能力がすでに発現している状態でも、殻割れを起こすことがある。区別するために、それはスタンドの、魂の成長と呼ばれている。
スタンドはタネに例えられる。精神の殻に包まれたタネ。スタンドの矢はその殻を割ることができるが、中にタネがなければ割れた殻だけが残り、ゴミになってしまうのだ。
「《ザ・ハンド》ッ──!!」
土壇場で再発動したそのスタンドによって、窮地は脱する。No.11の手刀は弾かれ、空気の波に乗って億泰と再度距離が取られる。
「フイヤッ ヤァーッ」
「窮地は脱したが……突破口を……突破口を見つけなければッ!!」
「やっと迎え撃てると思ったってのによォ、ハエみてーにシツコいヤローだぜッ!」
やはり、億泰とイライジャの間にコミュニケーションが成立しないというのは非常に不便だ。億泰は、イライジャの名前すら知らない。名札のおかげでかろうじてSPWのスタンド使いということはわかれど、名前の読み方がわからないのだ。
ガオンッ
再び、空間を削り取って空を翔ける億泰。
「単調な!」
「フイヤァー!」
ビュオォッ
「うごおぉぉッ」
しかし、今度はさっきまでのようにはいかず、強化された空気の波は一瞬の隙を突いて億泰の姿勢を崩す。
「船長にぃぃ! 二度同じ手が通じるかぁぁぁーー!!!」
「また! 波に乗ってくる!」
「《ザ・ハンド》!!」
空中で、再び、ザ・ハンドによる咄嗟の防御に転ずる。
だが。
ガシィッ!
「クハハ……二度は通じんと言っているだろ、虹村億泰!」
億泰の首に手がかけられ、地面に叩きつけられる。波紋のように地面の波が広がった。
「う……」
億泰は、間合いに入ったNo.11へ拳を繰り出すも、首を絞められては力が出ない。
「ああああッッ──《ザ・ラァァァァッシュ》!!!!」
ザ・ラッシュの脚だけを出し、地面を蹴って無理やり移動する。本体が億泰に集中しているため、波も収まっている。
「オラァァぁぁぁっ!!!!!」
その隙をつかんと、イライジャの拳が繰り出される。
「なに!」
「クハハハ、でかしたぞ、一等航海士ッ!」
その拳は……止まる。ザ・ラッシュのパワーを持ってして放たれたその拳が、止まる!
「なにィ……!?」
「船長である私にィ……船員は付き従い、自分の仕事を完遂するッ!」
No.11はゆっくりと起き上がる。
「なにをォ!」
「くどい!」
再度繰り出されるザ・ラッシュの拳。その拳は、No.11にたやすく掴まれてしまったのだ!
「バカな、ザ・ラッシュの拳は一瞬とはいえ、僕の自信が間違ってなかったら空条承太郎のスタープラチナをも超えるパワーだぞ!?」
「知っているッ! その波はスデに、一等航海士が読んだ! 読み切った波に揺られ覆る船など、私の目が黒い限りはありえんのだッ!」
「フイヤッ」
バルカローラの鳴き声。イライジャは波をぶつけられ、不意に吹き飛ぶ。
「ぐ……は……こいつ……無敵か…………!!」
弧を描き吹き飛び……地面に転がる。その衝撃に、波紋の波が広がる。
──その時、イライジャにアイデアッ!
「……波、そうか、波!」
その作戦には、虹村億泰が必要不可欠!
億泰の方を見ると。
「う……ぐぉぉっ」
首に縄が『完全結び』され、吊るされている。
「まずいッ! 首が絞まっちまったら、数秒で首のナントカっつー神経が〆って気絶しちまうと聞いた! 間に合え、間に合えェ!《ザ・ラァァァァァァァァァァッッッッッシュ!!!!!》」
一瞬出し、仕舞い、精神力に鞭打って地面を蹴って加速していく。
「仲間想いかァ、結構ォ!《バルカローラ・タイダルウェイブ》、銛撃ちよッ!」
放たれる銛。4人の銛撃ちが捕鯨砲を撃ち、イライジャに銛を撃つ。
その一瞬。No.11にとっての一瞬、イライジャは、覚悟を決める。『奥の手』を使う覚悟を。イライジャは全身に意識を巡らせ、それを意識する。無意識的に発動しているそれを。有意識に持ってきて、操る!
「コォォォォォォッ……」
それは、波紋の呼吸!
イライジャは、一瞬しか出せず、その上非常に疲れるというそのスタンドの弱点を、波紋でカバーしていたのだ!
「《ザ・ラッシュ》!」
手刀が縄に繰り出され、千切れた縄は消える。億泰は咳をしながら必死に息をする。
「加速した……波を読み違えただとォ……? この私のスタンドが……この私のバルカローラがァ……!?」
「もう波はぁ、読ませないぞ!!」
そして、間髪入れずにザ・ラッシュの拳が繰り出される。No.11はガードの体制を取る……しかしその拳は、予想と反し、No.11を素通り!
「《
スタンドの拳は消え去り、イライジャ本人の拳が地面を強く殴る!
波紋は地面を伝わり……バルカローラの能力によって、波打つようになったその地面を伝わり、大きな波紋を起こす!
波に乗せ、No.11と2人は大きく離れたのだ!
「貴様も……波を使うか! イライジャ・ワッケロー!」
「あぁもう、光栄だよ、船長サマに名前を覚えられてなァッ!」
イライジャは地面を蹴り、No.11が波を起こす中懸命に向かっていく。
億泰の脳に、何かがよぎっていく。
(今ぁ……あいつ、おれを助けたよなァ……さっき出会ったばかりのおれをよぉ、自分がやられるかもしれねぇっつーのに、奥の手みてーなのまで出して……助けたよなぁ〜……)
それは謝意だろうか?
否。
「だったらよォ〜〜ッ! 今度はおれも全力で助けんのが、義理っつーもんだよなァッ!」
義理人情。
「おれ頭悪いからよぉ、てめーらが何言ってんのかぁ全くわかんねぇ……でもよォ、おれァいま、頭じゃあなくってよぉ、魂で理解したぜぇッッ! ──イライジャッ!!!!」
そして魂が通じ合う!
言語の垣根を超えてッ!
To Be Continued