アホリズム-孤独な箱-   作:悠士

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4話 水(みず)

「いただきまーす」

 

 今日も今日とて憂鬱であったが唯一の楽しみと言っても過言ではない、美味すぎる食事を堪能していると六道たちがやってきた

 

「座っていい?」

 

「いいッスよ」

 

 目の前に六道、その隣に比良坂で黒峰の隣に日向が座った、食べている途中で六道が周りの視線が自分に向けられてると言った

 

「気のせいじゃねぇよ」

 

「やっぱり龍の事で気になってるんじゃないかな!!!すごかったんだよ六道くん!!!」

 

「えっ・・へぇ?」

 

「何も覚えてないんッスか?」

 

「うん・・・入学式のときもだけど気がついたらいつの間にか蝕は終わってたんだ・・・・なんでだろ?」

 

(・・・・しかし・・周りの反応は至って当然だ、比良坂が言ってたとおりあれは六道じゃない全くの別人だ・・・!!!しかも不可能とされた扉を脱出したんだ、こいつ普通じゃない)

 

「な・・・なんで日向くんまでそんな目でぼくを見るの・・・?」

 

 無言で見つめてくる日向に六道は若干引きはじめた

 

「こんにちはっ!!!はじめましてっ!!!君、六道くんでしょ!?」

 

「あ・・う、うん」

 

「ぼくルディ!!!よろしくっ、君みたいに強そうな人がいてくれると心強いよ!!!」

 

 早速というべきなのか六道に気に入ってもらっていざというときは助けてもらおうと近寄ってくる輩が現れ始めた

 

「あっ、朝長じゃないっすか!」

 

「ん?・・ああ龍のときの!!・・えーと黒峰・・だったかな?」

 

「知り合いか?」

 

「龍の蝕のとき一緒になったんッスよ!ほら話したじゃないッスか!!一瞬で龍から鍵を手に入れた奴が居たって!!」

 

 あの時は本当にすごかったと、何の文字を使ったのか分からないが手には扉の握られていた

 

「ああ!!・・おまえがそうなんだ」

 

「そんなすごい事じゃないよ、自分の文字を使って手に入れたに過ぎないから」

 

 ルディや青島が六道に色々聞いてくるが日向が適当にあしらったおかげであまり聞かれる事はなくなった

 

 食堂に流れてるニュース番組がスポーツ情報からお天気コーナーに変わるとみんな一斉にテレビのほうを向いた

 

「くっだんね・・・」

 

「『天気』『天気』ってバッカじゃない?」

 

「行こうぜ」

 

 そんなことを言って4組は食堂を去った

 

「・・・辰巳・・・?」

 

 辰巳とはそんなに話した事はないがさっきに物言いに少し違和感があった

 何かに追い詰められている感じがする、蝕とは別の「何か」に

 

 

 翌日また蝕がやってきた

 だが何かまた変な蝕だった

 黒い水みたいなのが波紋を繰り返しながら学校の上にまでやってきた

 

「日向なんスかあれは!!?あれも蝕なんスか!?」

 

 黒峰は日向に問いかけたが六道と比良坂は黙って見つめていた

 

「知らん、終わり」

 

 単純明快に簡潔にまとめて言い終えた

 

「え!?知らんてどういうことッスか!!?ねぇ!!」

 

「だからな!?オレは万能じゃねぇんだよ!!!今までに出てきた奴しかわかんないの!!!」

 

「じゃあ・・・データなし!?」

 

「昨日も今日も日向は無能じゃないッスか!!!何のためにいるんスか!?役立たず!!無能!!」

 

「ああ!!?てめぇちょっと表に出ろや!!」

 

 日向と言い争っていた瞬間空から何かがやってきて地面に突き刺さった

 それはカニの鋏みたいな形をしていて中央には目があり、紐のような部分は自転車のチェーンのような形になっていてそれは空に繋がったいた

 

「みんなオレに集まるッス!!!」

 

「おい美濃、ノア!六道に比良坂も黒峰のところに集まれ!!」

 

 日向の合図で六道、日向、比良坂、美濃、篠原が集まりそれを確認すると黒峰は能力を発動した

 

 一辺がおよそ5mの薄い青色の「防御」用の箱を作り黒峰たちを囲った

 

「取り合えずこれで助かるか」

 

 日向が安堵したように言うが黒峰にはそんな余裕はなかった

 

「・・ッ!・・・そんなわけない・・ッス・・こいつら以外と強いッス・・・ッ!耐えるので精一杯ッス!」

 

 黒峰が言うように鋏の蝕は箱を壊そうと何度も何度もぶつかっては離れ、ぶつかっては離れてを繰り返してる

 発動者の黒峰だからこそ分かる「このままじゃいつか壊れる」と、これからどうしようかと悩んでいると何かが壊れる音が聞こえた、まるでガラスにひびがはいったような音が、それは前を見れば箱に亀裂があった

 

「お・・おい・・・やばいぞこれ、黒峰何とかなんねぇのか?」

 

「無理・・・ッ!これ以上は持たないッス・・!」

 

 それが合図となったのかガラスが砕ける音ともに箱が破片を空中に散らしながら壊れた

 文字はイメージでいくらでも強くなれるし応用も効くことが出来るが、「防御」用の箱は薄い青色でそこから黒峰は「硬いガラス窓」の様にイメージしている為攻撃を受け続ければいつかは壊れる

 

「また来る!!!わっ、どうしよう・・・っわ・・」

 

 比良坂が攻撃をかわし続けている六道の元に走って刀で鋏を払った

 

「下がってて!!!」

 

「アイラちゃん」

 

 それからも六道は避け比良坂は自身と六道に飛んでくる鋏を刀で払い続けた

 

「ねぇ美濃!!!まだなの!?奴の弱点!!!」

 

「今・・・っとトレース中・・・」

 

「早くして!!!ちょっとへばってきた・・・」

 

 美濃の文字は「点」で相手の弱点を調べる能力

 

「・・・ねぇんだよなそれが、突けそうな弱点が・・・・・・」

 

 何度調べても今回の蝕の弱点が見つけられずただひたすらに避け続けるしかなかった

 

 黒峰は厚さ1mmくらいの箱というよりは壁のような「防御」用の箱を部分的に一瞬だけ展開して自身と日向を守っていた

 

 そんな時視界の端に映ったものに頭の中にけたたましい警告音が鳴り響いた、六道の斜め後ろから鋏がやってきているのだ

 気がついたときは既に走っていて左手を伸ばし六道を助けようとしていた

 

「六道!!!避けるッス!!!」

 

「・・え?」

 

 瞬間、目の前に鋏が通り過ぎた

 

 それと同時に見えたのは「誰かの腕」が切れて血を吹きながら空中を舞っている

 

 咄嗟に六道を見たが両腕が存在して安堵したが顔はありえないものを見てしまった表情をしていて

 何を驚いているんだと聞こうとしたら体の左側が何故か「湿った感じ」がして見てみると自分でも信じたくはなかった

 

 左腕の二の腕から先が「存在していなかったから」だ

 

 

 咄嗟にさっき舞っていた腕は自分のだと瞬時に理解した

 

「うっ・・あああぁあっぁぁっぁぁぁ!!!!!!」

 

 頭が腕が無い事を理解すると体が引き裂けそうな痛みが襲い掛かりその場に蹲った

 飛んでくる鋏が見えたが能力を発動している余裕は無くこれで死ぬのかと思ったが

 比良坂が前に出て刀で払った

 

「大丈夫!!?黒峰くん!?」

 

 黒峰の叫びに一旦離れたみんなが再び寄ってきて頭に少し余裕が出来た黒峰は再び「防御」用の箱を展開した

 

「・・くそっ!!箱を作っても一時的にしかならんぞ!!美濃!!奴の弱点は無いのか!!?何でもいい!!!」

 

 焦る日向は美濃に半ば八つ当たりともいえる口調で聞くが

 

「何度も言うけどアイツに弱点が無いんだよ!!なんどやっても見つからないんだ・・・・」

 

「ひ・・なた・・ッ!・・」

 

「黒峰!!大丈夫か!!?」

 

 切れた傷口に「防御」用の箱で無理やり止血して何とか痛みに耐えるがその顔には汗が沢山出ている

 

「あと・・・どれくらい・・・で・・終わる・・・ッスか・・・・・?」

 

「あと・・・・5分くらいだ、それまで我慢しくてくれ終わったらすぐに医務室に連れて行くから!!!」

 

 残った右腕をゆっくりを中に上げてとめると更にイメージした、3重の箱を

 2つ目3つ目と1m感覚で大きな箱を増やして3重の箱を作り上げ防御力を上げた

 

「すごい・・これでしばらくは大丈夫そうだね」

 

「箱はな・・だが蝕が終わるまでに黒峰の集中力が切れたらまた逃げ続けないといけねぇ・・・・結局俺達は黒峰頼りなんだ」

 

 黒峰は荒い息を繰り返しながら何とか蝕の終わりまで踏ん張り、時間の感覚がなくなってきた頃に蝕は消えた

 今日の蝕は何とか乗り切れたが次からは分からない

 

 みんなを守ろうと黒峰は何とか起きていたが蝕が終わると同時に遂に意識が無くなり倒れた

 次に目が覚めたときには医務室のベッドの上だった

 起き上がってこの状態じゃ授業は受けれそうに無かったから部屋に戻ろうとしたら美濃を発見した

 近くに食堂があり何か飲もうと適当にジュースを注いで座ると黒峰が意識を失ってからの事を聞いた

 

 あの後意識を失った黒峰を日向が運び医務室に運んだ

 あの蝕は「水」らしく日向は何か知っているようだったがそれ以上は何も教えてくれなかったそうだ

 

 黒峰はあの蝕が「水」と聞いて納得がいった

 確かに空に広がる波紋はそれらしかった

 

 

 

 

 

「うっ・・あああぁあっぁぁっぁぁぁ!!!!!!」

 

「!!?蒼也!!」

 

 辰巳はこれが夢だと願った、たとえこれが夢でも少し離れた先には友人が腕を切られている姿など見たくはない

 だが、これは現実で夢でもなんでもなかった

 

「辰巳くんどうしたの!?・・・・ッ!・・辰巳くんの友達?」

 

 近くにいた4組の女子、比良坂と同じ「刀」の文字を持つ大沢(おおさわ)チサトが辰巳に聞いた

 

「ああ・・入学式の日に知り合ったんだ・・・・ッ」

 

「そう・・でも私達が誰かを助けるなんてことできないわよ・・・」

 

「ッ!・・・・ああ、わかってる・・」

 

 もう一度黒峰のほうを見るとさっき見たのと同じ結界みたいのを今度は3重にして他の奴らも守っているようで安心した

 

(すまん蒼也・・・)

 

 胸の中で謝りながら辰巳は「戟」で片手で扱えるサイズのハルバードを出現させる

 大抵の人は武器系の文字は一振りしか出現しかしないのにたいし辰巳は二振り出現させている

 

 出した戟で鋏を払いながらその日の蝕をやり過ごした

 

 

 

 

 翌日の朝から部屋の外が騒がしくて目を覚ますと「蝕が来るぞ!!」と叫んでいる

 何でこんなに早くから来るんだと内心毒づきながら制服に着替えているとある事に気がついた

 ベルトは何とかできたがネクタイが結べないそれだけじゃなく文字を隠す為に頭に着けていた包帯も巻けなくてどうしようかと悩んだ末

 タンスからニット帽を被る事にした

 

 校庭に出ると既に日向たちがいて黒峰もそこに向かった

 

「ねぇ・・!?なんで今日も・・・早すぎない!?」

 

「あぁクソッ!!!ここ来てからヤな予感ばっか当たるよ・・・・また来るぞ昨日の敵・・・『水』が!!!」

 

 今日もやってきた蝕は昨日と同じ「水」、しかも空の波紋が大きくなっている

 

「文字の中には『特殊』なのがあるんだよ」

 

「特殊!?一体なんスかそれ!!?」

 

 いきなり今回の文字の説明を始めた日向

 

「『神』とか『国』とか『皇』とか・・・・それに4大元素な『火』だの『風』だの『土』だの・・・で、開校以来『水』は出てこなかったんだ

 奴らは『特殊』文字、一日やり過ごしただけじゃ終わらない、『致命傷』を負わせない限り毎日出現する、しかも日々パワーアップしてな数日中に打開できなきゃ全滅、こいつらに潰された年は何回もある

 どうする・・・!?オレの文字じゃ奴に『致命傷』は与えられねぇ、比良坂も・・・黒峰もノアもだ」

 

「じゃあ・・・どうすればいいの!?『致命傷』って何を・・」

 

「元素モンは反対の要素ぶつけりゃいいんだ・・・こいつは『水』だから『火』とか・・・『(しょう)』とか『(ねん)』『炎』とか・・・」

 

「でもオレの知り合いにも『火』関係の文字をもっている奴知らないッスよ!!」

 

「わかってる!おまえはオレと同じクラスだから持っていないってことぐらい知ってるよ!!!」

 

 打開策があるのにその肝心な人物がいない事に苛立ちをみせる日向は黒峰に八つ当たりをした

 

  そして満足に対策を練ることも出来ず再び空から鎖に繋がった鋏が飛んできて生徒を殺しまわった

 黒峰は少し工夫をして空間を「隔離」した

 

「えっ?・・・・なにこれ?・・止まってる・・・・?」

 

「黒峰何をしたんだ?」

 

 比良坂が目の前で起こったことに驚き日向が発動者の黒峰に問いかけた

 

「空間を『隔離』したんス、回りからは何も見えていないッスよ」

 

「隔離」した空間は別世界になっていてあらゆる物の干渉を一切受け付けない、当然「文字」や「蝕」も例外ではない

 外のことが分かるのは発動者である黒峰だけで他の者たちは止まった景色を見ているだけだ、外からは何も無い様に見える

 

 ぶっつけ本番で出来た事に安心して蝕が終わるまでそのままでいることにした

 

「こんな事出来るなら最初っからすればよかったじゃん」

 

「部屋にあるマンガを見て思い出したんスよ、それまでは完全に忘れてたッス」

 

 美濃の言っていることは最もだが試練である蝕が毎日来るという現実離れした出来事を前に落ち着いて行動できる奴は多くない

 黒峰もその1人で持込が許可されたマンガのタイトルを見てそのなかに「隔離」の能力を持った少年がいたのを思い出したのだ

 

 時間が経ち蝕が去ったのを知ると「隔離」を解いた

 最初に襲ってきたのは昨日よりも多くなった死体と負傷した者達、そして鉄の臭い

 

「うっ!・・っぐ!!」

 

 その惨状を見て失った左腕が急に痛み出した

 蝕の前に痛み止めは飲んだからこれは精神的なものから来ているのだとすぐに分かった

 心配する六道たちにそのこと言うと一番近かった寮へ連れて行かれた

 

 保健室にはこれから当たり前の光景になるであろう負傷者(ケガ人)で一杯の状態が、保険の先生が黒峰の容態を聞いても精神的な痛みにはどうしようもなかった

 

 部屋に戻り今日の授業を受けようとバッグを取りに向かって必要なものを取ると、寮を抜けようとしていると何故か女子寮に入っていく生徒が沢山いてなかには男子もいた

 

 その事に少し気になりながらも今日も行われる授業を受ける為教室に向かった

 

(また減ったスね・・・)

 

 教室に着いて国語の授業が始まり周りを見ると空いている机が2つほど増えたのを気付いた

 比良坂は今日の蝕で守りきったから無事で机に居なくても数に入れなかった、あと少しで終わるというときに比良坂が何故か暗い顔をしながら入ってきた

 

 休み時間になり理由を聞くと「火」の文字を持っている生徒を知っていて、その子の名前を言ってしまったから他の生徒もやってきて「()」を倒すよう頼みに行ったそうだ

 女子寮にやたらと生徒が入っていく理由が分かり、くだらない野次馬根性を発揮していたら自分も頼む(責める)側になっていたことに複雑な気持ちになった

 

 比良坂も行ったが結局は蝕の話になった途端門前払いになってしまったというわけだ

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