お題「スペード中心で弟子」「みんなが勝手に集まってスカイジョーカー危機一髪ならぬツインサンダーシャーク危機一髪」
「……コレはなんだい」
リビングに入ってきたスペードは眉をひそめる。
「あ、お邪魔してるっス!」
「やっほー」
「こんにちは、スペード」
黙々とケーキを食べていたジョーカーはフォークを振り回しながら口を開く。
「なにって、お前だっていつもオレん所に意味もなく来てるだろ」
「すみません。ジョーカーさんが急に『ケーキが食べたいから行くぞ』とか言って」
「わたしはダークアイに会いに来ただけだし」
「ボクはクイーンの付き添いです」
ヒマでしたから、とロコは付け加える。
ソファーは人で埋まり、普段は静まり返っているリビングが賑やかになっていた。
やれやれ、とスペードもソファーに座ると紅茶とケーキが置かれる。今日はイチゴをたっぷり使ったレアチーズケーキだ。
「さあて、と」
ジョーカーが立ち上がったのを横目で見る。
「あまり船内をかき回さないでくれよ」
「そう言われて大人しく座っているわけがあるかよ」
奥の扉を抜けようとするがドアは開かない。取っ手はなく自動ドアだったはずだが、前に立っても身体を動かしてみても動く様子はない。
「ははーん、ここに装置があるな。指紋認証か。ふふん、スペードの指紋データぐらい持ってあるに決まっているだろ」
「いつの間に……」
そう言ったスペードも、ジョーカーの指紋やいろいろなデータは持っていた。怪盗なら使う可能性があるものを持っておいて損はない。
イメージガムをふくらませるとスペードと同じ姿になる。
「上にカメラもついているからな、どうせ顔認証もあるんだろ」
得意げに指を扉に近づけると、ピッ、と鳴ったが開かない。
「あれ、おかしいな」
扉の飾りに手をかけて動かそうとすると、
「あばばばばば」
火花と共に大きく震えたジョーカー(スペードの姿)は、へなへなと座り込む。
「あ、勝手に入ろうとすると電流が流れるから」
「先に言えよ!!」
「君は前科があるからね、セキュリティレベルを上げさせてもらったよ」
以前、勝手に写真を持ち出されたことがあった。それ自体はたいしたことではないが、プライベートを探られていい気はしない。
「くっそー、こんなセキュリティ突破してやるぜ。おっ、ここにも小さなカメラが。ははーん、 虹彩認証だな、甘いぜ」
イメージガムでスペードの虹彩のコンタクトレンズを作り出す。
「よーしコレで……ぎゃあ!」
再び火花が散る。
「そうか、順番が問題なのか…………うぎゃ!」
ジョーカー(スペードの姿)は、いろいろ試しては電流が流れ、時には水をかぶったりしていた。
「なんか目的が変わってますね」
「もう扉を開けることしか頭にないっス」
「面白いから、やらせときましょ」
外野はのんびりとジョーカーを観戦していた。
「ケーキのおかわりはどうですか」
「ありがとう! ダークアイのお菓子大好き!」
「本当にこのケーキ、美味しいっス」
「ありがとうございます。いつもご馳走になってばかりですから、どうぞ遠慮なく。ハチさんの和菓子もいつも美味しいです」
必死なジョーカーとは裏腹に、こちらはほのぼのした空気が流れていた。スペードも愉快そうにそれを眺めている。
「お茶を淹れ直してきます。……ジョーカー、ちょっと失礼」
ダークアイが扉の前にいたジョーカー(スペードの姿)をよけると、ワゴンを押してやすやすと扉を抜けていった。
「………………」
あまり間を置かずダークアイは戻ってくる。その間もジョーカーはただ扉を見ていた。
「ふっふっふ、ぬかったなスペード。ダークアイが通り抜けたおかげで完全にわかったぜ!
『1.顔認証 2指紋認証 3.虹彩認証 4.カカトを2回鳴らす 5.指紋認証』だ!!」
今言った通りに実行する。
「……そして最後に指紋、と……開いた!」
ドアが開きかけた直後、ドスン!と鉄球がつま先をかすめる。靴の革一枚の距離だった。
「殺す気か!!」
「ボクが目の前で見ているのに、通すわけないだろう」
呆れたように言う。その手にはリモコンが握られていた。
「もちろん今の認証パターンは変えさせてもらったよ。ダークアイ、今度はは”パターンK”だ」
「かしこまりました」
「ちきしょおおおおーー!!」
***
「ふふっ」
自然と笑みがこぼれる主人の前に紅茶を紅茶を置いてダークアイは微笑む。
「今日はずいぶんと賑やかでしたね」
すっかり静かになったリビングで、今は二人きりだった。
スペードは我に返り、コホンと空咳をした。
「ダークアイにも迷惑をかけたね、忙しかったろう」
「腕の振るいがいがありました。たまにはこんな日があっても……いえ、ちょくちょくあってもいいですよ」
力こぶのポーズをして笑ってみせる。
「ボクはもうしばらくはいいかな」
「そうですか?」
助手は見透かしたように小さく笑う。
なんだか居心地が悪くて紅茶に口を付けた。カップをソーサーに戻すと音が妙に響く。今はリビングがやけに広く感じた。
タイトル負けしているしクイーンの出番が少ないのが心残りだけど、お題で書くのも楽しかったです。
「ツインサンダーシャーク(でジョーカーが)危機一髪」でした。