仮面ライダーモース   作:小淵良樹

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ターマイトのみんなが出るとほっこりしていいね
執筆:小淵良樹


ACT8-前編

「ねぇ春香ぁん、一個だけ尋ねてもいいかしらぁん?」

 

「死んでください」

 

 月明かりに照らされ、無表情でコンピュータのキーボードを叩く春香……の、後ろで踊りながらナックルを振り回す夏樹。一応仲間からの辛辣な言葉を受けて尚、彼はそのうねうねとした動きを止めようとしない。

 

「なして屋上なんかでネットサーフィンしてるんでぇ? 家族に見られないようにエッチな画像でも見て痛ァ!?!?」

 

「そんなセクハラ、他所でやったら殴られててもおかしくないですよ」

 

「ねぇ今殴ったよね??? 頭の中ダチョウなの????」

 

「そりゃ私、幹部ですし。部下の生殺与奪権くらい持ってますよ」

 

「そんな中古車販売店みたいな事聞いた覚えないんだが???? そもそも俺はお前の部下じゃないんだが?????」

 

 春香はコンピュータを畳み、立ち上がる。冷たい目で夏樹を睨み、彼女は一言、

 

「私は……貴方みたいなのが寄って来ないよう、態々屋上まで出てきたんですよ」

 

「つまりコミュ障って事かァ!!」

 

 駄目だった。

 

 よくよく考えれば、こんな言葉で傷ついてくれるほど甘い男ではなかった。春香は溜息を吐き、早く風呂に入って寝ようと足を進める。

 

「っていんや、そんな事が聞きたかったんじゃァないぜッ!!」

 

「……なんなんですか」

 

 何処かで見たことのある立ち方をしながら、独特な擬音が鳴り響きそうな様子で指を指す夏樹。苛立ちを隠そうとしない春香に、腰をくねらせながら近付いていく。

 

「貴様……見た所まだ正常な判断が出来ているようだが……何故(なにゆえ)ターマイトに加入したのであるか……説明してみよ……」

 

「マジでなんなんですか……?」

 

 春香の顔が歪んだ。数秒前までとは違う新たな感情に、口元を歪ませる。

 

「おぉん? ビビってんのかぬぅ〜ン?????」

 

 彼女はその感情の名前を知らない。否、知識では知っていても、それを体験した記憶がない。

 

「ターマイトなんて、まともな奴は入らない……。楽園が自由だなんて、信じてるのは俊也んくらいのモン……」

 

「いやなんですかそのキャラ……」

 

「質問を質問で返すなあーっ!! 疑問文には疑問文で答えろと学校で教えているのか?」

 

 ふざけた態度ではあるが、その目は笑っていない。嘘を吐いたら殺されてしまうような、そんな感覚を覚え、春香は渋々口を開く。

 

「……似てたんです、兄に」

 

「はぁん? 誰が」

 

「トップが。兄の記憶なんてもう殆ど残ってないし、多分、見た目とかも全然違うんでしょうけど……それでも。ひと目見たときからずっと、お兄ちゃんみたいだって、思ってて」

 

 ははーん、と、興味なさげに月を見上げる夏樹。その態度に若干の苛立ちを覚えながら、春香は「何が言いたいんですか」と、彼を睨みつける。

 

「春香のことだから『例え我が一生をかけても、あの素晴らしきトップに着いていくと誓ったのです!!!!』……なーんて言うと思ったけどぉ」

 

「流石にそこまで狂信的じゃないです……というか、そういう貴方はなんでターマイト(ここ)に入ったんですか。そんな大層な理由があるとも思えませんけど」

 

 言い終えて直ぐ、春香は正体不明の悪寒に襲われた。

 

 これ以上、踏み込んではいけない。これ以上、この男と関わってはいけない。理由はわからないが、彼女の中の本能が「逃げろ」と告げている。

 

「あー、俺? 俺がターマイトに入った理由、ねぇ……」

 

 それでも、夏樹から視線を外せない。

 

 今の彼の瞳を言葉で表すならば、一体何と言えばいいのだろう。死んだ魚の眼、なんて、そんな生易しいものではない。寧ろその死肉に集る蝿のような、或いは──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ****

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 轟音を響かせながら、バイラーは風を切り裂く。その上に跨る二つの影は、何処となく緊張感を漂わせていた。

 

『仮面ライダー』を増やす、唯一のチャンス。

 

 なんの脈絡もなく放たれたその言葉は、現・仮面ライダーの興味を引くのには十分だった。

 

 人類側でも醜人側でもない第三勢力である彼にとって、協力者とは喉から手が出るほど欲しい存在。しかし同時に、その協力者が敵と手を組んでいる場合もあるのだと考えると、信用できる存在というのも中々に少ない。

 

 その点において、今回の”協力者”は、確実に裏切らない人間だ……と、光咲──正確に言うならば、光咲の協力者、らしいが──に太鼓判を押されている。

 

 

 

「『ただ、例の仮面ライダーにとっては少々気に入らない存在だろうが』……とのことよ」

 

「なんだそりゃ……」

 

 轟音にかき消されながら、出せる限りの大声で時晴と光咲は会話を続ける。つい先日までバイクなど触ったこともなかったとは思えないほど、彼の運転は上達していた。

 

「それで? 今度はどんな地下室に行きゃいいんだ」

 

「あぁ、寧ろ立派な豪邸だから、見たら驚くと思うわ」

 

 光咲の案内に合わせて、時晴はバイラーのハンドルを切る。

 

 気に入らない存在──それが誰のことかはわからないが、しかし、時晴は何か、猛烈に嫌な予感を覚えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 豪邸。

 

 そう表現する他ないような、とてつもなく立派なおうち。屋根の至るところには金色の装飾が為されており、門の左右にはそれぞれよくわからない彫刻が立っている。しかし、その全てが存在感を放っているのにも関わらず、見ていて不快感を覚えさせない造形。正に匠の技だ、と、光咲は改めて嘆息する。

 

 そのおうちを前に、時晴はただあんぐりと口を開けて突っ立っていた。

 

「ほら、呆けてないで。早く行くわよ」

 

「えっ、ちょっ待っ……光咲はここ、来たことあるのか……?」

 

「勿論……と言うより、あの銃とか食料とか、ここからの支給だったんだけど……途中で察せなかった?」

 

「いや無理だって……いくらなんでもここまでの豪邸とは思わないだろ……」

 

 こんな豪邸、入ったことも、ましてや見たこともない。時晴は恐る恐ると言った様子で玄関前の階段を登る。その動きは宛らブリキ人形のようだ。限度を超えたぎこちなさに、光咲は静かに吹き出した。

 

「少し落ち着きなさいな。入る前からそんなに緊張しててどうするの」

 

 その言葉に、時晴は「でもなぁ」と文句を呟きながら従う。ぎこちなさが隠しきれないのは、やはり、彼がごく一般的な人間としての生活しかしてこなかったからだろうか。

 

「……ごめんね」

 

「え、急にどうした……?」

 

 なんでもない、と笑って、光咲は豪邸の中へと入っていく。時晴もそれに従い、小走りで光咲の後を追いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺はとんでもない所に足を踏み入れてしまったのかもしれない。時晴は心の中でとても大きな溜息を吐いた。それはもう、幸せが蜘蛛の子散らして逃げるくらいに大きいやつだ。

 

「いやマジで、ほんっとうに豪邸だな……」

 

「まあ安心して、呼び出されてる場所はもう少し庶民的だから」

 

 時晴にはもう光咲の金銭感覚が信用できない。どうせ、庶民的と言いながらも、金箔がたっぷり貼られたような部屋なのだ、と考えている。それに気付いたのか、光咲は小さく頬を膨らませてみせた。

 

「私の金銭感覚が信用できないの?」

 

「できないっすね」

 

 即答だった。

 

 口を尖らせる光咲。それをジト目で見つめる時晴。光咲は溜息を吐き、奥へと歩いていく。

 

「そんなに信用できないならまずは現物を見てもらおうじゃないの」

 

 豪邸の玄関を入るとまず、巨大な階段があり、その左右によくわからない彫刻が立っている。階段の奥には巨大な扉がある。彫刻の奥にもいくつかの扉があるが、光咲曰く、そこは一切使っていない部屋の扉、らしい。彼女は階段の最下段に手をかけると、それを上に持ち上げた。

 

「あぇ」

 

 ガコン、と音を鳴らし、何かしらの操作盤が姿を現す。光咲はそれを慣れた様子で操作し、階段を元に戻す。するとどうだろうか、巨大な扉が音を立てて開いたのだ。

 

「おょ」

 

 扉の中は個室のようになっており、その奥にはもう一つの扉があった。しかし、光咲はその扉を無視。最上段から三段目の段を持ち上げ、再び何かしらの操作盤を弄る。

 

「んぉ」

 

「変な声出してないで、早く行くわよ」

 

 趣味に刺さったのだろう、階段の下で短く奇声を上げる時晴の手を引き、光咲は個室へと飛び込む。そして、床の蓋を手早く取り外すと、その中へ飛び込んでいく。

 

 モタモタしていた所為か、いつの間にかお姫様抱っこされていた時晴は、甲高い悲鳴を上げながら暗闇へと消えていった。




マジで全然投稿してなかったんで出来悪いしそもそも完成してないけど投稿します
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