アホリズム-孤独な箱-   作:悠士

2 / 10
2話 隔(かくり)

「つまり『蝕』は毎日やってきて天候次第では今日みたいに何も起こらなくて、そしてやってくる敵は毎回違って『文字』で倒すか時間切れまで生き残るしかない。ってことッスか?」

 

「そう言うことだ。だから『箱』の文字を持つお前は色々と応用が利く」

 

「つまり『いざという時はその力で俺を守れ!』と言いたいんッスよね?」

 

「うむ、理解が早くて助かる」

 

「ひ・・日向くん」

 

 入学してから二日目の放課後、日向の部屋に行き知っていることを聞きに来たら蒼也の予想を上回った。この楢鹿高校に毎日やってくる神蝕()は初日を覗き違う文字でやってくるらしく、しかもそれは必ず生き残らないといけない

 酷いときは全滅した代もあるらしい

 日向の文字は「智」()で知っていることを情報として参照出来る能力で、同室の六道 黄葉(ろくどう もみじ)は「変」だけどいまいち使い方が分からないらしい

 他にも友達が居るみたいで追々紹介してくれると

 

 取り敢えず聞きたいことは聞けたので部屋を出て自室に戻る途中見知った奴を見つけた

 

「辰巳!」

 

「ッ・・蒼也!」

 

 大げさに肩で反応した辰巳は後ろを振り向くと蒼也を確認した途端嬉しそうに名前を呼んだ、まるで地獄から生還したみたいに

 

「良かったッス、辰巳は生きてたんッスね。ごめんス昨日確かめに行けなくて・・」

 

「いや、いいよ。俺も蒼也が生きてたのが分かって良かったよ」

 

 別れてからまだ1日も経っていないのにすごく懐かしさを感じつつもさっき日向から聞いた「蝕」のことを話した

 どうやら辰巳もここまで酷い場所的だとは知らなかったようだ

 

「・・辰巳大丈夫ッスか?なんか顔色が酷いッスよ?」

 

「ッ!!何でもないよ、ただ昨日のことが・・あんまりにも・・・な?」

 

「・・確かにそうッスね」

 

 それから辰巳は部屋に戻ると言って別れたが蒼也には嫌な予感が拭いきれず不安になりながらも辰巳を見送った

 

(なーんか怪しいな)

 

 

 楢鹿高校に入学してから三日目の朝を迎えた、今日の天気は快晴だ

 

(こりゃ「蝕」がくるッスね・・)

 

 何時もなら晴れた日は嬉しいのに今となっては全く逆の感想をしか考えれなかった

 

 同室の奴はどうやら初日に死んだらしく辰巳と別れた後に政府の人が荷物の回収にやってきた

 後で5組は殆ど死んだらしく代々5組は呪われているらしい、不謹慎だが1組で良かったと心の底から思った

 蒼也は制服を着て食堂に向かった

 

 楢鹿高校の食事は高級ホテル並みに味や品数が豊富でビュッフェ形式で自由に何時でも食べられる

 適当に皿に盛ると席に座ろうと探すと辰巳を見つけたが周りは埋まっていて他を探すと日向と六道を見つけた、他にも女子が居るが大丈夫だろうと向かった

 

「はよッス、隣いいッスか?」

 

「ん?ああいいぞ」

 

「日向と六道はもう知ってるッスけど、初めまして1組の黒峰蒼也ッス。文字は『箱』ッス」

 

 向かいに座っている女子に軽く自己紹介をした

 

「あっ!私は比良坂 (ひらさか)アイラ。文字は『刀』、黒峰君と同じ1組よ」

 

 比良坂と答えた女子は軽く笑って皆でご飯を食べながら蝕や学校とも関係ない話を始めた

 ご飯も食べ終わり教室に入ると殆どの生徒が窓を眺めていた

 窓から見える空は雲ひとつなく晴れ渡っていて「蝕」がやってくるようだった

 

「いやな予感がするな」

 

「嫌な予感って何でッスか?いきなり強い『蝕』とか来るッスか?」

 

「いや、生徒の数が105人なんだよ」

 

 日向が告げた生徒数が何か意味があるのか分からず続けて聞き返す

 

「どういうことッスか?」

 

「3で割り切れるんだ」

 

 黒峰と日向がそんな話としていると丁度太陽に位置に空の島が重なると光った

『蝕』のことに関して無知な黒峰は「こんなこともあるのか!?」と思っていたが目を開けたときには現実を疑うような光景が広がっていた

 

 目を開けるとあたり一面が木で囲まれていてさっきまで学校にいたはずなのに、と戸惑っているとガサと音がしてそっちを見ると額の端に文字が書かれている生徒がいた

 

「ああよかった他にも人がいたよ、俺は朝長 出(ともなが いずる)って言って4組なんだけど君は?」

 

「俺は黒峰蒼也ッス、1組ッス」

 

「他に誰か見なかった?」

 

「見てないッスよ」

 

 これからどうしようか悩んでいると知らない声が突然聞こえてきた

 

「あれ?朝長がいるじゃん、それと・・おまえ誰だ?」

 

広末(ひろすえ)か・・こいつは1組奴のようだ、どうやらどこにいても場所は関係ないみたいだがここは何処なんだ?」

 

「多分『蝕』の中だと思うッス、ほらあそこに何か機械っぽいのあるッスよ」

 

 黒峰の指したのは上で朝長と広末も言われてみると形は六角形のような筒になっていて、それぞれの面の部分には穴が開いてそれぞれ文字が表示されていた

 

「なんだアレ?・・・・タイマーか?」

 

「え?」

 

「見てみろ、右端だけ回転してるのに左のほうは回らねぇだろ」

 

「確かにそうだな、だったらここで何かクリアしないと出れないってことだろうな・・・行くぞ」

 

 そう言って朝長の後に着いて行くと龍の彫刻が描かれている扉の前に着いた

 

「最初に目をあけると近くにあった、1人でも良かったんだが情報が無いんじゃ迂闊に手は出せないからな」

 

 薄い茶髪の広末が起きたときの事を言った、3人は扉を開けようと近づくと突然声が聞こえた

 

『我は「龍」・・汝らに試練を与える者なり』

 

「うわッ!?龍が喋ったッス!」

 

「・・試練」

 

「・・・・」

 

 黒峰は驚き朝長は顔を険しくして反応したが広末だけ何の反応のないままだった

 

『この扉の鍵は我が体内にあり、それを見ん事手中に収めてみせよ。「技」か「力」か・・汝らが選択し我を打破せよ!天には制限を(しめ)せり

「零」が揃いしと時蝕は終え、汝らも滅するだろう、それまでに我を打破せよーー」

 

 長い解説が終わりこれからどうしようか後ろを向くと朝長の右手は血で汚れていて、開くと古い鍵のような形をしたものが握られていた

 

「鍵ってこれだろうね・・つまらない」

 

「す・・すごいッス!いつの間に鍵を手に入れたんッスか!?」

 

「さっきだよ、龍から『盗』ったんだよ」

 

「・・へっ?どいうことッスか?」

 

「ひゅ~さっすが朝長だな、今日の蝕は一瞬で終わりじゃん」

 

 頭にまだ「?」を浮かべてる黒峰を無視して手に入れた鍵を穴に差し込んで解錠して扉を開けた

 辺りを見れば同じ扉があちこちに存在し自分達が通った扉には「合」の文字が付いている

 人はまだ誰もいないようで黒峰組が1着のようだった

 

「ありゃ~早く終わったから誰もいないな・・」

 

 広末はいつもこんな調子なのか呑気なことを漏らした

 

 それから少しして他の扉からも蝕をクリアしたものが出始め花壇の方を見ると日向と他にも2人いた

 

「日向はクリア出来たんッスね!良かったッス」

 

三十(みそ)~俺達に紹介してくれよ」

 

「わかったからいちいち茶化そうとするな!こいつは同じクラスの黒峰蒼也。それで俺の右にいるのが美濃 由利(みの よしとし)だ、因みに・・いや何でもない」

 

「なになに~三十何を言おうとしたのさ?」

 

 美濃と紹介されたやつは日向にニヤニヤしながら問い詰めていた・・いやある種の脅迫的な感じだった

 そんな2人にため息を吐いて女子は自分から名乗ってきた

 

「わたしは篠原 ノア、三十とは中学からなの。よろしくね」

 

「こっちこそよろしくッス!」

 

 美濃と篠原と自己紹介をしていたら目の前にある扉が開いて中から髪型が鏡で移したかのような対照的な二人組み、多分双子(片方はメガネをかけてる)と比良坂が出てきた

 こちらを確認すると走ってやってきた、比良坂と篠原は同室らしい

 

「無事で良かったッス」

 

「うん・・・ホント・・良かったよ」

 

 なんでか比良坂は目に涙と一緒にものすごい疲れました、とでも言いそうな表情を浮かべていた

 

「そういえば黒峰はいつ終わったんだ?」

 

「俺ッスか?1番ッス」

 

「はっ!!??1・・ちょ・・おま・・蝕には詳しくないだろ?」

 

 日向は慌てて黒峰の肩を掴み前後に揺らしながら問い詰めてきた

 

「三十-そんなに揺らしたら答えるものも答えれないぞ」

 

「あ、ああすまん・・それで何でそんなに早く終わったんだ?」

 

「それがッスね-----」

 

 目覚めてから終わるまでの知っていることを話し終えると日向が最初に口を開いた

 

「なるほどな・・まず驚いたのが黒峰が馬鹿ではなくて意外と賢いということだ」

 

「三十・・あんた何言ってるの?」

 

「いやだって語尾に『~ッス』ってつけるだろ!そういう奴は馬鹿と相場が決まってるじゃん!」

 

「失礼ッスね!!俺だって勉強は出来るッスよ!!」

 

 相場かどうかは不明だがマンガやアニメなどでは確かに語尾に「~ッス」をつけるキャラは馬鹿が多い、これは当たり前のことなのか不思議だが

 だがそれはあくまで空想の設定であり現実とは何の関係もない

 

「日向くんって時々最低なこと言うよね・・」

 

「おい!比良坂!まるで俺を悪役みたいに言うな!」

 

 とうとう比良坂にまで見放された日向は「最低なのはおまえらだーー!!」と逆ギレして叫んだのはここだけの話

 

 すると突然比良坂が扉に種類があることに気がついて日向に聞いてみると

 何も書かれていない扉は「試練中」、「合」の文字が書かれているのは試練をクリアした扉、そして真っ黒に染まった扉は「開かずの扉」

 何があったかは不明だが「開かずの扉」からは誰も出てきたことがないとされている

 それを聞いた比良坂は辺りを見回し六道を探している

 六道を探すことになったみんなは扉が出現している校庭を探し回るが一向に見つからない

 

 途中で比良坂と篠原に日向と合流した

 

「いたか!?」

 

 日向の問いに首を横に振って答えるしかなかった

 

「くそっ!早くしろよっ、もう蝕が終わるぞ!」

 

 みんなが最悪の結果を想像してしまったとき比良坂の後ろにある「開かずの扉」が光だした

 

「ん・・・何だ!?」

 

「!?」

 

「『開かずの扉』から光が-----」

 

 ガァァン

 

 乱暴に扉を蹴破ったのは長身痩躯の黒髪の男で肩には死んでいるのか生徒を担いで扉を通った

 それだけならまだかっこいい登場で済んだかもしれないが

 問題なのは2つ

 1つは「開かずの扉」から生徒が出てきたこと

 もう1つは後ろに転がっている肉塊・・恐らく「龍」なんだろうけど何をどうしたらそうなるのか疑問だ、まるで破壊の限りを尽くした無残な姿となっていた

 

 男はそのまま歩き出した

 

「・・なんスかあの人?」

 

「六道君・・・」

 

「えっ・・?」

 

 比良坂が「開かずの扉」から出てきた男を「六道君」と言った、蝕の前とまるで別人で文字はなんなのか分からなかった

 

 扉がすぅっと少しずつ透けてきてやっと今日の蝕が終わった

 

 同室のはずの日向でさえも顔が驚いていてますます分からなくなった

 男は肩に担いでた男を下ろすと近寄ってくる比良坂に返事をした

 

「六道くんっ」

 

「やっ、アイラちゃん」

 

「あの・・・大丈夫?・・」

 

「うん、大丈夫だよ」

 

「この人・・・」

 

 比良坂が見る先には頭を金髪で染めたいかにも不良ですって感じの男が死んでいた

 

「あそこに置き去りするのもかわいそうかなぁって」

 

「・・・そっか、あの・・六道くん・・・」

 

 比良坂が声をかけようとしたら男は姿が薄れると次には黒峰や日向が知っている六道になった、いや戻ったと言ったほうが正しいのかもしれない

 

「・・・・・・アイラちゃん・・」

 

 意識を取り戻した六道は抱えられている比良坂の姿を確認する

 

「良かった無事で」

 

 

 

「あれだよ本物の六道は」

 

「えっ、あっ、そうなの?どっちにしろすごい能力の持ってんのね、あんたの友達」

 

 驚くのは当然だ、見れば平凡そうな少年が「開かずの扉」を開けて出てきたのだから

 

「・・・・・」

 

 

 

 

 そしてこれが日課になるのかと憂鬱になりそうな時間、政府職員がやってきて死んだとされるこの場にいない生徒と死体の回収

 

 不幸中の幸いなのか死体は謎の男になっていた六道が運んできた男子生徒だけで入学式のような凄惨な光景を見ることは無かった

 職員が死亡を確認して死体を運ぼうとしたとき死体袋が急に動き出した

 

「・・・・!?・・なんだ・・?」

 

 何があったんだ?と黒峰たちは見ているとホラー映画みたいに死体袋から血で汚れた手が飛び出した

 

「うわわぁああぁぁ!?なんスか!?なんスか!?」

 

 いきなりのことでパニックを起しそのまま見ていると

 

「あーーーーっ!!!だからちゃんと生きてんじゃねぇかよ、オレはよぉっ!!!なんっっべん袋に詰め込んだら気が済むんだぁぁっ!!!」

 

「ぞ・・・ゾンビだーーーーーーーー!!!」

 

「誰がゾンビじゃこらぁぁぁぁ!!!」

 

 咄嗟に「箱」で生き返った男子生徒を囲ってしまい日向に「アレ敵!?敵!?蝕!?蝕!?」と聞いてしまった

 あまりにも非現実過ぎて脳の回路がショートしてしまい答えてくれなかった

 ちなみに職員は口を開いて気を失っている

 

 

 何とか落ち着いた黒峰たちは何で生き返ったのか聞いてみると右足の脛を見せてくれた、腹を血で汚した男のスネ毛を見るとかシュールな光景だ

 正直男の足を見ても欲情しないのにと思ってみたら文字が書かれている。すごい変なとこに現れるなぁと思った、黒峰も額の真ん中に現れるし、毎度鏡を見ると恥ずかしいから何とかしたかった

 

「すね毛・・・」

 

 六道が真っ先に口を開いて言った言葉だ

 

「文字を見ろ!!!」

 

「男の足を見ても俺欲情しないぞ・・・」

 

「ふざけてんのかてめぇらはっ!!!」

 

「『蘇』・・・蘇る・・・生き返る能力なんだ・・・!!!」

 

 日向と黒峰はふざけているなか比良坂は文字を見た

 

「あぁ・・・いや・・・なんつーかさ・・ここ危ねぇ所とは聞いてたし・・・・死にたくねぇなーって・・・・・・・・そんでまぁ」

 

 金髪の男子生徒袴田 進(はかまだ しん)は見た目とは裏腹に意外と小心者のようだ

 答えてる間声が小さかった

 

「そうだねっ、うんっ、ぼくそれわかるよ!!!」

 

 六道は親指を立てて「あ、この人自分と同類なんだ・・・!!!」と勝手に共感を覚える輩あり

 

「日向です」

 

 袴田の前にセールスマンよろしく、にこやかな顔で手を差し出して握手を求めてきた、また「こいつ今後役に立つかも」・・・と利用価値を見定める輩あり・・・

 

「よろしくね」

 

「・・・・あ?」

 

 日向のいつ必要になるか分からない戦力確保に黒峰は頬を引きつらせた

 

(最低ーだアイツ・・・絶対袴田をろくな事にしか使わねえぞ、アレ)




語尾に「ッス」をつけての会話は難しいよ(泣

でも書いてて楽しいからいいや!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。