜、オーグのクソ野郎がいねぇからよ」
「聞こえないんですか、手袋を早く拾ってください。無駄に何度も言わせないでいただきたいのですが。」
イオは耳の穴をほじる。退屈そうに、イオが吐き出した紫煙は昇っていく。
「あなたが拾わないと、私までオーグさんに処罰されるかもしれないんですよ!?」
「あー? お前が俺のこと嫌いなように、俺もお前ンこと、キレぇだからよ──
──幻聴。幻聴に過ぎない。その音は、幻聴に過ぎない。
プッツーン……
──幻覚。幻覚に過ぎない。その気は、幻覚に過ぎない。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………
「グダグダ抜かしてんじゃあねぇ……ダボが……さっさと拾えってんだよ、貴様ごとき、埃一粒にも満たんちっぽけな存在がァ、高貴な決闘を無視してヤニふかしやがる……スタンドを使いたくないだとかナマ言いやがるッ!」
敬語が、ブッ飛ぶ。紫色の、憤怒に満ちた『オーラ』を、イオは見る。
「……!?」
「薄暗い影でじっと掃除されんのをビクビク怖がってりゃ良いものをよォ〜〜!! 目の前をフヨフヨと、クソムカつくんだよ、テメェのような埃はッ!」
ミリの髪の毛が逆立つ。本気。
「気に入った……テメェも、下手に出てヘコヘコしてるだけじゃあないってんなら……相手になってやる」
「なら──」
「ああ。『拾った』ッ!」
純白の空間。長細い、決闘空間。逃げ場などない。
「
(ヤツは恐らく俺を殺しにくる……チッ、使わざるをえねぇな)
「《ドリーム・ドライブ》──ッ!」
「《
その発声でミリの手には、長細い剣……レイピアが握られる。スタンドによる、レイピア。
ゴゴゴゴゴ……
「「
──だが。
イオの意気込み、昂りとは裏腹に。
勝敗は、一瞬で決することになる。
キィィィーーン…………
甲高い音。それは、ミリのレイピアが、風を切り裂きながら、イオの頭蓋を貫いた音だ。
「う……あ……」
喃語が漏れる。レイピアが抜かれ、イオは白目を剥き、その場に倒れる。
「バレストラ、トゥシュ。」
前方に跳びながら突く、神速の技、バレストラ。それが
「Que son ame se repose en paix.(安らかに眠れ。)……とは言っても貴方の場合、繭で生き返るんでしょうけど。相変わらず、生命を侮辱しているようなスタンドだ、穢らわしい。財団にこんなクズが居たとは。」
地面に突っ伏すイオのそばで拍動する繭を横目に、ミリは店内に戻った。