「例の爆発事件だが、SPW財団と共同で捜査することになった。怪事件ンときに捜査協力してもらっとるとこだ。名前聞いたことくらいはあるんじゃあないか?」
その警部が、仗助たちの前で指揮を執る。しかし、単なる交番へこのような捜査指揮がつくことは普通はない。それも、SPWという異常が存在するからだ。
「財団からもらった犯人予想の資料があったな、東方巡査。」
そう呼ばれた巡査。見覚えのある髪型をして、制服の帽子がそこに乗っかっている。
「うっす。
「うむ、ご苦労。やはりスタンド絡みの怪事件……と来たか。」
顎に手を置く警部。スタンド使いという概念は、一般には都市伝説。しかし警察など一部の協力組織には財団の情報統制・場合によっては記憶処理を施す規則などの特殊な環境を整えた上で事実と知らされている。無論、仗助がスタンド使いであることも、彼らにのみ知らされている。ここ、杜王一丁目交番の警官だけには。
「この交番に勤めている以上わかっているとは思うが、今回の件は他言無用となり、一般には単なるガス爆発として扱う。わかっているな。」
「はい。」
その交番には、身辺調査をした上で、裏切り等のリスクが無いことが確証されている人員しか勤めていない。これらが現在財団のなせる技。
そんな財団管理の施設に限って単なるガス爆発などという事故が起こるはずはない。No.1がキャロルという名のスタンドを発動して自爆したことからも、キャロルを用いた爆破テロであることは状況証拠からして明確だった。
「各員、十分注意の上捜査にあたるように。」
敬礼をして、解散となる。
*
「で、そのオーグっつーのとよぉ、待ち合わせてんだろ……どこにいんだ?」
怖そうな顔の虹村億泰。本人は多分、めいいっぱい優しい顔をしているつもりなのだろうが、リンには警戒されたままだ。
「す、スミマセン、日本語少し」
「っ……あー……おう。」
話の腰を折るようなイライジャの言葉に、億泰は、咳払いの後に、朧げに思い出したその英語を口にする。カタコトでも、伝わったからよかったが。
「うぇあ・あーゆー……うぉん・とぅー・ごー?」
「……
「きゃ、きゃふぇ・づ・孫……ああ、おう」
なんとか理解できたようで、ついてこいというような言葉を、手で表現する。あからさまに不良の歩き方をした億泰の後ろに、堂々と歩くイライジャ、その影のリン。
「つってもおれェ、バカだからよお〜……実際つけるかどうかは…………
文句を言いながらも、文句は英語に変換できないので、結果的に自信家のようになってしまった。
拙い英語。でも、英語というのは結局、コミュニケーションというのは結局、魂が全てなのだ。イライジャには伝わっている。
しかし進み始めた億泰たちに、出鼻を挫くように一人の男が現れる。拍手をしながら、ゆっくりと歩いてくる。
「ハッハッハ……
「ダァ、また英語かよォ……なんつってるかちぃともわかんねぇっつーのに、おれン名前ァ呼びやがって、頭痛くなんだよォ、ダボがァ……」
「リン、下がって。」
リンは、近くの物陰に逃げ込む。
「私を船頭にィ、面舵いっぱァい!!《パルカローラ》ァァッ!」
「ぐ……うぉぉーッ!」
ザパァーッ……ザパァーッ……波の打つ音。しかしそこに、砂浜など。
「なんだこれは……空気が波打って……風が来るッ!!」
足元を掬うような、波が押し寄せる。イライジャは転び、地面に倒れ転がっていく。
「《ザ・ハンド》ッ!!」
ガオンッ
「ゲブァッ──」
だがザ・ハンドで空を通って一気に距離を詰めてしまえば、足を狙った波など関係ない。蹴りを入れられたその男が……空へ浮かぶ。
──「フイヤッ フイヤッ」
そのスタンドは、群体を成す。小さな木造ボートに、六人の船員と一人の船頭。そんな船が、何隻も。しかしその中で、男を載せる船だけが、何倍も大きく、何倍も多い船員がいる。
「フイヤッ フイヤッ」
「
スタンドの帽子、
「チィ、うざってぇ波がよお〜〜船一個ずつブッ潰していけばァァ〜ッ!!」
ドグシャァッ!!
小気味良い音を立てて、木造のボートのひとつはザ・バンドの拳に叩き潰される。
「ギッ、よくも!」
No.11の乗る船が空気の波に乗り、距離を取る。
「フイヤッ!!」
それに合わせ他の船のスタンドが掛け声を出して、オールを一際力を込めて漕ぐ。それにより再び、空気に波ができ、風が巻き起こる!
その風を受ける億泰──
「ダボがあッ!!」
「波を消したァ!?」
しかし、ザ・ハンドにそんなことは関係ないのだ。見えなくとも、波よりも強い力で進めば、波などどうということない。
ガオンッ!
そして張り付く空間で跳び上がる億泰。その勢いで、飛び蹴り。
「ゲブッ」
「日本に来たならよお〜〜日本語で喋りやがれえ〜〜〜〜ッッ!!!!」
船から落ちるNo.11へ、そのまま拳を繰り出し。削り取りはせずに、拳を叩き込む。拳で叩き上げられ、落ちず、連続で拳が入る!
「グギアァッ──」
そう、それは仗助を踏襲したラッシュ攻撃!
「コラァッ!!!」
あっという間に傷だらけになったNo.11。地面に転がり、もはや波も一旦止む。あまりにもパワーに振られた、その力に、パルカローラは押され切り、転がった。
「フゥーッ……仗助に治してもらわなくっちゃあなんねえかもしれねーなあ、こりゃァやりすぎちまったかもしんねぇ」
「……すごい」
イライジャもパワー型のスタンド。一瞬だけ常識外のパワーを発揮するスタンドを出す……しかし、億泰のパワーには遠く及ばなかった。
「……まだだ……まだ終わっていない!!」
「チィ、虫よりしつけぇヤローがァ、そのまんま眠っときゃあよお〜〜ッ!!!」
「《パルカローラ・タイダルウェイブ》ーーーーッ!!」
……ザパァーン……ザパァーン……そのパルカローラは一味違う。ザパァーン……波の音がなり、次には地響き。
「Life has more imagination than we carry in our dreams.- 人生は、私たちの夢想以上に奇妙である。」
ブロロロロロロロ……ガスタービンの回る音。そして波の音。まるで大海原を旅しているかのような音。
「くそっ、立っていられない!!!」
イライジャを地面に伏せさせ張り付けたその能力。地面が波打ち、道路がぐにゃぐにゃとまがり立っていられない。
「フイヤッ フイヤッ」
「キザなセリフみてーなの言いやがってよお〜〜〜! 船で泳ぎてえならよお〜〜さっさと海行け、コラァッ!!」
ガオンッ
──聞きなれたその破裂音と裏腹に、億泰はNo.11に近づいて……いない。
いや、違う。億泰が近づくと同時に、No.11が離れたのだ。
「フイヤッ フイヤッ」
「波に乗って……億泰さんから離れた! 殴られたことで精神力が高まって、スタンドの扱いが上手くなったんだ! 巧みに波を操ってる! ヤツは高速で移動してくるぞォーッ!!!」
素早い。すっ早い。煽るような動きで、億泰を挑発しながら距離を取る。
「こンのスカタンッ、逃げてんじゃあねぇぞタコォッ!!」
左手の拳、右手の手のひらに力を込める。空間を削り取って引き寄せ、拳を叩き込む構えだ。
「──フイヤッ!」
「ぐおおおッ!!?」
そこに不意打ち、頭を狙った波!
衝撃に億泰が転び、隙が生まれる!!
「捉えたァッ! ガッチャァァァァァッ!!!」
「《ザ・ラッシュ》ォォォ!!!」
雄叫びをあげながら、波に乗って加速したNo.11が億泰に生身で追撃をかけようとする。しかしイライジャの場所からじゃ、到底届かない位置だ。
「ルォォォッッ──」
それでもイライジャは手を伸ばす!
To Be Continued
前回あった「マネジメント」は康一がいう通りオーグのスタンドじゃあなくて、名札の機能です。
名札の機能には他にGPSとかがあって、リンがいま隠れてますけど、オーグはリンのGPSをたどってリンを迎えにくることも可能。
リンとイライジャは迷子です。リンが観光したいって言ったのをイライジャがついていった形ですね。オーグは康一との会談が終わったら迎えに行く予定っぽいですね。