中間試験前の胸の鼓動
「来週から、中間試験が始まります。念の為に言っておきますが、今回も30点以下は赤点とします。各自、復習を怠らない様に。」
「フー兄・・・遂に、この日が来たんだね・・・。」
「あぁ・・・中間試験が!!」
そう。メタい発言かもしれないが、読者の中にも辛い思いをしたことがある人がいるであろうイベント・・・中間試験があと数日でやって来るのだ!!
※ ※ ※ ※
そして、休み時間。リリーは尿意を催した為トイレに行っており、五月は自らの机に向かい自習をしていた。そこに・・・。
「五月。」
風太郎から声が掛かった。
「何ですか?」
「いやー、頑張ってるなーっと思って。休み時間なのに予習をしているなんて偉い!!」
風太郎のその言葉に、五月は呆然とする。
「・・・・・・?」
「家でも自習していると聞いてるぞ。無遅刻、無欠席、忘れ物もした事が無い。同じクラスだから分かる。お前は姉妹の中で一番真面目だ!」
風太郎のその言葉に・・・
「そ、そうでしょうか。」
と、少し照れた顔を五月は見せるが・・・風太郎はここでもまた、発言を間違える。
「あぁ!ただ馬鹿なだけなんだ!!意地張って無いで、勉強会に参加してみろよ!」
その言葉に五月は頬を膨らませたかと思うと、にこやかな笑顔になり・・・
「そうですね、私一人では限界があると感じていました。この問題を教えて貰っても良いですか?」
「もちろん・・・!」
しかし、その言葉の先に続き、五月が歩を進めた先に居たのは・・・
「テイラー君。」
「え?あ、ここの問題?分かったよ。少し時間くれる?」
そうして、リリーがバックから参考書を取り出して
(ベーです。)
と、風太郎に向けてあっかんべぇをしたのだった。
(・・・うぐ。まぁ、リリーが教えてくれるんなら別に良い!次だ次!!)
※ ※ ※ ※
そうして、放課後。二乃を除く四姉妹・・・ただし、五月は休み時間の風太郎の言葉もあってか、少し離れた机でマンツーマンでリリーに勉強を教えて貰っていた。
「それじゃあ、次は物質の三態について勉強しよっか。五月。」
「はい、お願いします。」
「・・・うん、始めよう。(フー兄の
そんなとき・・・
「上杉さんっ!リリー君!問題です!今日の私は、いつもと何処が違うでしょーか?」
四葉が突然クイズを出したが・・・
「お前等、もうすぐ何があるか知ってるのか?」
風太郎は無視を決め込み、リリーは五月の授業に熱が入っているので、そもそも聞こえていないのである。
「リリー君は兎も角、上杉さんは無視!?ヒントは首から上です!」
そんな四葉を横目に、一花と三玖が出した答えは・・・
「あ、そっか。林間学校だ。」
「楽しみ。」
「林間学校・・・遂に楽しみにしていたshool event!!」
リリーはリリーで、初めての学校行事に
「合格する事が当たり前のリリーは兎も角、お前等は試験は眼中にないって訳か?頼もしいな。」
と、少量の怒気をぶつけたのだった。そんな風太郎に、タジタジになりながらも一花は・・・
「あはは、分かってるってー。」
と、苦笑いしたのだった。
「本当かよ・・・」
「リリー君と上杉さんには、難しすぎたかな~・・・。正解は「リボンの柄がいつもと違う」でした~!今、チェックがトレンドだと教えて貰いました!」
そんな能天気な様子の四葉のリボンが鷲掴みにされ・・・
「お前の答案用紙も、チェックが流行中だ。良かったな。」
と、据わった目で風太郎が圧を掛ける。
「わ~最先端!」
そんな風太郎と四葉のやり取りに、一花が笑い声を上げる。
「あははは!」
「お前らも笑ってる場合じゃねぇぞ!四葉はやる気があるだけマシな方だ!!このままでは、とてもじゃないが試験は乗り切れない!その先の林間学校なんて、夢のまた夢!!中間試験は国数英理社の五科目!これから一週間、徹底的に対策していくぞ!!」
そんな風太郎のスパルタ発言に・・・。
「え~?」
と、不満の声が上がった。
「だから三玖も、日本史以外を・・・。」
そうして、風太郎が三玖のノートを見やると・・・そこには英語の原級・比較級・最上級が羅列していた。
「三玖が、自ら苦手な英語を勉強している・・・熱でもあるのか?勉強なんていいから休め?」
「いや、いくら何でもdelicacy無さすぎだからその発言。三玖がただ単に英語にも取り組もうと思っただけでしょ?」
「リリーの言う通り、平気。少し頑張ろうと思っただけ。」
三玖のその言葉に「よーし。頑張ろー!」と、四葉が声を上げて改めて勉強会が開始したのだった。
※ ※ ※ ※
そうして、夕暮れ時の放課後・・・
「あー、疲れたー!」
「一刻も早く帰りたい・・・。」
「それより、お腹が空いちゃったよ。折角だし、皆で買い食いしない?Japanに来たらやってみたかったんだ。放課後の買い食い。」
「確かに、勉強ばかりでお腹が空きましたね。」
そう各々が話している横で、風太郎は頭を悩ませていた。
(くそ・・・。放課後だけでは時間が足りない・・・。週末も、何処まで詰められるか・・・。)
その時・・・
「ふぅ。」
「ひぃぃぃ!!」
一花が、風太郎の耳に息を吹きかけたのだ。
「うわぁ!どうしたのフー兄!?」
「アハハ、ごめんごめん。フータロー君の耳に息を吹きかけただけだから、そんなに慌てなくて良いよリリー君。それにしても、そんなに根詰めなくて良いんじゃない?中間試験で退学になる訳じゃ無いんだし、私達も頑張るからさっ。じっくり付き合ってよ。御褒美くれるんだったら、もっと頑張れるんだけどね。」
「あ、駅前のフルーツパフェが良いです!」
「
「私は抹茶パフェ。」
「よーし、じゃあ今日はみんな頑張ったし、僕の奢りだよ!!」
「え!?良いの!?」
「大丈夫だよ!自分が出した学術書とか専門書の印税で稼いでるし!!これでも10種類の学術書とかを、それぞれ5000万部は出版してるからね!!」
そんな、リリーのさり気無い衝撃発言に・・・。
「い、印税・・・。凄いですね。」
五月は少し、衝撃を受けていた。
「フー兄も早く行こう!」
「早くしないと置いてっちゃいますよ!!」
そう言って振り向く四姉妹と、弟分の笑顔は途轍もなく輝いているように、風太郎には見えていた。
※ ※ ※ ※
そうして、パフェ屋では風太郎も交えて皆でワイワイ・・・しておらず、風太郎は居なかった。
「結局、フー兄来なかったね・・・。」
「そうだねぇ・・・。リリー君、ほっぺに生クリーム付いてるよ。」
「え?本当?」
そう言うと一花は机から乗り出し、リリーのほっぺのクリームを取ってやる。
「Thank you!一花!!」
「どういたしまして。えぇと、英語では・・・you're welcomeだっけ?」
「Excellent!」
そう話していると、四葉が提案を持ちかける。
「リリー君!私にも一口くれる!?私のトロピカルマンゴー味あげるから!」
「いいよ!どうせなら皆でshareしようよ!三玖の抹茶パフェとも交換して良い?」
「良い考え・・・。いいよ。」
そうこうしていると・・・。
「お待たせしました。」
「あ、五月お帰り~・・・どうしたの?」
五月がムスッとした顔で店内に入り、そんな様子にリリーは質問を投げかけた。
「いえ、なんでもありませんよ・・・。私もあとでシェアして貰って良いですか?」
「え・・・あ、うん!(これ、絶対フー兄となんかあった奴だよね・・・。)」
その時・・・。
「あ、テイラー君。御口にチョコレート付いてますよ。」
そう言うと、五月はリリーの口元のチョコを指で
「あはは!リリー君さっきも生クリーム着けてたよ・・・・・・リリー君?」
そんなやり取りに一花が笑おうとしたが、その声は途中で途切れてしまった。何故なら・・・リリーが五月に掬ってもらった箇所を手で押さえていたからだ。・・・頬を少し赤らめながら。
「え?ちょっとリリー君?」
そんなリリーを不審に思い、一花が声を掛けた瞬間・・・。プルルルとリリーの携帯から着信音が鳴った。
「ふぇ!?で、電話!?あ!ご、ごめん!ちょっと出て来る!!」
そう言って、リリーは店を飛び出したのだった。
「テイラー君・・・どうしたんでしょうか・・・?一花は何か分かります?」
「え、あ。う、う~ん。ど、どうしたんだろうねぇ・・・(私にクリームを取って貰ったときはフリーズしなかったのに、五月ちゃんに取って貰った時は、顔を赤らめてフリーズした・・・まさかね・・・。)」
※ ※ ※ ※
そうして、リリーは店を飛び出すと携帯の通話ボタンをタップした。
「も、もしもし?」
リリーがそう声を上げると、電話口から落ち着いた声をした男性の声が響いた。
「初めまして、リリー・テイラー君の御電話で間違いないかな?」
「は、はい。僕はリリー・テイラーですが・・・ど、どちら様でしょうか?」
「・・・これは失礼。僕の名前は中野マルオ・・・中野五月の父と言えば分かるかな?」
「い、五月の!?す、すみません!挨拶するのが遅れちゃって!!」
「気にしないでくれ・・・なんでも、上杉君から聞いた話なのだが・・・僕の娘達・・・特に五月君によく勉強を教えてくれているらしいじゃないか。その事について二つ話したい事があってね。」
「は、はぁ・・・。」
「まず、一つ目だ。単刀直入に言うと、君を正式な家庭教師の二人目として任命したい。」
「せ、正式な家庭教師としてですか!?」
「あぁ。勿論、給与は君の銀行口座に振り込んでおくよ。僕のメールアドレスを口頭で伝えるから、口座番号を送って来てくれたまえ。僕のアドレスは、⚫⚫@⚫⚫⚫だ。それから二つ目の件だが・・・今先程、家庭教師に任命するといった手前だが・・・、一週間後に中間試験があるだろう。・・・そこで君の教育者としての実力を見させて貰いたい。仮に、娘達の中で一人でも赤点が出てしまった
「暁には・・・?」
次に放たれた一言は、衝撃的な物だった。
「君と上杉君には、家庭教師を辞めて貰う。・・・できるね。」
しかし、そんな言葉に・・・
「なんだ。そんなeasyな事で良いんですね。良いですよ。その条件引き受けました。」
「随分とあっさり引き受けてくれたね。自信があるという事かな?」
「んー。というか、合格するかどうかなんて考えて不安になる時間があるなら、一つでも多くの事を学んだ方が良いじゃないですか?不安に溺れるなんて、時間の無駄ですよ。」
リリーのその言葉にしばらく沈黙が続き・・・。
「良いだろう。仮に赤点が回避された暁には、君を正式な家庭教師として任命しよう。精進し
その言葉と共に、電話は途切れたのだった。
「ふぅ。兎に角、悩んでても仕方ない。頑張ろう!・・・それにしても、さっき五月にcreamを取って貰った時、少し心臓が跳ね上がった様な・・・
そして先程の胸の高鳴りに疑問視したリリーは、取り敢えずパフェを食べに店に戻ったのだった。
※ ※ ※ ※
そして、同時刻。ここはある病院の院長室。
「・・・ふぅ。リリー・テイラー君。一度生まれた頃の写真を見たが、髪色に関して言えば、恐らくは隔世遺伝*1と言えど面影は母親であるユキ譲り。だが、あのパワフルさは・・・。恐らく、デッカード譲りだろうな・・・。」
先程リリーに電話をした声と同じ声色の男が、少し苦い顔をしながら室内の壁に向かって独り言ちていた。
因みに、リリー君は自分の恋心にはまだ気付いてません。