ブルーアーカイブのssを書いたらここに乗せます。

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先生とノアのお話です。
多分いつか成人向けとして書き直します


貴方は青く澄んでいるよう 生塩ノア

セミナーの一室。コーヒーの香りとパソコンのキーボードを叩く音。資料が1枚終わる事に吐かれるため息が静かな空間に響いている。もうかれこれ二時間は仕事を続けていただろう。そう思い出し、男はキャスター付きの椅子に背中を預けて、背を伸ばす。

 

「お疲れ様です。先生」

「人の日常をナレーションしないでもらいたいな。ノア」

「ふふっ、遊び心ですよ」

 

私の差し出したコーヒーを受け取ってメガネを外す。この人はセミナー担当の先生。この人がここに来てもう1年と7ヶ月。時間の進みは早いものですね。パソコンを覗くと、対策委員会の先生の資料作りを手伝っているようですね。こっちの仕事をこなしながら向こうの仕事の手伝いをする程の余裕がある先生は今日も多忙のようです。

 

「本日の当番に参りました。なにかお手伝いする事はありますか?」

「あぁ、あり過ぎるから困っていた所だ。手伝ってくれ」

「はい。承りました」

 

・・・・・・

 

「ふぅ…終わったな」

「はい。予定よりも20分29秒ほど早いですね」

 

予定していた三時間よりも早く終わった資料作成はアドビス対策委員会の先生へメールで送信完了。向こうの先生へ電話をすると、物凄い勢いでありがとうと十回ほど連呼されました。こちらの先生は不機嫌そうな顔をしましたが、「世話のやける後輩だ」と笑みを零したのを覚えています。

 

「悪いな。こんな時間まで」

「いえ、これぐらいなら慣れてますから」

 

外を見るとすっかり暗くなっていました。また先生の方へ視線を戻せばディスプレイを見つめる先生の顔が少し俯いているように見えました。

 

「情けない話。アイツには適わないからな」

「え?」

 

適わない?なんの事なのでしょうか。

 

「アイツは誰にでも対等に向き合える。怖らがらず、引き下がらず、だから先生としての器を買われたんだろう。羨ましいよ」

「対等に…?」

「俺は臆病者だからな。向き合いたくないやつとは縁を切るのが当たり前になってきている。誰かのために頑張ろうとか、一緒に頑張ろうとか、そういうのはもうできない人間だ」

 

なら、私は何のために…?

 

「悪いなノア。こんな話をして。こうやって本音を話せるのはお前だけなんだ」

「先生…」

「お前も。俺に利用されてるとでも思ってくれ。俺は目の前の仕事をこなす事しか出来ない。俺にはそれしかないんだ。皆がアイツに惚れるのもよく分かるよ」

 

『皆がアイツに惚れるのもよく分かる』。

その台詞もここに来て287回目。この人は自分を誰かを比べて必ず卑下する。何かしらで自分を下に見せて誰かを持ち上げようとする。そんな性格だと分かったのも本当に最近の事だった。

 

「私は先生になら利用されるのも悪い事ではないと思っていますよ」

「…ノア?」

 

私は普段通りに立ち上がってコーヒーを入れる。

 

「前に私が単独任務に出て失敗して襲われた時にユウカちゃんと助けに来てくれましたよね。その時に言った言葉覚えてますか?」

「いや…何か言ったか…俺」

「私はちゃんと覚えてますよ。『ユウカにとってもミレニアムにとってもノアという存在は必要だ。一人で抱え込まないで皆で解決しよう。俺もお前の助けになりたい』って」

「そんな長ゼリフなんで覚えてるんだお前は」

「ふふっ、私は記憶力は良い方ですから」

「良いなんてレベルじゃないだろ」

 

先生の前にコーヒーを置く。

 

「ですから、先生が私の助けになってくれるなら。私だって、先生の助けになりたいんです。どんなに小さい事でも。こうして貴方の傍に居られるなら私は嬉しいです」

「…」

 

私のセリフに先生は唖然としていました。まぁ当然ですよね。いきなりこんな事を言われれば誰だってそうはなりますよね。気まづい空気の中先生はコーヒーを含みました。

 

「なんだ、急に告白みたいなこと言って」

「私は、そのつもりでしたが?」

「ブッ!」

 

あら、コーヒーを吹き出しましたね。初めて見ました。この人もこんなふうに漫画のようなリアクションが出来るんですね。

 

「っオマエ、さっきの話聞いてたか?俺は───っ」

「ですから、それでも構わないと言ったんです。信用出来ませんか?本音を話してくれる間柄なのに?」

「っ……俺は…」

 

意地っ張りなその態度が気に食わないので、私は面と向かって先生を見つめました。正面から見る先生の顔。まだ、指で数える程度しか見た事ないその顔は意外と子供のような顔になっていました。こうして見ると案外可愛い顔をしているのですね。先生。

 

「どうすれば信用してくれますか?離彰先生?」

「っお前な…」

 

名前を呼ぶと少し動揺する。これも記憶済み。そしてそのリアクションも372回目。時々呼ぶと振り向いてくれるからつい呼んでしまうのですよ。

 

「言葉でダメなら行動で示しますが?」

「生徒に手を出す大人にはなりたくない」

「では、合意の上と言うことで」

「話を聞───っ」

 

小煩い口を塞いでみれば、珈琲の苦味と男性の苦味。私にとっても初めてで、さっきまで話していた声が消えて、世界が止まったように思える時間。時間にして五秒にも見てないハズなのに、私にとってはとても長い時間に感じられました。

 

「これで、信用してくれます?」

「お前、こんな事誰にでもやるのか?」

「まさか、先生だけですよ。しかも今は二人きりだから舞い上がっているのかも知れませんね」

 

少し恥ずかしくなったのか先生は目を合わせようとしなくなりました。こういう時は随分と子供らしい反応になるんですね。先生。そういう俯いた表情もらしくなくて面白───

 

「………そうか」

「へ?」

 

ふわり、とお姫様抱っこで持ち上げられた私は少し荒っぽく執務室のソファに落とされました。先生の顔が影がかかってよく見えないくて、少し怖くて、自分のした事がオフザケじゃないって言われているようで。

 

「ならこっちも本気でいいって事だな」

「え…ぁ…」

 

違う。何かが違う。私が思っていた展開になっているはずではあるのですが、雰囲気が違う。

まずいまずいまずい。早く先生から逃げないと。

何をされるか分からない。今の先生は怖い。

ゆっくり近づいてくる手が怖い。

どこを触られる?

何をされる?

振り解けるはずなのに怖くて力が入らない。

何も抵抗出来ないと悟った私は深く目を閉じ事しかできませんでした。

 

「っ───!」

 

しかし、何も起きません。どこも触られないし、服を脱がされるような感覚もありません。恐る恐る目を開くと、先生は呆れたような顔をしてこちらを見つめていました。

 

「ほら見ろ。怖がってるだろうが」

「え?」

「自分からしておいて、される覚悟がないなら、こういうことを安易にやるな。ったく」

 

ソファから立ち上がりチェスター付きの椅子に座る先生の背中はいつも通りの先生の背中でした。

 

「もう遅いから帰れ。今日なかったことにして置いてやるから」

 

嗚呼。貴方はこうして誰かと失敗してしまったのでしょうか。だから、いつも他の皆とも一歩間合いを開けて接している。だから、アドビス対策委員会の先生には適わないと言っていたのですね。自分を卑下するのも、こうして私達を思っての事、その代わりに自分の気持ちを抑えている。そうですね。だから私は貴方を楽にしてあげたいと思ってしまったのですね。だから貴方の近くにいたいと、貴方の事を考えて好きになってしまった。この世界で青く澄んでいるような貴方を。

 

「先生…」

 

もうこの気持ちは抑えが聞かないのです。例え怖いことをされたとしても、先生が私に近づいてきてくれたことが嬉しいという気持ちが勝ってしまいました。

その背中に寄り添って、私の気持ちが紅潮して、

 

「続き…しないんですか?」

「……」

 

背中から抱きついて、ずるい言い方だと思います。でも、今の私にはこうしか聞けませんでした。だって、私は貴方の口から聞きたいのですから。

 

「いいんだな?」

 

振り向いた先生の顔は本当に大人の顔で、でも何処か情熱的で、子供っぽくて、瞳に熱が宿っていて、見つめられるだけで体が溶けそうな感覚に陥りました。

 

「ぁ…」

 

顎を指ですくわれて、溶けて絡み合うようなキスのお返しをされた私はきっと今までにないぐらい乱れていたことでしょう。

 

・・・・・・

 

「ん……」

 

ミレニアムの仮眠室で目が覚めた私は隣で寝ていたはずの先生が見当たらない事に気が付きました。まだ暖かい。さっきまでいたのでしょうか。とりあえず服を着て、先生の執務室へ向かいました。

 

「おはようございます」

 

執務室へ入ると先生がコーヒーを飲みながら窓を眺めていました。こちらへ気づくなり、振り向いてくれる先生の顔はいつも通りの顔で。

 

「あぁ、おはようノア。体大丈夫か?」

「はい。なんとも…」

「そうか。なんか飲むか?」

「え…あ、じゃぁ同じものを」

「わかった」

 

本当にいつも通りの先生。昨日はあんなに私を掻き乱していたのに、私の反応を見て楽しんでいたのに、そんな様子は何一つ見て取れません。

 

「ほら」

「ありがとうございます…。あの、先生?」

「なんだ」

「昨日の事…覚えてます?」

「なんで、アレを忘れると思ってるんだお前は」

「だって…あんまりにも普段通りなので…」

「風紀を乱さないように何も無かったように振舞ってるんだよ」

「そうなんですか…」

 

誰もいない2人きりの朝。なんだか少し特別に感じるこの時間は前にもあった。あの時は雨が降っていて、先生は私に会いに来てくれた。その時に確か窓に書いた文章があった。

『いつかお返事聞かせてくださいね』

私はそう言った。その時の先生の顔は困り顔だった。でも、今はどうなんでしょう。私を愛でて、愛してくれた、先生はどんな気持ちなのでしょうか。隣でコーヒーを飲んで身を預けている私をなんともなしに受け入れてくれている貴方の答えを聞きたいのです。

 

「先生」

「今度はなんだ」

「あの時の返答。聞かせていただけますか?」

「あの時…?」

 

そう言って私は先生から一歩間合いをあけました。

 

qui aimes-tu le mieux, homme énigmatique, dis ?(謎めいた人。貴方は誰を一番に愛しますか?)

 

それを聞くと先生は少し驚いたような顔をして、ふっ、と微笑んで答えてくれました。

 

「そんなの、決まってる。俺は───」

 

その返答を聞いてつい頬が緩んてしまったことを私はずっと覚えています。

 

「その言葉。私は忘れませんからね」

 




今回の先生。
担当区域 ミレニアム
『弓樋木 離彰』(ゆみひき りしょう)(28)
身長 180

物静かで仕事をバリバリこなすタイプの先生。
生徒にはあまり深入りはせず、最低限のマナーを通すタイプ。でも、頼られる事の方が多いので最近は振り回されることもしばしば。アドビス対策委員会の先生とゲヘナの風紀委員の先生の先輩。ノアの事は実はなんとも思っていなかった。ただ単に接している時間が多いから本音を話しても大丈夫だと思っていた。

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