──そして、当日。
インナーに白いTシャツ、上から羽織るのはリバーシブルカーディガン、ショルダーバッグを背負って……多分、ある程度お洒落には見えるはず。
そう信じて、約束の時間の1時間前には現地に着けるように家を出ようとする。
「……大丈夫だろうな」
誰に届けるわけでもない、ただの独り言。
今更ながら、本当にこの服装でダサくないのかと不安になってしまう。
「……うん、大丈夫。きっと大丈夫。深呼吸深呼吸……やっぱもう一回選び直」
「よし、行くぞ……」
気分はまるで決戦へと赴く兵隊。
多分今の俺の顔は凡そデートに行く奴の顔ではないだろう。それほどまでに緊張しているのが自分でもわかる。
「大丈夫……怖くない、怖くない……」
自分に言い聞かせるように呟く。こういう時はそう言えばなんとかなるって、どっかの猫系プリ◯ュアが言ってた。
「さぁ……ここからは俺のステージだ!!」
自らを鼓舞し、勢いよく玄関のドアを開ける──!!
……その先では、丁度目の前を通ったのであろう莉奈がいて。
「……あの、その……偶然、だな」
絶対、今の掛け声聞かれてた。
俺はその場に崩れ落ちた。
「……いや、大丈夫だって……私も緊張してるし」
俺に優しく声を掛ける、莉奈の優しさが五臓六腑に染み渡る。そう言う莉奈はオフショルダーブラウスにロングスカートと、肩を出してるとは思えない程に清楚に見える格好をしている。
「まぁ、確かに折角のデートだし、最初っからこんな凹んでちゃ楽しめるもんも楽しめねぇよな……」
「……ん」
……やっぱり莉奈は、俺がデートと言う度に照れている。
その反応がおかしくて、可愛くて、ついいたずらをしてみたくなる。
耳元に顔を近付けると急に慌て始める莉奈。そんな莉奈に囁く。
「……今日の服、可愛いな」
……キッッッッッッッッッショ。
こんな風にしたらもっと照れてくれるんじゃないかと思ったが……いざやってみたら想像以上に絵面がキショすぎる。これは流石に莉奈もだいぶドン引いてるに違いない……そう思って顔を──今度はちょっと距離を取って──覗き込んでみるが、どうにも様子がおかしい。
「えーっと、その、莉奈……?」
「………………ゎ」
「あの……莉奈さーん……?」
「……はわわわわっwっっdsだくぁwせdrftgyふじこlp」
「莉奈さん!?!?!?」
莉奈は突然顔を真っ赤にして煙を吹き出しながら跳ね回る。
……この子、もしかして俺が想像してたより何十倍くらいかはチョロい????
恐らくこれから先訪れることになるであろう困難を思い、こめかみを抑える。
「……まぁ、一先ず、だ」
暴走機関車と化した莉奈を、止めなくては。
「……づがれ゙だ」
「……時晴が悪い」
ボロボロになった男と、そのすぐ横で不貞腐れる美少女。
何も知らない人間から見れば、俺が莉奈を怒らせてしまったかのように見えるだろう。
……いや、その通りなのだが。
多分他の人が思う理由とは違って、好きすぎるあまり起こってしまった事故というか、兎に角、俺達は別に険悪な仲でもなんでもないのである。
……とか言っても普通に俺が調子乗りすぎたせいです申し訳ございません。
「これが……遊園地……!!」
しかし、遊園地に着いた途端また機嫌が良くなる莉奈。
「莉奈は遊園地来たことないのか?」
ふと気になって莉奈に聞いてみると、「あぁ、今回が初めてなんだ!」とはしゃぎながら返してくる。
俺が初めての相手になれて嬉しいよ──そんな言葉が素で出てきかけたが、捉え方によっては割と気持ち悪いしさっきのようにまた暴走されても困るので、何も言わずに頷くだけにしておく。
「あ、おいおい!!あれがコーヒーカップってやつじゃないか!?早速乗ってみようぜ!!」
そう言うやいなや、俺の手を引っ張って走り出す莉奈。
こうしてみると、まるで小さい子供みたいだ……なんて、若干失礼な事を考えながらも莉奈に着いていった。
……のが間違いだったのかもしれない。
「おぉ、すっげぇ!!これ滅茶苦茶回るぞぉぉぉぉ!!」
「マッテリナサンボクヨッテルゥ……」
「なんだ時晴ェ!!もっと回せってェ!?そぉら!!!!」
「オピョオオオオオオオオオオオッホオオオオオ!!!!!ンアアアアアアアア!!!!」
「これがジェットコースターかぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁヤダ助けんにゃああああああああ!!!」
「もっと楽しめよ時晴ェ!!!!」
「ぬわあああああああああああんもう降りたいもおおおおおおおおおん!!!!」
「おぉぉぉ!!!結構しっかり作られてるなぁこのお化け!!!」
「リナ=サン!?気ぐるみ剥ぐのはやめて差し上げて!?!?」
「よっしゃぁ!!これ出口まで持ってけばいいんだな!!」
「違う!!莉奈、それ札やない!!中の人のポケットティッシュや!!!!」
……コーヒーカップ、ジェットコースター、お化け屋敷。
正直、どれも怖すぎて(お化け屋敷の場合は別の意味で肝を冷やしたが)既に俺はバーンアウト済み。対する莉奈はまだまだウォームアップすら終わっていなさそうに「次は何処に行こっかなァ!!!!」と次の獲物……じゃなくてアトラクションを探している。
「ちょっ、あの……ちょっとだけ休憩しないか……?流石に体力が持たない……」
多分無理だろうと思いながらも、少しだけ休憩させてくれと莉奈に頼む。そんな俺の考えとは裏腹に、意外とすんなり了承してくれる莉奈。
「確かに、そろそろ昼飯時だしな!!……ごめん、時晴。あたし、1人だけ楽しみすぎてたかも」
「急に何を言い出すのかと思えば……」
まさか、そんな事を考えていたとは。
正直俺としてはどれだけ疲れようとお化け屋敷の時のような事は非常にやめてほしいが莉奈が楽しそうにしてるだけで満足ではあったので、別に怒ってもないし嫌でもないんだが。
その旨を伝えると、「……そっか」と言いながら少し嬉しそうにする莉奈。
……本当に、乙女の心というものはわからない。
今の言葉のどこに、喜ぶ要素があったのか……気になりはするが、多分それは俺が気にすることではないと思ったから、今は黙ってレストランまで歩くことにした。
……のが間違いだったのかもしれない。
なんとなくデジャヴを感じる字面だが、今回は別に莉奈がなんかやったわけではないのだ。寧ろ、莉奈もどちらかと言うなら気まずそうに見ている側だろうか。
俺達が目を向ける先に、今この店に来たことを猛烈に後悔している原因はいた。
「
「……いや、俺達カップルじゃな」「カップル割で!!!!!」「話を聞けェ!!!」
人目も憚らず大声で騒いでいる2人……いや、1人とその側で頭を抱えている男が1人。
……間違いなく、俺達の教師、秋山俊也と暗間楓夕である。
「どうしてこうなった」
「……まあ、ここ以外空いてなかったし……仕方ないからここでいいんじゃないか?」
意外と大雑把なのか、それとももう諦めているのか、もうレストランを帰るという選択肢は莉奈の中にはないらしい。
「まあ……仕方ねぇかぁ」
俺はまた何も言わずに着いていく……
……のが間違以下省略。
なんの奇跡か、神様の悪戯か。俺達の隣のテーブルでカップル用の巨大なパフェを頬張っているのは、他でもない秋山と暗間である。
20歳後半くらいであろういかにもモテなさそうな店員は他にも空席があるというのに、態々この席に俺達を案内した。それはもう、清々しいくらい満面の笑みで。
お前、そう言うとこだぞ。
知り合いでもないのにも関わらず話しかけそうになるのをグッと堪え、諦めて注文する。
「はぁ〜い、今行きますよぉ」
……しかし、呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン!!とでも言わんばかりに登場したのはさっきの男。若干苛立ちを感じながらも取り敢えず注文を伝える。
「えーっと、このカルボナーラと……」
「あ、秋山先生!あれ、やらないんですか?」
「あれってなんだよ……」
「ほら、あーんですよ!!あーん!!」
「ブッフォッ!?おっおおおおおおお前なななななな何言ってててててててて」
「……その、もう1つドリアを──」
「ほら、そのスプーンの!!」
「…………………………あーん」
「んぐ……なんか楽しいですね、これ!!もっとやりましょ、さあ!さあ!!!!」
「あとポテトもお願いします……ッ!」
「いや、もうやらなング!?急に口にスプーン突っ込むんじゃ「これで……間接キスですね」ンアッ」
……うっっっっっっっっっるせぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!
叫びたくなる衝動を必死に抑えて、なんとか注文を言い終わる。
面白そうにしながら厨房へ入っていく店員。なんでこのレストランしか空いていなかったのか……ずっとそう思っていたが、ここまで店員の態度が悪いのであればそれも納得できる話だ。誰だってこんな性格の悪い店員がいる店になんて行きたくない。
「……あの2人、付き合ってないんだよな」
「えっマジ?」
ここまでイチャイチャしてるから、もう付き合ってるもんだと勘違いしていたが。
あの2人は……特に暗間は、かなり常識から外れた人だから仕方ないのかもしれない。
「……あそこの2人……見たことありません?」
えっっっっ。
いくらか落ち着いたのか、暗間の冷静な声が聞こえてくる。
ヤバい。
これはマジでヤバい。
こんなところでデートを滅茶苦茶になんてされたくな……
……今更か?
「いや、別に……ただの見間違いだろ」
グッジョブ秋山。
あの先生は多分全校生徒くらい余裕で覚えてるだろうから──いや、それはそれでおかしいような気もするが──俺達に気付いてないなんてことはないだろう。
それが、なんで態々知らないフリをしてくれたのか。
それはね、エー◯ール。
優しさ、だよ。
「……ちょっと気持ち悪いぞ」
気持ち悪い……キモチワルイ……キモチワルイ……
頭の中で莉奈の言葉が木霊して、俺は思わず机に突っ伏す。
それはもう、店内に響き渡るほどの大きな音を経てながら……。
「やっぱり……水上と榊原じゃないか!!偶然だなぁ!!」
「「あっっっっっっっっっっっっ」」
「……………………はぁ」
終わった。
馴れ馴れしく近寄ってくる狂じ……じゃなくて暗間と、奥で頭を抱える秋山。
正に、(俺達にとっては)修羅場が誕生してしまった瞬間であった。
……なんて、ただの平和な日常の1幕でしかなかったんだって。
俺はすぐに、思い知ることに。
否。
思い出すことになる。
最初に異変に気付いたのは、莉奈だった。
店の中に漂う異様な空気。決して、俺達が馬鹿騒ぎしてるからとか、そんなんじゃなく……一言で表すならば、濃密な、殺気。
「……本当に」
なんで、アイツ等は。
「こんなに腐ってやがんだよ……ッ」
その瞬間、後ろから何かが高速で迫ってくる。余っ程戦いに慣れていないのだろう。どこから、どのタイミングで、何を投げるのか……。
何もかも、バレバレだ。
「時晴!?後ろッ!!」
莉奈が悲鳴を上げるが、その時にはもう、
「これ、ドリア……ッ!?」
「あっぶねぇ……」
飛んできたのは、さっき頼んだドリア。
投げつけて来た主の方を睨むと、そこにいたあの性格の悪そうな店員はニヤニヤと笑いながらその体を灰色に汚れた何かの塊へと変化させる。
「……おいおいおい」
「これは流石のオレでも許せないなぁ……」
……流石の、オレ?
どこか違和感を感じるが、今はそんな事を考えている場合じゃない。
「なんでここに、醜人が……ッ!?」
──醜人。
突如現れた、新たな人類……だと思われていた、知性の欠片もない
……それはさておき。
今俺がここでやるべきは、1つ。
「ぁ……ぁぁ……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
兎に角逃げる。
レストランを飛び出し、愕然とする莉奈達を置いて、逃げ続ける。
どれだけ後ろから追われようと、ただひたすらに
「やめろぉぉぉぉぉぉぉ!!!助けてくれぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
アイツ等は性格が腐っているから、絶対に一瞬で殺すような真似はしない。
だからこそ、走り続ければいつかは助かるかもしれない。
……しかし、そんな希望を打ち砕くかのように目の前に見えてくるのは、周りをフェンスや倉庫で囲まれた行き止まり。
「ほらほらぁ〜。死んじゃいますよぉ〜?」
逃げ場所を失い、行き止まりに背をつける俺のことを嘲笑いながらやって来る、さっきまで店員だった男、
「種族付きかよ……ッ!」
というのも、醜人にも動物の種族が付いている物と、何の個性もないただの怪物のような物の2種類があって、今回の場合は前者の種族付きなのだ。種族付きは種族なしよりも元々の力が強い上に、なんらかの能力を持っていることが多いから、奴隷なんかに使うのであればよく活躍してくれる。
……のだが、強い分いくらか調子に乗りやすく、まるで自分が世界で一番強いかのように振る舞う物が後を絶たない。コイツもその内の
なんて、丁寧に解説している場合ではない。
「誰かッ!!誰か、助けてくれぇッ!!!!」
ジリジリと寄ってくる醜人の前で、ただ叫び続ける。
しかし、ここには殆ど人がいないのだろう。俺を助けに駆けつけるような奴なんて、1人もいない。
……ならば。
「誰か、助けて……なんて、こんな演技、もう必要ねぇよな」
「……ハァ?」
呆けた声を上げる醜人。
「そもそも……おかしいと思わなかったのか?普通助かりたいんだったら、治安維持隊だのなんだのに助けてもらう筈だろ?それが無理だとして、少なくとも人が少ないところには行かない筈だ」
余っ程頭が弱いらしい。未だに俺が何を言ってるか理解できないのか、「どれだけ偉そうに語ろうと、あなたはもう追い詰められてるんですよぉ?」などとほざき続ける醜人。
「ほんっとにお前等は……まともに物も考えられねぇゴミばっかだなぁ?」
「……舐めんじゃねぇぞこのクソガキがァ!!」
プライドを傷付けられたのだろう、飛びかかってくる醜人。しかし、その単調な動きを避けるのはあまりにも簡単。今度は逆に醜人が追い詰められる形になる。
「さて……立場が逆転したわけだが……まあどの道変わんねぇか」
ショルダーバッグからいつも肌身離さずに持っている物体を取り出す。下腹部に近付けると、左右の端から灰色の帯が伸び、物体はそのまま腰へと装着される。
コネクトドライバー。
帯の右側にはドス黒いリモコン、左側には3枚のメモリが付いており、バックルの左側にはリモコンスロットが付いている。
「……正直、もう思い出したくはなかったが」
リモコンを取り出し、メモリの内の1枚──憎しみが詰まったメモリをセットする。
『Confirmation……』
「お前、まさか……ッ!?」
漸く自分が誰に喧嘩を売っているのかわかったのだろう、絶対にこれ以上動かせまいと飛びかかってくる醜人。
しかし、もう遅い。
醜人の右腕が俺に触れようとした瞬間、既にリモコンはスロットの中に装着されていた。
『Connect in "
体が光に包まれ、醜人が吹き飛ばされる。
閉じた瞼の裏に浮かぶのは、漆黒のドライバーと同じく、黒が基調に構成された鎧。
複眼は紫に輝き、前腕や両脛に取り付けられたクリスタルのようで、それでいて形の整った部品はドス黒い闇に染まっている。
自分の身体が作り変えられていく感覚を感じて、目を開けると。
そこには、右腕を失い蹲る醜人と、散乱した何かの欠片。
「やっばり、おまえ゙……ッ!?」
この姿になったのは、一体何ヶ月ぶりだろうか。
ずっと、忘れていたかった。
正義のヒーローでもなんでもない、ただひたすらに悲しみだけを繰り返す兵器。
「俺は、お前達の敵──仮面ライダー……。仮面ライダー、
****
……仮面ライダー
人類が秘密裏に開発していた、対醜人・醜傀獣用の最終兵器「ライダーシステム」であり、この世で唯一人、時晴だけが変身できる仮面ライダーである。
普段から今回のように人気の少ない場所でしか戦わない為、世間一般にはあまり知られていない。
「クソッ!!テメェがブラーズだったのかッ!!」
しかし、それはあくまで人間においての話。醜人達の中では名前を知らないものなどいないほどには有名である。
……何故なら。
「殺された
「醜人なんかが友情を語ってんじゃねぇよ……!」
彼は殺し屋だったからだ。それも、醜人専門の。
今度こそは仕留めようと再び殴りかかる醜人だったが、難なく躱され、逆に腕を掴まれて組み伏せられてしまった。
「トドメは……コイツで刺すか?」
そう言いながら時晴──ブラーズはスロットからリモコンを取り出し、帯に付いていたメモリとリモコンにセットされていたメモリを交換する。
『Confirmation……』
『Connect in "BLURS" Wind Petal』
モースがリモコンをセットし直すと、各部のクリスタルが少し小さくなった形態、「仮面ライダーブラーズ ウインドペタル」へと姿が変わる。
そのままモースがリモコンを倒すと、『BLURS,Final Attack……Wind!!!』という音とともに巻き起こる旋風。
「ただの風でッ!?」
殺されるわけがない。そう言おうとした醜人は、直後にその顔を──勿論、今の姿では何も変わって見えないが──驚愕に染めることとなった。
……数秒前まで自分を組み伏せていた筈のブラーズが、自分の真下にいる。
つまり彼は今、旋風によって宙に浮かされていたのだ。
背中から翼を生やし逃げようとした醜人だが、風に呑まれた今の彼では体を動かすこともままならない。
やがて旋風は速度を増し、最初はまだ罵声を発する余裕があった醜人も叫びながら命乞いをするばかりとなる。
『Confirmation……』『Connect in "BLURS"』『BLURS,Final Attack!!』
轟音に紛れて、まるで死刑宣告のように電子音は鳴り響く。
彼が最期に見たのは、一体何だったのだろうか。
誰も知り得ない、1つの小さな問い。もしかしたら、彼自身も
旋風が止み、空中から地面へと落ちる醜人。そのまま地面へ勢いよく衝突するかに思われたが、その直前に彼の体は地面と平行に吹き飛ばされる。
……否。吹き飛ばされたのは彼の体ではなく、彼の体の破片。
地面に衝突するその瞬間に、ブラーズの回し蹴りによってその体を木っ端微塵にされたのだ。
「……これがコイツのメモリか」
そう言いながらブラーズはかつて醜人だった物──恐らく嘗ては頭だったであろう部位──の中からメモリを取り出す。目の前で死体が転がっているのにも関わらず、一切の動揺を見せずにそのまま帰ろうとする姿からは、落ち着いた印象というよりは寧ろどこか狂ったような印象を感じさせた。
ドライバーからリモコンを引き抜ぬいた後にスロットを倒し、変身を解除する時晴。
「あぁ……いや、俺は無事だ。莉奈?そっちは無事か?」
そのまま何事もなかったかのように莉奈に電話をかける時晴だったが、彼女から何を聞いたのか、突然焦ったように周りを見ながら小走りに去っていく。
「……ちゃんと言わないように頼んでおけばよかったか」
そんな時晴を影から見つめる、1人の男。彼はこれから起こるであろう面倒事に、静かにこめかみを抑えた。
【特別編】仮面ライダーモース コネクテッド・スパイラル
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