学園都市キヴォトス。
謎が多く散りばめられた世界の暗部ブラックマーケットには、分かりづらい店構えで営業をしている煙草屋があった。
店の名前は〝マニア・セメタリー〟
そこではなんでも、タバコだけでは営業が出来ないとかで傭兵行為、カジノディーラー、運び屋、死体処理となんでもする裏の顔があるとかないとか。
ぶっちゃけ趣味で作った癖の煮凝り作品なのであらすじ詐欺が横行します。
というかこの一話で終わるので良かったら他の作品とか見てってください。
こちら本作品主人公のシエンちゃんのイメージイラストです。
【挿絵表示】
学園都市キヴォトス。
何をするにしても学生達が主軸になり、何が起こるにも学生達が騒動の火中にいる学生達による学生達の都市。
そんな都市だからこそ存在する裏の顔もあった。
学生として生きていけなくなっていたり、企業間による裏の取引、あからさまな暴利で金を巻き上げる温床と楽しい事を探せば見つからないことは無い学園都市における禁足地。
ブラックマーケット。
ここでは何でも揃う。違法賭博、殺人依頼、薬物取引、酒の密造。そんないかにも悪いことから、かつてプレミアのついた非売品応募者限定超合金ロボや、滅多に出回らないぬいぐるみ、ジャンクPC、酒、タバコ、ギャンブルの提供。
ちょっと不良行為走りたい年頃の学生たちにとって明らかに面白いものも全部揃う場所。
――――――但し金さえ払えば、という前置きはあるが。
そんなマーケットの片隅、左隣に中古オモチャの店、右隣にジャンクPCのガレージハウスという不遇な立地にその店はあった。
煙草屋"マニア・セメタリー"
中に入れば、煙管やパイプがカウンターケースに置かれ、入店者の四方を囲うのはタバコ紙にフィルター、そして様々な産地と品名がなぐり書きされた値札がついた袋。それが所狭しと並んでいる。
カウンター越しに頬杖をしながら座っている店主であろう赤毛の少女は来客者が喜ばしいものではなかったようで、糞を見る目で悪態をつく。
「ちっ、珍しく客と思ったらカイザーのお遣いかよ。なんの用だ」
「ふ、そう苛つくな。これでもマトモな仕事を持ってきた」
そう言ってコート姿のロボットは茶封筒を取り出してカウンターに置く。
一瞬だけ少女は封筒に視線を移すが、即座に眼の前の人物に意識を向け直す。
「何がマトモな仕事だ。これまでのテメェ等から受けた依頼内容を振り返ってやろうか? それを聴いてから今出そうとしてる依頼を客観視してみな」
「ふむ、ならばマトモだな」
「マトモじゃねぇだろ、マトモならガキに煙草屋を運営させねぇし、企業潰しの鉄砲玉をやらせねぇ」
「だが現に君にとっては天職だろう? 我々は素質ある子供にその素質が発揮出来る環境を与えただけに過ぎない」
「だから言ってんだよ、テメェら"大人はマトモじゃねぇ"ってな」
軽口の応酬を繰り返し、苦いものを食べるかのように封筒の中身を見る。
「やっぱクソみてぇな仕事じゃねぇか」
「初めからゴミの給食と言われては喉を通すどころか口に入れることも出来ないだろう? 大人らしく子供に配慮をされてもらったよ」
「随分とお優しいことで。どうせなら泥まみれの残飯じゃなく、パンくらいは恵んでほしいもんだ。なんでわざわざ母校に出張販売しなきゃなんねぇんだよ」
「おや、キミはまだ学生ではなかったかね?」
「ほぼクビ切られてるっつーの、座るやつがいねぇから椅子だけが残ってるだけだ」
「席があるだけマシだろう、このブラックマーケットでは席を喪って苦しんでいる元学生が大勢いるのだから。何ならその席を売ってくれても構わんのだぞ? まぁ宜しく頼むよ、玉響シエン君」
嫌味を最後に言い残してロボットは店を出ていった。
その背中を見ながらシエンと呼ばれた少女は懐から紙巻きタバコを取り出して口にする。
ライターに火を点け、タバコに灯す。様々な思考が巡る中、煙を吸って吐いて、灰を灰皿に落とす頃には店じまいの支度を始めた。
「面倒くせぇなぁ」
そう言いながら居住スペースに置かれた衣類棚から防弾用特殊繊維構造によって本来の衣類より高い防弾耐刃性能に優れたパーカーを取り出す。
制服に袖を通さなくなってからいつの間にかお決まりの戦装束になってしまったその黒い上着を羽織り、伸びた朱色の髪を黒い結紐で結び、動きやすいからという理由で昔から続けているサイドテールにする。
「……よし」
作業用ベルトを改造して作った愛銃の為のガンベルトをパーカーを絞るように締め、特殊な形状をしたショットガン。ストライカー12と呼ばれる、その愛銃『アン・ブレイン』を取り付け準備を整えた。
「噂に聞く煙草屋だ! ソイツは近距離で対処せずに遠距離で包囲してヒナ隊長が来る時間を稼げ!!」
「随分と丁寧な対策だこって。まぁ、てめぇ等程度の戦闘役員じゃ……」
包囲の一方へとその身を屈めながら飛び込む。
防弾パーカーに銃弾を掠めながら、壁へと追い詰めた風紀委員の頭に愛銃『アン・ブレイン』を向け重い引き金を引いた。
――ドゴォンッ゙!!!!
凡そ銃声とは思えない程の音を鳴らし、その一撃は廃墟と化していた集合住宅に砲撃を受けたかと思える程の風穴を開ける。
「……まぁ相手にならねぇわな」
パーカーのポケットから取り出した巻煙草を口に咥え、愛銃を肩に担ぐようにして包囲網に新たに出来た出口に歩き出す。
「なっ、待て!!」
包囲網が無駄と察したのか風紀委員の一人が飛び出し、それにつられてか4人が後を追いかけそれぞれがシエンに銃を向ける。
「マニュアル外の緊急時の対応としちゃ満点だが……」
煙草を取り出して以降ポケットに入れたままの左手を抜き出すと同時に弾薬が宙に舞う。
9mmパラベラム弾。
コンビニの売り上げ上位に食込むであろうそれに風紀委員の5人は一瞬ではあるが気を取られた。
その一瞬を使い、デコピンの応用で人差し指を使って器用に雷管を弾く。
キヴォトス人特有のパワーで弾かれた弾薬は本来の銃と同じように火薬に火を灯し、薬莢から弾丸を飛び出させ、前へと進む。
一つを弾いて、親指をスライドさせ中指で次弾を弾く。
薬指そして小指と弾いて発射された四発の弾丸は追いかけていた4人を沈める。
「くそっ……」
「格上に対してのマニュアルの読み込みが足りねぇな。時間を稼ぎながら包囲網を継続、幹部への引継ぎを意地でも行えって書いた筈だ」
そして最も早く判断した銀髪の風紀委員をアン・ブレインに込められていたスラッグ弾が腹を撃ち抜く。
「……耐えたか」
神秘はそれ程込もってはいないものの、雑兵とも言えるゲヘナ風紀委員会の一年生でありながら気絶で留まったことに感心を持ちながら銀髪少女の上に座る。
ポケットに入れていた弾薬を一つ取り出して、銃弾を抜く。
弾薬筒内部の火薬を調整し、タバコを添えて火を点ける。
シエンにとって一番好みなタバコの火入れ方法であるこれは現住居及び店では一切出来ず、ちょっとしたストレスだった。
「相変わらず趣味が悪いわね」
土埃が舞うなか、白髪の少女がシエンのタバコを咎めるように言う。
「……重役出勤が出来る程度には息の抜き方を覚えたか?」
「えぇ、兵站部と作戦部の大隊長を兼任してた不良生徒を復学させたらバカンスに行かせて貰うわ」
「やってみろ、仕事漬けでフラフラな隊長様じゃあ地面に私を寝かせらんねぇよ」
軽口の叩きながらシエンは白煙を吐き出して少女を改めて見る。
ゲヘナ学園風紀委員会元情報部現幹部役員2年空崎ヒナ、玉響シエンの元同僚である。
「捕まるのは前提として……まずはイオリを返してもらう」
「今のお前じゃ捕まえらんねぇよ、ヒナ!!」
ヒナが構え撃つ一連の動作に入る前に椅子にしていた少女を投げ飛ばす。
「っ……!!」
一瞬視線が投げられた少女にずれ、シエンがヒナの視界から消える。そしてヒナの視界がブレる。
脇腹にシエンの横蹴りが突き刺さり、廃墟の壁を崩しながら飛んでいく。
“レッドへリング”
ミスディレクションとも言われる人の視線や気を誘導し注意をそらす手法。手品やミステリー作品で多用される手法であり、玉響シエンがかつて新入生でありながら風紀委員幹部としてのし上がるに至った技術である。
ガサツで大雑把なように見えるシエンの第一印象から繰り出されるそれは、相対した敵の目の前で煙のように消え、意識を刈り取る。
「相変わらずやりずらい……」
「そっちも相変わらず暴力のごり押しか、それじゃいつか届かねぇ時が来るって言ったぞ」
埋もれた瓦礫をどかして立ち上がるヒナを見ながらタバコの煙を吸ってポケットから弾薬を取りだす。
12.7x99mm弾。50口径の狙撃銃に用いられるそれを指で弾く。
パラベラム弾の時同様、雷管を弾かれた実包から弾丸が射出されヒナの額へと向かう。
「そんで相変わらずタフだな、オイ」
弾丸がヒナに当たるも、衝撃で一瞬目を細めただけでダメージになっていない。
「逃げずに、まっすぐ来てくれるなら当てやすいからありがたいわ。シエン」
シエンは一挙手一投足を戦闘においてどんな印象を常に考えられながら動く。
故にこその煙のように消えるミスディレクションが出来る。
しかし、一芸に秀でているからシエンが幹部になれた訳ではない。
「忘れてるのかよ」
ヒナがデストロイヤーを構え、引金を引く。
重機関銃という大口径の弾を大量に打ち出すという火力に特化したヒナの愛銃は、シエンに向け報復とでも言わんばかりの弾丸を吐き出す。
「予測と対策。常に頭ン中で組み立てりゃ3年にも勝てるって実戦で覚えなかったか?」
デストロイヤーから放たれ続ける凶弾を空に飛んで避けながら『アン・ブレイン』にリロードしていた12発。
そのカートリッジを全て使い潰す。
重機関銃による連射で体制を変えるのも避けることもできず、全弾ヒット。衝撃で一瞬くらいは気絶するだろう。
そんなふうにシエンは考えながら本命である蹴りを入れるべく、上空からヒナの懐に潜りこもうとする。
が、カートリッジから炸裂した12発のスラッグ弾から生じた塵埃を割るように黒と紫色のヘイローが姿を出す。
(やべぇ、コレじゃ狩られるッ……!!)
直後、鈍器であるかのようにデストロイヤーが振られる。
「あの時とは逆の結果になったわね」
「……活きが良い一年が入ってきたな」
コンクリート舗装が剥がれ、ひび割れた地面に大の字で倒れ込んでいたシエンは、咥えていたタバコから煙を吸込み、一息つくように煙を口から洩らした、
「えぇ、すぐに飛び出していくのがあの子の良いところで、そして今後の課題ね。……それで? 世間話をしに来たわけじゃ無いんでしょ。目的は?」
「ゲヘナ自治区における営業許可証の発行だ」
「……そういうこと? はぁ……分かった、書類を作っておくから一週間後に取りに来て」
「悪いな」
「なら、何かある度にいちいちウチで暴れるのを辞めて」
「……悪いな」
「次また来た時は牢屋にぶち込むから」
「そりゃ参った、最近は喫煙者に厳しいから辛えや」
巻きタバコの火を消して最後の煙をゆっくりと吐き出す。
そして、赤髪の少女はそっと起き上がった。
――――ゲヘナ学園二年・風紀委員会旧兵站・作戦兼任幹部
〝現学籍凍結幹部〟
3ヶ月程前にブラックマーケットの一角に現れた煙草屋を営む不良である。
ブルアカ二次創作シリーズ第二弾です。
半年前に友人に語った概念を書いたものになります。
ノゲアカや逃げ回ると違い、これはほぼこれで終わりです。
暇があったら続きを書きます。