チュンチュンと小鳥がさえずる良く晴れた日の朝。リリーの家で合流した秀才コンビは、ランニングがてら走って登校していた・・・。のだが・・・。
「ま、待て・・・。リリー・・・。ぜぇぜぇ・・・。」
「フー兄!もうちょっとで学校に到着するよ!Never give up!!」
涼しい顔でダッシュするリリーと、汗だくでへばりかけている風太郎と言う真逆の構造が出来ていた。そして数分後、学校に着いた時には・・・。
「Finish!!フー兄!お疲れ様!!やっぱり、朝の
リリーが振り向くと、全身から汗を滝の様に流した風太郎が居た。
「お、おづかれ・・・。」
「うわぁ!フー兄大丈夫!?ごめんね、無理させちゃって・・・、僕の飲みかけのsports drink
で良かったら飲む?」
「お、おう・・・。」
その時、二人の目の前に一台の車が停まった。
「おおっ。見た事も無い外国の車だ。リリーは、ああいう車のメーカー分ったりすんのか?」
「ん~・・・車にはあんまり興味が無いから、分かんないよ。」
リリーがそう言うと、風太郎は車に近づいてまじまじと見始める。
「かっけー、100万円はするだろうな・・・。」
「大体ピンキリだとは思うけどね・・・流石に
二人がそう話しているとドアが開き、そこから現れたのは・・・。
「あれ?五月?」
「テイラー君!?お、おはよう御座います。」
「あ!フータローにリリー君!!」
「おはよう御座います。」
「な、なんですか。じろじろと不躾な・・・。」
「Good morning everyone!今日も元気そうだね!」
「う、うん・・・。それじゃあ・・・!」
三玖のその言葉と共に、五つ子全員がダッシュで逃げ始める!!
「またかよ!お前らよく見ろ!俺達は手ぶらだ!害は無い!!」
そう参考書を捨てつつ、風太郎が宣言するが・・・
「騙されねーぞ。」
「リリー君が参考書を持ってるとかいうオチじゃないよね。」
「油断させて勉強教えて来るかも。」
一・二・三女からは不審な
(これは、重度の勉強嫌いみたい・・・。勉強って面白いんだけどな~。特に
リリーがそう思考している間にも、五つ子からの追撃は止まらず・・・
「自分の問題は、自分で解決します。」
「勉強は一人でもできる。」
「リリー君には悪いけど、余計なお世話って事。」
しかし、そんな自信満々な態度も風太郎の一言で一変する。
「そ、そうか・・・じゃあ、一昨日のテストの復習は当然したよな!」
風太郎のその言葉に、五つ子が答えを返す事は・・・
「・・・・・・・・・。」
無かった。そこで、風太郎とリリーがそれぞれ問題を出す。
「問一。厳島の戦いで、毛利
「
その問いに、五月が余裕そうな笑みを浮かべ振り返る・・・事は無く、怒った様な泣いた様な顔をしていた。
「Oh・・・.あ、そういえば二乃。ちょっと来て。」
「え?な、何?(も、もしかして昨日の事をまだ怒ってたり・・・。)」
「はい、これ。」
そう言って、リリーは二乃に何かを手渡す。それは・・・。
「クッキー・・・?」
「うん・・・昨日怒っちゃった御詫びに作って来たんだ・・・。物で釣るわけじゃ無いけど、また仲良くしてくれる・・・?」
「え、えぇ・・・。」
「良かったぁ!じゃあ、早く教室に向かおう!!」
そうして五つ子と二人の家庭教師は校内に入っていったのだった・・・。
※ ※ ※ ※
そして教室内。そこでは五月が頭を捻らせながら、テストの解き直しをしていた。そこへ・・・。
「五月?それってテストの解き直し?」
「テイラー君・・・えぇ、何が何でも上杉君の事を見返すつもりでいますから。」
「そっか・・・。ところで、ここの英文間違えてるよ。」
「え?」
「「私はそのテストに合格できるでしょう。」ここの例文の英訳で五月はI can pass the test.って書いてるけど、未来形と可能が組み合わさってるんだから、正しくはI will be able to pass the test.
「な、成程・・・流石は帰国子女ですね・・・。」
「そりゃあね。・・・ところで、フー兄と何があったのさ。なんか滅茶苦茶、敵対心剥き出しだったけど?」
「それが・・・・・・。」
そこで話した内容は、風太郎と五月が食堂で出会った時の事。最初は不思議そうな顔をして聞いていたリリーも、段々と顔を掌で覆い始める。
「・・・・・・そんな事が。・・・本当にフー兄がごめんね。」
「い、いえ!テイラー君が謝る事ではありませんから!!それにしても、全く不思議です!あんなにデリカシーが無い人が、今までどうやって生きてきたのかが!!あの人の事でしょうから、昔から空気が読めない発言をしてきたのでしょう!!」
「うーん。・・・どうだろう。僕が知る限りでは、やんちゃな性格でwildな感じだったけど・・・・・・。」
「やんちゃ!?あの人が!?何かの冗談でしょう!?」
「本当だよ!五月は、勇也さんにはもう会った?」
「一応・・・まだ一度しかお会いできていませんが・・・・・・。」
「そっか、・・・・・・フー兄の昔の性格はね、勇也さんを小さくしたような性格・・・・・・つまりは社交的で明るかったんだよ。」
「あの上杉君が!?・・・想像が付きません。」
「うん・・・僕は逆に、フー兄があそこまで陰気になってるとは思わなかったよ。」
リリーと五月が話していると・・・ガラガラと扉が鳴る音と共に、三玖が入って来た。
「あれ?三玖、ここは三玖のclassroomじゃないよ?」
リリーがそう言うと。
「それは分かってる・・・フータローの席は何処?」
「彼の席はあそこですが・・・。」
「分かった・・・。よし、これでオッケー。じゃあね、二人とも・・・。」
そうすると、三玖は五月が指した席に何かを入れ教室を出て行ったのだった。
「何だったんでしょう・・・?」
「さぁ・・・あ、もしかして・・・。」
その時、リリーの脳裏に過ぎったのは日本の
「日本の恋愛漫画では、love letterを靴箱や机の中に入れるらしいから・・・まさか、フー兄の事が好きになったのかな!?」
「えぇ!?三玖に限って・・・えぇ・・・。」
リリーのその言葉に、困惑する五月であった。
※ ※ ※ ※
そして、時間は進み昼休み。リリーは自販機の前で唸っていた。
「うーん。普通の御茶を注文したいけど、折角日本に来たんだから日本独自のdrinkを飲みたい・・・。matcha soda・・・見るからにゲテモノっぽいし、飲む人いるのかな・・・。」
リリーが見慣れないドリンクを眺めながら、うんうん唸っていると。
「・・・此処に居る。飲む人は。」
後ろから声が掛かった。その正体は・・・・。
「うわぁ!・・・三玖?・・・・どうしたの?何かガッカリした顔だけど。」
「別に・・・フータローの程度を知っただけ。抹茶ソーダは御勧め。きっとリリーも好きになるから・・・。」
「え・・・じゃあ、二本買おっと。・・・はい、三玖の分。」
そう言って三玖の分も購入し、手渡すと・・・
「・・・・・・ありがと。因みに鼻水は入ってないよね?」
三玖が妙な事を言いだした。
「え?鼻水?そんな物、入って無いでしょ。日本の衛生管理は世界topなんだから・・・・・・どうしたの?更にがっかりした顔して。」
「ううん。リリーも某有名大学を卒業してるのに、その程度なんだなって。」
「え?な、なんの事?」
「それは・・・。」
三玖が言葉を続けようとした瞬間。
「でさー!アハハ!!って、おわっ!!」
「キャッ!」
通りがかった生徒が、三玖にぶつかったのだ。
「三玖!?大丈夫!?」
「わ、わりぃ。大丈夫か?」
「大丈夫だけど・・・・・・廊下は皆の場所だから、気を付けて歩いてね。」
「お、おう。じゃ、じゃあな。」
「全く・・・ん?これは・・・三玖のスマホ?風林火山?」
リリーがそう呟き、落ちていたスマホを拾おうとした瞬間・・・。凄まじい勢いで、三玖がスマホをひったくる!
「リリー・・・、今の待ち受け・・・見た?」
「う、うん。えっと、確かShingen Takedaの軍旗に記された言葉だよね。漢字の四文字の並びがbeautifulで印象に残ってるんだ。・・・・Shingen・・・好きなの?」
リリーのその質問に、三玖はコクリと頷く。
「武田信玄・・・・と言うより、戦国武将が好きなの・・・。フータローにも話したけど、きっかけは四葉から借りたゲーム。野心溢れる武将たちに惹かれて、たくさん本も読んだ。でも、クラスの皆が好きな人はイケメン俳優や、美人のモデル・・・。それに比べて私は、髭のおじさん・・・変だよ。」
三玖がそう言って俯くと・・・三玖の手に一回り小さい手が重ねられた。
「え・・・?」
三玖が顔を上げると・・・真剣さと尊敬の眼差しを向けるリリーが居た。
「・・・Amazing.三玖!三玖ってJapanese history得意なの!?」
「え・・・う、うん。といっても、あくまで戦国時代だけど・・・。」
「そうなんだ!ねぇ三玖!もっと、戦国武将の魅力を教えてよ!僕全然知らないから!!Shingenも風林火山とKenshin Uesugiと
そうキラキラと目を輝かせるリリーに三玖は少したじろぎ、疑問をぶつける。
「え・・・?リリーって、アメリカの某有名大学を首席で卒業したんじゃないの?」
「したよ。でも、あくまで専攻したのはbiology・・・つまりは生物学だから、日本史は専門外なんだよね。」
「そ、そうなんだ・・・大学って複雑なんだね。」
「うん!それにしてもさ、三玖はさっき髭のおじさんが好きなのが変って言ってたけど、僕は全然そう思わないよ。」
「な、なんで?」
「だって、誰が誰を好きになろうが個人の勝手でしょ?そんなに言うなら、僕がStatesにいた頃はShingenの肖像画にそっくりの映画俳優が女の子達にキャーキャー言われてたよ?だから、三玖が自分の趣味を変って言うのは色々おかしいと思うな。」
「やっぱり、幼馴染だね。・・・フータローも同じ事を言ってくれた。・・・これ、友好の証の乾杯だね。因みにさっきの鼻水の話は、石田三成が大谷吉継の鼻水の入ったお茶を飲んだエピソードが由来・・・。・・・フータローには教えないで。」
「OK!それにしても、日本の歴史って
そう言って、三玖に自信を付けるように言うが・・・・・・。
「無理だよ・・・私にできる事は、他の姉妹にもできる。五つ子だから・・・。・・・それじゃあね、私の趣味を受け入れてくれてありがとう・・・。」
「うん!またね!三玖先生!!」
そう言って、リリーは教室に向かって走り去ったのだった。
「・・・三玖先生。立場が逆転してるよ・・・リリー。」
三玖は三玖で、そんなリリーに苦笑いしていたのだった。
その頃教室では・・・・・・
「上杉君!?何ですか、その大量の本は!!」
「三玖を見返すための資料だ!今度こそ対等に話し合う為のな!!」
机一杯に歴史関係の本を積み上げた、風太郎が燃えていたのだった。
※ ※ ※ ※
そして数日後・・・図書館では風太郎が四葉に、リリーが五月に英語の授業をしていた。
「だから、何回言ったら分かるんだ・・・。ライスはLじゃなくてR!お前、シラミ食うのか!?」
「あわわわ。」
「じゃあ五月、ここの英文を訳してみて。」
「ええっと・・・I must ride a bus.because raining today・・・.今日は雨が降っているので、バスに乗らなければ・・・なりません。でしょうか?」
「正解!」
「いや・・・ていうか、何で五月が此処に居るんだよ!お前、俺には勉強教わろうとしないくせに!!」
「テイラー君はあなたと違って、デリカシーの無い発言なんかせずに優しく指導してくれますからね。」
「ぐぬぬ・・・!!」
「もう!フー兄も五月も喧嘩しないの!・・・それにしても、四葉。何で怒られてるのに嬉しそうなの?」
「えへへ・・・家庭教師の日でもないのに、上杉さんとリリー君が宿題見てくれるのが嬉しくって。」
「五月は兎も角だが、残りの三人もお前くらい物分かりが良いと助かるんだが・・・。」
「声は掛けたんですけどね。あ、でも残りの三人じゃなくて二人ですよ。」
「え?」
「ね、三玖。」
四葉の言葉通り、そこに居たのは三玖であった。
「・・・!来てくれたのか。」
そう言う風太郎の横を通り抜け、三玖はある本棚の目の前にしゃがみ込む。その棚は戦国武将関連が並んだブース。その内の一冊には貸出しカードが挟まれており、どの本にも風太郎の名前が書かれていた。
「フータローとリリーのせいで、考えちゃた。ほんのちょっとだけ、私にも・・・出来るんじゃないかって。自分の好きな事に自信を持って良いんだって。だから・・・責任取ってよね。」
その三玖の声に秀才コンビは・・・
「任せろ!」
「
了承したのだった。
リリー君は基礎的な日本史は大学でやったけど、生物学系の研究がメインだったので学校のテスト程度では100点取れるけど、三玖よりは全然知識が無い設定です。
アメリカの授業形態に関して、作者はガバガバです。